ラブライブ! とある高校のドラマー少年   作:桐島楓

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 主人公が冒頭で言っている前略○○さま~ですが、両親に手紙やメールを送ってるわけではありません。某不良漫画が好きだったので…しいて言うなら現実逃避している主人公をイメージしてもらえればOKです。
 外見モチーフとしてはNARUTOのサソリ(黒髪、表情豊か、中身は少し残念)です。


第4話

 前略親父殿。あなたの息子である私『音羽志郎』ですが、ついに人生初のデスレターを頂戴いたしました。

 正直言うと可愛い封筒にプラスして可愛い便箋のコンボだったのでまっさかさまのラブレター!? と一瞬歓喜したもの中身は恐怖の手紙だったのです。できればもっと高校生らしい青春ライフを送りたいものです。具体的に言うと彼女が欲しい! 中学時代の友人に「ついに俺もリア充デビュー!」と彼女と撮ったプリクラ写真の写メを送られたときは悔しさのあまりスマホを握りつぶそうになってしまいました(そこまで握力ないけど)

 P.S.彼女欲しいと考えてる時に、何故か自分が薄暗い部屋でベッドに手錠で繋がれている姿を幻視したのですが、これは質の悪い病気でしょうか? とりあえず、根本的な食生活を見直そうとおもいます。

 

 

「はい、それでは今日のホームルームはこれで終了です。解散……」

 

 担任教師によるホームルーム終了の言葉。普段であれば学校という牢獄から解放される言葉だが、今日の俺にとってそれは死刑宣告に等しかった。いや、宣告ではなく死刑執行の宣告か……。

 

「音羽、返りゲーセン行かねえ? また、あのドラム○ニアのテク見せくれよ」

「悪い、今日は用事があるんだ」

 

 そっかー、じゃあまた今度な。といいクラスの友人たちと別れる。

 次々と生徒たちが教室から出ていき、ついに俺が一人になってしまった。時計の秒針が音を刻む音がまるで13階段を登る音に聞こえる。

 いや、そもそもあんな悪戯としか思えない手紙に屈する必要はないだろう。だが、俺は律儀に教室で待っている。あんな手紙をよこす人間がどんな性格をしているのか興味があったからだ。

 け、決して脅しに屈服したわけじゃないんだからねっ! 勘違いしないでよねっ!

 いかんな、取り乱してる。ここは心を落ち着けるためにエアドラムでもやるか。自作したショルダーホルスターに収めたマイスティックもある。

 

 ――よし、やるか

 

 いや、待てよ。よ~く考えてみろ。もし、エアドラムをやってる最中に呼び出した人物がやってきたらどうなる? 俺はさらなる弱みを握られてしまうことになる。それはいただけない。

 

 ――ねえ、ちょっと……

 

 でも、やりたいなあ。心を落ち着けるためにも。というか、なんでもあんなくだらない手紙に振り回されなけりゃいけないんだよ!? 振り回されるのは幼馴染’sだけで十分だっての!

 

 

 ――ちょっ、スルーされてるの!?

 

 そもそもなんであんな可愛い封筒と便箋で送ってくるんだよ!? ちょっぴり期待しちまったじゃないか!? ああいう手紙は和紙に毛筆で達筆に書くって相場が決まって……いや、それやられたら怖すぎるけど。

 

「ねえ、この子一発くらいなら叩いてもいいかな?」

「落ち着きなさいツバサ」

 

 何やら声が聞こえてきて見上げると、額に青筋を浮かべた少女たちがいた。

 いつ来てたの?

 

「あ、この前の」

 

 入学式の日にドラムを叩いてるのを見られ、俺が今まで逃げていた三人がいた。

 

 

 で、あの後、カフェスペースの個室に移動したのだが。

 

「私たち一応ナンバーワンスクールアイドルなのよ!? それなのに前回といい今までといい今回といいこんな扱い受けたの初めてよ!」

「あ、先輩たちがこの学校のスクールアイドルだったんですか?」

「知らなかったの!?」

「あはは、えっとなんでしたっけ? ライス? いや違う――そうだ、アイスってグループの――」

「アライズね。ア・ラ・イ・ズ!」

 

 チャームポイントであろうおでこに青筋をピキピキと浮かべた綺羅ツバサ先輩に詰め寄られている。どうしよう、なんとか彼女たちの怒りを沈めようとしてるのに墓穴を掘ってばかりいる気がする。この中で一番穏やかそうな優木あんじゅさんですら表情を引きつらせている。

 カフェスペースに来たらUTX名物の一つ、週替わりの一口ケーキが食べたかったのだがそんな空気ではなかったので我慢した。

 

「その顔を見るに本気で悪気はなさそうね。というか、入学式の時にDVDとストラップが配布されてるはずだけど?」

 

 綺羅ツバサと名乗った先輩がジト目でそう言ってくる。ストラップ?

 

「あ、鞄に入れたままだった」

 

 鞄の外側についてるポケットから綺麗なままのストラップを取り出す。あるよねえ、取り敢えず外側のポケットに入れておいて忘れちゃうって。DVDは鞄の隅の方に入っていて気がつかなかった。

 

「――なんかもうこのまま突っ込んでたら日が暮れそうね」

 

 深呼吸をして気を落ち着かせる三人。流石にユニットを組んでるだけあって息ぴったりだなあと思う。

 

「悪いとは思ったけど君のこと少し調べさせてもらったわ」

「みたいですね」

 

 調べなきゃ家の住所までわからないだろうし。

 

「まあ、自宅に手紙がある時点でそれくらいは察してるわね」

「音羽志郎、年齢16歳、身長170cmに体重56kg、帰宅部所属。現在はひとり暮らしをしている。得意スポーツは特にないが強いて言うなら長距離走。特技はドラム、趣味もドラム。将来の夢は特になし。ドラムに関しては色々な大会やコンテストで賞を取ってる。そして、なにより最大の経歴は――12歳にしてドラムの世界コンテストに日本代表として出場、世界ランク第9位の成績を叩き出した。日本人初にしてギネスにも乗ってるそうだね。もっともその1回きりで、それ以降は出場していないようだが」

 

 統堂英玲奈先輩が人の個人情報をペラペラ喋ってくる。というか恥ずかしいのでやめてください!

 

「まあ、この経歴を見てあの日の君の演奏に納得がいったわ。パフォーマンスも見事だったけど、あのドラムの音に圧倒されたもの」

「そうですか――」

 

 優木あんじゅ先輩が微笑みながら言ってくれる。正直美人な先輩にそう言われると照れる。しかもただの美人ではなくスタイルのいい美人とくればなおさらだ! おっさんみたいとか思わないでね。

 

「ええ、あの日の君をみて私たちは思ったわ。自分たちの今の評価で満足するわけには行かないって。仮に私たちと貴方がいっしょにライブやったとしたら――私たちは十中八九負ける」

「いや、アイドルとドラマーじゃ土俵が微妙に違うと思うのですが?」

「かもね、でも私たちは納得いかないの」

 

 彼女たちの目には火が宿っていた。そう。あきらかに俺をライバル視している。

 ――いや、ほんとになんでさ!?

 

「まあ、そういうわけだから。貴方のことをライバルにさせてもらうわよ」

「いや、もらうわよって言われても」

 

 まあいいか。俺も彼女たちから何か得るものがあるかもしれないし。

 

「まあ――僕でいいのなら」

「よし!」

 

 で、ここで話が終わればよかったんだが。

 

「で、もう一つ私たちに協力して欲しいの」

 

 ――え?

 

「そんなに難しいことじゃないわよ。ただ私たちの練習に少し付き合って欲しいの」

「いや――それは面倒くさいし――」

 

 そう言うと、ツバサ先輩はむっとしたのか。 

 

「この前音楽室でドラムを無断で使ったでしょ? 見学は許可されてるけど楽器を使うことまでは許可されてないはずよ」

 

 なんてことを言ってきた。って、そういえばそうだった。

 別にばらされても注意される程度だろうけど、避けられるものなら避けたかった。

 

「どうか内密にお願いします! 何でもしますから!!」

「「「ん? 今なんでもって言ったよね?」」」

 

 あ、選択肢ミスった。直感だがすぐにわかった。だって三人がアイドルらしからぬニヤニヤした表情をしているから。

 

「それじゃあ、あなたの放課後の時間をもらうわ」

「え?」

「もちろん、特別な用事がある場合はそちら優先してくれて構わない」

「あ、どうも――じゃなくて!?」

「世界ランク9位で、プロとも一緒に演奏した経験から私たちに足りないものが何かを教えて欲しいの」

 

 なんで穂乃果たちみたいなことを……!?

 

「い、いやでもライバルから学ぶってのもどうかと――?」

「お互い高め合うのがライバルってものでしょう?」

 

 ど、どうしよう……?

 特別な用事――つまり、穂乃果たちの練習を見るときはいいと言ってるし――いいのかな?

 スクールアイドルなら人気云々はともかくとして、大会とかでぶつかり合うこともないだろうし?

 

「くっ……分かりました」

 

 この時の判断が原因で後にμ’sと名乗る穂乃果たちとA-RISEの激突する要因となるとは――今の俺には知る由もなかった。

 

 

「はぁ、今日も疲れた」

 

 最近妙に濃い一日を過ごすことが多い気がするんだけど、なんでや?

 取り敢えずリビングにて今日も美味しいコンビニ弁当片手にDVDデッキの電源を入れる。

 見るのはA-RISEのライブのDVDだ。別れ際にあんじゅ先輩から見てねと言われたのだ。で、せっかくだから見てみることにしたわけだ。

 まあ、見る前までは

 

 ――見せて貰おうか、ナンバーワンスクールアイドルの実力とやらを……。

 

 みたいな感じだったのだが。

 

「凄いな――」

 

 見始めるとそんなこと考えてる場合でもなくなってしまった。

 ダンスも歌も上手い。が、やはりプロには一歩劣るといったイメージだ。だが、穂乃果たちと同じだった。引き込まれるのだ。まるで引力でも発生しているかのように。それになにより……

 

「ライバルは互いに高め合うもの――か。確かに彼女たちから得られる物があるかも――」

 

 漠然とだがそう思った。

 もっとも、それはA-RISEだけではなく――穂乃果たちもそうなのかもしれない。

 

「そういや、親父が言ってたな。出会いは成長に繋がるとかなんとか」

 

 今までの言動がアレすぎてスルーしてたけど。

 

「うん、いい出会いがあったと言うのかな?」

 

 これから楽しくなりそうだ!




キャラの口調があってるとか不安になりますね。もし違和感等がございましたらご指摘いただけると幸いです。自分も可能な限り改善していきたいので

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