バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はスバルとか、リインフォースが出てくる話をしようと思います。
それでは今回の更新もどうか宜しくお願いします



第81問

 

第81問

 

夏休みも終わりに近付いて来たある日、俺と明久は

 

「「ぬおおおおおッ!!!!!」」

 

商店街を全力で駆け抜けていた、その理由は言うまでも無く

 

「どうだ!? 明久、まだ来てるか!?」

 

「ピッタリ来てるよ! なんであんなに速いの!?」

 

両手を全力で振り、全力で走っているのだが……全く引き離せないどころかどんどん距離を詰められている

 

「……雄二浮気は許さない」

 

「アキ、止りなさい。今ならアッパー1発で許してあげるわよ」

 

後ろからの冷ややかな声に俺は

 

「だとさ! 止ったらどうだ明久!?」

 

「貴様!? 僕を見捨てるのか!? 今追いかけられてるのはお前のせいだろう!?」

 

それを言われると何も言えない。ついさっき翔子に拉致られ買い物に連れて来られ、同じ様に買い物に来ていた明久と遭遇したのだが。

翔子と島田が話しているうちに逃げようとした際、明久にぶつかり偶然通り掛かった女性に寄りかかってしまい。それを浮気と断定され、今俺と明久は生死を賭けた追いかけっこをしているのだ。

 

「良し、こっちだ! 雄二」

 

「待て!? そっちに道は無いだろう?」

 

回れ右して走って行く明久の後を追っていくと、案の定行き止まりかつ、山へ登る階段の踊り場に出てしまう

 

「ほれみろ! 行き止まりだろうが!? っておい? お前何してる?」

 

ごそごそと何かを取り出している明久は階段の手摺に何かを取り付け、ベルトに通し

 

「良し! じゃっ! 先行くから!」

 

俺に自分が着けている同じ様な何かを手渡し。手摺を越えて一気に下に落ちて行った。それを見て気付いた

 

「これってあれか!? 登山用のあれか!?」

 

テレビとかでよく見るあれ。名前は知らないが山を降下するときの奴、同じ様にそれを身につけ、俺は階段の踊り場から飛び出した。下の公園に辿り着くとそこには

 

「何してるんだお前ら?」

 

呆れ顔の龍也に

 

「「お前こそ何してる!?」」

 

龍也は両手にミットを持っていて、良く見るとスバルも一緒に居た。

 

「何って。トレーニングだよな?」

 

「そうですね。トレーニングですね」

 

うんうんと頷きあう、龍也とスバルを見て、俺と明久は急に力が抜けてその場にしゃがみ込んだ

 

 

 

 

あの人たちって確か、龍也さんが通ってる学校の人だよね? ぜーぜーと荒い呼吸を整えている2人を見ていると

 

「ほれ。来い」

 

ミットを構えている龍也さんに促され。構えを取り拳を繰り出す

 

バンッ!!!!!!

 

公園に響き渡る音に倒れこんでいた、2人が何ごとか私を見て

 

「え? 今の君が?」

 

「そうですけど?」

 

うーん、最近ミット打ちしてないから。なんか鈍いなぁと個人的に思うのだが

 

「凄いねー、あんな音聞いたこと無いよ!」

 

「ああ、俺もだ」

 

ふーん、そうなんだ。まぁ褒められるのは悪い気しないかな、左手を軽く握りジャブを繰り出す

 

バーンッ!!!

 

「鈍いな、鈍ってるんじゃないのか?」

 

「かもですねー。切れが無いのが判りますよ」

 

「「あれで!?」」

 

何時もの肩まで来る手応えが無い。走りこみこそやっていたがミット打ちはしていない。そのせいで明らかに切れが悪い

 

「まぁ良い。ほれ、打って来い」

 

ミットを構える龍也さんの両手だけに意識を集中して左右の拳を繰り出す

 

バン! バンバン!! 

 

「はいはい、もっと腰を回して。体重移動もちゃんとして」

 

「はい!」

 

龍也さんの言葉に頷き。しっかりと体重移動をしながら拳を繰り出す

 

バン! バンバンッ!!! ズバンッ!!!

 

徐々にミット打ちの音が鋭くなってきた。ミットの音が響くたびに驚いた表情をする明久と雄二を見ながら

 

(うーん。やっぱ龍也さんのミット打ちが一番良いなあ)

 

打たせる側の気持ちを考えていてくれるので、打つたびに腰の切れが良くなるのが判る

 

「はい、ラスト3分! 集中して」

 

「はいっ!!!」

 

小刻みに動くミットに集中して、しっかり踏み込み拳を繰り出す

 

ビシュッ!!!

 

空気を切り裂く鋭い音と公園に響き渡る音。龍也さんの家だとユナちゃんとかがビックリするから。思う存分打てなかったけど、今なら全力でも行ける

 

「でえぃッ!!!!!」

 

ズドーンッ!

 

渾身の正拳を繰り出す。肩にまで突き抜けるような衝撃。これこれ、これがないとね

 

「はい、休憩」

 

「はーい」

 

芝生に寝転がり大きく息を吐く。身体を動かすのは気持ち良いなぁ……そんな事を考えながら青空を見ていると、龍也さんが

 

「その服装で寝転がるのは良くないと思うぞ?」

 

「ほえ?」

 

今日の服装はスカートだけど……はっ!? 慌てて身体を起こすと

 

「「……」」

 

気まずそうに目を逸らす雄二と明久を見て、ばっと飛び起き拳を鳴らしながら

 

「見ました?」

 

全力で拳を叩き込む事も視野に入れながら尋ねると

 

「何の事か判らないな。なっ明久」

 

「う、うん! 白なんて見て……あっ!?」

 

「うんうん、正直なのは良いと思いますよ? とりあえず、歯を食いしばって目を閉じてください。右ストレートを叩き込んであげますから」

 

拳を握り締めながら近寄る。それを見て顔を青褪める雄二と明久に龍也さんが

 

「まぁ、言い出したら聞かないので責めてこれを」

 

赤と青のヘッドギア。2人は覚悟を決めた表情でヘッドギアを身につけ。両手を後ろに回し、目を閉じた雄二目掛け

 

「こんのおおおおッ!!!」

 

全力の右ストレートを叩き込むと

 

「へぐぅッ!?!?」

 

回転しながら上に舞い上がってから落下してきた雄二は

 

「ぶくぶく」

 

泡を吹いて意識を失っていた。ちょっと気が晴れました、では次は

 

「あ、あの、お手柔らかにお願いしますッ!!」

 

頭を深々と下げる明久に私は

 

「うん、無理。死んでください」

 

そのような言葉で許せるほど、乙女の心は単純ではない。私は躊躇うこと無く全力で右拳でアッパーを放った

 

「へぶうっ!?」

 

奇声を上げて吹っ飛ぶ明久を見て。まだやるせない気持はあるが多少は気が晴れました

 

「ふーまぁこれで良しとしますか」

 

「聞こえてないぞ?」

 

龍也さんの突っ込みはスルー。そもそもパンチ一発でチャラなのだから2人には感謝して欲しい。もしこれがティアやセッテならフルボッコの上に更にフルボッコにしてもお

かしくないのだから

 

「アキ見つけ……てっええ!? 何で泡吹いてるの!? 大丈夫!」

 

「……龍也? それともスバルがやったの?」

 

敵意を見せながら尋ねてくる女の人に私は

 

「いえ。その……スカートの中を覗かれたもので」

 

私がそう言うとさっきまで心配そうにしていた2人は無言で、気絶している2人の頭を鷲掴みにしズルズルと引き摺って去って行った

 

「あれ、どうなるんですかね?」

 

六課で何度も見た光景に似た物を感じながら、隣の龍也さんに尋ねると

 

「さぁな。私達が気にする事じゃないと思う、あれは明久達の問題だからな」

 

故意ではないとは言えスカートの中を見られた以上。許せる物ではない、後はあの2人に判断に任せよう。そんな事を考えながら荷物を片付けていると

 

「「うっぎゃああああああ……」」

 

遠くから聞こえてくる悲鳴を聞きながら

 

「この後買い物に行きたいなーなんて」

 

「はいはい。じゃあ行くか」

 

何も言わず了承してくれる龍也さんの手を握り

 

「じゃあ行きましょう!」

 

引っ張りながら歩き出すと龍也さんは

 

「判った。判ったからそう引っ張るな」

 

六課の用事でなのはさん達は一時的に六課に戻っている。こういう機会を逃さない手は無い、私はそんな事を考えながら一時的にとは言え龍也さんを独占できる事に、密かな優越感を感じながら歩き出した……

 

 

 

 

「あの兄上様。少し良いでしょうか?」

 

破けてしまったリヒトのシャツを縫っていると廊下からリインフォースの声がするので

 

「ああ。良いぞ」

 

縫いながら良いぞと言うと「失礼します」と声を掛けてから入って来たリインフォースの方を向いて

 

「何か用か?」

 

縫っていた糸を噛み切り、シャツを畳ながら尋ねるとリインフォースは

 

「あ、あのですね! 買い物に行きたいので一緒に来てくれますか!」

 

スカートを握り締めながら言うリインフォースに

 

「構わない、準備する絡まってくれ」

 

「は、はい! 廊下で待ってます!」

 

嬉しそうに微笑み廊下に出て行くリインフォース、廊下で待ってるって言ってたし。あまり待たせないほうが良いなと思い、部屋のラックにかけてあったコートを着込みすぐに廊下に出た

 

「あ、もう良いんですか! それじゃあ早速行きましょう!」

 

珍しく私の手を掴んで歩き出すリインフォースの背中を見ながら

 

(最近あんまり話してなかったし寂しかったのかな? もしそうだったら悪い事をしたな)

 

リインフォースはしっかり者だがそれと同じくらい寂しがりやだ。その反動からの積極性だと思い私は悪い事をしたなと思いながら。引かれるままに歩き出した

 

 

 

 

 

ど、どうしようかな……

 

兄上様を誘ったのは良いけど……買い物を口実に誘った物の実際は

 

(欲しい物とかない)

 

基本的に私に欲しい物とか無い、ぶらぶらと街を歩きながら何を買おうと考える

 

(えーと服はない)

 

私は兄上様と同じく服等着れれば良い程度の認識。主はやてやヴィータとシグナムと買いに来ないと何を買えば良いかなんてまるで判らない。じゃあ何を買う?

 

(本くらいな物だろうか?)

 

料理とか裁縫の本が欲しい。とにかく今の私には料理も裁縫も兄上様はおろか、主はやてやヴィータ、シグナムよりも劣っている。下手をすると

 

(リィンとかより下手かもしれない……)

 

アザレアは裁縫得意だし、アギトは多少男勝りだが料理も出来る。リィンは自分の好きな物オンリーだがバリエーション豊富。ユナは紅茶を淹れるのが上手い。リヒトは……特にない。しいて言えば食いしん坊?

 

(あ、あれ? 私もしかして1番劣ってる?)

 

よくは判らないが女子力と言うものでは妹にも劣ってるかもしれない。とへこんでいると

 

「なに100面相してるんだ?」

 

「え、ええ? してました?」

 

顔を隠しながら尋ねると兄上様は

 

「うん。悩んだり、微笑ましい物を思い出した顔したり、泣きそうになってたり、へこんでたけど……何かあったか?」

 

は、恥かしい!? 見られてた……絶対家だと布団に篭ってしまうパターンだ。

 

「え。えーと、まぁ色々と考える事があったので」

 

とりあえずとそう言うと兄上様はそうかと言いながら

 

「悩み事なら聞くからな」

 

「は、はい。相談できる事でしたら、そうさせて頂きます」

 

まぁ私が抱えている悩みは相談できるような物ではないが、兄上様の気持ちを無碍にするのも何なのでそう言うと、前から

 

「明久、どこに逝こうか?」

 

「……字が違うと思うんだ。秀吉」

 

ずるずると頭を鷲掴みにされ引き摺られている、えーと確か明久と怖い笑みでその頭を鷲掴みにしている、秀吉? が歩いてくる

 

「お? 明久に秀吉じゃないか、何してるんだ?」

 

予想とおりその2人に話しかける、兄上様。これで恐らく2人きりで買い物と言うのは無くなったが

 

(間が持つかもしれない)

 

私は喋るの得意じゃないし、1人で兄上様を誘った事にも後悔し始めてたし、実に良いタイミングで遭遇出来たと心から安堵した

 

 

 

 

 

前から目立つ2人が来たなと思ってたら。やっぱり龍也とその妹さんだった、2人とも長い銀髪に黒一色と目立ちまくっている。かと言う私も

 

(なぁ? あの2人何が合ったんだ?)

 

(どう見てもあれだろ? 浮気の断罪だろ?)

 

左手で鷲掴みにし引き摺っている明久のせいで色々言われてるが、別にそこまで気にしない

 

「で? なんで明久を引き摺ってるんだ?」

 

「うん。ちょっと昨日の事を島田と姫路から聞いて」

 

なんでもスバルさんのスカートを覗いたとか、それはちょっと度し難い。これが島田とか姫路ならそこまで気にしないが、その2人以外となるとどうにも許せない物がある

 

「それは誤解……あいたたたた!?!? 頭蓋骨! 頭蓋骨が軋んでる」

 

ぎゃーと叫ぶ明久は無視。これ以上何処かでフラグを立てられるは面白くない。それが龍也側の人間だとしてもだ

 

「まぁまぁ。あれは事故だったんだし、そこら辺で許してやれよ」

 

あははと笑う龍也を見て、暫く考える

 

「じゃあ、龍也拳骨1発で許す」

 

「死ぬ!? 死んじゃうよ!? 秀吉」

 

ジタバタと暴れる明久の目を覗き込んで

 

「1発でチャラにしてあげるのに。これ以上駄々を捏ねるなら……本気で絞めるよ」

 

「はい! どうぞ!」

 

私の手を振り解いて立ち上がり歯を食いしばる明久

 

「じゃあ、龍也お願い」

 

「うん。まあお前がしろって言うならするけどさ? 良いのか?」

 

「良いよ、殺さなければ」

 

「秀吉はどちらかと言うとはやて側だったんですね」

 

うんうんと頷いている妹さん、えーと確かリインフォースさんに

 

「まぁ似てるかもとは思うよ?」

 

「いえいえ。そっくりです、その真っ黒い笑みとか」

 

「あはは、そんなぁ」

 

私とリインフォースさんが笑い合ってる中

 

「歯ぁ食いしばれぇ!!」

 

「げふゥッ!?!?」

 

龍也のアッパーで明久が宙を舞った。色々と言いたい事はあれ以上痛めつけるのは良くないので止めておこう

 

 

 

 

 

「痛い」

 

龍也とスバルさんのアッパーを2日連続で喰らった顎を擦りながら呟くと

 

「ほい、アイス」

 

「あ、ありがとう龍也」

 

投げ渡されたアイスを受け取り、封を開けながら

 

「リインフォースさんと、秀吉は?」

 

そのアイスを齧りながら尋ねると龍也は

 

「あそこで話してる」

 

僕達から少し離れた所でなにか話をしているのが判る。リインフォースさんの肩を叩いて励ましているように見える

 

「何の話をしてるのかな?」

 

あ、小豆アイスだ。バニラと小豆の味が美味しいなあ。

 

「同性同士の話だとさ。少し待ってた方が良いとおもう」

 

ごそごそと抹茶アイスバーを取り出し齧っている龍也と並んで待っていると

 

「ごめんね、お待たせ」

 

「お待たせしました」

 

リインフォースさんと秀吉が並んで戻ってくる。

 

「ほい。アイス」

 

「ありがと」

 

龍也が差し出した袋からアイスを取り封を開けながら秀吉が

 

「色々と小物を見に行きたいんだけど、龍也も明久も良い?」

 

アイスを齧りながら尋ねてくる秀吉に

 

「僕は構わないよ、特に予定も無いしね」

 

そもそもぶらりと街に出てきた所を秀吉に拉致されたんだし。特に予定は無い

 

「じゃあ行きましょう」

 

「? お前も小物が欲しいのか?」

 

龍也が首を傾げながらリインフォースさんに尋ねると

 

「ええ、それに秀吉さんと一緒ならば色々と話も出来ますしね」

 

ふーんと呟きながら龍也は自分のアイスのゴミを近くのゴミ箱に入れて

 

「じゃあ、行くか」

 

「ええ」

 

僕と龍也は秀吉とリインフォースさんに案内されながら移動し始めた

 

「龍也僕凄く居心地が悪いよ」

 

「そうか、奇遇だな、明久私もだ」

 

秀吉に連れてこられた店はピンク色に塗装された壁が印象的な、女性専門の小物店のような店だった

 

「こういうのはどうかな?」

 

「……似合いませんよ」

 

秀吉が勧める小物に難しい顔をするリインフォースさん。秀吉の手の小物は鮮やかなピンク色の髪留めだった、どちらかと言えばクール系のリインフォースさんには似合わない小物だと僕も思うのだが

 

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。そういう小物をつけてるほうがポイントアップだよ」

 

「そういうものなんですか?」

 

「そうそう、後はブレスとかどう?」

 

リインフォースさんをコーディネイトするのを、楽しんでいるように見える。こういうところを見るとやっぱり女の子だなと思う

 

「明久、私にはこういうのどうかな?」

 

アクセサリーを見せて笑いかけてくる秀吉に

 

「そ、そうだね、うーん……」

 

細い銀の鎖の花びらの形をしたペンダントトップ。お洒落な感じで良く似合うと思う

 

「良いと思うよ?」

 

「ほんと? じゃあ買っちゃおうかなー♪」

 

楽しそうに笑う秀吉を見ながら

 

(偶にはこういうのも良いかなー)

 

大体言い争いをしていると怖い顔をしているが、こうやって女子らしい事をしてる秀吉はお世辞抜きでも可愛い。ぼんやりとそんな事を考えていると

 

「あ、兄上様。こういうのはどうでしょうか?」

 

髪留めを差し出しながら龍也に話しかけるリインフォースさんも実に可愛らしい笑みを浮かべている

 

「ふむ。良いと思うぞ?」

 

「本当ですか? じゃあ私これを買います」

 

にこにこと笑うリインフォースさんを見ながら龍也は

 

「まぁ偶にはこういうのんびりしたのも良いなあ。居心地は悪いが」

 

「うん、そうだね。居心地最悪だけど、こういうの良いと思うよ」

 

じろじろと見られるのは辛いが、楽しそうにしてる秀吉やリインフォースさんを見ていると

 

「あ」

 

龍也が不味いなと言う感じで呟く。何ごとかなと思い振り返ると

 

「アキ? なにしてるのかな?」

 

「明久君?」

 

魔王の笑みの美波と瑞希がにっこりと笑いながら拳をこっちに向けていて

 

「龍也。じゃあ、逝って来るよ」

 

「字が違うぞ?」

 

「良いんだよ、多分三途の川直行だから」

 

逃れる事の出来ない死の気配を前に僕は覚悟を決めた……

 

なおこの後僕は、僕がいない事に気付いた秀吉によって救助される事になるのだが、救助されるまでの20分間容赦の無い関節技と小言で精神的・肉体的に大ダメージを受けた

 

 

 

明久が三途の川をメドレーリレーしてる頃

 

「うーん。どういう意図があるのかしら?」

 

海外で経営コンサルタントの仕事をしている、明久の母は真剣に頭を抱えていた。最近軌道に乗ってきたコンサルタントの仕事。今日は最近私達の会社の業務提携をしないか? と声を掛けてきた企業の事を考える

 

「勢いには乗ってるけど。他にも良い会社はあるはずなのに、何で家なのかしら?」

 

今はお父さんが営業に出てる。というか無理やり行かせた。そろそろ向こう側の会社の代表が来る、明久と同じくらい天然属性のお父さんが入ると話がこじれるので、無理やり追い出した。

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

読んでいた書類を片付けながらどうぞと言うと

 

「失礼します」

 

(かなり年下の声ね?)

 

代表が来ると聞いていたが、今の声の感じは良くて20代。悪いと10代だろうと思っていると、扉が開きそこから姿を見せたのは

 

「え?」

 

かなり成長しているが間違いない、ずっと昔に家の近所に住んでいた女の子だった

 

「お久しぶりです、小母様」

 

「え、ええ。そうね」

 

丁寧に頭を下げるその子は、ゆっくりと私の前の椅子に腰掛け

 

「今日は××グループ。次期総裁としてお邪魔させていただきました」

 

それから提示された業務提携の条件を見て

 

「……なんとまぁ随分と個人的な要望が混じっている様に見えるけど?」

 

「ええ。お恥ずかしながら、私の要望があっての業務提携です」

 

にっこりと微笑んでいる。確かに破格の条件、ただ1つの条件に目を瞑ればの話だが

 

「悪いけど。この条件は呑めないわ、一応息子の進路に関係あるから」

 

私達の会社に関係のある条件なら、私の一存で決めれるが。業務提携の条件の中の1つ、しかもこれを受け入れなければ、全ての話はなかった事にと言われて話された。内容は今手元に居ない息子が条件になっている。幾ら親とは言え息子の進路までは決める事は出来ない

 

「それは困りました。もし断られたら……貴女達の会社を潰さないといけないじゃないですか」

 

「……脅し?」

 

「いえ? 結果としてですね。この周囲の国で××グループの傘下に居ない企業は居ませんから」

 

断れば仕事が無くなる。私は溜め息を吐きながら

 

「貴女がなんで私の息子に執着するのか判らないけど。本人の気持ちが大事だから、はいそうですかとは言えないわよ」

 

「それもそうですね、では近い内に私からアキ君に話をするとしましょう。どうせ夏休みが終るまでには日本に戻らないといけないですから、そこでアキ君と会えるでしょう」

 

「待って。貴女文月学園の生徒なの?」

 

おかしい、あの大企業の令嬢が文月学園の生徒だ、何て聞いてない

 

「ええ。一応ね? では続きはアキ君と話が終わってから、色よい返事を待っています」

 

そう言って出て行った少女の背中を見ながら

 

「はー知らなかった。まさか近所の雅ちゃんがね」

 

昔良く明久と遊んでいたあの子が、まさかあの大グループの娘だなんて知らなかった

 

「お母さん? 何を悩んでいるんですか?」

 

「玲? その頭のたんこぶは何?」

 

大きなたんこぶを頭に付けて尋ねてくる娘に逆に尋ね返すと

 

「アキ君ラブリーアルバムの角が命中しまして」

 

「ブラコンも大概にしなさい」

 

我が娘ながら弟にしか興味のない玲に呆れながら

 

「あのさ、玲」

 

「何ですか? 業務提携がこじれたのですか?」

 

「うーん。なんかねー向こうの代表が出した条件がね」

 

「条件? まさか従業員とかの話ですか?」

 

「ううん。違う、結婚を前提に明久とお付き合いさせてくださいって。玲!? どこに行く気!?」

 

「ちょっと殺って来ます」

 

「落ち着きなさい馬鹿! 明久の意思が大事だからって今は断ったから」

 

「そうですか……」

 

イライラとした素振りを見せる玲を見ながら

 

(どうしようかしら)

 

まさか明久が条件に出てくるなんて思っても見なかった。かと言って日本に帰る余裕は無いし

 

(明久が何とかしてくれると思うしかないわね)

 

 

もうじき夏休みが終る頃。馬鹿な息子がどう動くか不安だが、あの子に任せるしかないか……とりあえず今は纏まり掛けている仕事を片付けよう……

 

第82問に続く

 

 




今回の話はズバリ。最後の明久の話をしたかっただけです、この最後の件が馬鹿と魔王と召喚獣の後半に向けての重要な話になります
予想を180°裏切る事間違い無しのイベントです。それでは次回からは7巻の話に入って行く予定です。では次回の更新もどうか宜しくお願いします

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