「では、聞き込み開始―」
「はい!」
「おう」
いつも通りの友利の棒読みに俺と高城が返事をする。
友利はビデオカメラ片手に聞き込みを始め、高城も聞き込みを始める。
「一之瀬、何をすればいいんだ?」
「取り敢えずは生徒への聞き込みだ。能力が念写だから写真関係でまつわる噂を聞くのがいいだろ」
「やってられるか。ただの頭のおかしい連中だろ」
「ま、傍から見ればそうだろうな」
苦笑し、俺も聞き込みを開始する。
そして、現在
俺が聞き込みで得た情報は、女性の下着姿の写真が取引されている情報のみだ。
恐らくは、その写真を売ってる奴が念写の特殊能力者なんだろう。
「情報が少なすぎるな。もうちょっと聞き込みをするか」
再度聞き込みを開始しようとすると、スマホに友利から着信が入った。
「友利、どうした?」
『特殊能力者が見つかりました』
「本当か?」
『はい、二年E組有動という生徒です。これから、有動が所属する弓道部へ向かうので来てください』
それだけ言うと友利は通話を切る。
弓道部へ向かおうとした時、少々やることを思い出し、弓道部へ向かう前にそこへと向かった。
用事を済ませ、弓道部へ行くと、入り口前に、乙坂と高城が待機し、弓道場では友利と有動が会話をしていた。
「一之瀬、お前一体どこに行ってたんだ?」
「それは後だ。高城、今の様子は?」
「友利さんが、有動さんに念写の能力で撮った写真について話してます」
入り口から中の様子を見ると、有動は一瞬だけ悔しそうな表情をしたが、すぐに冷静に言葉を返した。
「写真?念写能力?なんのことだが?」
白を切るつもりか。
だが、俺は懐に手を入れ、あるものを出す。
「残念だが証拠がある」
弓道場内に入り、有動の足元に何枚か写真を投げ告げる。
「アンタの部室のロッカーにあった写真だ。証拠として、俺のデジカメに動画で保存してある。部室のロッカー程度なら、簡単に開けられるぜ」
友利に習っておいて良かったぜ、ピッキング術。
まぁ、能力使って指先の感覚を強化したおかげでもあるが。
用事と言うのはこれのことだ。
「こんな真似して金を稼いで、嬉しいか?写真を売られた子が悲しむとか思わなかったのか?良心が痛まなかったのか?」
「仕方がないだろ!親が病気なんだよ!金が必要なんだ!」
「家庭的な問題ですか?例えそうだとしても、そんな金を貰って親御さんは喜ばないっすよ」
有動は友利を睨みつけ、懐から写真に使われる紙を取り出す。
「お前の下着姿を念写した。ばら撒かれたくなかったら、全てなかったことにしろ」
「え?今ので念写終わりっすか?パないな!でも……そんなの需要無いっすよ?」
「………どこからどうみても上玉だろ」
「まじっすか!?褒められたー!やったー!」
「今喜ぶことじゃないだろ」
友利が喜び、俺がツッコんでる間に、乙坂は有動へ乗り移ると写真を友利目掛けて投げ渡す。
「ナイス」
友利がそれをキャッチすると、乗り移りが終わり、有動が手元に写真が無いことに気付いて、慌てる。
「な!?写真が……」
「ここにありまーす。………積みました。観念してください」
流石に終わったと思ったが、次の瞬間有動は信じられないことをした。
弓を構え、矢を友利へと向けた。
「全てを見なかったことにしろ」
「……矢を人に向けるなんてさいてーです…武道精神………ナッシングだよ!!」
友利がダン!と床を踏んで言う。
それに驚き、有動は矢を持っていた手を離し、矢が友利の顔を目掛け飛ぶ。
だが次の瞬間、友利と有動の間を何かが通り抜け、いつの間にか矢が消え、窓ガラスが割れた。
恐らく、高城が能力で矢を取ったんだろう。
俺は有動に近づき、弓を奪う。
「人に向けて弓を引くな…………弓道を習う時、最初に襲わるべきことだろ。それを、自分の身の安全の為に破る。本当に最低だな」
そう言うと、有動は何も言わず黙って下を俯いた。
「私たちは別に、貴方を警察に突き出そうとは考えていません。ただ、貴方がその能力を使い続けていると、酷い人生になります。実験体として、科学者に解剖とかされたいですか?」
「か、解剖!?」
「だから、警告です。その能力は思春期の時のみに現れる病の様なもの。いずれは消えます。お金はまっとうな方法で稼いでください」
有動は膝をつき、能力を使わないことを誓った。
これで一件落着か…………
「なぁ、いつもこんな感じでやってるのか?」
帰り道のバス停でバスを待っていると乙坂がそう聞いて来た。
「はい。特殊能力者を兄の様な目に合わせない為に」
「………えっと、実際、科学者に捕まったお前の兄さんはどうなってるんだ?」
「……隠すようなことでもないですし、明日行きますか」
「何処に?」
「兄の所です」