Charlotte~君の為に……~   作:ほにゃー

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消える命

次に俺が目覚めたのは地震の様な地響きが聞こえた時だった。

 

辺りを見渡すと下着姿の奈緒が吊るされていた。

 

アイツ等、奈緒までさらったのか………

 

地響きが鳴り終ると次に誰かの声が聞こえた。

 

『うおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

この声は有宇だ。

 

助けに来てくれたのか!

 

………有宇が頑張ってるのに俺も頑張らないでどうする!

 

体の痺れはもうない。

 

腕の力を強化し鎖を引っ張る。

 

くそっ!結構硬いな!

 

「一之瀬……何が起きてる?」

 

熊耳さんも目を覚まし俺に尋ねて来る。

 

「有宇が助けに来たんです。きっと隼翼さんたちも」

 

「……なら、コイツを………解かないとな」

 

熊耳さんも腕と足を縛ってる縄を力尽くで解こうとする。

 

『………うあぁああああああああああああああああ!!!!!』

 

すると今度はさっきとは違う有宇の絶叫が聞こえる。

 

そして、またさっきの地響きが聞こえ出す。

 

「まずい!崩壊の能力だ!」

 

「急げ!」

 

熊耳さんは縄を無理矢理引き千切り奈緒の方を助けに行く。

 

「くそっ!………壊れやがれ!」

 

ありったけの力で引っ張ると右腕の鎖が音を立てて壊れる。

 

後は左腕のみだ!

 

だがその時、崩壊の力が地下にまで影響を与え始め、地下の壁や天井が崩壊し始めた。

 

俺は胸ポケットから針金を取り出し、手枷を外す。

 

「熊耳さん、早く逃げますよ」

 

奈緒を抱える熊耳さんに肩を貸し出口を目指す

 

だがとうとう地下が崩壊し始め、俺達の頭上の天井に亀裂が入り、瓦礫が俺達に振り掛かった。

 

能力を発動する時間は無い。

 

そう思った瞬間、体が無意識に動いた。

 

そして、廃工場は音を立てて地下ごと崩壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

崩れてゆく廃工場を見ながら隼翼たちは唖然とした。

 

「まずいです、崩壊が起きてます!」

 

「タイムリープをしてないのか!」

 

「見たいだけど……どうするの!?」

 

そして、廃工場は大きな音を立てて崩れ、土煙を上げた。

 

「……ぼーっとしてる場合!?助けにいかなくちゃ!」

 

目時と前泊は工場に向かって走り出し、七野は目が見えない隼翼をサポートしながら向かう。

 

廃工場があった場所は、何もなく瓦礫の山となっていた。

 

「………どうなってる?」

 

目が見えず状況が分からない隼翼は尋ねる。

 

「………絶望的です」

 

「でも、探すしかねーだろ!」

 

七野は叫ぶと瓦礫の中へと飛び降り、探し始めた。

 

七野に続いて目時も降りて探し、前泊も隼翼に手を貸しながら降りて探す。

 

「隼翼!」

 

目時が何かを発見し、そこまで前泊と隼翼が近づくと、そこには響達をさらった外人二人がいた。

 

「主犯たちでしょうか」

 

「目時、頼む」

 

外人二人を目時の能力で眠らせ、隼翼たちは再び捜索を開始する。

 

「弟発見したぞ!寸前で念動力で防いだが」

 

七野が有宇を発見し、助ける。

 

有宇を助け起こし、近づいて来る隼翼に話す。

 

「大丈夫、生きてる!ただ………片目を潰されてる」

 

「それでタイムリープができなかったのか。時空間制御も目を潰された痛みで、自傷行為をするだけの力を出せなかったのか…………安全な場所まで頼む」

 

「ああ…………お前一人能力で助かって、三人は死んでるとかやめてくれよな」

 

七野は有宇を背負いそう呟いた。

 

隼翼と前泊は捜索を続け、隼翼は必死に呼び掛けながら探す。

 

「熊耳――――――!奈緒ちゃ―――――――ん!響く――――――――ん!」

 

「見付けました!三人共です!」

 

前泊の声を聞き、隼翼は白杖を放り投げ走り出す、瓦礫につまずきながらも前泊の所に移動する。

 

「こっちです!」

 

隼翼は転び、四つん這いになりながら手探りで探す。

 

「熊耳!何処だ!熊が――!」

 

熊耳な名を呼びながら手を探っていると何か温かい液体の様なものに触れた。

 

僅かに鉄の匂いがする温かい液体。

 

隼翼の頭に嫌なシチュエーションが過った。

 

「しゅ……隼翼………さん」

 

「!?……………ひ、響、くん?」

 

「………やっと来てくれましたね」

 

底には、熊耳と奈緒の二人を庇い重傷を負った響が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………やっと来てくれましたね」

 

コンクリートの補強に使う鋼棒が背中に突き刺さり、地下の天井を走っていたパイプが脇腹を貫通していた。

 

出血が多く、意識が朦朧とする中やっと来てくれた隼翼さんの方を見てそういった。

 

「い、一之瀬………どうして俺を………庇った………」

 

俺の下に居る熊耳さんが目を見開き俺に聞く。

 

「…………俺が死んでも…………問題無いですよ…………熊耳さんの能力があれば…………この先も能力者の保護は出来ますから…………」

 

「何言ってる!」

 

隼翼さんは手探りで俺の肩を掴み、俺に言う。

 

「君が死んだら由美はどうなる!?一人になるんだぞ!死ぬな!アイツを一人にしないでやってくれ!」

 

「………姉さんは…………一人じゃありません…………隼翼さんたちがいますから………」

 

「由美の家族は君一人だけだ!俺たちは君の代わりにはなれない!だから死ぬな!」

 

「………隼翼さん…………姉さんに…………ごめんって……………伝えてください」

 

そう言い、俺は今だに気絶している奈緒を見る。

 

なぁ………奈緒…………俺、お前の役に立てたかな?

 

役に立てたなら………嬉しいな…………

 

そう思い、奈緒を見て俺は気付いた。

 

有宇に会ったあの日、俺に聞いて来たあの質問。

 

今なら、分かる。

 

「………奈緒………好きだ………大好きだ…………」

 

まさか死に際に告白するとは…………

 

告白って言えば、黒羽に告白の返事もしないままタイムリープしちまったな。

 

悪いことしたな。

 

そう思い、俺の瞼は俺の意志とは関係なしにゆっくりと下がる。

 

視界がだんだんとボケていき、耳も音を拾えなくなってきた。

 

もう……………終わりか。

 

「ごめんな…………皆」

 

その言葉を最後に、俺の瞼は閉じられ、俺の意識は消えた。

 


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