第95問
明久君大丈夫かな?スーパーで大暴れしてしまって買い物が出来なかったため、明久君は今夕飯の買出しに言っているんですけどさっきから雨が酷い。確か明久君は傘を持ってなかったから濡れて帰ってくるだろうと思いタオルを準備していると
「ただいまー」
「おかえりなさい明久君。雨は大丈夫……あら?」
明久君の背中の上から
「あ!綺麗なおねえちゃんです!」
葉月ちゃんがニコニコと手を振っている。明久君は葉月ちゃんを降ろしてあげながら
「近くの公園で会ったんだけど。この雨だからさ、うちに一緒に来てもらったんだ。ね?葉月ちゃん?」
「はいです!!!」
にこにこと笑う葉月ちゃんを見ながら明久君と葉月ちゃんに
「そうでしたか。とりあえずそのままだと風邪を引いちゃいますから、身体を拭いてください」
明久君にタオルを手渡し葉月ちゃんの分のタオルを取りに行っていると
「じゃあ、葉月ちゃんそのままだと風邪引いちゃうから。先にお風呂に入ると良いよ」
「判りました!お風呂ですね!」
「STOP。ここで服を脱いだら駄目だよ」
明久君がいきなり服を脱ごうとした葉月ちゃんを止める
「葉月ちゃん。床は濡らしても良いから、服は脱衣所で脱ごうね?」
「ここだと駄目ですか?」
「うん。葉月ちゃんは女の子だからね?僕の前で着替えるのは良くないよ」
さすが明久君です。ちゃんとしていると感心していると
「でも別々に着替えてもお風呂で一緒ですよ?」
「一緒にはいる気だったの!?」
明久君が本気で驚いている。むしろ私も驚いていると
「葉月、お姉ちゃんと良く一緒にお風呂に入るです!」
「あのね?お姉ちゃんだから良いんであって僕は駄目。判る?」
「それに、お父さんやお母さんとも一緒に入るです!」
「いやね?家族はいいの。判るかな?」
明久君が必死になって諭そうとしているけど中々葉月ちゃんは折れない
「馬鹿なおにいちゃんは葉月と一緒だと変な気分になるのですか?」
「そんなことは無いけど。そんな事をすると僕は処刑されちゃうんだ。だから一緒に入るなら瑞希に頼んでみたらどうかな?」
このままだと不味いと判断したのか、明久君が私の名前を出す。
「んー綺麗なおねえちゃんとですか?」
「うん。そっちの方が良いと思うよ。ね?」
「わかったです。綺麗なお姉ちゃんに頼んでみるです!」
ふーと汗を拭っている明久君を見ながら玄関に向かうと
「綺麗なお姉ちゃん!一緒にお風呂には行っても良いですか!」
「はい。良いですよ。行きましょうか?」
元気良く話しかけて来る葉月ちゃんを連れてお風呂に向かうと
「わあー綺麗なお姉ちゃん。やっぱり凄いです。お姉ちゃんとは違います」
葉月ちゃんくらいの年頃になると胸とかきにするようになりますけど。いきなり胸を触れると流石に驚きます
「ほら葉月ちゃん。早くお風呂に入らないと風邪を引きますよ?」
お風呂に入れようとするが葉月ちゃんは胸をもむのを止めてくれない、
「ふわあ……凄いです。ふかふかです……」
「もう仕方ないですね。満足したら暖まって下さいね?」
「はーい」
葉月ちゃんとそんな会話をしていると外から
「瑞希。ちょっと外を走ってくるね」
「え?あの雨の中をですか?」
突然とんでもないことを言い出す明久君に驚いていると
「じゃあリビングに惣菜かっておいといたから!適当に食べてね!僕のことは待ってなくて良いから!」
「あ、明久君!?何を急に!?」
「じゃあ行ってきます!!!」
明久君は私の話を一切聞かないで飛び出していってしまった。本当にどうしたのだろうか?私にはなんで急に明久君が外に飛び出していったのかがまるでわからなかった。それから数10分後明久君は戻ってきて
「ふう……なんか悟りを開いた気分だよ」
またもやわけの判らない事を呟いてお風呂場にと消えていきました。それから明久君は夕食を食べて葉月ちゃんとTVを見ているのかリビングからはTVの声が聞こえてくる。それを聞きながら食器を片付けて戻ると
「ん……すぅ」
明久君も葉月ちゃんもソファーに背中を預けて眠っていた
(こんな無防備な姿を見せてくれるなんて信用してくれているということでしょうか?)
明久君はこう見えて警戒度が高い。そんな明久君がこんな無防備な姿を見せてくれているということに感動しながら、その顔を覗きこんでいると
(少し位いたずらとかしても大丈夫なんじゃ?)
頬にキス位なら大丈夫なんじゃと思い顔を近づけると
「ん?ンぅ?」
「へ……あ、わわ!!」
明久君が急に目を覚ますので慌てて飛びのくと
「あれ?瑞希ちゃん?何してるの?」
寝ぼけているのか昔の呼び名をしてくる明久君に
「リビングにきたら2人とも気持ち良さそうに寝ているのでタオルをかけてあげようと思って」
「そうなんだ……ありがとう」
ほにゃらと私の大好きな笑みを浮かべた明久君は時計を見て
「そろそろ葉月ちゃんを家に連れて行かないと。瑞希ちゃん、葉月ちゃんを着替えさせてもらっても良い?」
「あ、はい!判りました」
自分の部屋に戻って行く明久君を見ながら私は
(あのまま明久君が起きなかったら……)
もしかすると暴走してしまったかもしれない。私は知らずに紅くなった頬を押さえながら葉月ちゃんを着替えさせて厳寒に連れて行った
「じゃあ。瑞希行って来るね」
もう目が覚めたのかちゃん付けじゃなくなっている明久君に少し残念だなと言うのを感じながら
「はい。気をつけて行ってきて下さいね」
雨は大分弱くなったとはいえまだ降っているのでそう言うと
「うん。ありがと、気をつけて行って来るよ」
明久君はそう笑って葉月ちゃんの手を引いて出かけていった
アキの家に葉月が居ると聞いて慌てて用事を済ませ、家の近くで傘を差して待っていると。葉月を背負ったアキが歩いてくるのが見えて
「アキ!葉月!」
ウチの呼び声に気付いたアキがウチのほうに歩いてくる
「美波。ごめんね、遅くなっちゃった」
葉月を背負ったまま謝ってくるアキに
「ううん。こっちこそ迎えにいけなくてごめんね?」
本当は迎えに来るとメールしたのにアキは「女の子のひとり歩きは危ない」と言って心配してくれた。そう言う気遣いが凄くウチは嬉しかった
「替わるわ」
寝ている葉月を受け取ろうと手を伸ばすとアキは
「家まで連れて行ってあげるけど?」
「ここまでで良いわよ。ウチの家もう近くだから」
それにそこまで迷惑をかけるのもなんなのでそう言うとアキは
「ん。了解」
アキから渡された葉月を背負いなおすと。少し背中でむずがったが直ぐに落ち着きまた寝なおした
「ありがとね。アキ」
「ううん。気にしないで」
にっこりと笑うアキにふとウチは
「あのさ……今家に瑞希が居るんだよね?大丈夫?」
「?何が?」
不思議そうなアキにウチははっとなり
「ううん!気にしないで!また明日!」
いけない。今ウチは少しアキを疑ってしまったそんなのは全然ウチらしくない。そんな事を考えてしまった自分が嫌で慌ててアキから離れようとすると
「僕さ。今の感じが凄く好きなんだ。美波がいて瑞希が居て、優月がいて。雄二や龍也が居る。僕はまだ誰が好きとか全然わかんない。不安にさせちゃうかもしれないけど……もう少しだけ待ってて、いつか答えが出せると思うから!」
その言葉に振り返ると慌てた様子で走っていくアキの背中
「はーなんかウチ。自分で自分がいや……」
軽い自己嫌悪とウチや皆と一緒にいるのが好きという言葉……
「不安になんて思わないで待ってれば良いのよね」
ウチはそう呟きゆっくりと家のほうへと歩き出したのだった……
「小暮。貴方の作戦失敗ではないのですか?」
2-Fと2-Cの召喚戦争の状況を調べながら尋ねると
「ええ。若干計算違いがありましたね」
普通の男子生徒なら女生徒からモテるとかの話を聞けば妬むと判断し。2年の小山さんに嘘のラブレターやそう言うのを使い吉井君を嵌めるように指示を出した。吉井君をターゲットにしたのは雅の恋愛が上手く行くようにと考えたのだが結果は
「いいやああああああ!!!来ないでッ!!!!」
「アキー説明しなさい!じゃないと縛って突き落とすわよ!!!」
「明久君大人しく止まって下さい!!!」
「処刑……するよ?」
「誰か助けてええええええッ!!!!!!」
魔王3人が活性化しただけで大して何も替わらなかった……そのせいで雅の顔からはいつものポーカーフェイスが消え心配そうな表情が先ほどから見え隠れしている
「すいません。雅作戦失敗のようです」
「早く!ガセネタだと流しなさい!アキ君が」
雅が止めろいっている間にグラウンドから
「ふぎゃあああああああああッ!!!!」
断末魔にも似た悲鳴が聞こえ外を見ると
「あ……」
吉井君がポニーテールの女生徒にアイアンクローで吊り上げられていた……手はだらーんと垂れ下がり殺人現場みたいになっている
「ああああああ!?アキ君がああ!?」
「落ち着きなさい。雅まだ生きてます。何か喋っているのが見えるでしょう?」
アイアンクローで吊り上げられつつもぼそぼそと口が動いている。一体何を喋っているのだろうか?暫くするとアイアンクローが外され頭を押さえて蹲る吉井君はポニーテールの女生徒たしか島田美波さんに引きずられるように校舎に戻ってきた。それから数秒後
「小暮先輩!?駄目ですFクラスの勢いを止めれません!!!」
半泣きの小山さんが転がり込んできた。事情を聞くとこんな状況になったらしい
【僕は告白なんかされてないし!玉野さんと話してないよ!?】
↓
【じゃあなんであんな噂が?土屋判る?】
↓
【どうもCクラスの策略だったらしい】
↓
【鬼神軍団出撃】
しかも話によるとFクラスの最強戦力である八神龍也達はまったく出撃せず。3人の魔王が殆どのCクラス生を補習室送りにしているとのこと
「……小山さん。今より防戦作戦に切り替えなさい。そしてタイムアップの4時まで逃げるのです」
「は、はい!!!」
このまま戦闘を続けさせればCクラスは今日中に陥落するだろう。防戦が唯一打てる手を行っても良い。小山さんは私の言葉に頷き廊下で待っていた親衛部隊を連れて屋上に走っていくのを見ながら
「雅。どうも私の思うとおりには事が進まなかったようですね」
「まあ仕方ないでしょう。八神龍也を筆頭にFクラスの戦力はAクラス並ですから」
だから出撃していないとっているのに……私は呆れながら雅に
「冷静に言ってるつもりでしょうが扇子開けてませんよ」
ガタンッ!!!
椅子の上でバランスを崩す雅、その手から零れ落ちる扇子を拾い
「まぁ動揺するのも仕方ないですが。うろたえるのは醜いですよ」
「……煩いです」
雅はポーカーフェイスが得意なので傍目には気付かないが。長い付き合いの私にはわかる。
「雅。4時まであと30分恐らく今日中には決着はつかないでしょう」
最初の吉井君の逃亡劇のおかげか本格的に戦闘が始まったのは2時過ぎ。私の策も半分ほどは効果を発揮していたようだ
「それもそうですね……それで小暮別の策は何か用意しているのですか?貴女のシナリオはもう変更し始めているのでしょう?」
気を取り直した様子でそう尋ねてくる雅に私は頷きながら
「勿論考えていますよ。策は何重にも施すものですからね♪」
私のこの性格。自身の美貌を理解しそれを使って異性をからかう事を楽しむ私の性格を理解してもなお、友人として私の傍にいてくれる雅は私にとってかけがえのない友人だ。そんな彼女が長年恋焦がれた者が居る。ならばこそ私はその恋を成就させてあげたいとおもう
(そう何をしてもね……)
今私の考えていることを小山さんに実行させれば私の思うとおりにことが進むだろう。だがそれは極めて卑怯な行為であり、そしてこの後に待っている学年別の召喚戦争を3年生が優位に進めるための一手としての側面もあるが
(そんなのはどうでも良いですわ……私の目的は吉井明久と雅をくっつけることだけですから)
それ以外はどうでも良い。そこだけが重要なのだ……私はそんな事を考えながら時計を視線を向けた丁度4時になり。召喚戦争を終わりを告げるチャイムが鳴り響いたのだった……
今日は疲れたなぁ……Cクラスの策略はなぜか僕をターゲットにしたものだった。内容は
【Dクラスの玉野美紀は僕が好き】
【実は吉井明久には将来を約束した婚約者が居る】
根も葉もない噂なのだが。その噂のせいで美波や瑞希が魔王モードとなり、交渉の余地も無く僕の命を刈り取りに来た。秀吉?いや優月は般若のような顔で自然に腕を折に来たしかもその後に明らかにやばい色の薬品が入れられているであろう注射器を持ち出してきた。しかも
「おや?もう使うのですか?私の分けた薬を?」
セッテ様の持ち物の薬。それだけで僕は恐怖を感じ2-Fの窓ガラスをぶち破って逃走を開始したのだった。終戦少し前に美波に処刑され。Fクラスに強制連行された僕は土下座外交を使用し更に、龍也の足にすがりつき味方になってもらった事で何とか交渉のテーブルにつくことが出来。命を無事に取り留めた
「あー今日はもう寝よう。た……だいま?」
今日はなんか凄く疲れたし、なんか頭も痛いから早く寝ようと思いながら玄関を開けると
「……お帰りなさい」
瑞希が出迎えてくれたのだが、何故かその服装はそう……一言で言えばそうセクシー?だった。スカートは膝丈より上だし、上着も胸の谷間を強調するようなデザインだ
「え。えーと。瑞希?」
何故そんな格好をしているのか?何故そんなに怖い顔をしているのか?なぜ僕と目を合わせてくれないのか?とかを考えていると
ガシッ
「ふえっ?あいだああああッ!!!!」
襟首を掴まれたと思った瞬間。僕は瑞希によってフローリングに叩き付けられた
「あいたたた……きゅうにどうした「………」み。瑞希?」
マウントを取られただけではなく両手首もがっちりと捕まれ全く動けない
「……やっぱり私は思うんですよ。明久君はモテるって」
「いやーそんなことはないと「黙って」はひっ……」
瑞希の瞳には光は無く。しかも声も酷くドスが聞いていて怖い……選択しミスで首へし折られ位の可能性もある
「私は性格不細工だし太ってるし。美波ちゃんとかと比べると劣ってるって判ってます」
いやそんなことは無いと思うけどね?瑞希は少し病みやすいけど可愛いって僕は思うんだけど……なんか頭でも打ったかな……頭痛が酷い……頭に走る鈍痛に顔を歪めていると
「それに一緒に暮らしているのに何もしてくれません。変な事をして欲しいなんて思ってません。でも少しは意識してくれないと自分が惨めじゃないですか……私はこんなにどきどきしてるのに……」
悲しげな瑞希の顔を見て僕は腕を軽く引いて瑞希の拘束を振りほどく。さっきから頭が酷く痛いし目の前も歪んで見えるけど自分がやらないといけないことはちゃんと判っている。瑞希の背中に手を回して抱き寄せて
「ごめん。僕はまださ……誰が好きとかそう言うの全然わかんなくて」
今はただ皆と入れる時間が楽しい。それを壊したくないっていう気持ちしかない
「だから誰が好きとかまだいえなくて……それまで色々不安にさせるかもしれないけど……もう少しだけ……僕に時間を頂戴?」
酷い頭痛を感じながらも最後まで言い切ると瑞希は顔を上げて僕の顔を見てくれた。その目はもうさっきまでの魔王の光は無く
それに安心した僕は瑞希の背中に回していた手をどける。瑞希はゆっくりと立ち上がり普段と同じ様子に戻っている。その事に安心して立ち上がろうとして
「ぁ……あれ?」
身体から力が抜け僕は瑞希にもたれ掛かるように倒れかけ
「あ、明久君!?」
慌てて瑞希が僕を支えてくれたおかげで倒れることは無かったが
(こ、これ駄目な奴だ……)
激しい頭痛とめまい……僕はそのまま意識を失ったのだった……
「う……ん……んん?」
「大丈夫ですか?明久君?」
「あれ……えっと?」
僕は気がついたらベッドで横になっていた。枕元には瑞希がいて心配そうに僕の顔を覗きこんでいた
「ごめん。いつの間にか寝っちゃったみたいだね。直ぐにご飯の支度を」
立ち上がろうとすると瑞希に肩を押されまたベッドに戻される
「寝っちゃったんじゃなくて、熱が出たんです」
そっかみょうに頭が痛いなあとは思っていたけど、熱が出てたのか……
「無理をしなでそのまま寝ていてくださいね」
「ああいや、別にこれくらいはなんとも」
「寝ていてくださいね♪」
「……ハイ」
魔王モードの圧力に負けもう1度ベッドに寝転がり布団を被る。天上をボーっと見つめていると
「眠れませんか?」
「眠くないってわけじゃないけどね。そんなにすぐには……やっぱり起きてなにかしてたほうが」
もう1度身体を起こそうとすると瑞希が
「いいえ、駄目です。眠らなくても良いですから、横になっていてください」
どうあっても僕がおきることは許してくれないようだ。カチカチと時計の針が静かに部屋に響く中
「なんだか……こうしていると昔の事を思い出します」
「昔の事?」
突然思い出したように言う瑞希に尋ね返すと瑞希はにこりと笑いながら
「はい。小学生の頃とか」
でもあの時とは立場が逆ですけどね?と笑う瑞希に
「ああ。確か瑞希が入院したときがこんな感じだったけ?」
「え?……明久君覚えててくれたんですか?」
「ごめん……はっきりと覚えているわけじゃないんだ。確かこんなことがあったってなんとなくね」
僕がちゃんと覚えていてくれたのでは?と期待を込めた視線で僕を見てくる瑞希にごめんねと謝ると
「いえ。覚えていてくれただけでも十分です」
期待にこたえられなかったのに優しく許してくれた瑞希だが、でもと言って
「1つだけ悪戯をしても良いですか?」
さぐるような問いかけるような瑞希の目……その目はいつもと同じ光を宿していて魔王化の兆しは無い
「顔に落書きとかまでなら良いよ」
「そんなこと、しませんよ」
くすりと笑った瑞希は自身の髪留めを外して僕の頭にくっつけた。まさかこんな事をされると思ってなかった……
「あ……れ……?」
なにか、そうずっと昔にこんな事をしてあげたような気がする……
「病気のときって凄く心細くなるときがありますよね?」
「え?あうん。そうかもね」
僕はあんまり病気をしないから実感したことは無いけど、病気のときは心細くなるって言うのは判る
「具合が悪くて。退屈で、嫌なことばかり考えちゃって……私はずっと1人なんじゃないかって。皆にいじめられるんじゃないかって、考えちゃったりしますよね?」
良く聞く一般論のはずなのに瑞希の言葉はやけに僕の心に残った
「だからそんなときに助けてくれた男の子のそばに入れるのは、とても幸せなことだと……凄く幸せなことだと思います」
何か口を挟めない神妙な雰囲気の中。瑞希がゆっくりとそう呟く……もしかするとこれは。良くある一般論を話しているんじゃないのかもしれない……何故瑞希がそんな話をしたのかわからず考え込んでいるうちに僕は知らないうちに眠ってしまった……
「ん?……うん?」
目覚まし時計の電子音を聞くことなく目を覚ました僕の視界に飛び込んできたのは瑞希の顔。手をこちらに延ばしているところを見ると起こしてくれようとしていたみたいだ
「明久君。具合はどうですか?」
「うん。絶好調だよ」
瑞希にこれ以上心配をかけるのもなんだと思いガッツポーズを作りながら言うと、唐突に昨日の瑞希との会話を思い出し停止してしまう。そんな僕を見て瑞希が
「嘘を言っちゃだめですよ。明久君。まだ顔が赤いじゃないですか?」
「ああ。いやこれはその……」
昨日のやり取りを思い出したからで……でもそんなことを言うのもなんなので口ごもっていると
「無理をしたら駄目ですよ?今日は1日休んで身体を休めてください」
心配してくれているんだろうけど。今日は試召戦争の2日目だし、休むわけには行かない
「今は大事な試召戦争の真っ最中だからね。学校に行くよ」
「駄目ですよ?試召戦争も大事ですけど体の方が大事です。今日私が明久君の分も頑張りますので今日は休んでください」
「いやでも」
「我が侭を言ったらだめです。きちんと治ったら私も何も言いませんから」
「そうじゃなくて……」
互いに平行線の話をしていると瑞希が突然魔王のオーラを纏い
「どうして私の言うことは聞いてくれないんですか?玲さんの話は素直に聞くのに」
「いや。姉さんの場合言うことを聞かないとへし折られるから」
姉さんの場合は武力による脅迫だ。高度なサブミッションに打撃技。普通に考えて戦闘力が高すぎるのだ
「明久君。私の言うことを聞いてくれないのならチュウをしますよ?」
なんだ。姉さんの真似か……全く……
「あのね?瑞希が姉さんの真似をしても何の脅迫にも……」
瑞希の顔がドアップになったと思った瞬間。唇に何か柔らかい感触が会った
「………え?」
「じゃあ大人しく寝ていてくださいね」
困惑している僕を無視して瑞希は僕の部屋から出て行った。1人残された僕は
「………ええ?」
何がなんだかさっぱり判らず完全に思考が停止してしまったのだった。僕が再起動したのはこれから2時間後のことだった……
第96話に続く
これで8巻の内容は終了です。9巻もこんな感じでさっぱりとした感じで終わらせます。私のやりたいイベントは10巻にあるので
そこまでは少し駆け足で行きます。まぁそれでもイベントはしっかりやりたいですけどね?それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします