「よし」
着慣れない制服に袖を通し、この間購入した姿見で全身を確認する。
シワは無いな。
鞄を手にリビングへと移動する。
朝飯食わないとな。
「あ、どーも。お邪魔してまーす」
何故か友利が自分の家よろしく、俺の部屋のソファーでくつろいでいた。
「…………………友利。俺の目がおかしくなければ、お前が先日お前の希望で購入したソファーで、お前が寛いでるように見えるんだが」
「寛いでるように見えるんじゃなくて、実際寛いでるんです。それにしても、このソファーいい座り心地ですよ」
「てか、何しに来たんだよ?」
「学校までの案内をと思いまして」
「………そうかい。俺は今から朝飯だ。終わるまで待ってろ」
夜寝る前に炊いて置いたご飯を茶碗によそい、昨夜に作った味噌汁を温め直し、目玉焼きを作って簡単な朝飯を作る。
「いただきます」
箸を手に取って、ご飯を口に運ぼうとした時、ソファーからこちらをじっと見て来る友利に気付いた。
「………見られてると食べづらいんだが」
「お気になさらず。さっさと食べてください」
そうは言ってるが、目が語っている。
よこせと。
「……………はぁ~」
数分後、俺の目の前にはもう一人分の朝食と友利がいた。
「いや~、悪いですねぇ。なんか催促したようで」
したようでじゃなくて、催促したんだろうが!
そう言ってやりたい気持を抑え込み、俺は黙って朝食を食べる。
「結構うまいですね。料理は得意なんですか?」
「どれも簡単な料理だ。一応施設では先生と交代で飯を作ってたから、腕には自信がある」
「お、味噌汁良い出汁出てる」
聞いちゃいなかった。
分かってはいたが、コイツ自由すぎるだろ。
もう一度溜息を吐き、朝食を掻き込む。
「慌てて食うと、健康によくないっすよ」
誰の所為だ!誰の!
食べ終わった食器を流しに置き、鞄を手に取る。
「あれ?洗わないんですか?」
「帰ってからでいいだろ」
そう言った瞬間、友利は行き成り俺の胸倉を掴んできた。
「お前何型だ!?」
「ちょ、おま!」
「今洗え!お前布巾で拭くだけでいいからそれやれ!」
学校に行く前に、俺は友利の命令で、皿洗い(皿拭き)を行うことになった。
なんで几帳面なんだよ……………
で、その結果。
「ほら、急がないと遅刻ですよ!」
「お前が皿を洗うとか言い出したからだろ!」
学校に遅刻するのは構わないが、初日に遅刻だけは避けたい。
転校初日に遅刻なんかしたら、不良のレッテルを張られかねん。
「あ~。もう間に合わない!貴方の能力で学校まで一気に行きましょう!」
「はぁ!そんなことで使うのかよ!」
「良いから早く!」
あ~、くそっ!
俺は友利の命令に従い、能力を発動させる準備に入る。
そして、きっかり三秒後、能力の発動を感じた。
脚力だけの強化。
行ける!
「行けるぞ!」
「よし、おぶれ!」
俺の返事を聞く前に友利が俺の背に乗る。
「しっかり掴まってろよ!」
そう言い、跳躍をする。
そして、一瞬で電柱よりも高く飛び上がり、そのまま電柱を足場に更に飛ぶ。
「てか、このまま学校に降りたら目立つんじゃないのか!」
「生徒会室に突っ込んでください!」
「はぁ!」
「生徒会室の窓ガラスならいくら壊れても問題ありません!」
そう言う問題かよ!
そうこうしてるうちに、学校が見え始めた。
こうなりゃ、自棄だ!
「生徒会室は?」
「あそこです!」
友利が指さすところを確認し、俺は最後の木の枝を踏む。
全身に力を籠め、足をバネのようにして動かす。
「おりゃあああああ!」
俺は顔を片手で覆い、そのまま生徒会室の窓ガラスを突き破り生徒会室の中に入る。
「ふぅ~…………成功だ」
「いや~、高城の瞬間移動と違って、ある程度加減が効く辺り便利っすね」
「俺は乗り物かよ…………それより怪我は無いか?」
「はい、問題無いです」
俺の背中から降り、友利が答える。
「私は教室へ行くんで、貴方は職員室へ。では、後ほど」
そう言い残し、友利は生徒会室を出て行った。
「………なんで転校初日からこんな疲れにゃならんのだ」
またしても溜息を吐き、俺は職員室へと向かった。
職員室へ向かい、担任となる教師と一緒に教室へと向かう。
教室は1-Bだ。
「一之瀬響です。よろしくお願いします」
一言そう言い、教室を見渡すと友利が窓側の一番前の席に、高城と言う奴が通路側の一番後ろの席に居た。
高城の奴はなんか手を振ってる。
席は高城の隣になった。
一時間目が終わり、俺の周りには様々な奴がやって来た。
転校生の宿命って奴か。
一人一人の質問に答えているうちに休み時間はどんどん過ぎていき、気が付けば昼休みまでの休み時間ずっと質問されっぱなしだった。
「………はぁ~、疲れた」
「お疲れ様です」
隣から高城が労ってくる。
「そう言えば、自己紹介がまだたったな。一之瀬響だ。あの時は不良を蹴散らしてくれてありがとな」
「礼には及びませんよ。私は生徒会の使命を果たしたに過ぎません。おっと、申し遅れました。高城丈士郎と申します。以後よろしくお願いします」
握手をし、互いの自己紹介を終わらせる。
「ところで、一之瀬さん。お昼はどうするんですか?」
「ああ、生憎何もない」
「では、学食に参りましょう。今ならまだ席は空いてるはずです」
「でも、ここから学食まで遠いだろ。今からじゃ間に合わないんじゃ」
「そこは、私の能力の見せ所です」
そう言うと高城は能力を使い教室を飛び出した。
飛び出すと同時に、何かが割れる音と壊れる音、そして、女生徒と思われる悲鳴が聞こえた。
どうやら、ピタリと止まる以外にも方向転換も出来ないみたいだ……………
学食に向かうと、高城が席に座りながら手を振っていた。
血まみれで。
「お待ちしておりました」
「た、高城………大丈夫か?」
「ああ、これですか。慣れていますから」
高城は笑いながら頭や顔の血を拭く。
周りは周りで特に気にもしてない。
慣れてるのかよ!
「今日は私のおごりです。どうぞ、学食で数量限定の牛タンカレーです」
「いいのか?」
「はい」
「悪いな」
席に着き、カレーを一口食べる。
「お、うまいな。今までに食べたカレーで一番うまい。牛タンもトロトロで最高だな」
「喜んでいただけて嬉しい限りです」
カレーを二人で食べてると、俺はあることが気になり、高城に聞いた。
「なぁ、友利はなんで一年なのに生徒会長なんだ?」
「この学校では生徒会長に学年は関係ありません。能力者としての責任感や行動力が最優先されます」
「ふ~ん、なるほどな………………」
てことは、アイツは一人で生徒会長の仕事の重圧に耐えてるってことか。
その時、高城の携帯が震えた。
高城が電話に出ると、二言三言会話をし電話を切る。
「協力者が現れました」
「協力者?」
「生徒会へ集合ってことです」
そう言って、高城がカレーを掻き込むので、俺も慌てて掻き込む。
カレーを食べた後、高城と生徒会室に向かうと、友利は奥の椅子に座って弁当を食べながら俺達を待っていた。
ちなみに、何故か俺が今朝破壊したガラスは直っていた。
業者の仕事早くないか?
待つこと数分、行き成り生徒会の扉が開き、全身ずぶ濡れの茶髪で長髪の男が入って来た。
その姿に俺は驚き、口が開いたまんまになった。
男は、中央の机の上に置かれた地図の上に指を差し出し、水滴を落とす。
「能力は……空間移動」
そう言い残し、男は去って行った。
「………誰だ?」
「協力者です。ああやって、能力者の場所と能力を教えてくれるんです」
「なんでずぶ濡れなんだ?」
「服を着た状態で全身ずぶ濡れにならなければ能力が使えないんです」
何て言う不完全な能力だ。
「…………大庭高校か。早退していくぞ」
友利が口に箸を加えた状態でそう言う。
「え?午後の授業はどうするんだよ?」
「その辺はご安心を。生徒会に所属している限り、どのように行動していようと内申書へのデメリットはありません」
生徒会は何でもアリかよ。
タイトルをCharlotteっぽくしているつもりなんですか、どうもそれっぽくない感じがしてならない