この時のライブの作画の頑張りにびっくりしました。
そして、光のライブの曲がおそらくですがCD化されず、特典になることを知って絶望しました。いつになるんですかね……フル聴きたいです。
俺は光の練習に付き合い続けて、ようやくライブ当日を迎えた。
「ふぅ……じゃあいってきます」
「いってらっしゃい。ちゃんと見てるから頑張れよ」
「もちろん、さっちゃんと最高のステージにしてみせるよ!」
リハーサルなどがあるので、光は朝早く家を出ていった。
俺も紗千子の様子などを見ておきたかったのだが、紗千子のことだ集中しているだろうしそれを邪魔するのはよくないと思った俺は、昼の部に合わせて会場に行くことにする。
昼の部とはどういう意味かというと、一日限りの限定ユニットなのだがそれをできるだけ多くの人に見てもらいたいということで、昼の部と夜の部と二回公演というハードなものになっている。
いつもならどっちかしか行かないのだが、今回は両方とも出ることにしたので俺にはチケットが二枚ある。
茜も見に行くと言っていたが、取れたチケットが夜の部だったので俺とは別行動という形になるが……
正直不安である。でも、あいつが近くにいると気になってライブに集中できなさそうなので、今回は放置することにした。
光が出てから程良く時間も経ち、俺はライブが行われる会場に来ていた。
さすがに紗千子が出るだけあり、客の数も多い、光の人気がないわけじゃないのでファンもそれなりにいると思うが。
会場に入り、一息ついたところで、ようやく2人のツインライブが始まる。
会場全体が暗くなり、ファンの期待が高まるなか、ステージが照明で輝き、2人がステージに姿を現す。
光はらいとというだけあり、白を基本として青いリボンなどで装飾した明るい衣装で。
紗千子は黒を基本としており、光とは対照的な衣装で出てきた。
『こんにちは~!』
「「「こんにちはー!」」」
特に2人の動きに違和感は感じられない。それに光は間近で見てたのでわかっていたが、紗千子の動きもいつもよりもいい、きっと練習を頑張ったのだろう。
これなら心配することも特にない、あとは一人のファンとしてこのライブを楽しもう。
そう思い、俺は余計な考えは捨て、2人のライブを楽しむのであった。
昼の部が終わり、俺は会場近くの公園で、間食を取っていた。
さすがに何も食べないとお腹が空いてしまう。夜の部に備えておかなければ……
昼の部の感想は素晴らしいの一言だった。
相乗効果というやつだろうか、2人とも今までのライブよりも動きがよく文句のつけようがなかった。
しかし、紗千子はステージを自分のものにすると言ってたが、それに光が対抗できるだけの技術をみにつけられたからこそのステージだった。
もし、前のライブみたいな感じだったらあのステージは紛れもなく紗千子のものだっただろう。
夜の部まではまだ時間あるのだが、何して潰そうかと考えていると。
「隣いいでしょうか?」
聞いたことがある声なのでさすがに見なくてもわかる。
「いいよ。ライブお疲れさん紗千子。でも、ライブやってた本人が会場の近くをうろついててもいいのか?」
俺の言葉に構わず、紗千子は俺の隣に座る。
「ありがとうございます。休憩時間で外の空気が吸いたかったんです。それにマナーの悪いファンがいたら四季さんに守ってもらいますよ」
勝手にボディーガード扱いされても……確かにマナーの悪いやつは嫌いだけど。
「それよりも、ステージ具体的にどうでした?」
「ん?具体的にか。ツインライブとして大成功だったな。2人とも輝いてた」
「そうですか……」
褒めたつもりなのでがなぜか紗千子は落ち込んだ表情になる。
もしかして、俺に言われた光を潰すっていうのができなかったからか?
「何考えてるか知らないけど、ステージを自分のものにできなかったからそんな顔してるのか?」
「いえ、そういうわけじゃ……」
「俺はあくまでも桜庭らいとが何もしなければ紗千子には敵わないって言っただけだ。努力したんだろう。ステージ見ててそれがわかったよ」
「そうですね」
そう言うと紗千子はなぜかそのまま考え込んでしまう。気にしすぎだな。俺が変なこと言ったせいか。
「紗千子はさっきのライブ達成感とかなかったのか?」
「えっ、どうでしょうか、夢中になりすぎて……」
「自覚ないのかもしれないけど、紗千子今までで最高のライブだったよ。夜の部も期待してる」
「が、頑張ります!」
「さっちゃん、そろそろ打ち合わせの時間よ!」
俺たちが話していると、女の人が声をかけてくる。
口ぶりからすると、ライブ、いや事務所の関係者なのだろう。
「はい、わかりました!じゃあ、四季さん、失礼しますね」
「ああ、無理しない程度に頑張れよ」
紗千子は俺に一礼すると、そのまま行ってしまった。
さて、まだ開場まで時間あるけど、どうするかな……
その後、特にすることもなく、公園で時間を潰した俺は夜の部のライブを楽しんでいた。
2人ともさすがに一日で二回目のステージだからか、少々疲れが見えそうだがそれを感じさせないぐらいのライブをしていた。
この調子でいけば、そう考えていた時。
「あっ――」
紗千子が大きく踏み込んだ際に、足をくじくような形で倒れて、ステージから――
「っ!」
人ごみで俺の視線から消える寸前で能力を使って、できるだけ疑われない具合にゆっくり下ろす。
危ない、頑張って前の席取っといてよかった。もし、とってなければ能力が届いたか……
「さっちゃん!」
すぐにスタッフにより、紗千子は舞台裏に連れていかれ、光も一度裏に行ってしまい。
ライブがちょうど休憩に入る直前だったので、そのまま休憩時間になる。
さすがに心配になったので、俺は会場から一度出る。
「さて、どうやって会いに行くかな……」
裏にはいるのはさすがに難しいかもしれないが……
「しょうがない、ほんとはこういうのやりたくないんだが」
俺は関係者以外立ち入り禁止のドアをこっそり開け、人がいないのを確認して中に侵入する。
しかし、人が多い。できるだけ人がいないところを選んで移動するがどこにいるかもわからない。そんなことをしていると時間が過ぎていき。
「やばいな、休憩時間終わっちまう」
そう考えてると、ちょうど目の前に光がいた。ナイスタイミング!
だが、光の顔色はあんまりよくない。
「どうしたんだ。そんな浮かない表情してそんな顔でファンの前に出る気か?」
「えっ!式君どうして!」
「紗千子が心配で様子を見に来ただけだ。それでどうなった?」
「……さっちゃんは今日はもう無理だって。それで私が残りの部分全部やることになったの」
地面に落ちる時に衝撃は殺したはず。ということはその前に捻った足が原因か。
それにしても残り光一人ということは振付も昼の部で見た時は2人用のものだった。
「踊りはどうする」
「アドリブでもなんでもいいからって言われた。さっちゃんの前では大丈夫って言ったけど。私、不安で」
今まで光の兄をやってきたが、ここまで自信なさげな光はめずらしい。
「でも、やるって言っただよな?」
光は俺の言葉に無言でうなづく。
「なら、やることは一つだ。ちょっと前のお前ならファンの前で恥をかくだけだって止めたと思う。でも、今のお前は違う。このライブに向けて練習を重ねてきた。今のお前ならできる!」
「式君……うん!私やるよ!」
光がいつも通りのテンションに戻った、なら後は送り出すだけだ。
「よし!行って来い」
「いってきます!」
光はそのままステージと思われる方へ走っていく。
「あれなら大丈夫か。なら紗千子の様子見に行きたいんだが」
光が来た方向に足を進めると、光のマネージャーである松岡さんが目に入る。
「松岡さん」
「えっ!?し、式様!」
変に取り繕っても面倒なので、メガネなどの変装道具を外して話しかけることにした。
「紗千子に会いに来たんですけど、この部屋にいるんですか?」
「は、はい!でも、なぜ式様が?」
「松岡さん、数字の四に季節の季で四季っていうハンドルネーム聞いたことありますよね」
「はい、昔から紗千子を支えてくれるファンで、手紙なんかも何度も送られて……まさか」
察しがよくて助かるな。まぁ、読み方同じだしな……
「王族ということは隠してるんですけどね。ちょっと様子見させてもらっていいですか?」
「はい!らいとのステージもそろそろ始まるので私はここを離れないといけないので、紗千子のそばにいてくれるならありがたいです!」
「じゃあ、入らせてもらいますね」
俺は変装道具をつけ直してドアをノックして部屋に入った。
「失礼するよ」
「えっ!四季さんどうして!」
いきなり控室に俺が入ってきたので紗千子はかなり驚いてるようだ。
まぁ、今の俺はただのファンだしな。
「少し気になったから勝手に入らせてもらったよ」
「忍者か何かですか、スタッフだってたくさんいたはずなのに……」
「そんなことよりも聞いたよ、この後らいとが全部一人でやるんだろ?」
「はい……私、四季さんに無理するなって言われたのに、隣でうまくできてる桜庭さんを見て、まだやれる、もっと輝けるって考えちゃったんです」
なるほど、それで転倒してしまったのか。見た感じ足をひねっただけですんだようだけど。
「怪我、足だけか?ステージから落ちたけど」
「はい、なんでか知らないんですけど落ちた時全く痛くなくて、一瞬宙に浮いた感じがしました」
「そうか、ならいいよ。今紗千子にできることはらいとのライブを見守ることだけだ」
「そうですね……」
部屋にはライブを映しているテレビが設置してあり、そこでは間もなく光のライブが始まろうとしていた。
『みんなー!待たせてごめんね!後半も張り切っていくよ!しっかりついてきてね』
隣の紗千子はすごく不安そうだ。まぁ、俺も少しは不安があるけど
『まずはこの曲から――きゃっ」
その不安が当たるように光は走り出そうとしたところで倒れそうになる。
ここから、まぁまぁ距離があるので俺の能力が届くかわからないけど、瞬間的に能力を使ってしまう。
効果があったかどうかわからないが、そのまま光は倒れてしまう。
紗千子もその姿に目を瞑ってしまうが、
「大丈夫、あのこけ方なら怪我はしないだろう」
俺の言葉通り、光はすぐに客の方に顔を向けて、
『へへへ、失敗失敗』
てへっとそのまま立ち上がり、ファンはそれに歓声を上げる。
『それじゃあ、いくよ。新曲、「Search Light」!』
そのまま光は新曲を一人で歌い始める、振付も今までにはないもの完全にアドリブである。
だが、動き一つ一つが俺と練習してきた動画の模倣の一部をうまくつなぎ合わせた物である。
ばらばらのピースを組み合わせて一つのものにしている光の姿を見て、俺は素直に感心していた。
『さっちゃん!見てる~?すっごく盛り上がってるよ!』
光は手を振りながらファンの声援に応えていた、その姿はまさしくアイドルであった。
「すごい、私じゃ敵わないのかな……」
隣の紗千子は嬉しさ半分悔しさ半分といった感じである。
「天才が努力したらって考えたのか?」
「はい……」
「大丈夫、紗千子は今まで通り頑張ればらいとと変わらないぐらい輝けるよ。らいとのコーチである俺が言うんだ間違いない」
「えっ!?四季さんがらいとのコーチ?」
「アイドルになりたいって相談されてな。サポートしてたんだけど、デビュー後は怠けててな。でも、努力することの大切さは自分で気付いてほしいと思ってあんまり口出ししてなかったんだ。らいとがそれに気付けたのは紗千子、お前のおかげだよ」
「私がきっかけですか?」
「ああ、今日のライブを見て確信したよ。2人はいいコンビであり、ライバルになれるって。だから、このライブが終わったらちゃんと話しあえよ」
「わかりました」
そう言って俺たちは光のライブを見届けた。最初こけてしまったがそれ以外はアドリブとは思えないほどの素晴らしいステージだった。
「さっちゃん!どうだった私のライブって……式君!どうして!?」
ライブが終わりすぐに控室に戻ってきた光は部屋に俺の姿がいてかなり驚いていた。
まぁ、王族だってこと隠してたし当然か。
「よう、らいと。いいステージだったな。そして、アイドルの時はコーチって呼べ」
その言葉とともに光を威圧する。紗千子がいる中察しの悪い光に説明するのが面倒なので脅すことで状況を丸く収めることにする。
「す、すいません!コーチ!さっき話した時から疑問だったんだけどさっちゃんと知り合いだったの?」
「四季さんは下積み時代から私を支えてくれたファンなの。それよりも、ライブすごくよかったわ。ごめんなさい、自己満足でファンに失礼なのは私の方だった……」
上半身だけを起こした状態だが、紗千子は光に頭を下げた。
「い、いいよ!私も怠けてたのは事実だし……」
「楽しかったわね」
「うん!楽しかった!」
「やっぱりそれが一番大切なんだ。四季さんにもくだらないことで心配かけてすいませんでした」
「いいよ別に。それにらいとを成長させるためとはいえ、余計なことを言ったのは俺だ。変に悩ませたりして悪かったな」
「……私、桜庭さんのこと誤解してた。四季さんがコーチについてるのに中途半端なわけないよね。ずうずうしいかもしれないけど、これからはよきライバルとして、仲良くしてもらってもいいですか?」
顔を赤くしながら言った紗千子のその言葉に光は涙目になりながら、紗千子におもいっきりだきついていた。
「さっちゃーん!さっちゃんとの抱き合わせ、一緒にアイドルの階段を駆け上がろうね!」
「えっ!?え?」
紗千子はわけがわからずパニックになっているが、光はすごくうれしそうだ。
少しトラブルはあったけど、丸く収まってよかった……んだけど。
女の子二人が抱き合っているこの状況、俺めっちゃ浮いてるんだけど……誰か助けて!
「ふ、2人ともいるか!」
ナイス松岡さん!いいタイミングだ。
「何?」
「い、いや。不審者がここら辺に出たって聞いて」
「不審者?」
そういいながら光は俺のことを見てくる。いや、確かに俺不審者かもだけど
「俺ではない。松岡さんに許可もらってここにいるからな」
「ああ、まるで重力を感じさせない動きで、スタッフも取り逃がしてだな……」
あー、俺にもその動きできないことはないけど、俺じゃない時点でそんなことできるやつなんて……
「も、もしかして!?」
茜のやつ何してんだ……しょうがない回収しておくか。
「らいと、俺が回収しておく。お前はゆっくり休め」
「うん、し、コーチお願いします」
らいとにだけ聞こえる声で、話した後俺は立ち上がって控室から出ることにする。
「四季さん、もう帰るんですか?」
「ああ、ただのファンがずっといるのもまずいだろ。じゃあな、次のライブも期待してるよ」
「はい!」
「任せてよ!私もいるんだから」
お前がいると不安なんだよ。とは言わないでおこう。
俺は2人に手を振りそのまま控室から出た。
この後俺は茜を回収して、家に帰るのだった。
全く、妹が立派にライブをやり遂げたというのに、なにをやってるのかこの姉は……
大分悩みましたが、大方の方針は決まりました。
一応、アニメ最終話を見てから最終的に報告します。
そして、この話でストックは使い切ったので、更新速度は激減すると思われますが、これからもこの作品をよろしくお願いします。