ラブライブ! とある高校のドラマー少年   作:桐島楓

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遅れてしまって申し訳ないです。



第9話

 前略お袋さま。時の流れとは早いもので私がUTX高校に入学してA-RISEやμ’sの練習に付き合っているとアッーというまに中間試験の時期に突入してしまいました。音ノ木坂は期末試験だけとのことで穂乃果たちは練習に精を出しています。μ’sも気がついたらメンバーが7人になっていました。が、その辺は今は特に語りたい気分ではないので割合します。

 それにしても疲れました。試験勉強に集中していたせいか皆に三ヶ月くらいあってないと錯覚してしまうほどであります。

 けどまあ、それなり楽しんで高校生活を送っています。

 

 

「終わったー! 音羽はどうだっ――燃え尽きてる!?」

 

 ランサーくんの言うとおり、今俺は燃え尽きている。何だかんだ言いつつもA-RISEやμ’sの練習に顔を出していたら限界ギリギリまでテスト勉強ができなかったのだ。ドラムの時間を削らず睡眠時間を削りながら必死に勉強したのだ。故に終わった瞬間俺は燃え尽きてしまった。

 そして、今回得た教訓は……。

 

「ご利用は計画的に……(※訳:期末テスト対策は計画的に)」

「お前大丈夫か?」

「大丈夫じゃない――頭の出来はそんなに良くないんだよ。耳はいいけど」

「自虐してんのか自慢してんのか分からねえよ」

 

 ランサーくんが呆れながらそう言ってくる。いいんだよ、とにかく疲れたしとても眠いんだ。今なら愛犬が迎えに来てくれそうな勢いだ。犬飼ったことないけど。

 

「まあ、ドラムでも叩いてれば治るだろ。ゲーセン行こうぜ」

 

 ランサーくんが肩を叩きながらそう言ってくれたが、残念ながらこの疲れはドラム○ニアをやったところで取れるとは思えないなあ。

 

「疲れすぎててテンション上がらないけど……」

 

 

 で、まあゲームセンターに来たまではいいが、やはり早々にテンションなど上がるものではない。テストとテスト対策の勉強のおかげで身も心も疲れきっているのだ。いくらドラム好きだからといって早々上手くいくものではない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思っていた時期が俺にもありました。

 

 

「ヒャッハーーーー!!」

「お前さっきテンション上がらないとか言ってたよね? 思いっきりハイテンションどころかクレイジーになってるじゃねえか!!」

「細かいこと気にしたら即ゲームオーバーだよランサーくん!」

「いや、ランサーって!? 俺は「阿修羅だ!」って名前が――え? いつの間にこんなに人だかりがッ――つか、俺の名前を聞けえ!!」

 

 集まってきた人達に飲み込まれてランサーくんが見えなくなった。さらば、ランサーくん、ゲーム終了後に会おう。

 ちなみに今俺はスティックを6本使っている。もちろん同時に使っているのではなく、4本は上に投げて2本で叩き、2本が落ちてきたところで持ってるものを上に投げて持ち替える。まあ、意味があるのかと聞かれたら即答できるけどね。ないよパフォーマンスなんて派手で失敗しなければよかろうなのだァァァァッ!!

 で、そんなことをやってら人が集まってきて。

 

「スゲェ腕が何本もあるように見える!」

「あれがA☆SHU☆RAか」

「ASHURAだ!」

 

 等と賞賛の声が上がる。

 俺とて人の子。こんなふうにされてしまえばテンションも鰻登りである。

 

「おい連打が来るぞ!」

「ジャグリングしながら出来るものじゃない――無茶だ!」

 

 ギャラリーは無理だと決め付けているようだが知ったことではない!

 

「そんな道理――俺の無理でこじ開ける!!」

 

 さらに加速して――ラストスパートを駆ける。

 そして曲が終わり――余韻に浸ろうとすると――

 

「皆見てみてー。志郎くんが変態みたいな動きしてるにゃー」

「誰が変態だ!!」

 

 こちらを指差すμ’sの新メンバーの一人、星空凛によって余韻は中断された。

 

 

 

 ゲームセンターにはμ’sのメンバーが集まっていた。穂乃果、海未、ことりの初期メンバーはもちろん、新メンバーである西木野真姫、小泉花陽、星空凛、矢澤にこといったメンバーもだ。

 練習もせず何やってるのかと聞いてみると。

 

「リーダーを決める?」

「そうよ。今回この娘はリーダーに向いてないことがわかったからね。だれがリーダーに相応しいか決めてるの」

 

 ちなみに答えてくれたのは矢澤にこという小学3年生みたいな高校3年生である。アイドルに関して熱い情熱と深い知識を持っている。ちなみにUTX高校の前で小学生と勘違いして迷子扱いしたというのがファーストコンタクトだったりする。あの時の彼女は怖かった……。

 

「というかリーダーって部長の矢澤さんじゃないんですか?」

「部長とリーダーは別物なの。それこそシャアザクとルナザクくらい違うわ」

「何を持って比較しているのかさっぱりなのですが――」

 

 まあ要約するとセンターの座をかけて女同士ドロドロした苛烈な戦いを行っている――ということだな。

 

「あの、志郎が酷く間違った解釈をしてそうなのですが」

「う~ん、何時もの事といえば何時ものことだけど」

 

 納得していると海未とことりが不満そうにそう言っていた。

 

「とりあえずダンス勝負じゃ決着がつかなかったから次はカラオケよ」

「むしろ普通先にカラオケ行くべきなのでは?」

「――くっ、慣れてないダンスゲームで一気に引き離すつもりだったのに――!!」

 

 やっぱりドロドロした戦いだった。

 

 

 

 

 で、カラオケにいくと。

 

「アイドルと言ったらやっぱり歌よね。……ふふふ、高得点を取れる曲は既にリサーチ済みよ」

「アイドルも裏ではこんな競争が行われてるんだな」

 

 ということはA-RISEの三人も――いや、よそう。なぜか三人に笑顔で首を絞められてる自分を幻視した。

 そして俺も参加することになったので最近お気に入りの曲を選択する。ドラムの演奏が専門なので歌はあまり歌わないんだよね。

 で、歌い終わった結果。

 

「一応言っておくが俺が下手なんじゃなくて皆が上手いだけだからね!」

 

 俺は89点でビリだった。いやしかし、比較対象が悪いとも言えるはずだ。全国ランキングで10位内にこそ入らなかったが20以内には入ってるし。つーか、全員が90点以上とは意外だったな。真姫は歌上手いの知ってたけど前より上手くなってるしさ。

 結局カラオケでもリーダー争いの決着は付かず、延長戦? のチラシ配りを行った。

 がこちらも結局決着はつかなかった。

 

 

「どうするのよ結局みんな似たような結果じゃない!」

「そうですね。ダンスの点数が悪い花陽は歌の点数が良くて、カラオケの点数が悪かったことりは、チラシ配りの点数が良かったですし……」

 

 結局全員が接戦で決着は付かず『第1回μ’sセンター争い』は終わってしまったのだ。

 

「このままでは決まりませんね」

「やっぱりリーダーは上級生の人の方が」

「私はやる気ないし」

 

 海未が困り果て、花陽ちゃんは妥当な案を出す。そして真姫はもう少し興味を示そうよ。

 

「――そもそも、みんな何でリーダーなんて欲しいの?」

「「はぁ!?」」

 

 俺がふとそう思って声をかけると、皆から「何言ってのコイツ?」みたいな目で見られた。 というかにこと真姫は仲いいね。

 

「まず結果をもう一度確認させて」

 

 海未から紙を受け取る。一応途中から参加していたがあまり詳しく覚えてないもう一度しっかり確認する。

 

「リーダーに必要なものって言うとだいたい3パターンある。一つ目は年齢、2つ目は実力、3つ目は――いやこれはいいか」

 

 指を立てながら一つ、一つ確認していく。

 

「まず年齢に関しては矢澤さん一番高いし、三年生だからリーダー向きですが、結果を見るとバランス型でどれかが飛び抜けてるわけじゃない――となると1番をとった人が「自分より下手な奴がリーダーなんてやってるんだよ」となる。まあ、もちろんこのメンバーでなるとも思えないが」

 

 正直なところそれが原因でμ’sのメンバーに亀裂が入ると思えないけどね。全員それぞれが相手の良いところを知っているわけだし。

 

「で、次に実力で決めたとしよう。どれか一つでいいから飛び抜けて上手かった奴がリーダーをしたとしよう。それが年下だった場合年上の人間は「年下の命令には従いたくない」って感情が出てくる。で、そういった感情をその場で押し殺したとしても、いつか綻びが出る可能性が高い。ちなみにコレは俺の実体験ね」

 

 実体験と聞いて幼馴染’sが少し複雑そうな顔をするが、実際は大人と組んだ時に自分の意見を聞き入れてもらえなかったていうだけだ。

 

「だったら、リーダーなんぞ決めずに全員平等にやればいいと思うよ」

「で、でも! リーダーのいないアイドルグループなんて聞いたことないわよ!」

 

 そう反論されてしまうが、いいじゃんパイオニア的なものになるし。

 

「や、いいんじゃないかな。それで」

 

 穂乃果がそう言う。

 

「みんなで練習してきて、歌ってきたんだし」

「な、ならセンターはどうるのよ!?」

「みんなで歌うってどうかな。志郎くんが言うように、みんなが歌って、みんながセンター!」

 

 手を広げ穂乃果がそう言うとみんな考え込む。

 そして。まずことりが。

 

「わたし、賛成」

 

 海未

 

「そうですね、私も賛成です」

 

 真姫が

 

「たしかにそう言う曲もあるわね」

 

 そして続くように――

 

「凛もソロで歌うんだー」

「わ、私もですか!?」

「当然でしょ。まあ、仕方ないわね――私のパートはかっこよくしなさいよ」

 

 うん、丸く収まってよかった。

 

「それじゃあ、練習しよ!」

「今からですか? もうそんなに時間はありませんよ」

「少しくらいなら大丈夫だよ! さあ、行こう!!」

 

 穂乃果が号令を鳴らし部室から出ていく。

 

「う~ん、きっと俺も行かなきゃいけないんだろうな」

 

 そう一人で呟き俺も皆の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 練習が終わったあとに気がついた。

 

「あ、ランサーくんのこと忘れてた」

 


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