ラブライブ! とある高校のドラマー少年   作:桐島楓

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ラブライブは本当につい最近知ったばかりの『にわか』なのでキャラの性格や口調が合ってるかどうかが不安ですが、原作キャラ登場です!


第1話

『――新入生の皆様が充実した三年間を送れる事を教師一同願っております』

 

 ――前略、お袋さま。私『音羽志郎』は晴れてUTX高校に入学することができました。

 只今キラリと眩しい頭を持った校長先生の眠くなる話を聞いている真っ最中であります。

 

「無事に入学式を迎えられてよかった……」

 

 前の人にも聞こえないくらい小さな声でぼそっとつぶやいてしまった。

 なにせUTX高校に入学するまで激しい戦いに身を投じていたのだ。簡単に説明していくと。

 幼馴染の5人の内4人が『なんで音ノ木坂に来ないの!? 私たちの後輩になるのがそんなに嫌だったの!?』

と胸ぐらを掴まれてグラグラ揺すられたり――。

 同い年の幼馴染が「へえ、そう。来ないの――べ、別にどうでもいいけど!」

とツンツンしたり。

 幼馴染の一人の母親が『あら、うちのライバル校に入学するなんていい度胸ね』

と圧力をかけてきたり――

 珍しく家に帰ってた母親が『いいじゃない、YOU、音乃木坂に入学しちゃいなよ』

と笑いながらパンフレットを渡してきたり……。

 

 念のため言っておくが決して、その学校が嫌いなわけではない。校舎は新しくないものの歴史を感じさせるし、音楽校としての側面もあったという実に俺好みだったと言える。幼馴染たちも嫌いじゃないし、一緒にいて楽しい。入学したらきっと楽しく過ごすこともできただろう。

 ただ、一つ、そう一つだけ大きな問題があったのだ。それは

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 音ノ木坂学院が女子高だったということだ。

 

 そのことを指摘したら全員にそれぞれ別の場所で

 

『女装すればいいじゃん!!』

 

 と言われたときは真剣に交遊関係を見直すべきかと悩んだ。どこの世界に女子高に女装して入学しなよという、女子生徒と理事長と母親がいるというのだ。父は父で過去のことが原因に母親に頭が上がらないし……。まさしく四面楚歌状態だった。

 自分の家の部屋に音ノ木坂学院のセーラー服が掛けてあったり、音ノ木坂学院の教科書一式が揃えてあったり、女性用下着が置いてあったりと、恐怖でしかなかった……。しかし、今俺はそれらの試練を乗り越えUTX高校に入学することができた。

 もっとも、どこかで一歩でも道を間違えたら今の自分はここにいなかったことだろう。

 故に俺はただ独り、学校の講堂で勝利に酔う。

 

 

 入学式が終わりクラスの人たちの顔合わせが終わると本日の学校は終了となった。

 放課後は自由に校舎内を見て回ってもいいということだったので俺は一人でがぶらぶらと回ることにした。残念ながら中学の同級生は一人もこの高校に来なかったのだ。

 流石にぼっちで学校生活を送るのは嫌なので早く気の会う友人を見つけたいものである。

 

「音楽室かな――」

 

 廊下の隅にある広い教室を見て興味を持った。両親が音楽家で俺自身も楽器を嗜んでいる。興味を惹かれるのは当然だろう。

 小声で失礼します、と声を掛け中に入る。そして中に入ると俺は思わずテンションが上がってしまった。

 設備が充実しているとは聞いたが、これほどとは思わなかった。

 入口は二重扉となっていて、完璧な防音設備、高音質のスピーカーもセットされているし、楽器の数も充実している。他にも衣装まで揃っている。

 

「ハラショー! 中々いい設備だ!」

 

 上機嫌になりながら教室の中を散策する。この教室にあるものだけでもかなり質のいいライブができるはずだ・

 するとグランドピアノから少し離れたところに、大小様々なドラムやシンバル等の打楽器が一人で演奏できる位置に設置されていた。設置してるあるものを見るに一般的なドラムセットだ。

 それを見て俺は思った――叩きたい、と。

 キョロキョロと周囲を見回す。

 

――ちょっとくらい、いいよな。

 

 俺は懐からマイスティックを取り出す。そしてスマホも取り出しスピーカー音量を上げる。ソロで叩いてもいいが気分じゃないのでスマホの中の音楽も使用する。

 椅子に座り一つ深呼吸し、そして、スティックを振り下ろした。

 バスドラムを――フロアタムを、シンバル、ハイハットシンバル、スネアドラム、トムトム、から力強い音が響く。リズムを乱さず、ビートを刻む。

 サビに近づくにつれてテンションが上がっていく――最高にハイッてやつだァ!! ジャグリングの要領でスティックを空中に投げ、落ちてくる間に手で叩いて音を奏で、落ちてきたスティックを掴みそのままの勢いで叩きつける。

 テンションが上がってくると無駄に派手なパフォーマンスをしてしまうのは俺の悪い癖だ。分かってはいるんだが辞められない。一度とある大会で審査員の一人がこれを気に入らなかったのか『音楽を舐めてる!!』と点数を下げられてしまったことがあるが、それもいい思い出だ。

 物思いにふけりながらも決して音楽へ演奏へ影響を与えない。伊達に物心着く前からスティックを握ってはいない。

 そして、一曲の演奏が終わった。

 

「ふぅ……」

 

 終わると一息付くと視線を感じたのでそちらを向く。

 

「あ……」

 

 上級生であろう三人の少女がそこにいた。なにやら呆然としている。

 呆然としている理由も気になるが、それ以上に見られたと思うと思わず顔が熱くなってしまう。見せることを前提でやったときは平気なのだが、見られていない前提でやってるときに見られると恥ずかしくなってしまうのだ。おそらく俺はいま顔を真っ赤にしているだろう。

 

「えっと……すみませんでした!!」

 

 急いでスティックをしまい、鞄を持って俺は三人の上級生の間をすり抜けて教室から飛び出た。

 

「って、ちょっと待って!!」

 

 なにか呼ばれたような気がしたがもう階段を下ってしまっている俺は止まらず外に急いだ。取り敢えず顔を――というより頭を冷やさないと!!

 

 

 

 

 その日は普段より少し練習をはじめる時間が遅くなった。

 理由としては単純で新入生がいるためだ。自惚れるわけではないが私達、綺羅ツバサ、統堂英玲奈、優木あんじゅの三人のユニット『A-RISE』は有名だ。練習している時に人集ができてしまうかもしれないという先生の言葉に従い、練習時間を少しだけ遅くしておいた。

 放課後ある程度の時間を置いてから使用許可を取っていた教室に向かうとそこには先客がいた。

 扉を開いた瞬間――私たち三人は圧倒された。

 そこにいたのは今日入学したであろう男子学生だった。

 重厚で体の芯まで響いてくる――それでいて全く不快感の感じない音質は入った瞬間私たちの全神経を彼に集中させた。

 やがて、スティックでジャグリングしたりというパフォーマンスまで入る。それでいて音には一切の乱れがない。

 それは私だけではない、あんじゅも英玲奈も彼の演奏に魅了されている。ナンバーワンスクールアイドルと言われている自分たちが心を奪われているのだ。

 

「凄い――」

 

 心からの賞賛だった。ただ、ただそうとしか言えないのだ。

 そして、彼の演奏は終わった。途中からしか聞いていなかったので少し物足りなさを感じるが、同時に充足感も感じるという不思議な気分だった。

 私たちは誰もこれが出せない。彼の演奏の余韻に浸っているのだ。

 

「あ……」

 

 彼と視線が合う。

 すると彼の顔があっという間に赤くなっていく。ここは上級生らしくハキハキ行かないと!!

 

「えっと……すみませんでした!!」

 

 あっという間にスティックをしまい鞄を持った彼は私たちの脇をすり抜けて教室を出て行ってしまった。

 

「って、ちょっと待って!!」

 

 私の言葉にあんじゅと英玲奈も我に返り振り返る。

 そのときにはもう彼は階段をものすごい速さで下りていた。

 

「……なんなのよ」

 

 まさか速攻で逃げられるとは思わなかった。

 

「凄かったわね」

「ああ。今までプロのドラムを聞いたことはあったが――こんな風になったのは始めてだ」

 

 二人の意見には私も同感だった。

 一応人気ナンバーワンのスクールアイドルである私たちが、ただ圧倒されてしまったという自体に、嬉しさと悔しさが胸に宿る。

 

「負けられないわね――」

 

 私たちはスクールアイドルで彼は違う。だが、それでも今回の一件は私の中に火をつけた。

 

「しかし、名前も聞けなかったな」

「そうね、でも顔は覚えたから大丈夫よ。ね、ツバサ」

「ええ、一年の教室を虱潰しに探すわ!!」

 

 これが私たちA-RISEと音羽志郎のファーストコンタクトだった。

 

 


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