あっさり風味だと思います。ですので野球はそこまで期待しないでください。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
第91問
応援合戦を激しく盛り上げ学園トップを取った後の最初の試合。俺達の目標だった教師戦を前に俺はFクラスの最終戦のオーダーを龍也と話し合っていた。須川や横溝には悪いが教師戦は点数がなければ話にならない。だから通常競技に回ってもらい龍也を始とする最強メンバーでチームを作ることにした
「で。今回はこっちもオールメンバーだ。龍也よろしく頼むぞ」
打順と守備位置を入念に確認しながら龍也に言うと
「任せておけ。今回は私がキャッチに入る、はやてとかを投手に使えるんだそう簡単に失点はしないだろう」
そうこの試合だけは龍也とその魔王軍にバッテリーを組んでもらう。しかしテストだけで決着が付くとは思っていない。向こうとの点数差は俺の予想では俺や明久が200~280程。龍也達は100前後の差があると考えばどう考えても接戦になるからだ。試合とは別にもう一手用意してある
(勝つための方法はまだ用意してる。その時が来るまでは失点無しで行くには龍也達の力が必要だ)
絶対に負けられない試合だ。多少卑怯とか言われようが勝ちに行く。
「これより生徒・教師交流戦決勝戦を始めます。皆さん整列してください」
審判役の教師の声を聞きながら俺は
「この勝負絶対に負けられねえ!全力でいくぜーッ!!!」
「「「オーッ!!!」」」
軽く円陣を組んでそう叫んでからグランドに整列する。この勝負だけは絶対に負けられない、何をしても勝つ必要がある
(ったく俺も随分毒されちまったよな。ほんとに!)
今まで翔子のヤンデレ具合にはほとほと呆れ果てまた困っていたが、龍也は明久を見ていたらその感覚も段々なくなってきたそりゃ翔子は嫉妬深いし攻撃力も俺以上だがそれでも
(やっぱり女なんだよな)
まぁ性格に若干の難はあるがそれを除けば大和撫子と言っても通るだろう。まあ俺は本性を知っているのでそんな感想は抱かないが……それでも
(あいつの泣き顔は見たくねえだよな!)
俺の忌まわしい記憶の1つ。それがあるからか俺は翔子が泣くのだけは我慢ならねえ
(なにしてもこの勝負だけは負けられねえ!)
魔王が好きだとか翔子がどうだとかではない。ただ翔子の泣き顔が見たくないそれだけだ
【プレイボール!】
【【おねっしゃーす!!!】】
一斉に頭を下げて守備位置に付く。今回は生徒側のハンデとして生徒は審判だけに変化球を申請するルールだ。だけど俺は龍也が何の変化球を要求するかは聞いてない、バッテリーを組む龍也とはやてに全部任せたからだ。俺はこの試合打撃と守備に集中する。後は全部龍也に任せる。俺はサードの守備位置につきながら。守備位置の確認を始めた
1番ショート セッテ・スカリエッテイ
2番レフト ティアナランスター
3番セカンド 吉井明久
4番キャッチャー 八神龍也
5番サード 俺
6番ファースト 木下秀吉
7番ピッチャー 八神はやて
8番ライト 姫路瑞希
9番センター 島田美波
控え
八神ヴィータ
土屋康太
女子が主力と言うのは若干気恥ずかしいが、戦力的にはそこいらの男子を軽く凌駕する連中だ。何も心配はいらない
そんな事を思いながら教師チームを見ると
「布施先生楽に楽に!」
「はい、行って来ますよ。教頭」
博士がベンチに居た。おいおい……来賓ほったらかして何やってるんだよ博士。でもまぁ
(いっつも馬鹿なことしてるし、そんなに怖くないだろ)
多分教師としては中から上の下くらいのスペックだろうと判断し俺は守備に集中する事にした
キャッチャーの守備位置に付き。布施先生とはやての点差を見る
『科学教師 布施文博 科学 501点』
VS
『2-F 八神はやて 科学 407点』
怪しまれない様に点を押さえさせているので100点ほど差があるがどうって事はないだろう
(アウトコース ハーフストレート)
まずは様子見だ。はやてもそれが判っているのかすぐ頷きボールを投げ込んできた
バシンッ!!!
「ストラーイクッ!!!」
一瞬ぴくりと動いたが見送ってきた。まぁ最初から振ってくることはないか
(次、インハイ胸元ストレート。ボールでも構わん)
今度は胸元の近くに全力のストレート
「おっとと!!」
そのボールを思わず避けた布施先生だが。その動きでスイングをとられた、ボールでストライクを取れるとはありがたい
(ラストアウトコーススロー)
ひょいっと手を抜いた投げられたスローに
「っとと!!」
完全に体勢を崩して空振り三振。まずは三振良い滑り出しだな
「次は僕ですね。よろしくお願いしますよ。試獣召喚」
次の教師は若い現国教師の寺井先生だ。点数は
『現国教師 寺井伸介 科学211点』
文系だから理系には強くないのかもしれないが……
(この感じ野球経験者か)
召喚獣にバットを構えさせる動きも堂に入っている。科学には弱いが、運動は得意そうだ
(まずは様子見から入るか。アウトコースボールになるストレート)
ストライクゾーンから1つ外した真っ直ぐを投げさせる
きん!!
「ファール!」
初球から振ってきたか、随分積極的だな。寺井先生はバット振り足場を整えながら
「生身とやるのとは随分違うな」
この発言で確信した。野球経験者だと……そうと判れば攻め方も変えていこう
(2球ボール。1-2にするぞ)
(了解~)
直ぐ頷き投げ込まれたボールはアウト・インと外れる。これで予定通り1-2
(顔元から中に落ちるカーブ。コースはインコース)
顔元から落とせば嫌でもインコースの印象が強くなる。ここは変化球を使う
頷き投じられた白球は胸元に向かって進み
「!?」
身体をねじって回避した寺井先生を嘲笑うかのようにカクンと失速し真ん中に入ってきた
「ストラーイク!!」
これで2-2。さてともう1球遊ぶか……いや勝負だな。
「ふー随分と攻撃的なリードですね。驚きました」
やる気十分な顔をしている。ここは1球遊ぶより勝負だな
(インコース。全力ストレート)
さっきのインコースがあるからアウトコースに投げるのがセオリーだが。召喚野球だから普通のリードでは駄目だと判断し再度インコースに真っ直ぐを要求する。ゆったりとしたフォームで投げ込まれた剛速球は寺井先生にスイングをさせることなくミットに突き刺さった
バシーンッ!!!!!
「ストラーイク!バッターアウト!!!」
「あーやられました。まさか続けてインコースとは」
読みが外れたと笑って戻っていく寺井先生ではなくネクストバッターを見る。学年主任の高橋先生だ、少々抜けているところがあるが頭は良い。簡単に討ち取れる相手ではないな
「お手柔らかに八神君。はやてさん」
にこりと笑って召喚獣を呼び出す高橋先生。そして点数が表示される
『学年主任 高橋洋子 科学801点』
『『『ぶほおっ!?』』』
明久と雄二の噴出す声を聞きながら配球を考える。牽制しても良いが次は西村先生下手にランナーを貯めるのは良くない。配球を考えるために顔を上げると、バッターボックスの高橋先生のバットを持つ手の位置が違うことに気付き
「高橋先生。手が逆ですよ」
「ああ。どうりで……アドバイスどうもありがとうございます。八神君」
よしこれで良し。どっちにせよそのままリードを続ければ誰かが行ったはずなのでこれで良い筈だ
(アウトコース。高めに外す遅い球)
はやてが頷きボールを投げ込もうとした瞬間
「ええと、こうでしたか?」
バントの構えを取る。それと同時にボールがミットに収まる
「ストラーイク!!」
バットを引かれなかったのでストライクを取ったが。ランナーも無しでバントの構え……ボールをはやてに返さず少し考える
(今のバント。それと西村先生とジェイル)
作戦を考えているのは恐らくあの2人。となれば……
(よし、これだな)
はやてにボールを返しながらハンドサインを出す。私の考えが合っていればこれで良いはずだ
(ど真ん中ストレート。ただしスピードはハーフ)
(大丈夫か?)
不安そうな顔をするはやてに大丈夫だと追加のハンドサインを出してミットを構える。はやては大丈夫かなあ?と言う顔をしてボールを投げ込んできた。そして高橋先生は
「1・2・3!!」
そう呟きながらバットを振った
ガキッ!!!
鈍い音を立てて高く上がる白球。その落下地点に回りこみ両手を広げるティアナ
「アウトーッ!!!」
がっちりとって3アウトチェンジ。ジェイルが私の考えを読めるように私もジェイルの考えを読める。どうやらこの試合野球の攻防ではなく
(私とジェイルの読み合いになるな)
互いの戦術眼と手持ちの札の能力はほぼ同じ。なら勝負を極めるのはその考えを読めるかどうかになるだろう。私はベンチに帰りながら
(これは面白い勝負になりそうだ)
私達が勝つためのプランは試合の終盤まで出来るだけ失点を少なくすることだ。後は向こうの攻撃をしのぐことを考えれば良い
「雄二。次の回は明久をマウンドに上げるぞ」
「はぁ?大丈夫か?」
不思議そうな顔をする雄二に私は
「問題ない。遅い球でコースを狙うそっちの方が打たせて取れる。次の回はティアナにリリーフさせる」
私の言葉を聞いた美波がなるほどって頷きながら
「遅い球・速い球で揺さぶりを掛ける訳ね?」
「そう言うことだ。中々判ってるじゃないか。で?あれは良いのか?」
美波を見ながら明久のほうを指差すと
「次の回僕?大丈夫かな?失点しないかな」
不安そうに呟く明久の隣で瑞希が
「大丈夫ですよ。明久君ならきっと抑えれます。だから頑張ってください」
その手を握って明久を励ましている瑞希。だがその影では
「ぐぐっ……いきなりレバーにアッパーなんて……」
「良い角度で決まってましたね」
秀吉が蹲っているのを見ているセッテの姿がある。段々瑞希も攻撃力が上昇してきている気がする
「瑞希ー!!!抜け駆け禁止ってウチ言ったわよね!!!」
瑞希に掴みかかって行く美波を見ながら
(さて次の回はどう出てくるか、しっかりと見極めさせてもらおうか)
「教頭読みが外れましたね」
「ははは。龍也が居るからね、私の考えはある程度読んで来る思ってたよ」
1球目はバントの構えでボールが近づいてくるのに慣れさせる。800点台だから足も速いのでセーフティ狙いかと思わせる。となれば。バントを失敗させるために速い真っ直ぐで勝負してくるはずだから、1・2・3で思いっきり振るように指示したが
「ハーフストレートとはね。その分スイングが早すぎてしまったようだね」
これで速い真っ直ぐならタイミングばっちりでスタンドに叩き込めていたはずなんだけど、まぁ読まれてしまった以上仕方がない
「さてと失点をすると次の回が辛くなる。ここは無失点で切り抜けようか」
セッテ・ティアナ君・明久君と続く打順だ。龍也に回す前に切らないと確実に1点取られる
「さーてそう言う訳ですから。布施先生頑張ってくださいね」
肩を叩きながらグランドに出てセンターの守備位置に向かいながら
(うーん。たまにはこういうのも良いねー)
ミッドでは互いに有名人だからこんな遊びは出来ない。だからこそこういうのは楽しくて仕方ない。そして仮に生徒チームが負けても没収品は返してくれるように話をつけてある。スポンサーの1人がそう言うのは良くないといってくれたおかげだ。だから
(全力で遊んでも大丈夫!)
そのスポンサーが誰かは判らないが良いことをしてくれた。私はそんな事を考えながら自分の守備位置に付いた
「お父様。私の我侭を聞いていただきどうもありがとうございました」
一応アキ君達が負けたときの保険としてお父様に頼んで学園長に話をしてもらった。勿論私も同席してだ。最初は渋ったものの支援打ち切りをも検討するというとうんと言ってくれた
「構わん。娘の我侭の1つや2つはいつでも聞こう。それに雅は滅多に我侭など言わんからな、偶には良いだろう」
そう笑うお父様は私の頭に手を置いて軽く撫でながら
「さてとでは私は行く。あんまり羽目をはずさないように、良いな雅」
「はい。判っています。学生の本分は勉強と言うのを忘れておりません」
私がそう返事を返すとお父様は満足げに頷きながら車のほうに歩いていった、残された私は
「さて……どうしましょうかね」
アキ君の活躍を見るのは楽しそうだが……お父様が来た事でこのまま見ているのは難しいだろう
「仕方ありません。確かムッツリ商会が試合のビデオを撮ってくれるといっていたのでそれに期待しましょう」
私はそう呟き文月学園を後にしようとし校門を潜ったところで
「やはり居ましたか。雅」
「お久しぶりですね。玲私に何か御用ですか?」
「ええ。話があるから来ているのですよ」
いつかは決着を付けなればならない相手。アキ君の実姉にして私の天敵「吉井玲」がそこに居た……
第92話に続く
次回は色々とバトルがある予定です。どんなバトルかどうかは判りませんけどね!!
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします