城下町のダンデライオンー偽物の10人目ー   作:雨宮海人

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さあち☆らいと回です。
最初、光の話は全体的にそこまで掘り下げるつもりなかったのですが、この回を見て色々書きたいなと思えました。
長くなったので2話構成となります。
それでは今回もよろしくお願いします!


第22話

紗千子にあった時光が怠けていることを知った俺は、一度光に基礎練は大事にしろよとお仕置きしたはずなのだが、

 

「これはまずいな。紗千子怒ってなきゃいいけど」

 

俺は今自分の部屋で光の初ライブの映像を見ていた。その時俺は用事があったので直接見ることは叶わなかったので、光に言ってその時の映像をもらってきてもらったのだが。

 

正直、音を外すところがあったり、途中ダンスが詰まったりと、新人アイドルとしては大成功のライブなのかもしれないが、非常に荒さの目立つものだった。

 

「でも、あんまり口うるさく言ってもな~」

 

何でもかんでも俺から言ってたらせっかく自主的に始めた光のアイドル活動に水を差すと言っても過言ではない、

 

それに紗千子に潰れるならそれまでとか言っちゃった手前、口出すのもな。

 

「それよりも、出掛けるとするか」

 

今日は紗千子のCDの発売日である。買わないわけにはいかないので、俺はいつも通り軽く変装して家を出る。

 

もちろん変装しなくてもいいかもしれないが、ばれると店の人とかが俺のことを優先しようとするので、それは他のファンに失礼だ。

 

近くのCDショップに行くとちょっとした列ができていた。俺もそれに並び、開店後特に問題なく俺は紗千子の新しい曲を入手することに成功する。

 

「せっかく外に出たし、少し見て回るか」

 

すぐに家に帰ってCDを聞きたい気持ちもあったが、俺は街を回ることにしようと思ったのだが

 

……誰かにつけられてる。でも、素人だな。隠す気なしか。

 

でも、こんな人ごみで騒ぎを起こすのもなんなので、俺は小さな路地に駆けこんで……

 

人目のつかないところに来たところで、振り向いて相手の両腕を抑える。

 

「きゃっ!?」

 

「何が目的だ……って紗千子?」

 

俺を追っかけてきたやつを壁に押し付ける形で動きを封じたのだが。その相手は紗千子だった。

 

変装してるが一度見てるので見間違えることもない。

 

「わ、悪い!」

 

俺はすぐに手を離す。あくまで抑えただけなのでそこまで痛くはしてないと思うけど。

 

「い、いえ大丈夫です!私こそあとをこそこそ追っかけてたので……」

 

紗千子は顔を赤くしながら頭を下げていた。が俺が別にいいよというと頭をあげる。

 

「それで俺になんかようでもあったの?」

 

「はい、少しお話しできたらと思ったのですが。さすがに私のCDの発売日にあそこで話すのは色々まずいと思いまして」

 

なるほど、それで声をかけるタイミングを計るためにあとをつけてたのか。

 

「いいよ。この後暇だったし」

 

「ありがとうございます!」

 

こんなところでもなんなので、どこかに移動するために歩き出すのだが、

 

「付き合ってもらって申し訳ないんですけど、この後収録があるのでそこまで歩きながらでいいですか」

 

「うん、それでいいけど。そんなに忙しいのに俺と喋ってていいの?」

 

「はい、どうしても四季さんに言いたいことがありまして」

 

紗千子は結構真剣な表情なので、俺も真面目に聞くことする。

 

「もうすぐ公開されると思うんですが、私と桜庭らいとのツインライブが決まりました」

 

マジか。光のやつ紗千子と組めるまで……いや違うそうなわけないか。

 

「桜庭らいとは初ライブやったばっかで売り出し時だから紗千子とのライブでさらに人気を出したいってところか」

 

「すごいです!そこまでわかるんですね」

 

「一応ライブ直接ではないけど見たからな。あの荒さで紗千子と同じレベルという考えはいくらなんでも失礼だろ」

 

いくら光が身内とはいえ事実なのでフォローはしない。

 

「あ、ありがとうございます。それで四季さんにそのライブに来てほしいと思いまして」

 

ん?そんなこと言われなくても予定が空いてたら、いや無理やり空けてでもいくつもりだったのだが。

 

「そんなことをわざわざ言うために?」

 

「私そのライブではサポートに回るように指示を受けてるんです」

 

確かに、もし事務所が桜庭らいとを売り出したいと考えているのなら、すでに人気がある紗千子が出しゃばるのはよくないことであろう。

 

「でも、私。四季さんが言った通り桜庭らいとを潰す勢いで次のステージ望みたいと思っています。彼女のステージではなく私のステージにすることにより」

 

うーん。勢いで言ったわりにずいぶんと重く受け止められてしまったようで、紗千子は本気で光を潰す気で来ている。心持は悪くないと思うのだが、あんまり気負いすぎるのはな……

 

でも、紗千子には光にはない決意のようなものが見えた。これが光にもあれば……

 

「いいと思うよ。でも、俺からすれば紗千子は今のままでも十分桜庭らいとを圧倒できると思う。だから無理だけはしないように、いつも通りやればいいと思う」

 

「そうでしょうか?らいとには間違いなく才能があります。それがない私は今以上に努力しないと」

 

「必要ないとは言わないよ。でも、それでいつもよりも悪くなるときだってある。俺も格闘技とかの練習の時無理しすぎて師匠に怒られたもんだよ。『いつもより動きが悪い。なんでも努力すればいいってもんじゃない』ってね」

 

俺に言われて紗千子は悩んでしまう。別に悪くないんだけど、体験している以上忠告しないわけにはいかなしな。

 

「先輩からのありがたい言葉として受け取っといてくれればいい」

 

「わかりました。じゃあチケットとかも……」

 

「大丈夫自分で手に入れるから。ずるしてもらうのは他のファンに失礼だ。でも、ライブはちゃんと見に行くよ」

 

「そうですか。色々聞いてもらってありがとうございました!スタジオここなので失礼しますね」

 

そう言うと、紗千子は建物の方へ走って行ってしまうが、

 

「無理だけはするなよ!」

 

「はい」

 

俺は念のために声をかけ、それに応えた紗千子の顔を見て少し安心しながら家に帰るのであった。

 

 

 

 

そして、その夜。

 

「式君ちょっといいかな?」

 

夕食を食べた後、光が俺の部屋を訪ねてきた。

 

「珍しいな。なんかあったのか?」

 

「うん、さっちゃんとライブすることになったけどさっちゃんに嫌われちゃって……」

 

「はぁ、理由はわかってるのか?」

 

これで気付いてないなら困るんだよな。俺から口出す気はないし。

 

「松岡さん言ってた。さっちゃんは努力で今の場所に立ったって、学業もおろそかにせずに。でも、私最近どっちとも怠けてて……」

 

「じゃあ、どうすればいいか光はわかってるんじゃないか?」

 

「うん。だから、勉強もアイドルの練習も教えてほしいの!」

 

光の目にはアイドルを志した時と同じようにやる気のある目になっていた。

 

こうなっている以上付き合ってやるのが、兄というものか。

 

「わかった。付き合ってやるよ」

 

「やったーー!」

 

こうして、俺は光の勉強などに付き合うことになったのだが……

 

「違う、ここはこうだ」

 

「えっ!?」

 

アイドルの方はまだ荒さを修正すればいいと思ったが勉強が予想よりもできておらず。さすがに頭を抱えざる負えなかった。

 

しかし、近々テストがあるとのことなので、ここで怠けるわけにはいかず。

 

「式君。もうそろそろ……」

 

「このページ終わったらな」

 

そんな中茜が隣から声をかけてくる。ちなみに茜と光は同じ部屋なので茜は自分のベットに座ってる。

 

「あのさ、光。できれば今度のライブ招待してほしいんだけど」

 

「うん。いいよ」

 

「ほんと、それとさっちゃん紹介してほしいなって……」

 

「ダメ、来るなら勝手に来て、あたしには近づかないで王族だってばれたくない」

 

「そ、そんな~。せめてサインだけでも……」

 

「茜、諦めろ。欲しければ自分でどうにかしろ」

 

「えぇ~~……」

 

残念そうな声をあげて茜はベットに倒れ込むが、相手をする気はない。せっかくやる気になってる光の邪魔はして欲しくない。

 

しかし、今回の光は随分とやる気が出ている。紗千子のおかげなら感謝せざる負えない。

 

だが、俺には一つの不安があった。光が努力することはいいことだ。でも、紗千子はそんな光を見たらどう思うだろうということだ。

 

紗千子のやつあんまり無理してなければいいけど……

 

「式君。全部終わったよ!」

 

「よし、じゃあ、今日はここまでな。無理しすぎてもよくない」

 

紗千子も心配だが今は光のサポートをするのが俺の役目だ。今はそれに徹するとしよう。

 

 

 

そして数日が経ち。

 

「式君!やったみて!94点!」

 

光が自慢げにテストを俺に見せつけてくる。その顔は実に満足げである。

 

「やればできるじゃんか」

 

「ふふふ、ちょっと本気を出したまでよ!」

 

「じゃあ、あとはライブだけだな」

 

「うん!最高のライブにしたいの」

 

最初は不安もあったがこれなら俺が心配するほどの事にはならないだろう。

 

俺はそのことに安堵しながらも、

 

「そうか、なら頑張らないとな」

 

光を頭に乗らせないために一応偉そうな言葉を言っておく。

 

「はい、コーチ!」

 

こうして光はライブに専念することができ、残りの期間普段のレッスンはもちろん、それ以上に頑張るのであった。




遠慮なくと言ったがさすがに作品を全否定するような感想がくると心にきますね……
ただでさえこの後どうするか悩んでいたのにさらに迷走し始めております。
方針が決定次第ちゃんと報告したいと思います。

なんか意見があったら作者の心が砕けない程度によろしくお願いします。

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