バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

85 / 158
どうも混沌の魔法使いです。今回は野球大会が始まる前の話をしたいと思います、色々とルールを変えてますし
こういうのも大事だと思うので、それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


第84問

 

 

 

第84問

 

「あいつら元気だな」

 

窓の外から見えるグランドを見ながらそう呟く。そこでは明久達が

 

「うっしゃあ! どうだ! 吉井」

 

「完璧だよ! このスライディングなら殺れる!!!」

 

故意に見えないラフプレイの練習をしていた。ただの高校生とは思えないほど洗礼されたラフプレイに若干の関心を覚えながら、窓の外を眺めていると

 

「あの努力の別の方向に向ければ、もっと成績も上がるでしょうに」

 

「それが出来ないから馬鹿なんやろ?」

 

はやて達も呆れながら窓の外を見て、苦笑してる。普通の高校生と言うのは中々常識外れの事をするようだ。そんな事を考えながらぼーと窓の外を見ていると、予鈴が鳴る。さてSHRまでに戻ってこれるかな? 遅れれば西村先生の鉄建の餌食になるから必死で戻ってくると思うが……

 

「急げー!! グローブ回収! バットは野球部のベンチに戻せ!!」

 

「走って!! 鉄人が来る前に!!」

 

案の定明久達が必死で野球道具を片付けている。それを見ながら壁に立てかけられた時計を見て

 

(あと5分、間に合うかぎりぎりだな)

 

そして5分後。雄二と明久他10名はギリギリで間に合ったが、残りのFクラス生は西村先生の拳骨で畳に沈んだ。

 

「さてではSHRを始める。今年の体育大会での生徒・教師交流野球大会について、一部ルールの変更があったのでプリントを配る

。全員目を通すように」

 

配られたプリントに目を通すと、そこには

 

『連絡事項』

 

『文月学園体育祭 親睦協議 生徒・教師交流野球』

 

『上記の種目に対し、本年は実施要項を変更し、競技に召喚獣を用いるものとする』

 

どうやら教師の皆様はFクラス生の暴走を危惧してルールを変更したようだ。この決断は妥当とも言える

 

(兄ちゃん。明久達の苦労が無駄になったようやね)

 

(だな、見てみろ。あの顔を)

 

Fクラス生の大半が絶望したという顔をしている、よっぽど逆襲したかったのだろうか? 私がそんな事を考えていると

 

「「ババァーッ!!!!」」

 

雄二と明久が教室の扉を蹴り破り走り出した。その余りの反応の速さにあの西村先生も止める事ができず。2人はFクラスを飛び出した。そして西村先生はぼそりと

 

「あの2人の課題を2倍するか」

 

どうやら追いかけるのではなく、課題を増やす方向にしたらしい。感情任せの行動はよくないぞと注意したんだが無駄だったようだ……なお明久は1時間目終了後に戻ってきて、雄二は2時間目の終わりに戻ってきたのだが、それぞれ西村先生の鉄拳で畳に沈んだ挙句、課題を2倍にされ滝のような涙を流す羽目になっていた……

 

 

 

「「ババァーッ!!!!」」

 

鉄人から配られたプリントを見た、僕と雄二はそのままFクラスを脱走し、学園長室の前まで走ってきて扉を蹴り破りながらそう叫んだ

 

「なんだい、クソジャリども。あさっぱらうるさいねぇ」

 

耳を押さえて、顔を顰めるババアに詰め寄りながら

 

「どうして今年から急に交流野球で召喚獣を使うなんて言い出すんですか!! これだと鉄人達に復讐出来ないじゃないですか!!」

 

相手の足にスパイクをぶつける殺人スライディングにタッチする振りをした正拳などが、全て無駄になる。そんな事を思いながらババアに言うと、ババアは呆れ顔で

 

「……あんたが今言った台詞で、ルールを変更した理由がわかると思うんだけどねぇ?」

 

僕の意見なんかどうでも良いと言いたげに、手元の書類に視線を戻すババアに

 

「この野球大会の為に。僕らがどれだけ故意に見えないラフプレーの練習をしてきたのか、僕らがどれだけ努力を重ねて来たか。学園長は知らないからそんな冷たい事が言えるんですよ!!」

 

今朝だってFクラスの皆で練習した、何とかしてルールを戻してくれないかと思いそう言うと

 

「その努力はもっと別の方向に向けな、クソガキ」

 

ふんっと鼻を鳴らしながら言うババア、僕達の努力を全否定。なんていう教師だ

 

「どうせこの変更は召喚システムのPRが目的だろうが……肝心のシステム制御はできるようになったのか?」

 

雄二が馬鹿にするように言うと、ババアが不機嫌そうに眉を寄せる。この人は教育者と言うよりかは研究者だ。自分の技術が馬鹿にされるのは納得行かないのだろう。これが博士ならあははっと笑って誤魔化すだろうが、ババアは明らかに不機嫌そうな顔をしたまま

 

「肝試しの時や夏休み中はともかく、今は完全に制御してあるさね。もし制御できていないなら野球を召喚獣にやらせるなんて不可能だろう?」

 

にやにやと笑うババア。それだけ自身があるんだろうが、肝試しのときは調整を失敗してお化けになったと聞いている。今回も調整に失敗して野球仕様になっただけじゃないんだろうか? 

 

「なんだい、その顔はまさかアタシが調整に失敗したとでも思ってるんじゃないだろうね?」

 

「まさにその通り「学園長!!!」

 

挑発するつもりはなかったが、僕がまさしくその通りですと言おうとした瞬間。学園長室の扉が勢いよく開く

 

「ぶべっ!?」

 

扉の近くに居た雄二は扉で顔を強打し、うずくまっている。あれはかなり痛そうだ

 

「学園長! 変化球と防具の設定ができましたー! YES! これで野球っぽく……おや? 明久君に雄二君? 何してるんだい?」

 

入って来たのは博士で嬉しそうにCDロムを掲げている。どうやら博士も協力したようだ

 

「やってくれるねえ。教頭、これでより我が高の召喚システムがアピール出来るって言うものだよ」

 

「はははは! 私はこの学園の教師ですからね! 協力するのは当然ですよ。で? 雄二君は何故顔を押さえているんだい?」

 

頭は良いが天然の博士は自分がしたことを理解できていない。雄二は博士のせいで顔面を強打したというのに……僕がティッシュ雄二を手渡しているとババアが

 

「と言う訳さね。本来は戦闘用の召喚獣を野球用にするなんて、完全に制御できてなきゃ出来る事じゃないんだよ、広さの拡張にバットやグローブ、それにレガースノ設定に変化球、まあこれは空気抵抗の問題もあって3球種だけだけど使えるようにした」

 

使えるようにしたって言うけど、それは博士の功績ではないだろうか? 博士の目の下にははっきりとした濃い隈がある。一体何日徹夜したんだろう? 僕がそんな事を考えていると事を知ってか知らずか、ババアは自分がどれだけ苦労したかを語り始めた……小難しい単語ばかりなのであんまり理解できなかったが

 

「つまりは、上手く制御できるようになったから自慢した言って事ですか?」

 

ババアの顔が引き攣り、博士はうん、そうだよ? と言ってハイな感じで笑い出した。博士は直ぐに寝たほうがいい、なんかやばい笑い方をしてるから

 

「明久、もうちょい気を使えって、図星を突かれてババアが凍り付いてるじゃねぇか」

 

雄二がニヤニヤと笑いながらそう言うと、ババアが再起動して

 

「ち、違うさね! これあくまでも生徒と教師の心温まる交流をだね」

 

慌てて取り繕うとするババアを横目に僕と雄二は

 

「あーそうだなー流石だなー」

 

「すごいですねー尊敬しちゃいますよ~」

 

ものすっごい棒読みで言うとババアは

 

「本当に腹正しいガキだね!!」

 

イライラとした顔で言うババアを見ながら

 

「でもそれなら。野球のルールを元に戻すのも可能なはずだよな? 今すぐ戻してくれよ」

 

「そうですよ。ルールを普通の野球に戻してください」

 

僕と雄二がそう言うとハイな感じで笑っていた博士が

 

「いやいや、それは無理なんだよ。もうスポンサーに召喚獣で野球をするって連絡してしまったからね」

 

博士に正論で論破されてしまった。確かに文月学園はスポンサーの支援によって成立している。だからいまさらルール変更なんてできるはずがない

 

「で、でもそれだと教師と生徒の差がありすぎるじゃないですか! そんな試合やる気が出ないじゃないですか」

 

教師と生徒の点差はかなりのものがある。あまりに教師が有利すぎるルールだ

 

「馬鹿いうんじゃないよ。この踏みづく学園は試験的かつ実践的な進学校だよ。点数の差が力の差になるのは当然さね」

 

確かにそう言う学校だと説明を受けた上で入学しているのでそう言われると、何の文句も言えないだが

 

「でもそれだと生徒が不利すぎます。ルールを元に戻してください!」

 

僕が納得できないというと雄二が

 

「あー待て明久、それはできないって博士も言ってるだろ?」

 

「ふん、中々物分りがいいじゃないか、普段もそんな感じで居てくれたらいい物を」

 

ババアは珍しく、大人しい態度の雄二に満足そうな表情で頷いているが。隣の僕には何かを企んでいるような、怪しい光を宿す雄二の目がしっかりと見えている。ここは雄二に任せたほうがいいと判断し雄二に任せる事にした

 

 

 

「だが学園長。そのルールでは生徒のやる気が出ないとは思わないか? やる気のないだらだらとした試合をされてはPRもクソも何もないと思うんだが?」

 

学園長と博士から聞いた情報から、何とか俺達が望む結果を出すための一手を考え口にする

 

「ふん、別にFクラスが……「いいや違う。2-Aの生徒だってやる気を出さないだろう。余りに俺達が不利過ぎる条件だからな」

 

俺がそう言うと学園長は黙り込み、何かを考えるような素振りを見せてから

 

「何が望みだい?」

 

「流石学園長。話が早い! 俺達の要求は試合でやる気を出せるように賞品を出して欲しいって事だ」

 

これだけが俺達が没収された物を取り返す。唯一のチャンスだ。明久が隣で不思議そうな顔をしている、俺が何を考えているか判らないのだろう。

 

(雄二? どういうこと?)

 

(ちょっと黙ってろ、今が勝負どころだからな)

 

小声で尋ねてくる明久に黙るように言う。ここで余計な事を言われると全てがおじゃんだ、学園長は呆れたという感じで

 

「これはまた随分とくだらない提案をしてきたもんだね、そんなもの急に用意できるわけないだろう?」

 

俺を馬鹿にするような顔でそう言う学園長に

 

「いや。用意は必要ないし、費用も掛からない……俺達の要求は1つだけ、俺達が教師チームに勝てたら、没収品を返して欲しい。

それが賞品でどうだ?」

 

学園長は顎の下に手を置いて考える素振りを見せる。もうちょっとおしてみるか

 

「それにあれだけ強引な持ち物検査についてスポンサーは知ってるのか?」

 

「ふん、白々しいさね」

 

ん? 白々しい? どういうことだ? 俺が訳が判らないという顔をしていると、学園長は

 

「そうかい、あんたじゃないのかい。じゃあ今のは忘れな」

 

忌々しそうに言う学園長はふんと1回鼻を鳴らしてから

 

「だけどね。不用品を学園に持ってきた、あんた達が悪いんじゃないのかい? もし没収されたくないのなら学校に持ってくるんじゃないよ」

 

学園長がそう言うが博士が

 

「ですが、余りに厳しすぎると教師。特に西村先生が言ってましたよね? それにスポンサーの受けも悪くなります、ここは雄二君の意見を呑んだ方がいいと思いますけどね」

 

博士にまでそう言われた学園長ははぁっと溜息を吐きながら

 

「良いだろう、ただし……生徒チームが教師チームに勝つ事が条件さね。負けたら没収品は返さない、良いさね?」

 

念を押すように尋ねてくる学園長に頷き

 

「ああ、その場合は素直に諦める。人間誰しも一方的に奪われるというのは納得行かないんだ、1度でもチャンスがあれば諦めもつくってもんだ。この条件でどうだ」

 

明久に目配せをすると明久は深く頭を下げながら

 

「お願いします。学園長先生」

 

「俺からもお願いします、学園長先生」

 

こういう時に必要なのは誠意を見せること、俺も深く頭を下げて頼み込む。

 

「そうさねえ……体育祭には海外からの来賓も来るし、それであんたらFクラスが大人しくなるって言うのなら、そう悪いもんじゃないね」

 

うんと頷きながら学園長は今回だけだよと付け加え

 

「良いだろう。その条件呑もうじゃないか」

 

よしっこれでなんとか没収品を取り返すチャンスは手にした。後は俺達に有利なルールを約束させれば良い

 

「それならば、あとはルールの明文化だな。賞品が懸かってるんだ。こんなルール無かったとか言われるのは困るからな」

 

わざと挑発するように言うと学園長は

 

「それはこっちの台詞だよ。クソガキ」

 

案の定学園長は若干の苛立ちを見せる、ここまでの流れは大体俺の予想とおりだ。後は若干の挑発を交えながらルールを決めれば良い。そして決定したルールはこうなった

 

召喚野球大会ルール

 

●先行・後攻を決めた際に先攻から、スライダー・カーブ・フォークの内1球種を選択し持ち球に出来る(ただし点数によって変化の切れや制球に影響が出る)後攻は先攻が選ばなかった球種から1つ選択し持ち球とし、審判役の教師に申告する事

 

●防具(レガースとマスク)はどの学級も300点の持ち点としキャッチャーに装備させる事。防具の持ち点が0になった場合は審判に申告し、テストの持ち点を半分にし、再び点数を補充する事ができる

 

●各イニングでは、必ず授業科目の1つを用いて勝負をする事

 

●各試合において、同種の科目を別イニングで再び用いる事は認めない

 

●立会いは試合に参加していない教師が勤める事。また試合中に立会いの教師が移動してはならない

 

●召喚フィールドの有効圏外へ打球が飛んだ場合、フェアであればホームラン。それ以外の場合はファールとする

 

●試合は5回までとし、同点の場合は7回まで延長、それでも決着がつかない場合は引き分けとする

 

●事前に出場メンバー表を提出する事。ここに記載されていない物の試合への介入は一切認めない。なお、これにはベンチ入りの人員および立会いの教師も含む

 

●人数構成は基本ポジション各1名とベンチ入りの2名の計11名とする

 

●進行においては体育祭本種目を優先する。競技の時間が重なりそうな場合は事前にメンバー登録を変更する事

 

●その他の基本ルールは公式野球規則に順ずる

 

 

 

学園長との交渉を終えてFクラスに戻る途中、僕は雄二に疑問に思っていたことを尋ねる事にした

 

「雄二、さっきの話なんだけど」

 

「召喚野球の話か?」

 

久しぶりの真面目な話で疲れたのか、肩を回していた雄二は直ぐにそう返事を返した

 

「うん、アレってさ。一見合理的な判断に思えたけど、それって僕らに勝てる可能性があればってことだよね?」

 

勝てば手にはいるが、はっきり言って教師チームの戦力を前に考えれば、僕達の点数なんてなんの役にも立たない。と雄二に言うと、雄二は少しだけ感心した素振りを見せてから

 

「ああ、お前の言うとおりだ、あの話は野球で勝てなければ何の意味も持たない、だからこそババアも乗ってきたんだろうな」

 

じゃあなんでそんな不利な条件を言い出したのだろう、と思いながら

 

「やっぱりそうだよね。相手が相手だし僕らが勝つにはよほどの事がないと」

 

「まぁ当然だよな。龍也達は没収されたものが無いから、やる気を見せてくれるとは思えねぇ。まぁ相手次第では頼めば力を貸してくれるだろ? 例えば……Aクラスとかな?」

 

Aクラスにはなのはさんとフェイトさんが居る。この2人が出てくると知れば間違いなくセッテさんは力を貸してくれるだろう。だがそれ以外の試合では? と考えるとやはり助力を頼むのは難しい。

 

「で? 今度は何を企んでいるの?」

 

「ふふん、流石に判ってるじゃねえか。俺は勝てる見込みの無い勝負をするつもりは無い、ちゃんと勝つための方法は考えてるさ」

 

自信満々な表情で言う雄二を見て

 

「そっか、じゃあ任せるよ」

 

僕がそう言うと雄二は当てが外れたのか、少し不思議そうな顔をして

 

「聞かないのか? 俺が何を考えてるかを?」

 

「んー聞いてもいいけど、多分忘れるから。試合中にでも聞くよ……で雄二がここまでするって事は没収されたのはMP3プレーヤーだけじゃないんでしょ?」

 

僕は携帯ゲーム機と写真と小説を持っていかれた。雄二がここまでするということは、他にも何かを没収されたと見て間違いないだろう

 

「特級品の写真集3冊……それと多分」

 

雄二はここで1回黙り込んだ。多分? 多分なんだ? 雄二は深く考え込んでいるのか、いつも以上に難しい顔をして考え事をする素振りを見せている。一体何を没収されたのだろう?

 

「まぁこの多分のほうは可能性の話だから、そう気にしてくれるな。問題は特級品の写真集のほうだ」

 

雄二は僕の視線に気付いたのか強引に話を変えた、無理に聞くと怒りそうなので、雄二が話してくれるのを待つことにしよう

 

「はぁー本棚とか天井裏とか、完全防水にしたうえで熱帯魚の水槽に沈めたりして。色々と工夫したんだがな」

 

「それさ? もう見たいときに取り出せるレベルじゃないよね?」

 

どう考えても気軽に取り出せる場所だとは思えない。

 

「俺はお前みたいに魔王が怖くて、聖典を諦めるなんて真似は出来ないからな」

 

「あはは。僕も1人ならそう簡単には諦めないけど、4人だからね、下手するとマジで殺されちゃうから」

 

武闘派の美波に姉さん、条件付で攻撃してくる秀吉に、薬や混ぜ物上等の瑞希と誰に見つかっても、魔王ネットワークで全員に知られ。僕の命は無い、ならば聖典を捨てるくらいする。誰だって命は大事だ

 

「俺はその分1人だから楽だな。それにあの聖典はそこまでして守る価値のあるものだったし」

 

「そっか、雄二がそこまで言うのなら、ぜひ見たかったよね。霧島さん」

 

「……うん」

 

気配を殺し、殺気を出すという極めて珍しい歩法で歩いていた霧島さんに話しかける。雄二は思いっきり顔を引き攣らしている、僕のみ間違いでなければ、殺傷に極めて適したナイフの刃先が雄二の肝臓のほうに向けられている。下手な行動を取ればブスリだろう

 

「じゃ、そう言うことで、後は雄二と霧島さんの2人で仲良く」

 

「頼む。明久、俺を見捨てないでくれ」

 

僕の腕を鷲づかみし、見捨てないでくれと言う雄二だが、このまま僕がここに居ても、僕が見れるのはグロテスクな光景だけなので出来ればFクラスに戻りたいところだ

 

「……雄二を甘く見ていた。今度は水槽や植木鉢、そして雄二が入浴中の水槽の中まで詳しく探す」

 

霧島さんの言葉の中に突っ込み満載の言葉があったがスルー。深く聞かない方が良いに違いない、だと言うのに

 

「おい待て。最後の1つは確実に目的が捜査じゃないだろ?」

 

雄二が空気を読まずにそう言う、なんでこいつは魔王の怒りを買うような発言をするのだろう? そして霧島さんは

 

「……私には雄二の成長を確認する義務がある」

 

「……雄二、浮気は止めたほうがいいよ。一緒にお風呂まで入ったのなら、雄二は霧島さんをお嫁さんにしてあげるべきだよ」

 

「待て。明久、翔子の味方になるな。と言うか風呂と言っても中学までだ」

 

それはどうなんだろう? 僕の感覚的に責任を取るべきのレベルだと思うのだが

 

「……ね? 雄二。吉井もそう言ってくれてるし、雄二は責任を取るべき」

 

「何が責任だ! お前がいつも風呂場の鍵を破壊して突撃してくるだけだろうが!」

 

あ、そうなんだ。やっぱ魔王化すると色々と価値観が変わっちゃうんだね。僕の周りの魔王が霧島さん見たいにならないといいんだけど……

 

「……とりあえず、雄二話を聞かせて「誰が言うものかああああ!!!!」

 

雄二はそう叫ぶと霧島さんの腕を振りほどいて走り出した。直ぐに霧島さんも走り出すと思ったのだが立ち止まったまま

 

「……ねぇ。吉井、召喚野球大会で教師チームに勝つと没収品が返してもらえるの?」

 

「ん? うん。そう言う話らしいけど……どうしてそんな事を聞くの?」

 

霧島さんも何か没収されたのかな? と思いながら尋ねると

 

「……そう、ありがとう。じゃあ私は雄二を追いかけるから」

 

そう言うと長い長髪を翻し雄二の後を追いかけていく、霧島さんの背中を見ながらFクラスに戻って歩いていると

 

「ッぎゃああああああああッ!!!!!」

 

廊下から雄二の悲鳴がこだましてきた……

 

「まぁ雄二だし大丈夫でしょ」

 

雄二の耐久力なら大丈夫だろうと判断し。Fクラスへと戻った瞬間

 

「ふんっ!!!」

 

「がふ!」

 

鉄人の強烈な拳骨に意識を吹き飛ばされた……そして目覚めると今日の課題が2倍になっていた。久しぶりにマジ泣きした……

 

第85問に続く

 

 




第7巻の話の変更点の1つですね。雄二は翔子の没収品の1つにめぼしが着いているですね。こんな感じで7巻の内容はちょっとずつ変わって行きます。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。