バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回からは野球編ですね。あちこちシナリオが変わっていますのでそこだけはご了承ください
それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



第85問

 

第85問

 

『……時より、第2グランドにて召喚野球を行います。参加する生徒は……』

 

校舎に備え付けられたスピーカーのアナウンスを聞きながら、野球大会の行われる会場へと向かって歩きながら

 

「でもさ、雄二。本当に初戦は龍也達抜きで行くの?」

 

Fクラスの最終兵器とも言える。龍也達はいま通常競技の100M走・100Mハードル走・障害物競走にそれぞれ分担してエントリーしている、誰か1人でも連れ来た方が良かったのではと思いながら尋ねると

 

「初戦はEクラスだ。Eクラス相手なら姫路が居れば十分だろ? むしろ龍也達には学園競技のほうでも活躍してもらいたい。あいつらは全員目立つからな。アピール力十分だろ?」

 

雄二はどうやら、召喚野球と通常競技の両方でいい成績を残すつもりらしい。だからこそ龍也達は温存しておくつもりのようだ

 

「それにAクラスも初戦はなのはとフェイト、それに翔子もエントリーしてない。向こうも様子見だろうよ、それよりも当面の問題はEクラスだろ?」

 

そう笑う雄二。だが僕達はEクラスとはあんまり交流がないからどんな生徒がいるか判らないという不安もある

 

「Eクラスと野球で勝負して勝てるの? なにも危険性はない?」

 

こっちには美波に瑞希がいる、学科がよければ何の不安もないが。召喚獣を用いたラフプレイの可能性も捨てきれない、だからそう尋ねると

 

「大丈夫だ、さっき代表同士で挨拶したんだが、結構いい奴だった。感じとしては島田に似てるな、はきはきとした性格で、女子テニス部のエースだ。お前が不安に思ってるようなラフプレイはないだろう」

 

それならば安心だけど……ちょっと気になることがあった

 

「外見は?」

 

美波に似ていると聞いてそれが気になってたずねると

 

「明久、お前はたまに勇者だと思うぜ。後ろ見てみろよ? 鬼が居るぜ?」

 

顔を青くしている雄二にまさかと思いながら振り返ると

 

ドスッ!!!

 

「ふぐうう!?」

 

「アキ。浮気は許さない」

 

美波の拳が僕の肝臓を打ち抜く。美波の魔王化がどんどん酷くなっていると思う。

 

「はひっ……」

 

僕は打ち抜かれた肝臓の痛みに顔を歪めながら、美波に半分引きずられながら集合場所に向かった

 

「なんで瀕死なの?」

 

「き、気にしないで、えーと代表さんの?」

 

「中林よ。で何で瀕死なの?」

 

なぜ僕が瀕死の理由をそこまで気にするのだろう? 

 

「まぁそんなに気にしないでいい。いつもの事だ、それで中林。先攻・後攻はどうする?」

 

「無難にジャンケンデいいでしょ? はい、ジャンケンポン」

 

雄二 グー 中林さん パー

 

「じゃ、こっちの先攻で。それと」

 

中林さんが僕を見て、可哀想な物を見るような目をしながら肩を叩いて

 

「同性愛者に狙われるの大変だと思うけど頑張って」

 

「………はい」

 

意外と良い人なのかもしれない。前の肝試し以降色々とやばい久保君の危険性を知っているのか。僕を励ましてくれる、きっとこの人は良い人だ。そう笑って戻っていく中林さんを見ながら

 

「先攻取られちゃったね。変化球何が残るかな?」

 

仕える変化球はスライダー・カーブ・フォークから1種類、しかも先攻が選んだ球種は選べない

 

「ま、それは後で聞けるだろ? ほれ準備するぞ」

 

雄二に促され召喚獣を呼び出すと

 

「お? 本格的だな」

 

「そうだね」

 

僕と雄二の召喚獣はそれぞれ野球のユニフォームを纏って居たが、雄二の召喚獣はマスクとレガースを見に着けており。一目でキャッチャーと判る、これなら取り損ねてもダメージは低いだろう

 

「ほうほう、野球小僧みたいで可愛いな」

 

僕の召喚獣を見て微笑んでいる秀吉。確かに子供って感じがしなくもないけどなんか目が怖い

 

「おーい全員集合! 打順と守備位置を確認するぞー守備位置と打順はこんな感じだ、目を通しておいてくれよ

 

1番 ファースト 木下秀吉

2番 ショート 土屋康太

3番 ピッチャー 吉井明久

4番 キャッチャー 坂本雄二

5番 ライト 姫路瑞希

6番 セカンド 島田美波

7番 センター 須川亮

8番 サード 福村幸平

9番 レフト 横溝浩二

 

ベンチ

君島博

近藤吉宗

 

「雄二。僕がピッチャーでいいの? 雄二とか瑞希がやったほうが良くない?」

 

ストレートは点数がいいほど早い。僕よりも適任がいるんじゃと思い尋ねると

 

「出来るんならそうするさ、だがいくらレガースがあっても300点近い点を受ければ1撃でレガースはおじゃんだ、それならコントロールが良いお前が投げるのが適任だろ?」

 

なんだ意外と考えてるんだ。その事に感心していると

 

「吉井君、それに坂本君。選べる変化球はカーブとフォークですがどうします?」

 

どうやら中林さんはスライダーを選んだようだ。それなら

 

「雄二、カーブで良い?」

 

「良いぞ、スライダーかフォークが残ってると思ってからな。緩急がつけれるカーブはありがたい」

 

その言葉に頷きカーブにすると寺井先生に告げ。円陣を組んでから僕達の大事な初戦が幕を空けた

 

 

 

その頃通常競技の100M走に参加している、はやては

 

(んーどれくらいで走れば良いんやろ?)

 

魔導師として考えれば運動神経は劣っているが、普通の女子生徒と比べれば運動神経はかなり良い部類に入る。

 

全力なら圧勝も考えられるがそれだと目立ちすぎると考え

 

(まぁ5割くらいで良いやろ?)

 

そんな事を考えスタート位置に並んだはやてだったが

 

「「あ」」

 

Aクラスからなのはがエントリーしていた。互いに顔を見合わせてから

 

(まぁ軽く流す程度で行こうよ)

 

(そうやね。軽くな)

 

念話で軽く打ち合わせしてから、走り出したのだが……負けず嫌いななのはもはやても途中で手加減と言う言葉を完全に忘れ。

 

全力で走り始めた、B・C・D・Eクラスの女生徒を圧倒したままゴールした2人は

 

「「どっちが1位ですか(や)!?」」

 

どっちが先にゴールしたかで揉めていたりする。精神は肉体は引っ張られるというが根が子供っぽい2人はそれが如実に現れていた

 

 

 

『プレイボール!!!』

 

寺井先生の声がグランドに響き渡り、試合が始まる。俺は自らの召喚獣の後ろに立ち配球の組み立てを考えていた

 

(明久は召喚獣を動かしなれてる。コントロールは心配ないが球速はない、やはり緩急をつけたピッチングしかないな)

 

スローとカーブを勘違いさせれれば、カウントもゴロも取れる。後は相手の点数しだいだな

 

「しゃーすっ! 試獣召喚!!」

 

Eクラスのトップバッターが挨拶しながら、バッターボックスに立ち、それぞれの点数が表示される

 

『Eクラス 園村俊哉 古典117点』

 

VS

 

『Fクラス 吉井明久 95点』

 

少々点数差はそんなにあるわけじゃないな、龍也達に加え姫路にも勉強を教わっている明久の点は少しずつ上昇してきてる

 

よほど組み立てを間違えなければ長打はないだろう。そんな事を考えながらミットを真ん中に構える

 

(? そんなど真ん中で大丈夫?)

 

アイコンタクトで尋ねてくる明久に

 

(大丈夫だ、向こうもなれない召喚獣を使っての1球目だ。様子を見に来るに決まってる)

 

ボールでも良いのだが、やはり1ストライク欲しい。そこでど真ん中なら驚いて引っ掛けてくれるかもしれない、だからこその真ん中だ

 

(よし、行くよ雄二)

 

(おう。こう明久)

 

あ、球速指示してなかったな、まぁ軽いストレーって!? おい!?

 

明久の投じた球はなんとスローボール。そんな甘い球で真ん中に投げたら

 

キンッ!!!

 

「ホームラーンッ!!!」

 

白球はグランドの外まで飛んで行った、いきなり1点取られてしまった

 

「ちゃんと投げろボケがぁーッ!!!」

 

「ちゃんと指示しろクズがぁーッ!!!」

 

この野郎何を考えてスローなんか投げやがった。ここはハーフストレートだろ!!!

 

「明久……いくらなんでも野球部相手にスローのど真ん中は駄目だよ」

 

秀吉が頭を抱えながら呟く、誰だってスローのど真ん中を見逃すような馬鹿はいねぇ

 

(くそ。次だ次! もう点をやらなければなんとでもなる!)

 

気持ちを切り替え次の配球を考える。出来れば変化球は温存したかったが、そうも言ってられない

 

(真ん中からカーブをアウトサイドに)

 

(了解、行くよ)

 

振りかぶり投じられた、白球はさっきと同じ軌道でミットに向かってくる。バッターの肩がピクリと動きスイングに入ったタイミングでボールが空気抵抗で緩やかにアウトサイドに向かって変化する

 

(よし! これで1ストライク取った!)

 

スイングに出ているからもうこのタイミングでの修正は効かない筈。だったが

 

(げっ!? こいつド素人か!?)

 

スイングし始めた召喚獣の身体がぶれる。思いっきり踏み込みすぎて、体制を大きく崩しながらも振り切られたバットは白球を完全に捕らえ再び場外にはじき返した

 

「ホームラーン!!」

 

くそっ! 今のはカウントを取れたはずなのに!

 

「ええい。この馬鹿やろうどもが!」

 

「そもそも吉井と坂本に任せた俺達が馬鹿だった!」

 

無理やり俺と明久を交代させた馬鹿たちの1球は

 

カキーン

 

再び場外へと消えた……

 

『EクラスVSFクラス』

 

3-0

 

いきなり3点のビハインド。これは不味い、タイムを願い。再び俺がキャッチャー。明久をピッチャーに戻す事を伝えると、姫路が

 

「あの、ピッチャーってそんなに変わっても大丈夫なんですか?」

 

野球に詳しくない姫路の問いかけに明久は

 

「うん、一応ベンチの人と交代しなければ交代は何回でも可能だったと思うよ?」

 

そう笑う明久を見ていた姫路は俺を見て軽く笑う。

 

(あーそう言うことか)

 

今の質問は明久の肩の力を抜くため、今の明久は完全に自然体に戻ってる。これなら後の打線は抑えれるかもしれない

 

「プレイッ!!」

 

寺井先生の合図と共に中林が打席に立ち、召喚獣を呼び出す。

 

(左打者か。となるとカーブは中に食い込んでくるから……)

 

インコースに投げるのは少々不安だ、まずはボールで良いから変化球のイメージを与えるか

 

(アウトコース。ボールゾーンからストライクゾーンの低めに、これはボールでも構わん)

 

(了解)

 

明久の投じた1球はボールゾーンから曲がってストライクゾーンギリギリに収まる

 

「ストライクッ!」

 

お、入ったか。ラッキーラッキー。今のは結構ギリギリだったからストライクが取れたのは幸運だ

 

(次はインコース高めにストレート、身体を起こさせるぞ)

 

すぐに頷き投じられた白球は残念ながら浮いてしまいボールになった

 

(さてと次は……)

 

アウトコースのカーブにインハイのストレートと来て、カウントは1-1。ボールかストライクかを考えていると

 

「ふー、大丈夫次は打つ」

 

大きく息を吐いてバットを構えなおせる。かなり打ち気に来てるな、なら

 

(真ん中カーブ。これは外せ)

 

投じられた3球目は真ん中から曲がり、インコースに食い込んでくる

 

「っこのっ!!」

 

カキン

 

弱い金属音を残して飛ぶ白球。勢いも飛距離もない

 

「島田!」

 

「オッケー! はい、秀吉!」

 

前進した島田の召喚獣がボールを掴み、そのまま秀吉めがけて投げる

 

パシン

 

「アウト!」

 

「くー見逃せばよかった」

 

今のコースは見逃すのが正解だ、打ち気に出たのが災いしたな

 

(うしっ、打たせて取るピッチングだな)

 

やはり明久はコントロールが良い。ここは捻じ伏せるのではなく、打たせて取るが良さそうだ

 

(うし、流れは決まったスローとカーブ中心で決めるぞ)

 

2回の科目は数学、これなら島田が投手を出来る。ここは遅い球になれさせて次を3人で斬る、この後の5番・6番も難しいコースへとスローとカーブに手を出しセカンドゴロとショートゴロで終わった。最初からこのピッチングをしてたら無失点だったなと後悔しながら、攻撃の事を考えた

 

 

 

そして通常競技2個目の100Mハードル走に参加している、ティアナとセッテはと言うと

 

「お前には負けません、オレンジ頭」

 

「上等、ストーカーには負けないわよ」

 

他のクラスの生徒など興味ない、こいつには負けないという対抗意識全開の2人を見ながら、龍也達は

 

「なぜあの2人を選んだんだろうな。雄二は」

 

「さぁ? 2人の仲の悪さを利用しようとしたんじゃないかな?」

 

反発しあうティアナとセッテはそれぞれ1位・2位でゴールしたのだが

 

「遅かったわね、ストーカー」

 

「ぐ、ううううう!! オレンジ頭ぁッ!!!」

 

僅かな差で敗れたセッテを馬鹿にするティアナ。やはり犬猿の仲を同じ競技に参加させるのは控えたほうが良いかも知れない

 

 

 

 

おお、秀吉凄い……僕はバッターボックスの秀吉を見てそう思った

 

キン

 

「ファール」

 

キン

 

「ファール」

 

さっきからこれで7球目のファール。スローもストレートもカットし、

 

「このっ!! いい加減に三振しなさい!!!」

 

投げ込まれた白球が壁に当たったように曲がり、外に逃げていく。Eクラスの変化球はスライダーだった、秀吉はそれを引きずり出すために粘り。そして

 

「シッ!」

 

カキーンッ!!!

 

センターへとはじき返したのだが

 

「抜かせるかッ!!!」

 

センターがもうダッシュして落下地点に回りこみ

 

パシン

 

アウトーッ!!!

 

あ、あ良い当たりだったのに惜しい。あのセンターが野球部じゃなかったら抜けてたと思う

 

「惜しかったね、秀吉」

 

「うん、今のは抜けたと思ったんだけどね」

 

「大丈夫大丈夫、きっとムッツリーニが「アウトーッ!!」ってはやぁ!? 一体何があったのさ!?」

 

あっという間にアウト、ムッツリーニ。君は何がしたかったんだい? 

 

「えーと次は僕だね! 何とか塁に出てくるよ!」

 

「うっし! 行って来い明久!」

 

「頑張ってね、明久」

 

「アキ、ちゃんとヒット打ちなさいよ」

 

美波と秀吉に激励されバッターボックスに立った、僕だったが

 

「げふう!? 肋骨が!? 肋骨に激痛がぁ!!!」

 

「ご、ごめん! スライダーがすっぽ抜けちゃった」

 

中林さんの投げたスライダーがすっぽ抜け、僕の肋骨をえぐった……痛む身体を引きずりながら一塁に向かう

 

(雄二ならホームランも狙える、というかホームランを打ってください)

 

肋骨が痛んで走れない。ここはホームランを打ってもらいたい。そんな事を考えていると点数が表示される

 

『Eクラス 中林宏美 古典105点』

 

VS

 

『Fクラス 坂本雄二 古典196点』

 

点数もさることながら雄二の運動神経は良い、十分ホームランを狙える点だ

 

「あらよっとぉーッ!!!」

 

カキーン!!!

 

甲高い音を立ててボールはグランドから消えた。2ランホームランだ。これで1点差何とかなるかもしれないと思ったが、この後瑞希は敬遠され、美波はサードゴロで交代となった。古典では美波は分が悪い、仕方ないとは言え惜しいな。

 

「おいおい。明久、この回の投手はお前じゃないぞ?」

 

「え? あ、そうだったね」

 

この回は数学だ。だから美波を投手にすると聞いていたのに、うっかりマウンドに向かってしまっていた

 

「もう、ちゃんとしてよね。アキ」

 

苦笑する美波は僕の肩を軽く叩いてから

 

「この回はウチがちゃんと抑えるから。任せてよ」

 

そう笑いながら右手を軽く上げる美波に

 

「うん、頼んだよ美波」

 

「ええ、頼まれたわ」

 

パシンと、美波とタッチしてからマウンドを降りると

 

「? どうかした? 瑞希」

 

僕をじっと見ている瑞希に尋ねると瑞希は小走りで近寄ってきて

 

「はい」

 

手を軽く上げる、それを見た僕は同じように手を上げて

 

「頑張りましょうね、明久君」

 

「うん。そうだね」

 

どうやら美波とハイタッチしてるのを見て、自分もやりたくなったというところだろうか? 普段は魔王属性で恐ろしいがこういう所は素直に可愛いと思う、出来ればずっとこういう素直な瑞希で居て欲しいなと思いながら。セカンドの守備位置に付く

美波の点数は214点とかなりの点数だ、はやてさん達と遊ぶようになってから魔王化は進んだがそれ以上に点数も良くなっている。何の心配もなく見ていられる。そう思ってみていると

 

「あ、痛そう」

 

1球だけ雄二がボールを取りこぼし胸に当たり、点数が表示された

 

『Fクラス 坂本雄二 数学253 レガース230点』

 

レガースの点が70点も減ってる。召喚獣の点数を減らさない為の防具なのでやはり点数の減りが激しいのは無理もないが、予想より減り方が激しい気もする。その後美波はきっちり抑え、この回をノーヒットで乗り切った。マウンドから降りて戻ってくる美波に

 

「お疲れ、美波。ナイピッチ」

 

僕がそう言うと美波は嬉しそうに笑いながら

 

「ありがと、アキ」

 

魔王化すると怖いけどやっぱり美波も可愛いなと思いながら

 

「凄い球だったね。流石だよ」

 

カーブを織り交ぜ、ストレートをより早く見せる単純だが基礎とも言えるピッチングは圧巻だった

 

「ふふ。さっき打つほうじゃ活躍できなかったからね。せめて守備で返さないとね」

 

そう笑ってウィンクする美波。なんだろう、美波がすごく格好良く見える。格好良く見える女子って凄いと思う。

 

「それじゃあ今度はこっちの攻撃だね」

 

「行って来るぜーッ!!!」

 

須川君が意気揚々と出て行くが結果はレフトフライ。福村君はヒットを打ったが、続く横溝君と秀吉が凡退してチェンジ。

 

そして互いに得点をあげれないまま。最終回になった

 

 

 

 

「ピッチャーは任せたよ。ムッツリーニ」

 

「……了解」

 

ピッチャーをやる気満々のムッツリーニに

 

「いやいや。ちょっと待て馬鹿ども、ムッツリーニはピッチャーじゃない、キャッチャーだ」

 

俺がそう言うと明久とムッツリーニは

 

「なんで? ムッツリーニが投げたら誰も打てないよ?」

 

「……暴投なんてへまはしない」

 

ピッチャーをやりたそうにするムッツリーニに

 

「駄目だ。取り損ねたらキャッチャーが吹っ飛ぶ」

 

ムッツリーニの保健体育は500点台、レガースがあっても消し飛ぶのは目に見えている

 

「あ、そっか。じゃあ仕方ないね、ムッツリーニ。打撃に活躍しなよ」

 

「……そうする」

 

納得したと言う表情のムッツリーニに

 

「それに相手はEクラスだ。俺が投げても何とかなるはずだ。それよりも攻撃の心配をしようぜ、俺達は1点差で負けてるんだからな」

 

そう笑いながら行ってマウンドに向かい、地面を成らすフリをしながら

 

(こんなところで躓くわけには行かないからな)

 

持ち物検査の日、俺はお袋に翔子に渡すようにと軽いものを手渡された。それが何かと言う確信はないが、俺の予想では翔子にとって大事なものに違いない。それを取り返すためにもこんな所では躓けない

 

(たっく、俺もなんだかんだで明久に似て来ちまったなッ!!!)

 

俺は代わり始めた自分の心境に苦笑しながら、召喚獣を操作してボールを投げ込んだ。案の定Eクラスは三者凡退で終わり、俺達の最後の攻撃の番が回ってきた

 

「しゃっ! 逆転するぞお前ら! この回は誰からだ!」

 

俺がそう言うと秀吉が手を上げながら

 

「私」

 

秀吉か運動神経は悪くない筈だ。上手くかみ合えば先頭打者出塁も可能だ。ランナーを溜めれば敬遠もしなくなる

 

「ヒットで良いからな」

 

「頑張ってね。秀吉」

 

俺と明久の言葉に続いて他のFクラスメンバーも

 

「木下! 石に齧りついてでも打つんだ!」

 

「気合を入れていけよ! 木下!」

 

「そうだ頑張ってくれ! お前に掛かっているからな!」

 

大声で気合を入れろ言ったFクラスの男3人は声を揃えて

 

「「「俺達のエロ本のために」」」

 

「ストラック、バッターアウッ!!!」

 

秀吉は脱力仕切ったスイングで空振り三振した。秀吉は酷く疲れた様子で戻って来た

 

「どうしたの秀吉? スイングに力が入ってなかったけど?」

 

「……あの激励凄く嫌。もうやる気とか全部どこか行っちゃったよ」

 

ふーと溜息を吐く秀吉。確かにあの激励はやる気が出るところか、脱力してしまうだろう

 

「仕方ないな。ムッツリーニ、頼むぞ」

 

「……任せろ」

 

自信満々な表情のムッツリーニがバッターボックスに立つと点数が表示される

 

『Eクラス 古河あゆみ 保健体育102点』

 

VS

 

『Fクラス 土屋康太 保健体育589点』

 

この点差、バットに当たれば場外まで楽に飛んでいくだろう。だけど恐らく、いや100%

 

「土屋君は凄いですね。これならホームランを打ってくれますよ」

 

野球のルールに詳しくない、姫路がガッツポーズを取りながら言う。

 

「ううん。多分ムッツリーニは打てないよ」

 

「そうね。多分駄目なのよ、瑞希。土屋は打てないわ」

 

明久と島田にそう言われた姫路が不思議そうな顔をする。全然野球のルールを理解してないな、俺は溜息を吐きながら

 

「1アウトランナーなしなら、敬遠する。ムッツリーニと勝負するなら次のバッターと勝負したほうが良いからな」

 

俺がそう言うと姫路はあっと言ってから

 

「わざとフォアボールするやつですか?」

 

「うん、そう言うことだよ。ほら見てみてよ」

 

明久が指差すと丁度4球目のボールが投げ込まれ。審判がフォアボールを告げる所だった

 

「Eクラスの作戦だと、ここで明久を打ち取って。雄二と姫路を敬遠。塁を埋めて島田と勝負って所かな?」

 

汗をタオルで拭いながら言う秀吉。誰も気付いてないと思っているかもしれんが、それ明久のタオルだ。段々秀吉がやばい感じの魔王に進化しつつあるような気がする

 

「で? 明久お前の点数は?」

 

俺がそう尋ねると明久は凄く遠い目をしながら

 

「124点」

 

「なに!? 何時の間にそんなに点数を上げやがった?」

 

俺の情報では明久の点数は40前後だったはず、俺が驚いて尋ねると明久は両手で顔を隠して

 

「姉さん手製のプリントの点数が30点切る度にお仕置きされて、服を剥かれて……ふふふ……ふふふ……もう嫌だよ、あんな地獄」

 

やばい、明久がトラウマでどっかの世界を見始めた。目が完全にうつろになってるし乾いた声で笑ってる。明らかに末期だ

 

「ちょっと! アキ! しっかりしなさい!!」

 

「明久君! 戻ってきてください!!」

 

「現世に戻ってきて、明久」

 

魔王3人が肩をつかみ。明久を前後に揺さぶり、正気に戻そうとしている

 

(首がありえんくらい動いてる)

 

漫画とかでしか見ないような首の動き方している。明久大丈夫なのか? あの揺らし方は相当危険だと思うのだが

 

「吉井君。急いでください!!」

 

寺井先生に呼ばれるが、まだ明久は現世に戻ってきていない。くそ、仕方ねぇ

 

「ちょっとどけ!」

 

明久を揺すぶっている魔王達から明久を取り上げ。バッターボックスに立たせる

 

「ふふふ……ふふふ」

 

「坂本君。吉井君はどうしたんですか?」

 

寺井先生にそう聞かれた俺は

 

「そのうち帰ってきます。問題ないので心配しないでください」

 

納得行かないという顔をしている寺井先生に強引にそう言い。控え室に戻る、正気に戻るかどうかは五分五分だが多分何とかなる

明久がトリップするなか続行されて試合で、ムッツリーニは1球目から盗塁し、わざとスピードを緩めてだ。そしてそれに掛かったEクラスのキャッチャーが2塁に送球した瞬間。腕輪の能力で加速したムッツリーニは本塁を奪い取った、完全なホームスチールだ

 

「「「おっしゃああああ!!!」」」

 

Fクラスの面々が叫ぶ、これで同点。逆転の目が出てきたと思って明久を見ると

 

「オネガイシマス、トランクス、トランクスだけはカンベンシテクダサイ」

 

(駄目だありゃ)

 

完全に目が逝っている。正気に戻る可能性は7・3と言ったところだろう。というか奴は姉に何をやられたんだ、俺は友人としてそっちの方が気になった、そんな中投じられた白球はミットに向かって飛んでいく、ど真ん中のゆるい球で絶好の狙い球だが、今の明久では駄目か?

 

「お仕置きは嫌だアアアアアッ!!! サモンッ!!!」

 

『Eクラス 古河あゆみ 保健体育102点』

 

VS

 

『Fクラス 吉井明久 保健体育124点』

 

ガッキーンッ!!!!!

 

とんでもない音を立てて白球は場外へとすっ飛んでいった。トラウマと何かがシンクロしたようだ、奴は本当にどんな生活を送っているんだ?

 

「あ、あれ? 僕何してたんだっけ?」

 

完全に記憶が飛んでいる明久に寺井先生が

 

「吉井君。走ってください。君のサヨナラホームランですよ」

 

「え? 本当ですか!? やったー!!!」

 

両手をあげてダイヤモンドを走る明久。黒歴史は完全に忘れているようだ、恐らく自衛の為に……

 

「ただいまー!!」

 

とりあえず今出来る事は明久をねぎらう事だろう……ホームベースを踏んだ明久を試合に参加していたFクラスの全員で出迎えた……

 

第86話に続く

 

 




色々と変えてみましたがどうでしたか? 気に入ってもらえたのなら良いのですが。次回は競技編になる予定です
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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