「おはようございまーす」
誰か教えてくれ。
どんなフラグを立てたら、目覚めて至近距離でハンディカメラを手にした美少女がいるのか。
「ああ………友利だったか?俺が星ノ海学園に行くのは明後日のはずだろ」
「明後日ここから学園に来るつもりですか?今日中に貴方が今後生活する我が校と併設するマンションに移動してもらいますよ」
友利に言われ、半ば連れ出される形で俺はネカフェの会計を済ませ、外に出された。
陽の光が眩しい。
そう言えば、昼間に外に出るのは久しぶりか……………
「ちょっと遠いんで、タクシーで行きますよ」
友利が手を上げタクシーを止めると、後部座席に俺を押し込み、隣に座る。
タクシーの中では特に会話もせず、一時間足らずでマンションに着いた。
「ここが我が校と併設するマンションです。では、付いてきてください」
俺の部屋は結構高い位置にある場所だった。
「ここが貴方の部屋です」
部屋の中は新品同様で何処にも目立った汚れも何一つなかった。
「エアコン、冷蔵庫、テレビ、洗濯機などは完備されてます。で、こちらが部屋の鍵」
部屋の鍵を放り投げるので、俺はそれを片手でキャッチする。
そういえば、俺が能力で最初に吹っ飛ばした奴はどうなったんだ?
「なぁ、友利。俺が能力で最初にぶっ飛ばした奴はどうした?」
「ああ、彼ですか。幸い大したこと無かったですよ。内臓が少々傷付いてましたけど、大きな怪我でもなかったですし、二週間の入院ですみました」
そうか…………気に食わない奴だったが死んでないならいい。
「鍵も渡したし、それじゃあ次に行きますよ」
「は?次?」
「ここにある以外の家具の調達です」
「家具って俺は金なんかないぞ」
「安心してください。出るところから出るんで」
そして、俺は友利に再び連れ出される形で部屋から出る。
連れてこられたのはマンションから程遠くない家具店だ。
「ベッドじゃないんですか?」
「施設では布団だった。こっちの方がいい」
家具店の寝具コーナーで適当な布団を購入した後、友利の指示でソファーを購入した。
コイツ、絶対ソファーの為に俺の部屋に来るぞ…………
その後、本棚と机を購入し、一通り家具の購入を終えた。
「家具類は明日部屋の方に運ばれるので、これで終わりです。では、戻りましょう」
友利の後に続いてマンションに戻ろうとした時、あることを思い出した。
そう言えば、この近くだな。
「友利、用事を思い出した。付いてこなくていいぞ」
友利の返事も待たずに俺はさっさと店を出て、すぐ近くのバスに乗り込む。
バスに乗って三十分。
俺が付いたのはとある児童養護院だ。
錆びた門を開け、中に入る。
庭に目をやると砂場で遊ぶ子供たちが見えた。
すると、子供たちが俺の方に気付いた。
手を振ろうとして手を上げると、子供たちは一斉に逃げ出す。
上げた手を下ろすことは出来ず、俺は暫く呆然とし上げた掌を見つめる。
「響君かい?」
懐かしい声に後ろを振り向く。
そこには、この施設の施設長の工藤先生がいた。
「工藤先生」
そう。
ここは、俺が預けられていた施設。
「やっぱり響君じゃないか!君が出て行ったときは驚いたが、君が高校にそれも、特待生で行けるとも聞いて驚いたよ」
持っていた段ボールを下ろし、俺に近寄って肩を叩いて来る。
「すみません、あの時は何も言わずに施設を飛び出して。先生に迷惑を」
「いいや、気にしてないさ。それより、君が元気で居てくれることが何よりうれしいさ」
工藤先生は優しい。
あんな事を起こしておきながら、それでも俺を温かく迎え入れてくれた。
「積もる話もあるだろう。さ、中に入りなさい。そちらのお嬢さんも」
……………は?お嬢さん?
「どうもー、失礼します」
横から行き成り友利が現れ施設の中へと入る。
「お、おま……能力を………」
俺がそう言うと、友利はにやりと笑って靴を脱ぎ先生が案内した客間へと入って行った。
時期的には乙坂君が高校で実力テストを受ける少し前ぐらいです。
入学式から数日程度ぐらいです。