Charlotte~君の為に……~   作:ほにゃー

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称号授与

授業が終わった直後、友利が急に数名の女子によってどこかに連れてかれた。

 

友達って雰囲気ではなかった。

 

むしろ、女子たちは友利の事を恨むような、憎むような瞳をしていた。

 

友利はと言うと、抵抗することもなく連れてかれた。

 

ビデオカメラを机に置いたままにして。

 

高城に聞こうと思ったが、いつの間にか帰っているし……………

 

仕方がない。

 

自分で調べるか。

 

教室を出てみると、既に女子たちと友利はいなかった。

 

「なぁ、アンタ」

 

「あん?何?」

 

近くに居た男子に声を掛け、聞いてみることにする。

 

「さっき、とも………生徒会長と女子が数名教室から出て行ったけど、何処に行ったか知らないか」

 

「ああ、さっきの女子たちな。多分いるなら校舎裏だぜ。あそこは学園で唯一、監視カメラが無い場所だからな」

 

「監視カメラが無いからってどういうことだ?」

 

「決まってるだろ。リンチだよ、リンチ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校舎裏に向かうと、そこでは友利が言われた通りリンチに遭っていた。

 

友利は、抵抗せずずっとイヤホンで音楽を聞き、黙ってリンチを受けている。

 

顔を殴られ、腹に膝蹴り、倒れたら髪を掴んで起き上がらせる。

 

「おら、起きろよ!まだまだこんなもんじゃねぇんだぞ!」

 

そう言って、再び殴る。

 

高城の言ってたことが理解できた。

 

アイツはずっと暴力って方法で、能力を悪用する奴等を脅し、能力を使わないように忠告する、もしくはこの学園への転校を承諾させてきた。

 

故に、敵が多い。

 

中には、この学園に在籍しながらも能力を悪用する生徒もいる。

 

そんな生徒にも友利は能力を使って暴力で解決する。

 

俺は暴力が悪いとは思わない。

 

むしろ、そう言う言っても聞かない奴等には身を持って経験させ、言い聞かせるのが最適だ。

 

だが、暴力による支配は、反感を買う。

 

恐らく、友利は承知の上であんな方法を取ってるんだろう。

 

承知の上だからこそ、抵抗しない。

 

助けた方がいいよな……………

 

 

 

 

響SIDE END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友利SIDE

 

今日も校舎裏に連れてから、リンチを喰らう。

 

これも能力者を脅す為また能力者の保護の為に暴力と言う手段を使った私が、引き起こしたこと。

 

抵抗することはしないし、逆にやり返すこともしない。

 

いつも通り、イヤホンでお気に入りのバンド「ZHIEND」の歌を聞きながら終わるのを待つ。

 

ああ…………痛ぇーな……………

 

「アンタさ……少しは反省の色でも見せたらどうなの?」

 

反省って、何を反省すればいいんでしょ?

 

私は自分のやってることを理解してる。

 

理解した上で、どのような目に合うのかも考えたうえで暴力と能力を使ってる。

 

むしろ反省すべきはこいつらなんじゃ?

 

能力を使えば、研究者に捕まって人体実験や解剖の素材になると言ったのにも関わらず、能力を未だに悪用に使う。

 

ま、どっちにしろこいつらも私も同じか。

 

「………アンタのさ、そう言う態度が最初から気に食わないんだよ、こっちは!!」

 

拳を高く振りかざし、振り下ろす。

 

私はただ目をつむって拳が来るのを待つ。

 

……………おかしいっすね。

 

何時まで経っても痛みも衝撃も来ない。

 

目を開けてみると、そこにはその女の振り下ろそうとした腕を掴んで立っている一之瀬響がいた。

 

「その辺にしておけ」

 

 

 

友利SIDE END

 

 

 

 

 

 

 

響SIDE

 

「なっ!?て、転校生………」

 

「転校生じゃねぇ。一之瀬だ」

 

女子の手を掴んだまま離さずに会話をする。

 

「女が寄って集ってリンチとか褒められたことじゃないぞ」

 

「アンタには関係ないだろうが!」

 

女は俺の手を振り解いて、俺を睨みつけて来る。

 

そんな女を無視して友利に近づき、手を差し出す。

 

「大丈夫か?」

 

「………余計なことしないで貰えますか?」

 

「悪いな。お前が承知の上でこうなってるのは分かっているが、どうも我慢できなかった」

 

無理矢理手を掴み、友利を立ち上がらせる。

 

「帰るぞ」

 

そう言って、友利を引っ張る。

 

「ちょっと待てよ!こっちは話が終わってないんだよ!」

 

「そうか………なら、これで話は終わりだ」

 

「テメー、人をおちょくりやがって…………どうなっても知れねぇぞ。覚えとけよ」

 

「覚えとけね…………なら、俺からも一つ覚えといてもらおうか」

 

下に落ちてる手の平サイズの石を拾い、手の中で回す。

 

そして、能力で握力を強化し、一気に握りつぶす。

 

石は粉々に砕け、欠片になって地面に落ちる。

 

「生徒会に新しく入った転校生は危険だってな」

 

睨みを利かして、ドスの入った言葉で威嚇する。

 

「うっ…………くっ、そいつの味方したこと後悔するからな!」

 

女たちは、捨て台詞を吐いて逃げ出し、その場には俺と友利だけになった。

 

「これで貴方、完全に彼奴らから私と同列な位置に格付けされましたよ」

 

「結構だよ」

 

手に着いた土埃を払い、友利を見る。

 

「帰ろうぜ」

 

そう言って、友利の頭を軽く叩き、横を通り過ぎる。

 

「生意気なんっすよ……………ありがとうございます、響」

 

友利が言った最後の言葉。

 

それが何といったのか風がうるさくて聞き取ることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、いつも通りに起きると、またしても友利が俺の家のソファーで寛いでた。

 

もう驚きもしない。

 

黙って二人分の朝食を用意し、黙って席に着く。

 

「これどうぞ」

 

飯に手を付けようとすると、友利が何かを渡してきた。

 

それは、友利が腰につけてるポーチの色違いのポーチだ。

 

「こいつは?」

 

「カメラ、いつも鞄に入れてますよね」

 

「ああ、写真を撮りたいって思ったときにいつでも撮れるようにって思ってな」

 

「鞄よりもそっちのほうが取り易いんであげます。私のと色違いですが、使い勝手はいいんで、気に入ると思いますよ。まぁ、昨日助けてくれたお礼です」

 

「………サンキューな」

 

ポーチの中に鞄から取り出したカメラと予備バッテリーを入れる。

 

うん、ぴったしだ。

 

ちなみに、昨日の一件で俺に「生徒会の番犬」や「生徒会長の犬」など不名誉極まりない称号がついた。

 


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