第98問
留学生のリンネ君か……手を繋いでいる男の子を見る。小柄で中学生でも通りそうだ
「にぱー」
何が嬉しいのか良く判らないけど。さっきからずっと笑ってる。多分1年生だけど……
(随分と小柄だよね)
僕自身かなり小柄だがリンネ君もかなり小柄だよねと思いながら。手を引いて歩いてあげながら
「どこに行きたいの?」」
「あっち」
リンネ君が指差したのは旧校舎。うーん。今向こうに行くのは危ないな。リンネ君を連れたままじゃ逃げるのも難しい
「そっちは旧校舎って言って古いほうなのよ。こっちの新しい校舎の方が面白いと思うわよ?」
僕がどうしようかと悩んでいるうちに木下さんがそう言う。その言葉を聞いたリンネ君は
「でもでも、ジッシュウ室はさっき見たし。ほかのところがイーヨ」
案内してもらっているのかじゃあ……新校舎で危なくなくてリンネ君が喜んでくれそうな場所……
「じゃあリンネ君屋上に行く?」
「ウン!眺めの良いトコ、ダイスキ!」
笑顔で言うリンネ君の手を引いて屋上に向かいながら
(もう。何時までついてくる気かな?)
久保がリンネ君を羨ましいという目で見ている。その事に酷く疲れた気持ちになりながらリンネ君の案内をして4階に上ると
「ん?おーやーと見つけたぞ。リンネ」
「うわ……」
常村先輩が頭を掻きながら近づいてきてリンネ君を連れている僕を見て
「吉井が見つけてくれたのか?悪いな。こいつさっきからうろちょろして高城と小暮が探してたんだよ」
どうも最初に話していた案内してくれた人って言うのは高城先輩達だったのか
「そうでしたか。じゃあリンネ君。心配させたらいけないから常村先輩についていって?」
「エエエーッ!!!ボクもっとアキヒサと遊びたい!」
やだやだと首を振るリンネ君の前にしゃがんで
「駄目だよ。また後でね、それにまた多分会えるから。そのときに遊んであげるから」
「んーワカッタよ。じゃあコグレとかの話は後ネ?多分1時間くらいカカルカラ」
そういって歩いていくリンネ君を見ながら木下さんと霧島さんに
「ごめんね。つき合わせて、とりあえずAクラスに戻ってもいい?」
「……準備が整うまでなら」
そう笑う霧島さんにありがとうと言ってAクラスに戻ると、Aクラスの女生徒が
「さっき根本が来て1時30分から戦争を始めるって」
色々と妨害工作をしたはずなのに!?なんで!?僕が混乱しているとAクラスの男子が
【そういや、さっき根本がやけににやけながらCクラスに行くのを見たぜ?】
【あ、俺も俺も】
(待ちきれないで自分で行ったのか!?)
不味い僕の作戦が全部裏目に出てる。どうすればいい?……BクラスとAクラスの戦争も開戦が近いもうこれ以上我が侭は聞いてもらえない。それに今のうちにFクラスと合流するか?どうする?色々と考え僕が出した結論は
「木下さん。霧島さん。空いてる机と予備の筆記道具を貸して」
「どうするつもり?」
「ここで補充試験を受ける。まだ何かあるような気がするんだ」
小暮先輩の悪巧みがどうしても引っかかっている。それの対策が必要だと思うから
「良いのかい?吉井君。君が補充試験を受けている間に不利になったFクラスが負けたら……」
「負けない。雄二がいる。あいつの頭の切れは半端じゃない、僕がいなくてもどうにかする。だから今の僕は戦力になるように点数を回復させる」
散々阻止するのを手伝ってもらったが、雄二なら何とかする。だから今の僕は戦場に出たとき戦力になるように点数を回復させることだというと
「ふーん。まぁそう言うことなら別にいいわよ?別に他のクラスでテストを受けてはいけないっているルールは無いし。机も椅子も余ってるから」
「ありがとう。木下さん」
A・Bクラスの戦争開始時刻まで、ロビーの机を借りて補充試験。本来なら直ぐにFクラスに合流すべきなんだけど、どうしても頭に引っかかるものがある。そしてそれが僕に教えてくれる。僕にしかできない、僕の役割があると
「……吉井。じゃあ、手伝ってあげる」
「え?何を?」
僕がそう尋ねると霧島さんはにこりと笑いながら
「……少しだけ。吉井が有利になるように」
少しだけいたずらっ子のような笑みを浮かべた霧島さんは。Aクラスの皆にひとつだけ指示を出して自分の補充試験を始めた。僕はそれを見て
(今僕は僕にできることをする!)
唯一の僕の得意分野であるこの科目しか僕に打てる手はないのだから
人型使い捨て装甲版作戦(点数の低い馬鹿たちを前線に出し。僅かながらに点数のいい馬鹿を回収するための時間稼ぎ)が功を奏し。徐々に点数が整ってきている。時間稼ぎのために死んだ7人には心の中でほんの僅かながらの感謝をし、教室内に残っている面子をみながら
「おっしゃッ!!!。数学の補充が終わった連中は前に出ろ!教室内に敵を通すんじゃないぞ!」
Fクラスの前方は「現代国語」後方は「保健体育」。後方はムッツリー二が入ったから問題ない、あとは数学教師が来たら科目を切り替え。その間に姫路と、遊撃を終えて戻ってきたティアナ・セッテを回復させ。反撃の機会を待つ、それが俺の立てた作戦だった。全員のテストの点数を把握し仕掛けるタイミングを計っていると
「さ。坂本!」
「ん?どうした島田。数学で数式を間違えたとかいわないよな?」
冗談でそう尋ねると島田ではなくセッテが
「状況は最悪の流れになっています。あれをみなさい」
セッテの指差すほうを見る。見慣れた召喚獣と科目と点数の表示だが
「んだと!?日本史!?どういうことだ!?」
数学の教師を把握していた場所には何故か日本史の教師。どういうことか混乱している俺に秀吉が
「どうも、A、Bクラスで戦争が始まったみたい」
「Bクラス。根本の野郎か!?」
やってくれる。こっちが補充を終えたタイミングでその科目を持っていくとは。いい性格してるな本当に!
「なんでも開戦に向けてBクラスの補充試験のために連れて行ってそうだけど……」
「判ってる!こっちの使える科目の制限だろ!?他にはどの科目が持っていかれた!」
前に出ていた秀吉と島田の話を聞きながら状況を整理しながら。作戦を練り直す
(このタイミング、この状況。考えるまでもなく小山と根本は組んでるな)
向こうの狙いはこちらの科目の制限。元々点差がある上に科目まで制限されては勝負に出にくい……
「とにかくこれじゃあ、ウチはあまりに力になれないわ。どうしたらいい?」
科目が日本史と保健体育では島田は戦力にならない。そしてティアナとセッテの唯一の弱点が日本史。点数は200点台後半から300台。戦力としては十分だが持久戦に耐えれる点数じゃない
「セッテと日本史が60点以上残っているメンバーと前線のメンバーを交代。補充試験は途中で切り上げても構わない」
島田に指示を出し作戦を練り直す。向こうも馬鹿じゃない科目の制限を仕掛けてきた以上持久戦は不利だ、点数は心もとないが攻めるしかない
「秀吉。現在の小山の位置は?」
代表の位置が判らない事には作戦の立てようがない。秀吉にそう尋ねると
「新校舎のCクラスから、旧校舎の屋上に移動した見たい」
A・Bクラスの戦争に紛れての奇襲は無理だ。どうもとことん防戦で戦うつもりみたいだな。屋上には机も椅子もないが出入り口が制限されるからこれ以上防戦に適した位置はない
「攻撃指揮官の位置は?小山が屋上なら前線で指揮を出してるのがいるだろ?」
「屋上に続く階段の踊り場に陣取っています。時折降りてくるのを見ますが直ぐに姿を隠しますね」
前線に何度も出ていたセッテがいうのなら間違いないだろう。
「となると、小山は自分の周りに親衛隊を用意してるな。攻めるのには難しい条件だが……」
向こうは点数も有り余ってるし、代表は屋上だから討ち取られない。Cクラスは好きに戦える。かなりやばいところまで追い詰められちまったが
「まだ勝つ方法が無くなったわけじゃない。姫路!島田!」
「はい!」
「新しい作戦ね」
「そうだ。Fクラスが勝つにはこれしかない、島田は職員室に行って点数補充用の教師の確保、姫路は……」
2人に簡単に作戦を説明しながら俺は
「ティアナ。セッテ陽動と強襲して島田達が行動しやすいようにして欲しい。この際Fクラスの馬鹿は犠牲にしても構わん」
高火力による殲滅と威嚇。当面はそれしかない、セッテとティアナはにやりと
「「了解。ストレス発散に利用する(します)」」
黒い笑みの2人に戦慄しながら立ち上がり。Fクラスの前で俺達を押し込めているCクラス生を見て
「見てろ。Cクラス、一発かましてやるからな」
このまま終わる俺だと思うなよ。小山……俺は時計を見ながら反撃のタイミングを計り始めた……この勝負、俺が打とうとしている一手で決まる。そんな確信が俺の中にはあった
約一時間ほどの補充試験を終えて。BクラスとAクラスの会戦時刻となっていた
「話を聞く限り、CクラスとFクラスの間で使われる科目は日本史ばかりになったみたいよ」
「これで少しは吉井君も動きやすくなるよね」
「……日本史は吉井の得意科目だから」
霧島さん達の後ろを見るそこには
「……無念」
補充試験中で僕の意識がテストに向いていることをいいことに変態行為に及ぼうとしたKUBOがいた。(詳細は読者の方の創造にお任せします)
「それで吉井君はこれからどうするの?」
そう尋ねてくる木下さん(KUBOを1番攻撃していた。ストレスが溜まっていたらしい。なのその原因は優月だといっていた。姉妹間でどんな会話が繰り広げられていたかは気になるが、詳しく聞くと僕にも飛び火しそうなので聞かない)
「とりあえず校門でリンネ君の話を聞いてからFクラスと合流するよ」
小暮先輩の悪巧みを知っているリンネ君の話を雄二に伝えれば雄二はきっと上手く対抗策を考えてくれるはずだ
「……頑張って。あと約束忘れないで」
「うん。僕は約束は護るよ。今度雄二とムッツリー二が逃げてきたら場所を教えるよ」
2人もFクラスの勝利のためだと聞けば許してくれるはずだ
「それじゃあね!助けてくれてありがとう!そっちもBクラスなんかに負けないでね!」
もう1度僕は霧島さん達にお礼を言ってAクラスを後にして、校門に向かって移動していると職員室のほうから聞きなれた声が聞こえてくる
【そこまでだ。島田、大人しくしてもらおうか】
【折角巻いたと思ったのに、職員室を見張っていたのかしら?】
【そりゃそうだ。この状況だからな】
そうだこの声は美波とCクラスの生徒の声だ。こんな時間に1人でいるということは何か特殊な役割でも与えられたのかな?
そんなことを考えながらとりあえず近づいてみる。無論戦闘にはすぐ参加できるように小声で召喚獣を呼び出してからだ
『Cクラス 新山武&Cクラス 太田錬』
『科学 89点&93点』
VS
「Fクラス 島田美波』
『科学 94点』
美波とCクラスの生徒の点数が見える。セッテさん達と良く話をしているから点数は上がっているが。2対1では不利だろう
「意外と点数があるみたいだが、2対1だし、楽勝だよな」
「卑怯だなんていうなよ。これも勝負だからな」
待ち伏せした上に2対1、十分卑怯と言われるだけの条件だが美波は
「卑怯なんて言うわけないじゃない。楽勝だと思っているのなら補習室で後悔しなさいCクラス」
2対1なのに堂々と啖呵を切り返す美波。その姿を見て僕は思わず
(なんて格好良いんだ美波)
魔王に襲われすぎて思考が変わり始めていた明久には美波がHEROのように見えていたりする
「なんだその自信。まさか他に誰かFクラスのやつがいるのか?」
「いるわけねぇだろ?Fクラスはあんな状況だ。そんな余裕あるもんか」
嘲笑うかのように言うCクラス生の声にはっとなり、廊下の影から状況を窺い攻撃を仕掛けるタイミングを計る
「そりゃそうか。こんな時間にこんな場所を通りかかるやつがいたら、そいつは戦局の読めてないよっぽどの馬鹿だ……」
美波から視線を逸らし笑い合うCクラス生、いまだ
「失礼な。ちゃんと考えて動いてるよ!」
「「へっ?」」
「アキ!?」
驚いたCクラス生と美波の声を聞きながら召喚獣を呼び出し、点数の表示も待たず召喚獣を突進させる
「え?なんでこんなところに吉井が!?うわあっ!」
相手が身構えるまえに叩き伏せもう片方を見るとb
「ありがと、アキ。助かったわ」
美波が一撃で撃破していた。美波も召喚獣の扱いには大分慣れている。動揺した相手を倒すなんてわけない
「風邪って聞いたけど大丈夫?熱は?」
「大丈夫。たいした風邪じゃなかったからね」
「そう?いちおう確認させてね」
「ふぇ!?」
流れるように僕の額に手をおいて美波は
「うん。大丈夫そうね。心配したわよ」
にっこりと笑いかけてくれた。魔王とかって思うけどやっぱり美波は可愛い
(いかん、いかん。今はこんなことしてる場合じゃない)
「それはそうとさっきは随分自信満々だったけど何か策はあったの?」
話を切り替えようと思いそう尋ねると美波は
「あるわけないじゃない。そんなの」
「へっ?」
作戦なかったの!?じゃああの状況をどうやって切り抜けるつもりだったんだろう
「ハッタリかましながら職員室に入って。勝負中に先生たちに説明するつもりだったわ」
「それって美波はその後戦死確定なんじゃ?」
逃げ道なしだし、どう考えても戦死確定コースと言うと
「そのときはその時よ」
言い切った。戦死すると判ってなお突撃なんて僕には出来そうに無い
「相手が警戒してるところに美波一人で向かわせるなんて、かなり状況は苦しいの?」
美波がここに居るということは恐らく逆転の一手の為。かなり重要な役割のはずなのに1人と言う事は自由にさせれる面子がいないということだと思いながら尋ねると
「それもあるけど、男子がいると先生が信用してくれないじゃない」
「それについては返す言葉もないや。ごめんね?」
多分僕とか雄二とかムッツリー二のせいであると言うことは言うまでもないだろう
「そんなに気にしないでいいわよ、じゃウチは先生に話をしてくるけどアキはどうするの?」
「僕はまだちょっとやることがあるから、それが終わったらFクラスに戻るつもりだよ」
小暮先輩の悪巧みを知っておけばCクラスの出鼻をくじけるかもしれないし
「そう、ウチはもう少し手の空いてる先生を探してみるわ。先生が足りないと総攻撃に支障が出るかもしれないから」
そう笑う美波、なんか今日は何時にも増して気合が入っているように見える
「今日は随分と美波気合が入ってるね?」
表情を見ても態度を見ても気合が入っているのが良く判る。だからそう尋ねると
「それはそうよ。今日の瑞希を見ていたら、誰だってやる気になるわ」
「瑞希を?」
どうして瑞希を見ていてやる気になるのか判らず尋ね返すと美波は
「うん。だって、今日の午前中だけで、瑞希7回も補充試験を受けてるのよ?」
「へ?7回!?」
今13時45分。だから9時から試召喚戦争が始まったとなると5時間しか経ってない。試験1回につき1時間はかかるから全く計算が合わない。休憩がないところか、1回のテストかなりの短時間で切り上げているという事になる
「ウチらの何倍ものスピードで頭を回転させて、問題を解いて、その点数を使ったらまたテストを受けて。本当に今日の瑞希には頭が下がるわ」
まぁセッテとティアナもCクラス生をどんどん倒してるんだけどねって笑う美波の言葉を聞きながら
(僕の分も頑張るって言ってたけど無茶だよ、瑞希)
風邪を引いた僕の分も頑張るって言ってたけどもう十分すぎるほど活躍してくれてる。瑞希の事を考えていると美波が僕の顔を探るように見ていて
「ん?どうかした?」
「……アキって。頑張る人が好き……だったりする?」
「うん。大好きだよ」
「……そ、そうなんだ」
頑張っている人を嫌う理由なんてない。だから
「だから今の美波も好きだよ」
「ふえっ!?」
さっきの覚悟を決めた勝負もそうだけど、今から更に頑張ろうとしている美波はとても輝いているし格好良いと思う
「も、もう!何言ってるのよ!アキ!とととととにかく、ウチは先を急ぐから!!」
逃げるように走っていく美波の背中を見て僕は後ろを見て
「Cクラスせいはいないけどどうしたんだろう?」
明久。魔王にかかわり色々とステータスに変化が出てきていたが鈍感なところに一切の変化はなかった。さっきのも本人にしてはただの褒め言葉だったのだから美波が逃げてしまった理由がわからないのは無理もない
「とりあえず、リンネ君の話を聞きに行こう。ここにじっとしてるのも危ないから」
Cクラス生の増援が来るかもしれないし、小暮先輩に会えばまた投薬の危険性がある。早くリンネ君の話を聞いてFクラスに合流しよう。僕はそう判断して校門に向かった
「アキヒサ。おまたせ!」
校門で待っているとリンネ君が校舎から出てきてそのまま飛びついてくる
「っとと、お疲れ様。リンネ君」
飛びついてきたリンネ君を受け止めながらお疲れ様と言うと
「にひー♪もう名前をオボエテくれたんだね。ウレシイヨ」
にこにこと笑うリンネ君を地面に降ろそうとすると
「もーちょっとダッコシテテ?」
「え?ああ、うん。いいよ」
リンネ君は小柄だし別に対した苦じゃないしと思いリンネ君を抱っこしていると
「ねえ?アキヒサはなんでボクにヤサシクしてくれるの?なにか理由があるの?」
えいって言いながら僕の腕から降りて少し距離を取って尋ねてくるリンネ君……理由かあ。もしあるとすればそれは多分
「知り合いの女の子に似てるからかな」
美波をどうしても思い出す、だから気に掛けてしまうのかもしれない
「ん。そうなんだ……アキヒサは僕がオンナノコに見える?」
少し期待するような視線を僕に向けてくるリンネ君に
「んー見えなくはないかな?」
小柄だし雰囲気も男子とは少し違うような気がしなくもない
「にひーそれはひみつだよ♪教えてあげない♪」
にこにこと笑うリンネ君は秘密だよと自身の口に人差し指を当てて笑う。とても子供っぽい素振りなんだけどそれが不思議なくらい似合ってた
「ナマエも覚えてくれたし、アキヒサは優しいからコグレの考えていた事をオシエテアゲルネ♪」
そう笑ったリンネ君は僕と校舎を見て
「コグレの作戦はFクラスの生徒にBクラスの生徒にショウブを挑ませてシッカクニさせるコト。そしてシッカクにさせるのはFクラスのシュセンリョク」
何か強烈に嫌な予感がする。あの真っ黒い笑みは思い出すだけで身震いしてしまうほどの闇を感じさせた
「ネラウノハ、確か……ヒメジだったかな?ミヤビのために邪魔だからって」
僕は瑞希の名前を聞いた瞬間リンネ君から背を向けて走り出していた……
「おお。行動するのがハヤイネ。アキヒサ♪間に合うかな?アキヒサは?」
1人残されたリンネはアキヒサの背中を見つめながらそう呟き。ゆっくりと校舎の中に戻って行ったのだった
「雄二。もしかすると更に勝負の科目が変わるかもしれない」
「ん?どういうことだ?」
姫路を送り出し、最後の勝負のための準備を進めていると秀吉が俺にそう報告してきた
「少し前なんだけど、Bクラスの生徒がCクラスの陣営の奥に向かっていくのを見たんだ。あれは多分科目変更のメッセンジャーだと思うんだけど」
「科目を変更?いまさら?」
科目の変更をされればこっちは苦しくなる。だけどセッテとティアナが遊撃でCクラス生を続々と教室に送り返している。
流石にトドメとまではいけないが十分戦力は削っているはず。それにそもそも科目を変更するのにFクラスの前を通る必要はないはず。じゃあBクラスの生徒の目的は何だ?
「新校舎の4階を通る事のできない理由があったってコトか?」
「新校舎を通れば姫路達が何か見ていたかもね」
秀吉のその呟きに何か引っかかるものがある。なんだ?この違和感は?
「そんなルートを通れば俺達の戦争に巻き込まれる可能性があるというのに」
Aクラス。Bクラスは位置関係上。4階の渡り廊下にAクラスの戦力が配置されているとは考えにくい、だというのに何故Bクラス生がわざわざ3階を通ったんだ?
「Cクラスの陣営側から姿を見せれば、Bクラスの生徒でもCクラス生と勘違いされて攻撃される可能性があるのにね」
秀吉の何気ない言葉に俺の中で違和感の正体が形になる。
わざわざFクラスの前を通って新校舎に向かったBクラス生
何時も以上に気合の入っている姫路
そして召喚戦争のルール
その全てが1つの線で繋がった
「やられた!!あいつら姫路を失格にさせる気だ!」
「失格!?どういうこと!?」
「召喚戦争のルールだ!他のクラスの生徒に勝負を挑めばルール違反だ!」
伝令を送るのは無理だ。向こうは篭城作戦を取っている、戦力はまだ十分に残っているはずだ。途中で伝令が打ち取られるのは目に見えている
「セッテとティアナは!?」
「Cクラス生の増援を断つ位置に移動してる!姫路の位置とは真逆の方向だよ」
「くそっ!!!それもあいつらの計算通りだ!」
あの2人は確かに突出戦力だが。朝からの補充試験の繰り返しで腕輪を使う点数は残っていない。仮に使えたとしても姫路がBクラスの生徒に勝負を挑むまでにCクラスの本陣を突っ切るのは不可能だ
(くそっどうする!?)
Aクラス戦の為にCクラスを落としておくことは最低限の条件だった。なのに今俺に打てる手と言えば
(姫路を回収して篭城作戦に戻って和平交渉する……駄目だ!これじゃあAクラスに勝てる要因がなくなる)
だが迷っていれば敗北に近づく。そうなればAクラス戦ところの話ではない
(クソッ作戦を変えるしかないッ!)
勝つのではなく負けない作戦に切り替えると俺が言おうとした瞬間。須川が
「ん?あれって吉井か?なにやってんだあんなところで?」
須川の言葉を聞いて窓の外を見る。そこには真剣な顔をしてグランドを駆けている明久の姿があった。その進む先は新校舎で姫路が向かっている場所だった。あの馬鹿……もしかすると……
「秀吉。作戦の変更は無しだ。このまま行く」
「このまま?姫路はどうするの?」
「ほっておく、いや、明久に任せる」
凄まじい勢いで新校舎に入っていく明久の背中を見た秀吉は
「分の悪い賭けだよ?」
「承知の上だ。だが、俺達が勝つにはこれしかない。明久を信じるほかに方法がない」
明久が姫路を止める。明久がCクラスの本陣を突っ切れる可能性は低い。だけど0じゃない、賭けて見る可能性は十分にある。あいつがどこに行こうとしているのか、何をしようとしているのかが俺には判る。姫路を救いに行ったのだと
「全員聞け!これから一部の防衛部隊を除き、補充試験に入る!それが終わり次第総攻撃だ!Fクラスの底力をCクラスに見せ付けてやろうじゃねえか!!!」
「「「おおおーッ!!!」」」
補充試験の開始は14時丁度。そこからは一気に勝負をかける。最大の懸念事項は姫路が屋上の手前の階段を姫路が落とせるかどうかだ。Cクラスの援軍はセッテとティアナが落とす手はずになっているので、姫路しか頼れるものがない。つまり姫路が奴らの罠にかかれば全てが終わる。これについては俺に打てる手はない。だが……作戦の変更はしない、全てはあいつが姫路を護れるかどうかだ
「上等だ。てめえのことを信じてやろうじゃねえか、明久」
野球大会で散々俺に発破をかけたんだ。今度はてめえの番だぜ、明久!!!きっちり姫路を護れよ!!!
第99問に続く
今回は少し長めでしたね。リンネ君はまあ判ると思うので触れない方向で行きますね。次回でCクラス戦は終わりの予定です
そして何度も出ている「雅」の出番が段々近づいてきました。どんな動きをするのかを楽しみにしてもらえると嬉しいです
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします