バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回で7巻の話を最後まで持っていけたらとか考えていますが。上手く纏めきれないともう少し延長するかもしれませんね。でも早く9巻に入らないとやりたいことが出来ませんしなんとか纏めきろうと思います
それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


第92話

 

 

第92問

 

キャッチャーのポジションに着く龍也を見ながらマウンドに登る

 

(龍也のリードなら上手くかわせるかな?)

 

この会の教師チームの打順は

 

鉄人

 

大島先生

 

博士

 

と強打者が続く。ただ博士の実力が未知数なのでなんとも言えないが教頭をやっているのだから頭が悪いということはないだろう

 

「さあ行くぞ!今度も抑えてやる!」

 

「威勢が良いな。吉井」

 

鉄人がにやりと笑い召喚獣を呼び出す。Fクラスの担任だし。そんなに良い点数じゃあ……嘘ォッ!?!?

 

『補習教師 西村宗一 世界史 741点』

 

VS

 

『Fクラス 吉井明久 世界史 197点』

 

(やばい点数差が半端じゃないんですけど)

 

鉄人って頭が良かったんだと思いながら龍也を見ると龍也は自然にミットを構えサインを出してきた

 

(インコース。ボールになるカーブ)

 

(勝負なの!?)

 

龍也の大胆不敵な顔に驚きながらも言われたとおりのコースに投げ込む

 

パシン!

 

「ストラーイク!」

 

審判のコールに驚く。あのコースはボールのはずだ、じゃあなんでストライクのコールが

 

「ナイピッチ!続けていこう」

 

龍也に返されたボールを受け取るとまたサインが出される。今度はインコース高めのストレート。大丈夫かなと思いながらボール握らせると追加指示で

 

(握りは浅め。少し抜くイメージで投げて来い)

 

浅めに握れ?そう言うのは関係ない筈だと思いながらも頷き、若干浅めの握りでストレートを投げ込むと

 

カキーン!!!

 

レフト線への超特大のファール。あ、危なかったもう少し中だったら完全にホームランだった。でもこれで敬遠を……

 

(次外に逃げるカーブ)

 

まだ攻める気でいるらしい。今度はアウトコースへのカーブだが

 

(いや打たれるって)

 

あの特大のファールを見てからではとても投げる勇気がない

 

(大丈夫だ、さぁ来い!)

 

自信満々の龍也に若干怖いものを感じながら言われたコースに投げる

 

「!!ふんっ!」

 

鉄人が大きく踏み込みフルスイングするが、カーブ。しかもアウトコースなのでボールが逃げていく

 

「なめるな!」

 

鉄人はそう叫ぶと足場をスイングの途中でカーブの軌道にあわせて足をすり足で移動し

 

カキンッ!!!

 

「ホームラーン!!!」

 

超特大のホームランがグラウンドの外に消える。いきなり失点……しかもホームラン。僕が驚いていると龍也は静かに

 

「審判。反則「言わんでもわかってる!俺は嵌められた訳か」

 

良く見ると鉄人の召喚獣の足がバッターボックスから出ている。カーブを打つために足場を変えた分だけはみ出ていた。

 

「生身でも運動が得意なのは必ずしも有利ではないってことですよ」

 

「覚えておこう、お前は本当に頭が切れる奴だ」

 

「お褒めに預かり光栄です。ワンダン!ワンダン!締めていくぞ」

 

今何が起きたのか判らないが反則打球で鉄人がアウトになったってことは判る。

 

(今のリードに一体何の秘密が?)

 

多分今の配球に秘密があるのだろうが、それが何か判らない

 

「体育の授業ではなく、召喚獣で生徒と野球をすることになるとは……試獣召喚」

 

『保体教師 大島武 世界史 231点』

 

点数はそんなにないか。じゃあ後は龍也のリードに任せることになりそうだ

 

(真ん中低め。深いにぎりの真っ直ぐ)

 

また握りの指示。こういうのは関係ないと思うんだけど……でもとりあえず言われたとおりに投げ込む

 

バシン!

 

「ストラーイク!!」

 

やはり初球は様子見して来た。多分次は変化球を……

 

(インコース高め。握りの浅い真っ直ぐ)

 

また真っ直ぐ!?しかもインコースの高目なんて正気じゃない。だけど龍也は自信満々だ

 

(ぐっここは龍也を信じたい!)

 

言われたとおり浅い握りの真っ直ぐをインコースに投げると

 

ガキンッ!!!

 

鈍い音を立ててボールが真上に飛び上がる

 

「サード!間に合うぞ!」

 

「よっしゃ!任せろ!!」

 

雄二の召喚獣が走り高く浮かび上がったフライを捕球して2アウト

 

「おかしい。完璧に捉えたはずだったんだが」

 

首を傾げながら戻っていく大島先生に代わって博士がバッターボックスに立ちながら

 

「いやいや。やるなあ龍也は私がちゃんと遅い真っ直ぐと速い真っ直ぐをストレートに入れてることに気付くなんて」

 

楽しげに笑う博士。速い真っ直ぐと遅い真っ直ぐ?

 

「ふん。変化球を入れてるお前だ。どうせストレートも回転数を変えれる様にしてると考えるのが普通だろ?」

 

「うんうん。さすが龍也。これでちょっと楽しくなりそうだよ」

 

『教頭 ジェイル・スカリエッテイ 世界史 1091点』

 

は!?4桁!?普通の学科で4桁の点数なんて始めてみたんですけど

 

「あっははは!何を驚いているんだい?私は天才なんだよ!これくらい5分もあれば取れるさ!」

 

「嘘付け15分だろ?」

 

「YES!さすが龍也判ってるう!」

 

龍也の肩をばしばし叩いて嬉しそうな博士だが。15分で1000点越えってどんな頭の作りをしてるんだろう

 

(まずはアウトコースボールになるカーブ)

 

しかも龍也は勝負する気満々だし……これ大丈夫?不安一杯でワインドアップに入ろうとすると

 

「タイム!」

 

秀吉がタイムをかけて僕に駆け寄ってきて

 

「明久ガチガチだよ。落ち着いて深呼吸して」

 

「え。あ……うん」

 

言われたとおり深呼吸をしていると秀吉が

 

「良い相手の点があっても力だけじゃ勝負は決まらない、落ち着いていけば大丈夫」

 

そう笑う秀吉。本来ならここで美波か瑞希が来そうだがこないことに不思議に思いながら頷くと秀吉は

 

「良い。この試合に勝ったら……私の本当に名前教えてあげるから。私結構嫌なんだよね。秀吉って言われるの」

 

へっ?僕が驚いていると

 

「あのね?いくら秀子なんて名前あるわけないでしょ?あれは姉上の渾名。本当はちゃんと別の名前があるの、だから勝って。そして私に言わせてよ。私の名前をさ」

 

そう笑って戻って行く秀吉を見ながら

 

(そりゃそうだ。いくらなんでも「秀子」なんて名前はないか)

 

そりゃそうだと納得し龍也を見ると

 

(サイン変更。インコース低めにぎりの深い真っ直ぐ)

 

球種を変えてきた。なぜだろうと思いながらも頷き振りかぶりボールを投げ込む

 

パシン!

 

「ストラーイク!」

 

「うん。これが高回転ボールか。実際見てみると浮いて見えるね」

 

うんうんと頷く博士を見ながら龍也は今度は

 

(アウトコース、深いにぎりの真っ直ぐ)

 

頷きすぐに投げ込むと

 

カキーン!!

 

「ふむファール。振って見ると予想よりも浮いてる感じだね」

 

超特大のファールを打って楽しそうにしている博士を見ながら龍也はアウトコースのカーブ。インハイの深い真っ直ぐと要求しカウント2-2にした

 

(後は龍也がどうするかだね)

 

最後のボールをどうするか僕は龍也のサインを待った

 

 

 

 

 

(くっ狙い球がわからん)

 

龍也は冷静そうな顔をして内心は動揺していた。ジェイルが何を待っているか読もうとしていたのにジェイルは何の反応もしなかった。それが余計私の考えを乱していた

 

(何を待ってる。真っ直ぐか?カーブか?スローか)

 

ジェイルとは気心知れた関係だが。それは無効も私の考えを読めるということで何を狙われているのか判らない

 

(ここはまだ投げてない。浅い真っ直ぐをインローに。あのコースは1番打ちにくい)

 

しかも浅い真っ直ぐなら沈む。空振りを取れると計算しそのコースにミットを構えた

 

「ま、そう来るよね!!!」

 

カキーン!!!

 

「ホームラーン!!!」

 

ジェイルはそれを完璧に捉えてセンターに弾き返した

 

「龍也ぁ。足元見てたかい?」

 

ウィンクしながら言うジェイルに言われて足元を見て

 

(やられた!)

 

インローかと思っていたが。ジェイルは何度も何度も召喚獣に足場を変えさせて私の距離感を欺いた。インローではなく投げたのは真ん中から少しずれたイン。もっともバットを振り切れる位置だ。スイングと身体をほぐす仕草を繰り返され完全に距離感を欺かれた。これが生身だったのならと悔いるが

 

(くそっ!やられた……割り切れ。思考を切り替えろ)

 

思考を切り替えなれば失点が続く。きっちり思考を切り替え長谷川先生をインハイの真っ直ぐで討ち取り

 

「すまん。凌ぎ切れなかった」

 

「いや。あの強打者を1点で切れたんだ。後は龍也達が1点取ってくれれば」

 

「それも難しい。向こうも高回転と低回転を知ってしまったからな」

 

「兄ちゃん。低回転とか高回転とかどういうこと?」

 

低回転と高回転について説明する。ストレートと言うのは勘違いされやすいがれっきとして変化球で綺麗なバックスピンをかける事で投げられる変化球なのだ。変化球である以上回転数を帰ることでボールに変化を与えることが出来ると説明すると

 

「なるほど沈む真っ直ぐと浮く真っ直ぐ。それで打たせてたわけか」

 

「そう言うことだ癖球は打ちにくいからな」

 

雄二に説明しながらネクストに向かい

 

「どうもお前の作戦に頼るしかなさそうだ」

 

教師陣も高回転と低回転を使っているのが見える。遠目ではただの真っ直ぐにしか見えないが手元で変化しているので非常に打ちにくい

 

「打てますか?」

 

「正直判らん。明久の球であれだけの変化だそれ以上の点だとどうなるか。考えるまでもないだろ?」

 

浮く真っ直ぐに沈む真っ直ぐに加えてあの球速。連打はまず無いと思ったほうが良いだろう

 

「一発狙うしかないだろうな」

 

私は自分の浅慮を恥じながらバッターボックスに立った。

 

この後龍也はセンターフライに倒れ、雄二はショートゴロ、秀吉はレフトフライと3者凡退。教師陣もはやての真っ直ぐには対応できず3者凡退に終わったが。決定的に違うのは点差だけ……予想以上にタフな試合展開となったことに私と雄二は頭を抱えたのだった

 

 

 

 

 

その頃文月学園喫茶店でも激しい戦闘が行われていた……

 

「また性懲りもなくアキ君にちょっかいをかけに来たのですか?雅?」

 

「ちょっかい?失礼ですね。私はアキ君に求婚にしに行ったのですよ」

 

雅の冷静な態度に一瞬頭に血が上りかけるが

 

(いえ、冷静にです。雅は人を怒らせるのが上手い。冷静になるのです私)

 

歳の差こそはあるが、雅と玲は幼馴染だ。しかも天敵同士互いの手札は良く知っている同士だ

 

「そうそう。おば様とおじ様に許可を取ったので近い内にアキ君に会いに行かせて頂きますね♪」

 

「こなくて結構です。そのまま海外に言ったらどうですか?」

 

「嫌ですよ。何のために日本に帰ってきたと思っているんですか?」

 

たがいに嫌悪し会った顔でにらみ合う。雅はアキ君の前ではしおらしいくせにそれ以外で冷酷ともいえる態度を取る。言うなれば生まれもっても女帝の貫禄を持っているのだ

 

「それにしてもアキ君は前以上に優しくそして強くなりましたね」

 

「私の弟です。当然でしょう?」

 

「ああ。貴方と言う病的なブラコンといれば逞しくもなるというものですね」

 

にっこりと笑いながら言う雅に本気で殺意を覚えながら

 

「アキ君が貴方を覚えているとお思いですか?」

 

アキ君は馬鹿だ。もう何年も前のことを覚えているわけが

 

「はっきりと覚えていると言ってくれたし会いたいとも言ってくれましたよ♪」

 

アキ君今日帰ったらぼっきりとお仕置きです。なんで雅を覚えてるんですか

 

「きっと愛ですね」

 

「黙れ。似非天然女」

 

「死ねばよろしいのではブラコン」

 

互いに殺してやると思っているのが一目で判るのを感じながら。何時攻勢に出るかを考えていると

 

「さてとでは私はこれで、またいずれお会いしましょう」

 

さっさと席を立ち返り支度をする雅に肩透かしを喰らった様な感覚を感じていると

 

「玲。貴女は確かに猪突猛進ですが、その優れた知性には正直敬服しています。しかしアキ君は私が貰う。その為に私は強くそして賢くなった。そして貴女の気持ちも最大限尊重したいとも思っています」

 

雅はくるりと振り返り私を見据えながら

 

「しかし姉と弟では恋愛は成立しない。そこを忘れぬように」

 

そう笑い私の前にお札をおいて

 

「馴染みと話せて楽しかったです。今回は私のおごりと言うことで」

 

そう笑って出て行く雅を見て。以前とは違うと感じていた。以前だったらつかみ合いか殴り合いにくらい発展していた。雅は大人しい外見とは違ってかなり攻撃的な性格だった

 

アキ君がいなければ暴力だって振るっていた雅だが。何と言うか凄みがましていた……

 

(これは不味いですね)

 

若干とは言え私が気押された。凄まじいまでの威圧感だった

 

(何とかして手を打たないと)

 

アキ君は雅と仲が良かった。会えばきっと懐かしいと笑いいろいろと話をしようとするだろう。そうなればきっとアキ君は陥落する。今の雅は言葉にさえ力があった

 

(むむむ。どうしたものでしょうか?)

 

私は会計を済まし家へと向かいながらどうするか考え、思いついたのは

 

(思いっきり強打すれば忘れますかね?)

 

強打による記憶喪失。それしか思いつかなかったのだった

 

 

 

 

最終回の円陣を組みながら作戦を話していると龍也が

 

「中々考えたな。雄二」

 

「だろ?前半でお前達が点を稼ぎまくってくれたからな」

 

借り物競争を捨てる変わりに教師を連れ出し1回限りの体育の実技をする。それが俺達の導き出した勝利の方程式だ

鉄人や大島先生は連れ出せなかったが、これで勝機が見えてきた

 

「でもまあ計算違いもあった」

 

「言うな。雄二」

 

途中でティアナとセッテが罵り合い。セッテが退場になった致し方なくムッツリー二にショートに入ってもらった

しかしこの回はムッツリー二から。運動神経に不安はないが正直点を取れるかは龍也か俺にかかっている

 

「1点だけ取っても駄目だ。ここで逆転サヨナラじゃないとな。延長戦なら勝ち目は良くて5分。高確率で延長引き分けだ」

 

延長引き分けなら没収品は帰ってこない。どうしてもこの回逆転しなければ駄目だ

 

「頼むぞ。ムッツリー二」

 

「……任せておけ」

 

バットを抱えて歩いていくムッツリー二を見ながら。横目で観客席を見る俺の目の付くところに翔子がいて俺を見ている

 

(なんとしても取り返す)

 

あのヴェールは翔子のものだ。没収させたままで終わって堪るか

 

ムッツリー二はプッシュバントで出塁。しかし続くティアナは

 

「バッティングなんんてできないわよ!!」

 

文句を良いながらフルスイング。それはピッチャーゴロだったが、その間にムッツリー二は二塁へ

 

「明久ゲッツーは無しだぞ」

 

「うん。頑張ってくる」

 

気合の乗った良い顔でマウンドに向かった明久は

 

カキン

 

カキン

 

カキン

 

(おっ。やるなあ明久)

 

これで6球目のファールでカウント2-3。そして7球目外に外れてフォアボール

 

「良し!龍也決めてくれ」

 

俺がそう言うと龍也は肩を竦めながら

 

「私もそれは考えたがね。舞台のHEROはもう決まってるんでね」

 

はっ?龍也の言う事が判らず首を傾げているなか龍也はやる気のないスイングで三振して帰ってきた

 

「おい!?なんで振らなかった!?お前なら打てただろ!?」

 

俺が詰め寄りながら言うと龍也はバットを俺に差し出しながら

 

「だから。言っただろ?HEROは私じゃないって」

 

龍也がそう笑うと同時に観客席を見る。それにつられて観客席を見ると

 

「雄二!頑張って!!」

 

滅多に出さない大声で翔子がそう叫んだ……

 

「は。はは……そう言うことかよ。お前も明久もぐるってことか?」

 

「そうだよ?では頑張ってHEROになってくると良い。雄二」

 

そう笑って俺の背を叩いてベンチに帰って行く龍也を見ながら

 

(しゃあ!いくかッ!!!)

 

翔子のヴェールを取り返すのは俺だ。それを他の奴になんかやらせ気はねぇ!マウンドの大島先生を見ながらバットを構えるすると直ぐに振りかぶって投げ込まれた直球がミットに突き刺さる

 

(速いな。でも打てないことはない)

 

大きく深呼吸をしてバットを構えなおす。次の球は低めに外れた。そして3球目投じられた真っ直ぐにタイミングを合わせ全力でフルスイングする

 

カキーンッ!!!

 

快音を響かせセンターの前に落ちるボール。ムッツリー二が一気に本塁に帰還するが

 

(浅かったか!?)

 

もうちょい深ければ明久も帰れたのにと思い見ていると。

 

(あ、あの馬鹿!なにやってやがる!?)

 

3塁コーチャーのストップの合図を無視して本塁に突っ込んでいく明久

 

駄目だブロックされると俺が思った瞬間。明久は身体を横にずらして鉄人に回りこみホームベースにタッチした

 

「セーフ!ゲームセットッ!!!!」

 

審判のコールがグランドに響く。俺達Fクラスの勝ちが決まった瞬間だった

 

 

 

 

 

 

「はー疲れたぁ」

 

野球大会を終えて帰宅の途中で僕はそう呟いた。召喚獣を用いた投球と最後のスライディングで身体もボロボロ正直へとへとだ

雄二は没収品を今返してくれと。没収品を見せて鉄人に許可を取り返してもらっていた。きっと直ぐに霧島さんの所に行くだろう。

そんなことを考えながらのんびりと歩いていると

 

「秀……」

 

秀吉と呼びかけたがそれを手で塞ぐ、その名前で呼ばれるのはあんまり好きじゃないって言ってたから

 

「明久。勝ったね?」

 

「うん。何とかね」

 

そう笑うと秀吉は少し近づいてきて耳を貸してと言うので耳を向けると

 

「私の名前はね優月って言うんだ。でもあれだよ?学校で呼ばないで、2人だけのときとか周りに誰もいないときに呼んでね♪じゃね、明久」

 

そう言うと軽く頬に触れるだけのキスをしてさっていく優月を見ていると

 

「アキ?」

 

「明久君?」

 

ぞくう……

 

夏だというのに強烈な寒気を感じ振り返るとそこには魔王オーラ前回の美波と瑞希がイイエガオで笑っていた

 

「あの交渉の余地はありますか?」

 

もう駄目だとわかりつつそう尋ねると。瑞希はにっこりと笑い

 

「美波ちゃん。判決を」

 

「とりあえず殴る。話はそれから聞くで」

 

「おねがい!せめて話を聞いてからに。ッぎゃあああああああ!!!!!」

 

容赦ないアイアンクローで吊り上げられた僕は問答無用の死刑判決を言い渡されたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

明久が死にかけているころ。雄二はと言うと

 

「あー翔子」

 

「……うん」

 

頭をガリガリと掻いている雄二は口を開いたり閉じたりを繰り返し、何回目かで決意したのか

 

「これ。取り返してきた!」

 

雄二が差し出してくれたのは如月アイランドで貰った大切なヴェール。差し出されたそれを見ていると

 

「いらないのか?」

 

私が受け取らないので不思議そうな顔をして言う雄二に

 

「……雄二がかぶせて?」

 

「え。あ。ああ……えーとちょっと待てよ」

 

ごそごそとヴェールの埃を払った雄二は私にヴェールを被せてくれた

 

「悪かった。お前の大事なもんを没収されちまって、これで許してくれるか?」

 

ばつが悪そうに謝る雄二に私は

 

「……いや」

 

本当はこれでも十分だ。でもまだ足りない

 

「じゃあどうしろって……「……キス。お詫びの印にキスしてくれたら許す」「うえ!?」

 

驚いた顔で後ずさる雄二を見ながらヴェールを脱いで、それを抱きかかえ

 

「……逃げたら絶対許さない。本気で監禁して薬でも何でも使う」

 

「今までのは本気じゃなかったのか!?」

 

うんっと頷くと雄二は少し待てと言って色々と考え始め

 

「よし、判った。キスだな、キスしてやれば良いんだろ?」

 

その言葉に頷き目を閉じると雄二の手が肩に触れる。どきんと高鳴る心臓の音がうるさくて心地よい。暫く待つと額に軽く唇が当たる感触がした

 

「……雄二。口じゃない!」

 

「どこへとは言ってないだろ!じゃな!」

 

そういって走り去る雄二の顔が一瞬見えたが、トマトみたいに赤い顔をしていた

 

「……もうちょっとかな」

 

はやてが言ってたときに攻めるのではなく退くのも大事だと、そのアドバイス通りにしたら雄二は頬を赤らめてくれたもうちょっと頑張れば上手く行く気がする

 

「♪」

 

私は雄二に返してもらったヴェールを抱きかかえゆっくりと家のほうへと歩いていった。その足取りは言うまでもなくスキップのように軽やかなものだった

 

第93話に続く

 

 




次回は8巻にはいって。番外編の.5とかは私のやりたいイベントをやった後に回そうと思います
このイベントに全てを賭ける。私なりのサプライズです。判ってる人が何人いるか非常に楽しみですね!
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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