城下町のダンデライオンー偽物の10人目ー   作:雨宮海人

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アニメ6話に入りますがこの回はかなりオリジナルが入ります。
後半は完全オリジナルでちょっとしたデート回です。
面白くないかもしれませんがよろしくお願いします!


第16話

時は秋になり、今まで目立った動きもなかった国王選挙に動きが出てきました。

 

その最大の動きというのが今テレビに映ってる。

 

『ご、ご通行のみ皆さま。お、お騒がせして申し訳ありません。私は、ささ、櫻田、茜、です。』

 

ものすごい不器用な演説をしている茜の本格的選挙への参戦であった。

 

だがそれにしてもひどい演説である。

 

『ひ、人前に出るのはに苦手なんですが。櫻田茜をよ、よろしくお願いします』

 

『『あっかねーさまー』』

 

おそらくファンクラブのやつらの声援を受けて、茜はマイクを落としてしまう。

 

『このように初々しい姿が聴衆の心をつかんだようです』

 

これでうまくいっているのだから、世の中はよくわからないものである。

 

「ほんとにー?」

 

光も納得いかないような声をあげる。

 

「あか姉、街頭演説なんて始めたんだ」

 

「い、一応ね……」

 

岬の質問に茜は顔を覆い隠しながら答える。まぁ、俺もあんな姿テレビで映されたら見たくなくなるよ。

 

「なんで、急に?」

 

「ネットで騒がれてることが効いたみたいだぞ。光とかなら嬉しいことなのにな」

 

「私頑張る、王様になったらガンガンネットも規制するよ!」

 

「どうなの、それ?」

 

「確かに、ネットをよくやってる人にとってはありがたくない話だな」

 

「僕も選挙に向けてチラシを作りました!」

 

輝が自信満々にチラシを見せてくるのだが……

 

「えーと、諸悪の根源を絶滅し、世界を終末に導く。四男櫻田輝……?」

 

茜が読んでくれたがすごいなこれ、もうツッコミどころしかない。

 

「ツッコミたくないけど。終わりに導いちゃうんだ……」

 

「えっ!?かっこいいと思ったのですがダメでしょうか?」

 

「俺はかっこいいと思うぞ……」

 

カッコよさ以前に色々問題があるんだよな。輝がそれでいいならいいのだが。

 

「週末で思い出したけど、私一日警察署長やるんだ」

 

「らいととしての仕事だろ?」

 

「私も週末は予定でびっしりなのよね」

 

「よし、僕もこのチラシを配りに」

 

「私も行く」

 

「茜、週末も付き合うぞ」

 

「私も行くよ」

 

「あ、よろしくお願いします~」

 

みんな週末に予定があるようで、選挙も大変だなと俺は思うのであった。

 

そして、その週末。特に予定が入ってなかった俺は、外に出ていた。

 

あてもなく歩いていると通りかかった警察署。そこでは光が一日署長をしていた。

 

「皆さん、こんにちは。桜庭らいとです、今日一日署長を務めさせてもらいます!よろしくお願いします」

 

その姿は成長しているせいもあるのだが、意外と様になっていた。

 

「ふーん、まぁまぁね」

 

そんな光の姿を見ていると、目の前に同じく光の姿を見ている女の人がいた。

 

あれ?サングラスとかかけてるから微妙にわかりにくかったけど、

 

「もしかして、米澤紗千子さん?」

 

「えっ!?いや、人違いですよ……」

 

上手な変装ではあったが、演技が下手である。でも、今の俺も軽く変装しているし、櫻田式とはわかってない?それなら俺はただの一般市民である。そんなやつがアイドルに話しかけるのはおこがましいことなのだが。ファンとしては一声かけたかったのだ。

 

「最近人気上昇中で嬉しい限りです。ところで四季ってハンドルネーム覚えていないでしょうか?」

 

「えっ!?四季さん!……どうしてその名前を?」

 

「あれ、俺なんです。米澤さんは昔と変わらず努力を続けているようで」

 

彼女の下積み時代。彼女はうまくいかないことなどをブログなどで嘆いていた。デビューすらできず、努力してもうまくいかないと、そんな姿に励ましたいと考えた俺は事務所に手紙を送ったり、ブログにコメントをしたり励ましたりしていた。ただのファンである。その時のハンドルネームが四季である。本名まんまだけど……

 

「少し場所を変えませんか?」

 

まさかのお誘いである。でも、このあと輝達の様子を見ようと思ってたのだが、近くに喫茶店があったか。

 

「えっと、それなら今から行こうと思ってる場所があるので、そこでいいでしょうか?」

 

こうして、俺と米澤さんは近くの喫茶店に場所を変えるのであった。

 

「好きなの選んでください。おごりますよ」

 

「いえ、悪いですよ!」

 

「いや、最近手紙も書きこみもしてなかったのでそのお詫びですよ」

 

「やっぱり、本物の四季さんなんですね」

 

「疑われるのも当然だと思います。でも、ここまで来てなんですがアイドルがこんなホイホイついてきて、お茶なんてよかったんでしょうか?」

 

「大丈夫です。私も四季さんと話したいと思っていたので」

 

「光栄の極みです。でもなんで俺なんかと?」

 

「なんでって、わたしが今こうしてアイドルができてるのは四季さんのおかげです。感謝の言葉を直接言いたかったんです」

 

真剣な顔で米澤さんがいって来て、俺は少々驚いてしまう。

 

俺自身、手紙や書きこみが米澤さんにとってそこまでの意味をなしているとは知らなかった。

 

「そんな、俺はただ努力している人をみると応援したくなるだけですよ」

 

「それでも!」

 

米澤さんは今にも立ち上がりそうな勢いで身を乗り出してくるが、これ以上目立つと俺もばれて面倒になりかねない。

 

「ち、ちょっと、落ち着いてください」

 

「あ、すいません……」

 

そういうと、米澤さんは運ばれてきたホットコーヒーに手を出す。

 

「でも、何はともあれ。俺なんかのおかげで頑張れたというなら嬉しい限りです」

 

「ほんとは何かお礼をしたいんですが」

 

「とんでもない!米澤さんが有名になってくれただけで俺は嬉しいです」

 

いい終わるころにはちょうど輝の演説が始まっていた。

 

『ぼ、僕は……生まれ持ったこの力を活かすため……王様になってこの国を守ろうと決意しました』

 

しかし、輝の演説は所々途切れており、そのたびに栞が助言していた。

 

おそらくだが、輝は何一つ考えてないな。あのセリフ全部栞のものか。

 

「四季さんはこれを見に?」

 

「いや偶然ですよ。でも輝様も栞様もあの年なのに偉いですよね」

 

「確かにそうですね。栞様はまだ幼稚園ですし、そう言えば四季さんはいくつなんですか?かなり大人っぽいと思ってたんですが」

 

「俺ですか?俺は今高校一年生ですよ」

 

あっ、素直に言ってしまった……せっかく向こうが大人っぽいと思ってくれてたから少しサバをよめばよかった。

 

「い、意外です!もっと大人かと」

 

「こんな喋り方だししょうがないですよ」

 

「年上なんですから、私のこと呼び捨てでもいいですし、口調も普通にしてもらっていいのに……」

 

年下にそう言われてしまうと、いいかなと思ってしまうが向こうはアイドルだからな……

 

しかし、米澤さんに真剣に見つめられると断りにくい雰囲気が奏とかに似ている。しょうがない。

 

「それなら、普通にさせてもらうよ。普段の口調はそんな丁寧じゃないから気分悪かったら文句言ってもいいから」

 

「大丈夫です。こうして四季さんと話せるだけで私は嬉しいので」

 

やめてくれよ顔赤くするの……なんか嬉しいけど複雑な気分になる。

 

「そ、それにしても、最近絶好調じゃないか。ライブも見に行ったよ」

 

「あ、ありがとうございます!緊張もしましたが、今までどおりにやればいいって思って乗り切れました」

 

「その後の調子もいいんだろ」

 

「えっと。は、はい」

 

ん?一気に歯切れが悪くなったな。わかりやすい。いつもはクールなアイドルってイメージなのに日常生活では可愛い女の子である。

 

「なんかあったの?相談乗るけど」

 

「いえ、私自身は特に何もなく順調なんですが……最近うちの事務所に入った子が」

 

最近、事務所に来たということは、光、じゃなくて――

 

「桜庭らいとのこと?」

 

「は、はいそうです。その子すごく才能があって、でも普段のレッスンではおちゃらけてて、特に努力もしてないのにもうステージに立っていて、なんか悔しく感じちゃって」

 

……光のやつあれほど基礎練習は大事にしろと言ったのにサボってやがるのか。帰ったらお仕置きだな。

 

確かに一緒に練習してて思ったが光には才能があったのは否定しない。歌も踊りもかなりの速度でうまくなっていってたしな。でも、それは米澤さんにとっては納得いかない存在だというのはしょうがない。

 

「うーん、初めて会った時、米澤さんは桜庭さんのことどう思ったの?」

 

「最初は基礎もしっかりしていて、少し軽い子ですがよくできた子だと思ってました……でも――」

 

「たぶんだけどな。桜庭さんは調子に乗ってるんだよ。アイドルになれたんだ。気分も浮かれるだろう。みんな米澤さんみたいに真面目じゃないからね。でも、それはチャンスだよ」

 

「えっ?」

 

「米澤さんはいつも通りやって差を見せつけてやればいい。それでやめるようならそれまでだろ?わざわざ米澤さんが悔しいなんて感じる必要ないんだよ。他の人なんて関係ない、米澤さんにできることをすればいい」

 

もちろん光がどうでもいいと思ってるわけではない。手助けや助言はするけどほんとに潰されてしまうならそれまでだ光には向いてなかったということだろう。

 

「四季さん変わりませんね。そうやって言葉で私を勇気づけてくれる。ありがとうございます」

 

「別にお礼を言われる程じゃないよ。思ったこといってるだけだし」

 

「やっぱり、優しい……そ、そう言えば四季さんにも努力して成し遂げたいことがあるって言ってましたよね?それってなんなんですか」

 

米澤さんの言葉に俺は少し目を見開いてしまう。手紙にそんなことを書いたこともあったか。

 

「具体的には言えないけど、守りたいものを守れるようにかな。これだけいうとただの中二病か……」

 

しかし、会うのは今日が初めての人に俺の複雑な事情と家族について話すわけにはいかない。

 

うーん、説明しずらい。

 

「守るっていうのはボディーガードとかですか?」

 

米澤さんはいい方に受け止めくれたらしい。でも――

 

「ははは、そう言えばそんなのを志した日もあったよ。おかげで普通の大人には負けない自信あるしね」

 

「すごいですね……やっぱり努力したんでしょうか?」

 

「それはかなりね……でも、力だけじゃダメだって思って今は勉強とか色々なものに力を入れてるよ」

 

俺はボディーガードに必要な技術を本物のボディーガードに教え込まれた、ほんと一時期はボロ雑巾になるまでしごかれたけど……

 

「ふふっ、よかったです。四季さんも努力してるんですね」

 

「なんだ。手紙の内容信じてなかったのか?」

 

「いえ、でも私を勇気づけるための嘘かなと思ったこともあったので、でも本人から聞けて安心しただけです」

 

そう言って米澤さんは笑うのであった。その笑顔は今まで米澤さんの様々な笑顔を見てきた俺でも初めてみるものだった。

 

「長話がすぎたね。そろそろ出ようか。送るよ」

 

「そんな悪いです……でも、駅までお願いします」

 

話しが終わるころにはすでに輝の演説も終わっており、もう帰ったようである。少し心配だがお付きの人がいるから問題ないだろう。

 

店を出た俺は米澤さんを送っていた。

 

「今日はお話できてよかったです」

 

「俺もだよ。憧れのアイドルと話せたんだ。嬉しくないわけがない」

 

「あ、ありがとうございます。これからもがんばります!」

 

「そうそう、その意気だよ。自分のことを信じてただ突き進めばいい」

 

そうこうしているうちに駅についてしまう。ここら辺は人が多すぎる、長居は無用だな。

 

「じゃあ、ここらへんで……その前に一つお願いいいですか?」

 

「なんだ?」

 

「その、私の呼び方。変えてもらえないでしょうか?」

 

呼び方を?米澤さんと呼んでいたけど名字で呼ばれるのが嫌いだったのだろうか?

 

今の俺は櫻田の名前を隠している以上ただのいちファンでしかないし……

 

「いいよ、さっちゃんの方がいいかな?」

 

「いやさすがにその呼び方は……紗千子でいいですよ」

 

どうやら違ったようで、さっちゃんは残念そうな顔をしたあと、俯きつつ言ってきた。

 

「呼び捨てはいくらなんでも……」

 

「ダメでしょうか?」

 

好きなアイドルにそんなことを言われてしまったら断れない……

 

「じゃあ、さ、紗千子……」

 

「あ、ありがとうございます……それじゃあ私行きますね。また会えるでしょうか?」

 

そのまま俯きながら話してくる紗千子に俺は笑顔で答える。

 

「また会えるよ。じゃあな、俺も帰るとするよ」

 

「はい、また!」

 

そう言って紗千子は人ごみの中に消えていった。俺もそろそろ帰らないと……

 

そんな帰りの路地、俺は考え事をしていた。

 

内容は紗千子に言われたときのボディーガードの話だ。

 

小さい頃の俺は夢なんてなく、真面目なところなどなくただのめんどくさがり屋だった。

 

そんな俺が変わった12年前の出来事を俺は思い出すのであった……

 

 




デート回と書けば普通、葵、奏辺りかな?と思わせといてまさかのさっちゃんでした。
原作ではサブキャラですが、この作品では式と思考が似ていることもありこの後も出番は結構あるかな~と考えています。
ついでに、式ですがこの穏やかな世界ではチートとはいいませんが強いです。

最近書くペースが落ちて、だんだんストックがなくなってる。マズイ……

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