ラブライブ! とある高校のドラマー少年   作:桐島楓

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 艦これE-6の乙がクリアできないよ~♪ いやマジで――何とかしてカタパルトは欲しいけど多分無理だしどうしよう!?





第5話

 前略お袋さま。私は晴れてナンバーワンスクールアイドルの方たちと交流を持つようになりました。練習を見て欲しいと言われたけど、正直なところ見て教えられるようなことは一切ないのになにをどう教えればいいのか、いささか戸惑っております。

 というより、最近幼馴染’sも含めて女生徒と知り合うことが多いのですが何故か嬉しさより胃の痛みがひどいです。まるで未来の自分に、『この先は地獄だぞ』と警告されているような悪寒してならないのです。前回の幻覚といい本格的に病気なのかもしれません。

 P.S.最近自分に威厳がなくなってきた気がしてなりません。

 

 

 とあるカフェにて。

 

「久しぶり、賢い可愛いエリーチカ!」

「私帰るわね」

「ごめんなさい! 調子乗りました!」

 

 カフェでやってきた待ち人に軽口を叩いたらなんの躊躇もなく踵を返され慌てて止める。

 

「ささ、どうぞ席にお座りください」

 

 執事のように椅子を引いて着席を促す。

 

「まったく、急に呼び出してなによ?」

「まあまあ、そう言わずに。この紅茶なんか実に絵里好みだと思うよ」

 

 せっせとご機嫌を取る。この前の先輩たちといい最近女性に振り回される機会が増えたなあ。

 まったく、と呆れた表情をしながら勧めた紅茶をオーダーしているのは、絢瀬絵里というロシア人とのクォーターの少女である。メリハリのあるスタイルを持つ気の強い美人でもある。ちなみに一度へそを曲げると機嫌を直すのに非常に苦労する。もう一度言う、非常に苦労する。そして、一番付き合いの長い幼馴染である。

 中学時代の友人が言ってたなあ、ファースト幼馴染が金髪美少女かよ!? って。ファーストって何さ? ファーストって。出会った順番? でもその理屈で行くとフィフス幼馴染までいるんだよな。一番最後が真姫だから合ってるには合ってるか――ピアノ的な意味で。

 

「絵里は学校どう? 廃校になるかもしれないって噂だけど?」

「……正直厳しいかもしれない――でも、絶対そんなことさせないわ!」

「そうか――で、その廃校関連の話でもあるんだけどさ、高坂穂乃果って娘知ってる?」

 

 知ってるなら正直手っ取り早い。現状の三人の印象を聞いてみればいい。

 紅茶を一口飲み前を向くと……前髪で目を隠した絵里がいた。表情が見えないのでちょっと怖い。

 

「……なんで彼女たちの名前を知ってるの?」

 

 ん? 今店内の気温が下がった気がしたぞ――いや気のせいか、いくら絵里が寒いことで有名なロシアのクォーターとは言え気温を下げるなんてオカルトチックなことできるはずがない。

 

「ねえ――答えて?」

「え~、あ~――言ってなかったけ? 他にも幼馴染が音ノ木坂に通ってるって」

「初耳ね」

「そ、そっか~。その今言った幼馴染が高坂穂乃果たちなんだよ」

「そっか、油断してたわ。まさか私と同じポジションの娘が三人もいたなんて――」

「油断ってなにを?」

 

 なんか怖くてあまり聞きたくないが。それと、三人じゃなくて四人です、とは言わなかった。いや、言えなかった。再び本能が叫んでいるから。余計なことを喋っるんじゃねえ! って。

 

「ふう――もう大丈夫よ。落ち着いたから」

「そ、そうか――で、あの三人も廃校阻止のために動いてるって聞いたんだけど?」

「そうね――でも、貴方だってわかるでしょ? 彼女たち――いいえ、スクールアイドル全体のレベルが」

「まあ、アライズだって絵里と比べたら差があったしね」

 

 ああ、やっぱり絵里の視点からじゃスクールアイドルなんて素人に毛が生えた程度しか見えてなかったか。

 

「別にそれでもいいのよ。でも、思いつきで初めた程度の実力で学校の――音ノ木坂学院の名前を背負って欲しくないの。それに――」

「本気かどうかもわからない?」

 

 彼女の言いそうなことを先読みしてみた。驚いたような表情をしているので多分当たりだろう。

 

「ええ……」

「うん、俺が偉そうに言うのもなんだけど……確かに歌も踊りもまだまだ改善点が多いと思う。けど、三人は本気だよ。目標を達成するまで絶対に折れたりしない! これだけは断言できる」

「……」

「まあ、だからもしよければ絵里にダンスを見て欲しかったんだけど――今はその気になれないよね?」

 

 無言だが、恐らく肯定だと思う。というか、絵里は一人でアレコレ背負いすぎな気がするな。まだ高校生なのに。

 

「ファーストライブ」

 

 唐突に絵里がそう言った。

 

「え?」

「彼女たちのファーストライブを見たあとに考えてみるわ」

「……」

 

 言葉が出なかった。いやマジで。

 

「なによ、鳩が豆鉄砲食らったような顔して」

「あの一度へそを曲げたら面倒くさい絵里が素直…だと?」

「志郎、怒るわよ?」

 

 いや、だってねえ。

 

「ねえ、絵里――今の学校生活は楽しい?」

「またいきなりね」

 

 まあ、唐突すぎる質問とは思う。でも気になってしまったのだ。廃校を阻止しようと必死に動いていることはわかるが、そのために自分を犠牲にしてしまってるんじゃないかと。

 

「いや、どうなのかなあって思ってさ。で、どう?」

 

 絵里は少しだけ困ったような表情をした。まあ、そうそう聞かれるような話題でもないかもしれないが。やっぱり無理してるように見えて仕方がないんだ。昔はもっと楽しそうに笑っていたのに。

 

「――わからないわ。廃校になるかもしれない状況じゃ余計にね」

「そっか」

「ええ……それじゃあ行くわ。亜里沙も待ってると思うから」

「わかった。亜里沙ちゃんにもよろしく伝えておいて」

「ええ、それじゃあ」

 

 そう言って律儀に自分の紅茶の代金を置いて絵里は店を出ていった。

 

「わからないか――それで廃校を阻止できてもお祖母ちゃんが喜ぶかどうか――」

 

 むかし、バレエのコンクールで絵里があと一歩のところで賞に届かず涙を流したとき。絵里のお祖母ちゃんは確かに言った。楽しんでバレエをしてくれるのが一番だと。当時まだまだ小さい子供だた俺でも本心から言ってるとわかる温かい言葉だった。

 

 ――まあ、自分の事ほど見えにくいものかな。絵里が今の自分の状態を理解すれば一皮むけるかもしれないけど

 

「難しいよなあ――意外と意固地だし」

 

 まあ、こういう時こそ穂乃果の出番なのかもしれない。ことりを海未を俺を――皆を繋いでくれたのは幼い時の穂乃果だった。

 となれば――俺にできるのは……少しでも皆をサポートすることかな。

 出来る事なら、全てが終わるときは皆が納得のできる結末であってほしい。

 

 

 絵里にダンスを見てもらうにもまずは見てもらう本人たち次第だ。幸いファーストライブを見た上で考えてみるというお言葉は頂いたわけだし。

 で、早速作戦会議とばかりに穂乃果の家に向かったわけだが。

 

「こ、ここで合ってるのよね? だいたい、なんで私が……」

 

 穂乃果の家の前で不審者を発見した。

 CDケース片手に音ノ木坂学院の制服、綺麗な赤髪の美人――どう見ても最後の幼馴染、西木野真姫ですね。わかります。

 まあ、取り敢えず。普通に声をかけるの芸がないので。

 

「そこのお嬢さん、さっきから少し挙動不審だけど? ちょっと話を聞かせてもらえるかな?」

 

 低い声を作って職務質問する警察のような態度で話しかけてみた。

 

「えっ? 違っ、私は怪しいものじゃ――って、志郎!」

「やっほー、久しぶり真姫ちゃ――もぎゃっ!」

 

 取り敢えず足を踏まれた。

 

「ね、ねえ。今時暴力系キャラなんてはやらないって友達が言ってたよ?」

「志郎だけは特別だから大丈夫よ。だいたい、普通に話しかければいじゃない!」

「い、いや、それだと面白みがないかなと――」

 

 ジロリと睨まれた。蛇睨まれたカエルとはこのことか……。

 

「す、すみませんでした」

 

 くっ……最近女の子に謝ってばかりいる気がする。

 

「ふんっ」

 

 いかん、調子に乗りすぎた。なんとか話題を変えなくては!

 

「ああ、それはそうと作曲してくれたのやっぱり真姫ちゃんだったんだ」

「な、ななんで知ってるのよ!?」

「アレ? 言ってなかったっけ? この度スクールアイドル始めた三人って俺の幼馴染なんだよね」

「初耳よ!?」

「さらにびっくり生徒会長も幼馴染だったり」

「そっちも初耳なんだけど!?」

 

 そんなに驚くことだったのか……。というより

 

「てっきり結構前に言ったと思ってたよ」

「言ってないわよ! ああ、もう意味わかんない!」

 

 などと心温まる会話をしていると店の扉が開いた。店から出てきたのは穂乃果だった。店番でもしてたのかな?

 

「あれ、志郎くん! 西木野さんも! どうしたの?」

「俺は作戦を練りに、真姫は作曲した曲を届けにきたらしいよ」

「ちょっと、私は別に――」

 

 真姫は咄嗟に否定しようとするが、それより穂乃果の動きの方が早かった。

 

「本当!? 私もう少しで店番終わるから部屋に上がってて!!」

 

 ふっ、これで真姫も穂乃果の術中に嵌った! そう簡単には逃げられんぞ!

 っと、そうだ。

 

「ところで、穂むらまんじゅうを十個ほど買っていきたいんだけど?」

「ダメだよ、お義母さんから不必要に大量買いしようとしたら止めてって頼まれてるから」

「こんなところまで親の魔の手が迫ってるとは――意外っ!!」

 

 

「しかし、結構久しぶりだな。最後に来たの中三の春だったかな。ちょうど一年くらいか」

「そんなに頻繁に来てたの?」

「頻繁ってほどでもないけどね――えっと確かこっちの部屋だったはず」

 

 記憶を頼りに穂乃果 の部屋を開けると。

 

 

「みんなのハートうっちぬくぞ~! バァン!!」

 

 玩具のマイク片手にキメキメのポーズをとっている海未がいた。

 

「え……?」

 

 振り向いた海未と目がバッチリ合った。

 

「――ごめん」

 

 俺は戸をそっと閉じた。

 

「ちょっとどうしたのよ?」

 

 真姫が訝しげな表情をしている。幸か不幸か、彼女の位置からは中が見えなかったらしい。

 

「ここはダメだ」

「本当に意味わかんないだけど?」

「まあ、なんというかアレ……かな、若さゆえの過ちってのは認めたくないでしょ? だったら知らないふりしてあげるのが大人というか。いや、俺たちの方が年下だけ……」

 

 最後まで言い切る直前に穂乃果の部屋の戸が開いた。フリーズしていた海未が再起動したのだろう。

 

「みィ~たァ~なァ~!!」

「何も見てません!」

 

 アイドルが絶対にやってはいけないであろう顔芸を披露しながら現れた海未に俺は全面降伏した。

 

 ――最近こんなんばっかだな!?




 話が進んでるんだか進んでないんだか――。とはいえ今回で幼馴染’sは出揃ったので段々本編に侵食していけるかな?

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