バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。 今回は龍也とちびっこ軍団と魔王軍がメインです、偶には魔王ばかりではなく天使も出そうと思いまして。
それでは今回の更新もどうか宜しくお願いします



第71話

 

第71話

 

「釣れんな」

 

糸を垂らして1時間ちょっと、当たりは0だ

 

「居ないのかもしれんな、やれやれ場所が悪かったかな?」

 

海水浴場に隣接した岩場。あわよくば根魚や黒鯛が居るかもしれないと思ってきたがどうも思惑が外れたようだ

 

「仕方ない、餌釣りはやめてルアーにするか」

 

海水浴場だけに下は砂地だ、マゴチとかが居るかもしれない、そう思って竿を畳もうとしていると

 

「あ、お兄様見つけましたー!」

 

「おお、流石はリィンだな、1番甘えん坊だけな事ある」

 

「一直線に走り出したときは驚いたね。リィンにはにーさまセンサーでも付いてるのかな?」

 

「ユナちゃん、リィンは馬鹿にされてるんでしょうか?」

 

「知らずが仏と言いますよ?」

 

「アザレアちゃーん! 皆がリィンを苛めるですー」

 

「……よし、よし……泣いたら……駄目」

 

騒がしいリィン達の声がする……

 

「ふむ。ルアーはやめておくか」

 

リィン達がいるのにルアーを投げると言うのは良くない。 目とか服に引っ掛けるかもしれないし……

 

「釣れますか? お兄ちゃん」

 

「駄目だな、当たり無しだ」

 

ちょこちょこと歩いていたユナにそう返事を返していると

 

「ん? 兄引いてるぞ?」

 

「……ほ、本当……竿ピクピクしてる」

 

アギトとアザレアにいわれて竿を見ると穂先が揺れている

 

「本当だ。リィンやってみるか?」

 

「はいです♪」

 

リィンがぎこちなくリールを巻いているのを見ながら。

 

(偶にはこう言うのも悪くないな)

 

滅多に無い癒しの時間だ……リィン達に順番で竿を持たせるのもいいかもしれない……

 

「わーい♪ 釣れましたー♪ お兄様これなんて魚ですか?」

 

「カサゴだ、煮つけとかにすると美味しい、棘があるから気をつけろよ」

 

そう言いながらカサゴの口をペンチで掴む。大きさは21cmとカサゴにしてはなかなかに良いサイズだ。

 

「よしっ……じゃあ次誰がやる?」

 

「「はい! むっ……」」

 

同時に手を上げたリヒトとアギトに苦笑しながら。

 

「順番にな、よし……餌はOKだ、はいアギト」

 

「おう! 私も釣るぞー!」

 

気合満々で竿を持つアギトを見ながら

 

(本当こう言うのも悪くないな……)

 

穏やかな海面と楽しそうなアギト達を見て。私はそう思った

 

~1時間後~

 

「釣れましたー♪」

 

「楽しかったなー♪」

 

「本当だねー♪」

 

魚が釣れたリィン・アギト・リヒトが楽しそうに笑い

 

「すいません、大丈夫ですか? アザレア?」

 

「……フルフル」

 

ユナが釣竿を投げた時にアザレアのフードを引っ掛けてしまった。それによってパニック状態になってしまったアザレアはヒシと私にしがみ付いている

 

「むう……失敗しました」

 

「まぁ次があるさ」

 

そんな話をしながらペンションに向かって歩いていると

 

「あ。お兄様……あれ」

 

「うおう……見るんじゃなかった……」

 

「グロイ♪ ボコボコにされてるね」

 

三者三様の反応を見せるリィン達が指差しているほうを見ると

 

「「「……」」」

 

モザイクが掛かっている明久達を引き摺る魔王の姿が見えた

 

「よし、おいで子供達よ。あれは子供の見るものじゃない」

 

あれはリィン達が見るには少々刺激が強すぎる。私はリィン達を抱き上げ、無残な姿と化した明久達を見せないようにしながらペンションにと戻った

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ……? ここ、どこだろう?」

 

僕は気が付いたらこの世の物とは思えないほど綺麗な花畑の中に居た

 

「ん? おお、お前も来たのか? 明久、こっちこいよ茶と菓子なら出してやれるぞ」

 

黒装束に仮面の男性が……ってあれ?

 

「カロンさん?」

 

「おう、雄二と康太も来てるぞ? お前ら良くここ来るなー本当」

 

からから笑うカロンさん……そしてカロンさんがここに居るという事は

 

「三途の川ですか?」

 

「おう、そうだ。これで4回目の顔合わせだな」

 

かっかと笑うカロンさんは

 

「今回はお迎えも来てるぞ?」

 

「お迎えって……」

 

カロンさんの指差したほうを見ると

 

 

「おいでーおいでー」

 

「怖がる事は無いんだよ。こっちは良い所だよ」

 

「美味しい物もあるし。楽しい事ばかりだよ」

 

ひいいいーッ!! 呼んでる! 対岸から団体さんが僕を呼んでる! と言うか1番右は死んだおじいちゃんだ!? 駄目だ! あの言葉を素直に聞いてたら死ぬ!

 

「それがさー大分引き止めたんだけど……あっち行っちまったんだよなー」

 

カロンさんが別の方向を指差す。そこには……

 

「怖がる事は無いぞ明久。 こっとはこっちで楽しいぞ」

 

「……美人ぞろいで良い所(ブシャアアアアッ!!!)」

 

そこには僕の悪友2名がにこやかに手を振っていた

 

「っておいっ!? 何でそっち側で手を振ってるんだよ!! 雄二ムッツリーニ!!! 駄目だよそっち行っちゃあ! 戻れなくなるよ!!」

 

「俺も止めたんだけどな、向こうに逝きかけてるんだよ。あの2人」

 

のほほんと語るカロンさんの声に若干の腹立ちを覚えていると

 

「はっはっは。そう怖がるなよ。明久……こっちは本当に良い所だ。だからコッチにオイデヨウ……」

 

「……ソウ。こっちはイイトコロだ、ダダダダダだ!?!?」

 

「気付いて! 雄二ムッツリーニ!! 半分くらい悪霊化してるよ!!」

 

身体が半分くらい黒くなってるよ!! どうみても天国には招かれて無い。恐らく雄二達が居るのは地獄だろう

 

「っとと、すまんすまん……毎日が楽しくて楽しくて……」

 

「……そうここの毎日は楽しくて……」

 

2人の目が紅く光り、そして

 

「だからキサマモコッチに来いイイィッ!!!」

 

「おまエだけタスカルナンテミトメナイイイィッ!!!!」

 

「来るなー!! 悪霊ッ!!」

 

引きずりこんでやると言いたげな2人の怨嗟の声を聞きながら全力で川から背を向けて走り出す。その間も聞こえる呪詛の言葉が物凄く生々しかった……

 

「僕達、よく生きてるな」

 

「ああ……覚えて無いがリアルに地獄を見た気分だ」

 

「……俺も」

 

3人で何とか現世に帰還し、その事を喜び合いながら

 

「さてと、何時までもここでくっちゃべって無いで。外で待ってようぜ。何時また魔王化するか判らんしな」

 

「だね。あの程度で許されてるとは思えないし」

 

「……同感」

 

うんうんと3人で頷きあいペンションの外で美波達が来るのを待っているとふと気になった

 

「龍也は?」

 

「うん? そう言えば見ないな。 あいつが殺されるとは考えられんしどこ行ったんだ? 魔王に食われたか?」

 

「それしゃれになって無いよ雄二」

 

リアルに起こってそうだけに笑えない

 

「……メール。龍也はちびっこの寝る時間もあるしとの事で先に行ったそうだ」

 

あのお兄ちゃんもしくはお父さんめ、あっさり友人を見捨てたよ、でも

 

「そういわれると納得だ」

 

「うん。僕もそう思う」

 

龍也=お父さんもしくはお兄ちゃんだ。友人か妹が秤に掛かれば簡単に妹に傾くのは目に見えている。

 

なお明久達は知らないが、リアルに死に掛けていた。明久達を見た龍也はちゃんと治癒魔法を掛けてから出かけて行る

 

「「「「お待たせ」」」」

 

そんな事を考えていると賑やかな声がし振り返りながら

 

「皆、随分と時間が……綺麗だ。本当に」

 

「お、凄いな。そんな物まで用意してたか」

 

「……時間が掛かるのも納得」

 

雄二とムッツリーニの声が遠くに聞こえる。僕は美波と秀吉と瑞希に完全に目を奪われていた……

 

「どうしたんですか? 明久君?」

 

「ちょっと何か言ってくれないの?」

 

「どうしたの? 明久」

 

そう尋ねてくる3人に僕は

 

「あ……いや……えーと凄く綺麗だと思う」

 

他にも何か言いたいがそれしか言えない。それくらい僕は3人に魅了されていた……後ろでは

 

「……雄二、似合っていると言ってくれないと殺す」

 

「おお! 翔子は本当にかわいいな! 見違えたぜ♪」

 

命が懸っている物だから似合わない喋り方をする雄二の声と

 

「似合うかにゃ?」

 

「……あ」

 

ムッツリーニも放心状態だ。工藤さんもそれくらい似合っていた……僕とムッツリーニが呆けていると

 

「さて、それじゃあ行きましょうか。何時までもここに居ても何にもなりませんし。早く会場に行きましょうか」

 

姉さんに促されぼーッとしながら歩き出す。よく判らないうちに車に乗り込み僕たちは夏祭りの会場にと向かって行った

 

 

 

 

 

 

「ふむ。セッテよ、辺りから殺気を感じるのだが何故だろうか?」

 

「気のせいですよ。龍也様」

 

そう断言するセッテだが。辺りには確かに殺気が満ちている。一体何が原因なのだろうか?

 

「にーさま! たこ焼きー! たこ焼き買って! 買って!」

 

「リインもー!!」

 

ぴょこぴょこ跳ねるリヒトとリィンを見ながら

 

「すいません、たこ焼き6個お願いします」

 

「はいよー」

 

屋台でたこ焼きを注文し辺りを見る。やはり殺気に満ちている

 

「なぁ……殺気が……「「「「気のせいですよ」」」」……そうかな?」

 

全部言い切る前に言われた。やっぱ気のせいなのか? 

 

「ん? どうした」

 

くいくいと私の着物裾を引くアザレアの目線にあわせてしゃがむと。アザレアは

 

「……し、知らない……人、一杯……怖い」

 

プルプル震えるアザレアを抱っこすると

 

「ほい、お待たせ。2400円な」

 

「はい」

 

アザレアはしがみついているので手を離しても大丈夫なので、手を離し財布から1000円を2枚と硬貨を4枚取り出し渡す。差し出されたたこ焼きをリヒト達に1個ずつ渡していると

 

「あれ? 殺気を感じなくなったな」

 

「だから気のせいって言ったじゃないですか。龍也さん」

 

ティアナの言葉に

 

「そうだな。気のせいだったみたいだな……こんな所で殺気なんかあるわけないか」

 

そう納得しアザレアの分のたこ焼きのパックを空け

 

「はい、あーん」

 

「あ。あーん」

 

もくもくと口を動かすアザレアを見ていると

 

「あー」

 

「私も」

 

口を開くアギト達の頭を撫でながら

 

「はい、あーん」

 

「あーん♪」

 

うんうん。最近は悩むことばかりだったけど。アギト達と一緒だと何をそんなに悩んでいたのかって思うよな。

 

なお。殺気まで龍也が感じていた殺気はモテない男たちの僻みの視線である。龍也の周りは右を見ても美女。左を見ても美女、更には美幼女と言うのが相応しいちびっ子達が遊んで、構ってと言いたげにじゃれついている。目立つのは当然だ……では何故殺気が無くなったかと言うと答えるまでもないが

 

「「「ニコリ」」」

 

魔王の絶対零度の笑みが原因である、あの笑みを見れば誰もが萎縮し目をそらすだろう

 

「良いのか? お前達は」

 

首を傾げるはやて達に

 

「私はリィン達の面倒を見るからお前達とは回れんぞ? 好きに見てきたらどうだ?」

 

はやて達も大切な妹である事は間違いないが、幼いリィン達の方が心配だしどうしてもこっちを優先してしまうぞ? と言うとはやて達は

 

「ええよ、別にこうやって皆でおるのも楽しいし」

 

うんうんと頷くなのは達にそうか? と返事を返しているとアギトが

 

「射的! 射的やりたい!」

 

「私は綿飴が欲しいです!」

 

「私は食べるもの一杯!!」

 

きゃっきゃっとはしゃぐアギト達に

 

「そうだな。じゃあ射的から見て回るか」

 

人数が多いので移動は大変だが、皆で居るのも楽しいと思いながらぶらぶらと夏祭りの会場を歩いていると、セッテが立ち止まり

 

「あの馬鹿達は何か痛い趣味でもあるんですか?」

 

「ん? どうし……」

 

セッテの視線の先を見て絶句した。そこには明久達がいた、何故可女装姿でしかも

 

「納涼ミス浴衣コンテスト……明久達ってそんなに女装趣味やったけ?」

 

「痛いな、つまりあれだろ? 女装したらそこいらの女子より綺麗だって事を言いたいんだろ? 気持ち悪いな」

 

気持ち悪いを連呼するヴィータ達を見ているとユナが

 

「見てください。明久泣いてますよ」

 

「あ、本当だ。おっ? しかも後ろの方では武器装備の玲さん達がおるな?」

 

うん、私もそれには気付いたよ。逃げたら殺すって顔に書いてある。恐らく

 

「昼間のお仕置きの続き?」

 

「そう言えば、何かナンパしてたって美波が凄く怒ってましたね」

 

何とまあ魔王がいるのにナンパするなんて自殺行為と等しいじゃないか……

 

「とりあえず馬鹿にするネタとして写真を撮っておきましょう」

 

「何か記念になるよね」

 

セッテとなのはが携帯で写真を撮る……恐らくそれをネタに暫く馬鹿にされるだろうと思いながら、コンテストを見ていると

 

「お前もう裏行けよ! そして2度と帰ってくるな!!」

 

「何だ貴様スポンサーに向かってその口の利き方は!!」

 

審査員席で乱闘が始まった。司会者がマイクを投げ捨て、ネクタイを外しながら握り拳を作り。審査員に飛び掛っている

 

「何が起きてるのかな? 龍也」

 

「さぁなぁ? 今来たところだしな。聞いていれば判るかも」

 

そう思って耳を傾けると

 

「秋子さんと香美さんと雄麗さんは是非お持ち帰りしたいのだよ。だから連絡先を……」

 

審査員の1人が女装した明久達に詰め寄っている、明久達は顔を青褪めさせ逃げようとしているが退路がない

 

「男に迫られる。恐怖以外の何物でもないですね」

 

私的にははぁはぁ言ってるお前に迫られるのも怖いけどな。どうにも私の周りの女性は皆逞しく強いから困る

 

「ちょおー!!! 手を離してください!!」

 

「お小遣い上げるから。こっちへ……」

 

明久が変態に捕まった。はぁはぁしてるし浴衣に手をかけているし、どうも一級品の危険人物っぽい

 

「助けに行くべきか?」

 

「良いんじゃないですか? 別に何事も経験じゃないですか?」

 

「ティア。最近ちょっと……ううん、かなり魔王化してきてるよ。出会ったばかりのティアはどこに行ってしまったの?」

 

スバルの言葉に私もそうだなと思った。出会ったばかりの向上心と素直なティアナはどこに行ってしまったのだろうか?

 

「人間は進化するものよ、魔王に対抗するには魔王化するしかないと判断したのよ」

 

うん。やっぱり私の周りの人間って皆逞しすぎると思う。普通はその考えにはならないと思う

 

「死ねえええッ!!」

 

ドゴッ!?

 

鈍い音を立ててセットに向けて蹴り飛ばされる変態、そして

 

「ああ……美波かい?」

 

「ごめんね。アキ……こんな変態がいるとは思わなかったわ。 許して頂戴」

 

明久が美波に抱きしめれている……反対側で康太も同じ様に愛子に抱きとめられている

 

「■■■■ッ!!!」

 

翔子は某人型決戦兵器の様に変態に襲い掛かっている。

 

「待て! パイプ椅子は不味い!! 落ち着け翔子」

 

雄二はそれを羽交い絞めにして止めようとしている

 

「美波達のは普通逆じゃないか?」

 

男が女に抱きしめられている。明らかにちょっとおかしいと思うのだが

 

「うん? そうかな? 私は気にならないよ?」

 

「うん。私もそう思いますよ。龍也さん」

 

そうか? 普通は絵が逆だと思うんだけど……

 

「寧ろ……百合とかいう奴っぽく見えます」

 

「!? リインフォース!?」

 

予想だにしなかった言葉が真面目な妹から出て絶句する

 

「シャマルがそんな事を……」

 

「シャマル。後で説教だ」

 

「そんな!?」

 

シャマルには1度色々説教をしないといけないと思う。料理とか明後日の方向の知識とか1度消去した方がいいと思う

 

「あ、龍也」

 

「あれ、龍也も居たんだ?」

 

会場から走ってきて私に気付いた2人に

 

「やぁ、秀吉・愛子。1つ言っておこう」

 

? 首を傾げる秀吉と愛子に

 

「今のお前達は非常に輝いていると思うよ。絵が逆なのが非常に残念だと思うがな」

 

秀吉は明久を。愛子は康太を横抱きにしている。服装と性別が逆では? と思うのは間違いではない

 

「いやさ。気絶してるんだよ2人とも」

 

「まぁ判らんでもないな。で? 何で逃げてきたんや?」

 

良く見ると2人の後ろから走ってくる美波達の姿もある。 2人は明後日の方向を見て

 

「ちょっとやりすぎたと言いますか」

 

「ステージ半壊させちゃったんだよね? キレすぎて」

 

そうか……なら足元にいるアギト達を抱っこし

 

「逃げるぞ。明らかに警備員が追いかけてきてる」

 

懐中電灯の光と止まれーッ! という怒声が聞こえてくる

 

「うん、逃げよう」

 

そうして私達は全力で車まで走って戻り、逃げるようにペンションにと戻っていった……1つ判ったことがある。このメンバーで夏祭りは不可能だ、絶対何らかの悲劇が起きると……

 

もう2度とこの面子で夏祭りにくることは無いだろう……

 

 

 

「ムッツリー二、僕死にたいよ」

 

「……一生心に消えない傷が」

 

落ち込む僕とムッツリー二を見て爆笑する雄二

 

「はははっ!! 女子にお姫様抱っこって!? なんだよ!!」

 

げらげら笑う雄二。雄二は単独で逃げてきたが、僕とムッツリー二はお姫様抱っことありえない状態でここまで運ばれてきた。 余りに酷い仕打ちだと思う

 

「黄昏てないで早く来い。リヒトが全部食うぞ」

 

「ウマウマ♪」

 

その声で振り返る既にリトルブラックホールが凄い勢いで肉を食べている、慌ててバーベキューセットの方に走る

 

「ってもう殆どない!?」

 

さっきまで網の上一杯にあった肉や野菜に貝に焼きおにぎりは全て消えている。

 

「?」

 

「おいしーです♪」

 

ちびっ子軍団がもくもくと食べている皿に殆ど焼いていた物が乗っている

 

「おい、龍也。これはあんまりだろ?」

 

「雄二よ。良い事を教えてやろう。アギト達は育ち盛りなんだ」

 

そういう問題じゃない。 この子煩悩すぎる高校生にどうやって説明すればいいのだろう? そういう問題では無いと

 

「だが問題ない。食糧はこれでもかと買い込んでいる。なぁジェイル?」

 

「そうともさ、肉は全部で10キロ買いこんで来たし。野菜や魚だって大量に用意してある、リヒト君でも全部は食べきれんさ」

 

そう笑う博士。まぁ大分量もあるから大丈夫だろうと思い。座って待っている美波達の近くに座るの

 

「あれ? 美波達は料理とってたんだ」

 

「ええ。龍也が持ってきてくれたのよ」

 

へーと言いながら良い焼き加減の肉を見ていると

 

「食べたいの?」

 

「う……まぁそりゃお腹空いてるしね」

 

さっきまで漂っていたいい匂いのせいで余計空腹を感じている

 

「じゃあ。しょうがないわね……ほら、あーん」

 

はい? 何故に美波は僕の口元に肉を向けているのでしょうか?

 

「なによ、食べないの?」

 

「いや、ほら……姉さんが居るしさ? そういうのは控えようかなと……」

 

何をきっかけに魔王化するか判らない人間だらけだ。地雷と判っている行動は出来ればしたく無いと思っていたのだが

 

「ふーん……ウチのは食べれないって言うの?」

 

はい、既に地雷を踏み抜いていたようです。光の無い美波の目が死ぬほど怖くて視線をそらすと

 

「逃げるな」

 

「ふぐっ!?」

 

足を踏み抜かれ逃げるに逃げれない

 

「はいあーん」

 

「いやだからね?」

 

「はいあーん」

 

エンドレスって怖いなぁ……話が通じないもん

 

「ほい、兄ちゃんあーん」

 

「ん? 悪いな」

 

ああやって普通にやり取りしてる龍也がある意味羨ましい。といか魔王の殆どが次自分の番だと言いたげに並んでいるのどうかと思う

 

「アキ。口を開けないと」

 

「開けないと?」

 

美波はぼそりと僕の耳元で

 

「前にキスした事を玲さんに言うわよ?」

 

脅しで来た!? 恐らく自分の思いとおりにならないのなら何の躊躇いも無く美波は姉さんに言うだろう。そうすれば僕に待っているのは死だけだ

 

「う……あ、あーん」

 

「はい、いい子ね。アキ」

 

どちらにしろ命が無いのならと決断し美波の思い通りにする。良い子、良い子と笑う美波が怖い。

 

「ふう……じゃあ僕は……ってあれえ!?」

 

既に第2陣。第3陣が用意されている

 

「食べれないって事は無いよね? 明久……」

 

「そうですよね。明久君」

 

僕の人生って本当に死亡フラグしかないのかな? と思わずには居られない

 

「はい、ムッツリーニ君 あーん」

 

「……ブンブン」

 

椅子に縛られているように見えるムッツリーニは気のせいだと思いたい……と多少の現実逃避をしていると

 

「美味しいですね。龍也様」

 

「そうか。それは良かったよ」

 

セッテさんが腕を抱え込もうとしているのを見ずに回避し。後ろから抱き付こうとしていたフェイトさんをするりと回避する龍也

 

(あそこまで行くのってどれくらい掛かるんだろう?)

 

ナチュラルに魔王の攻撃を回避する龍也を見ながら、横目で姉さんを見る

 

(食べたら判りますよね? アキ君?)

 

目は口ほどにものを言う……だがそれが判っても逃げ道の無い僕は

 

「あ、あーん」

 

と口を開く事しか出来なかった……家に帰った後に命があるといいなあと思った……

 

~1時間後~

 

「食べきれないはずだったのだが……」

 

「予想外だったな。まさかヴィヴィオまでもリヒトと同じ勢いで食べるとは」

 

リヒトちゃんに加えヴィヴィオちゃんまでもが凄まじい勢いで食べていた、僕達もそこそこ食べたが

 

「ちょっと食い足りないな」

 

「うん、僕が用意した分も大半がリヒトちゃんが食べちゃったしね」

 

ちなみに食料の大半を食い荒らしたリヒトちゃんは

 

「むにゅー」

 

満腹のせいでうつらうつらと舟を漕いでいる。それはヴィヴィオちゃん達も同じ様だ

 

「そうだな、現地調達でもするか?」

 

「現地調達?」

 

「判ったぞ、龍也アサリだな?」

 

「そうそう、砂を吐かせてから焼けば美味いぞ。もしくはジェイル、買出しに行くか?」

 

もくもくと食べていた博士は

 

「確かに少しばかり足りないね。うん……買いに行こうか龍也」

 

よいしょっと立ち上がった博士は

 

「じゃあ、ちょっと買ってくるよ」

 

龍也と一緒に場を離れる博士を見ながら

 

「じゃあ、俺達は貝でも採りに行くか?」

 

「えー待ってようよ」

 

雄二とそんな話をしていると

 

「あっ! そう言えば私1人でマーマ……」

 

瑞希のその言葉が聞こえた瞬間

 

「行こう、雄二!」

 

「ああ! そうだな! 明久!!」

 

僕と雄二と食べ物が無くなっていたことで拘束から解放されていたムッツリーニは砂浜に向かって駆け出した

 

瑞希の料理が上がって来ているとは言え1人で作らせるといまだに必殺の味となる。それを知っている僕達は生きる為に砂浜にと向かって行った

 

 

 

 

「で。明久達はどこへ?」

 

買出しから戻ると明久達の姿が無く。そう尋ねると

 

「アサリを採りに行ったまま戻ってきてないで?」

 

ふーむ、近くに姿も見えないな……

 

「仕方ない。これは朝食の材料にしよう。アイスを食べて終りにしようか?」

 

雄二達の分はクーラーにでも入れておけばいいだろう。全員にアイスを配ってはやての近くに座る

 

「こういうのも楽しいな」

 

「そうやね」

 

のんびりと星空を見ながらアイスを食べているとセッテが

 

「この狸! 自分だけ良い思いなんて許し……「はい、あーん」 ッ!?」

 

はやてに詰め寄ろうとしていた。セッテの口にアイスを入れてやるとぽふんと頭から煙を出しすとんと座り込んだ

 

「良い子、良い子。喧嘩しない」

 

「はい……龍也様」

 

ちょこんと座っているセッテの頭を撫でていると

 

「むう……」

 

「はいはい。あーん」

 

今度ははやての口にアイスを入れてやって頭を撫でながら

 

「折角皆で楽しくやってるんだ、最後まで喧嘩は無しな?」

 

こくんと頷くはやてとセッテ。運良くヴィータ達は見てなかったが見ていたらまた騒ぎになるかと思って苦笑する

 

「最近は楽しい事ばかりだなー」

 

私は学生時代とは無縁の生活を送ってきた。私にあったのは死と破壊だけだった……今また大切な仲間と過ごせるのは悪くないと思いながら

 

のんびりと空を見上げ。今度は六課の全員で海に来たいなと思った……思い出は何よりも尊い宝となる……今まで戦いばかりの記憶しか無い私にとって、こう言う時間は何よりも素晴らしい宝物だと思った……

 

翌朝

 

「アキ? アキー?」

 

「明久? 起きてー?」

 

「明久君? 明久君?」

 

ぐったりとしている明久を揺する美波達

 

「一晩中抱きしめたのと首を舐めたのは間違いでしたか?」

 

と危険な事をさり気無く言う玲さんに

 

「……雄二♪」

 

ぎゅーと抱きしめられ瀕死の雄二。見間違い出なければ首が極まっている

 

「ねえ。帰りは僕の隣に座らない?」

 

「……嫌だ」

 

「うーん。じゃこれは?」

 

はいっと手を掴んだ愛子は康太の手を自分の胸に導いた

 

「ぶヴぉっ!?」

 

奇声を発して気絶した康太を抱き抱え

 

「じゃあ、抱き枕にするよ」

 

気絶した康太をズリズリと引き摺る愛子

 

ちょっと世間一般的な平和とは少しずれているが平和だ

 

「にーさま! 抱っこー」

 

「じゃあリィンはおんぶー」

 

きゃっきゃっとはしゃぎながら背中に抱きついてくるリィン達に笑みを零しながら

 

この平和が長く続くと良いなと思っていた……恐らく世間一般的な平和とは違うと思うが、平和である事に間違いは無いはずだ……

 

第72話に続く

 

 




うーんちょっと難産でした。ギャグ系と言うのも意外と難しいものですね。次回はダウトかホンネを喋る召喚獣か
夏休み中の龍也と魔王達の話にしようと思います。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします

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