バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです、今回で肝試し編は終わりにしようと思います。次回からは夏休み中のドタバタをメインに日常編をやっていこうと思います
それでは今回もどうか宜しくお願いします

PS 活動報告にて夜天の守護者の続編のアンケートしています。詳しくは活動報告に書いてあるので、どうかそちらも宜しくお願いします


第64問

第64問

 

「あのさぁ? 雄二。これってもう雄二の出番無いんじゃない?」

 

「そんな感じだよな」

 

バーサーカーと化した久保君の進撃は留まる事を知らない。どこまでも黒い笑みを浮かべAクラスを激走している

 

「お化け屋敷は無しですか。残念だな」

 

「そうだよねぇ。なのは、暗がりだから襲ってもセーフだと思ったんだけど」

 

ひそひそと話すAクラスの魔王2名と

 

「ちぇー詰まらんなあ」

 

「いいじゃん。お盆に一般公開されるときにこれば」

 

「ああ、その発想は無かったですね。順番に龍也様と行けば良いですし」

 

もう既にお盆にお化け屋敷に来るのは決定事項なのかそんな話をするFクラスの魔王4名

 

「はふう……お腹一杯です」

 

「私も……」

 

むにむにと眠そうにするチビッコ軍団を見てコートから布団と枕を取り出す龍也……

 

「雄二。龍也の天職はきっと保父さんだ」

 

「俺もそう思う」

 

畳に直接寝かせるのは不味いなと言ってタオルを引いてその上にチビッコを寝かせ布団を掛ける龍也。絶対に龍也は保父さんが向いていると思う

 

「かーわい♪」

 

「……だれか助けて……」

 

魔王に抱き抱えられ顔を真っ青にしているムッツリーニを知りながらも。僕と雄二はそのほうを見なかった下手をすれば魔王に襲われるかもしれない。ならばここは涙を飲んでムッツリーニを見捨てるのが正解だろう

 

 

 

 

「ちっ。案外粘るな、2年生の屑ども」

 

「まだ半分も残っているぜ? どうやって脱落させるよ?」

 

3年の待機室でそんな話をしている堀田や遠山を見ていると

 

「おい、夏川。Aクラスのチェックポイントはお前らだろ? とっとと行けよ」

 

「あーパスだ、パス。 もうどうやっても勝てないだろうよ? 俺と常村はもう見てるだけだ。それに貴様らにゴスロリを無理やり着せられた事を許してねえぞ」

 

俺がそう言って隣の常村を見ると

 

「夏川……おれ。失恋しちまったよおお……」

 

トレードマークのモヒカンもぺタッと潰れた常村が嘆き哀しんでいた

 

「ドンマイ。大丈夫相手が悪かっただけさ」

 

魔王に恋したのが間違いだ。奴らは自分の好みの相手しか愛さない。最初から無理な勝負だったのだ

 

「だとさ。じゃあ、次に物理が高いのでも350点くらいか。このままじゃ勝てないな」

 

「2年の屑どもに負けるのはムカつくな」

 

屑だとかどうだとか言ってる時点でもうてめえらの方がよっぽど屑だよ。俺がそんな事を考えながら監視用のモニターを見ていると

 

「んだぁ?」

 

Aクラスのチェックポイントに居たのは300点にも点が届いていない。金田一と関山のコンビだった

 

『おう、来たか』

 

『君達が僕たちの1番目の相手だね。よろしく』

 

『失礼ですが。吉井君とお姉様を見ませんでしたか?』

 

『? 君達以外はまだ誰もここには来ていないよ?』

 

『それにお前達の前に来た2年は確か途中で女子のほうが気絶したんで引き返して行ったぞ?』

 

急に落胆し勢いが無くなった2年生コンビが失格したところで

 

「おい、なんで金田一と関山なんだ? もっと高得点のが居るだろ?」

 

俺がそう尋ねると堀田は

 

「もう肝試しなんてどうでも良いんだよ。2年の坂本と吉井だけでも完全に潰してやる」

 

「おい。常村」

 

「わーてる」

 

何か嫌な予感がする。何か難癖を付けて肝試し編の最後のルール。設備を破壊したらの件をどうやって利用するか? と話しているのが聞こえ。隣の常川を見るときっちり思考を切り替えたのか既に立ち上がり。モヒカンを整えている

 

「行くか?」

 

「とーぜん」

 

確か取り分け2年を屑だの何だの行って見下している連中がAクラスの仕掛けを準備していた。何か嫌な予感がし俺と常村は気付かれないように待機室を後にした

 

 

 

 

「あちゃー。久保のバーサーカーが解除されたか」

 

リィン達を寝かしつけているなか。久保と清水のコンビが失格になった

 

「まぁあのホモ野郎のもくてきは明久にあったからな。脱力したんやろ?」

 

「ねぇ? 姫路さんに秀吉。僕もう久保君と顔を見合わせることでさえ怖いんだけど?」

 

青い顔でそう呟く明久を見ているとティアナが

 

「これで残りは16組32人ですけど……皆点が高いとはいえないですし、勝ちを狙うなら。坂本と馬鹿が行くのが最適だと思うんですが」

 

「あれ? 龍也と魔王連合は?」

 

明久のその問いかけに

 

「いや、行けるなら行くが今のこの状況では動くに動けないし」

 

リィン達にコートとズボンを掴まれているので動けないと言うと

 

「だってさ。雄二どうする?」

 

「んー勝ちたいからな、仕方ねえ。行くぞ翔子」

 

「……うん♪♪」

 

嬉しそうに雄二の腕を掴んだ翔子は

 

「……早く行こう♪」

 

「ッぎゃあああああッ!!」

 

ナチュラルに関節技を極めていた

 

「何で関節技をかける!?」

 

「……腕を組みたかった」

 

「関節技と腕組を同一視するな!!」

 

雄二がそう叫ぶ中反対側では

 

「じゃ、じゃあ行きましょうか。明久君」

 

「あの……手をワキワキと動かされると身の危険を感じるんだけど」

 

「変な事なんてしません。ち、ちょっと触るだけです」

 

ジリジリと攻防を繰り広げている

 

「はい! とっとと行く!!」

 

はやてが手を叩きその音で明久達の攻防を止めて教室から追い出し

 

「さーて、これであの4人が潰れたら兄ちゃんの出番やね?」

 

にいっと魔王の笑みのはやてを見て

 

(頑張ってクリアしてくれ。雄二・明久)

 

魔王から大魔王にとジョブチェンジしているはやてとお化け屋敷に行くのは恐ろしく、雄二達がお化け屋敷をクリアしてくれるのを願った

 

 

 

 

 

 

 

さて。魔王化するのではないかとビクビクしながらAクラスに入ったのだが

 

「……怖くない。怖くないです。明久君と一緒だから。全然、ちっともさっぱり怖く無いです」

 

瞑想に近い状態で恐怖に耐えており。魔王化の心配は無さそうだ

 

「姫路さん。 苦手なのに肝試しに参加してくれてありがとう」

 

「あ、いえ。そんな、私の方こそ迷惑を掛けちゃって」

 

少し話をしていれば姫路さんの気も紛れるだろうと思い話しかける

 

「そんな事無いよ、姫路さんみたいに可愛い子に頼られるのは男子としては凄く嬉しいよ」

 

魔王化されると怖いけどね? と内心で思いながら言うと

 

「可愛いって……じゃ。じゃあ明久君は、私とこうしているのは嬉しいですか?」

 

「そりゃ、勿論嬉しいよ。 姫路さんは可愛いし、頭も良いし、性格だって魔王化してなければ優しいし、まるでお姫様みたいだと思うよ、まぁ問題は僕みたいに頭が悪くて喧嘩も駄目な僕じゃナイトには成れないって所かな?」

 

冗談のつもりでそう言うと姫路さんは握っていた手を強く握り締めながら

 

「そ。そんな事無いです。明久君はちゃんと。私を守ってくれてますから」

 

「はは。お世辞でも嬉しいよ」

 

魔王化してまでも自分の想いを証明してくれている姫路さん達に応える事も出来ず。今の立場に甘えている自分の情けなさを思いながら言うと姫路さんは

 

「お世辞なんかじゃないですよ。明久君は何時だって私を守ってくれましたから。小学校の時も……」

 

最後の方をボソリト言った姫路さんは

 

「明久君は私の事をお姫様って言ってくれましたけど。そんな事は無いんです、私は鈍くさいし、ヤキモチ焼くし、勉強を褒めてもらっても結局最後の方でミスするし、今だってどうやって美波ちゃんと木下さんを出し抜くか考えてるし、本当は我侭で独占欲の塊なんです」

 

うん、それは知ってるよ。魔王化してるときの目をみればそれは良く判るよ。とは思ったが口にせず姫路さんの言葉を聞く

 

「明久君は私に気を遣って、遠慮して、目では私を見てくれてますけど、その実……明久君は私を見てくれないような気がするんです」

 

探るような縋る様な目で僕を見る姫路さん。これはちゃんと答えないと、誰が好きか? なんていう答えを出せない僕には答える義務がある。僕は姫路さんの手をしっかりと握り締めて

 

「大丈夫、僕はちゃんと姫……んん、瑞希さんを見てるよ」

 

「ふえ? 今なんて言いましたか?」

 

きょとんとする姫路さんに

 

「だから、ちゃんと瑞希さんを見てるって、ね?」

 

ギュッと手を握りそのまま手を引いて歩く、このまま立ち止まっていたらまた瑞希さんに何を言われるか判らない、早く突破しよう

 

「い、今私の名前を」

 

「呼んだよ、瑞希さん。あ、やっぱ名前呼び嫌?」

 

「そ、そんな事無いです、行きましょう。明久君」

 

嬉しそうに笑う瑞希さんの手を引いて歩きながら

 

「でも。本当に何も出て来ないね、なんでだろ?」

 

お化けや召喚獣が出て来ない事を不審に思いながら歩いていると

 

『……雄二。怖いからくっついたほうがいい』

 

『魔王と手を繋ぐなんてごめんだね。それに俺はカメラで手が塞がっている』

 

『……じゃあこれで大丈夫。はい』

 

『カメラを持ってくれって言いたかったじゃないからな?』

 

『……雄二。手を繋いでくれないって言うのなら』

 

『言うのなら何だよ?』

 

『……ここで雄二を食べる』

 

『じょ、じょうだんじゃねえ!!』

 

『……逃がさない』

 

走る雄二の足音とそれを追いかける霧島さんの気配

 

「霧島さん、エンジン全開ですね」

 

「はは、1番はやてさんと仲いいからじゃないかな?」

 

そう愛想笑いをしたところで明かりが消える

 

『え? あ。明久君?』

 

笑って手を離したのが不味かった。瑞希さんの姿が見えない

 

「落ち着いて。瑞希さん。明かりがつくまでジッとしてるんだ」

 

『あ、はい。判りました』

 

暫く明かりがつくまでジッとしていると唐突に電気がつき、目の前には野性味溢れる悪友の姿が

 

「なんで、瑞希さんが雄二になってるんだよぉ」

 

折角名前で呼べるようになってたのに! 幾らなんでもあんまりだ!

 

「おまえ、何時の間に姫路を名前呼びに?」

 

「別にどうでもいいだろう……雄二、その格好は一体?」

 

Yシャツのボタンがまるで力づくで引きちぎられたようにちぎれ。全然うれしく無いサービスショットになっている雄二を指差しながら訪ねると

 

「なに。翔子がな……リミッターを外したようで嬉々した表情で俺を押し倒し服に手を掛けたところで電気が落ちたんだ。危ないところだったぜ」

 

「え? 何捕食寸前だったの?」

 

僕がそう尋ねると雄二は青い顔で

 

「思い出せさせるな、あれは捕食者の笑みだった」

 

ガクガクと震える雄二に

 

「はい、これ」

 

隠れる時に使った黒い布を手渡すと

 

「サンキュー。半裸で歩く趣味は無いからな」

 

布を身体に纏った雄二は

 

「んじゃ先に進むか。 多分あっちはあっちで互いに合流してるだろうしな」

 

「何でそういえるの?」

 

どこかで1人かもしれないのにと思いながら言うと

 

「見ろ、迷路の構造が変わってる。どうも俺たちを分断させる為の仕掛けだったらしいな」

 

なるほど、そう言うことならこのまま待っていても合流など出来ない。先に進むべきだ、僕はそう判断し雄二と共にゆっくりと迷路を歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

「……姫路」

 

「霧島さん。なんでネクタイを外してるんですか」

 

酷くがっかりした様子の霧島さんにそう尋ねると

 

「……雄二を食べるところだったから」

 

「……倫理観をログアウトさせるのはどうかと?」

 

はぁっと溜め息を吐く霧島さんと話をしていると

 

『ばあーッ!!!』

 

「ッ!!!!」

 

お化けの召喚獣が一斉に出て来る、驚いて悲鳴を上げかけるがそれを耐える

 

「……姫路、大丈夫?」

 

「は、はい。大丈夫です。怖くなんて無いです」

 

怖いは怖いが何とか耐えていると

 

「……こんなの。ただの見掛けが変わっただけの召喚獣。怖くないと思えばいい」

 

「はい。そうですね」

 

霧島さんに励まさせながら通路を歩いていると

 

「っとと。坂本と吉井じゃねえな? 誰だったけ?」

 

「あれだ、魔王の霧島と姫路だ」

 

3年生2人に出会い身構える中霧島さんが

 

「……さっきの変態ゴスロリ男」

 

「思い出させるな、涙が出てくるだろうが」

 

酷く落ち込んだ坊主頭の先輩を見ながら

 

「どうしてここに?」

 

「どうも2年を屑扱いしてる連中が迷路に仕掛けをしてやがってな、何か嫌な予感がするから警戒するように言いに来てやったんだが……どうもこっちじゃ無かったな」

 

ちっと舌打ちしたソフトモヒカンの先輩は

 

「しゃーねえ、チェックポイントに回り込むか?」

 

「だな」

 

背を向けて歩き始める2人に

 

「待ってください、仕掛けって……」

 

「迷路の壁に切れ込みが入っている。2人がそこを通った瞬間に蹴って通路に下敷きにするつもりなんだよ、通路自体はパーテーションで軽いがモニターの無い死角だ。そこで通路を破壊させて、あの2人を罠に嵌めるって言ってやがった」

 

舌打ちしながら言う坊主頭の先輩に霧島さんが

 

「……なんで雄二と吉井を助けようとしてくれる?」

 

「別に助けるなんて気はねえ。ただ……そんな卑怯な事をする馬鹿どもが許せないだけだ。 行こうぜ常村」

 

「ああ、仕掛けのポイントに回りこむのが良いかもな。一応教頭には言ってあるし念の為に見に行こうぜ」

 

背を向けて歩き出す先輩2人に

 

「あの私達も一緒に……」

 

「はぁ? アホか? 一応今は学年別の競争中だろう? お前らはお前らでとっとと脱落するなり、合流するなり好きにしろよ」

 

そう言って歩き出す先輩を見ながら隣の霧島さんに

 

「坂本君と明久君を罠に嵌めると言ってましたね」

 

「……うん」

 

暫く互いに黙り込む、だが考えている事は同じ筈

 

「……瑞希」

 

「なんで。急に名前呼びに?」

 

驚きながら尋ねると霧島さんは

 

「……考えている事は同じだし。瑞希は私と同じ、何時までも苗字呼びは良くないと思っただけ」

 

「そうですか、では私も翔子ちゃんと呼びますね。それでどうしましょう? ふざけた事を考えている3年生をどうします?」

 

私がそう尋ねると翔子ちゃんはにいっと笑いながら

 

「……簡単。叩き潰す」

 

「同じ意見ですね。行きましょう」

 

早足で先輩2人を追い抜く

 

「おい、てめえらは……」

 

「何か言いました? 私達は明久君と坂本君を嵌めるなんて言う馬鹿を叩きのめすんです、邪魔しないで下さい」

 

『ばあーッ!!』

 

「邪魔です」

 

召喚獣を呼び出し飛び出た妖怪を蹴り飛ばし、また召喚獣を消しながら髪を結び

 

「それで、その仕掛けとやらは?」

 

「あ。ああ……2ブロック先のチェックポイントの手前だ」

 

「そうですか、じゃあ行きましょう。翔子ちゃん」

 

「……うん」

 

もう肝試しなんてどうでも良くなった、馬鹿を潰すただそれだけを考えて私達は迷路を進み始めた

 

「……なんかすげえ」

 

「魔王か……納得だわ。あの迫力」

 

常夏コンビはそう呟いてから、姫路と霧島と違うルートでチェックポイントに向かって歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

「何か凄い寒気が」

 

「うん、怒り狂う魔王の気配だよね」

 

俺がそう呟くと明久も頷きながらそう言う

 

「まぁ何かあったんだろ? とりあえずチェックポイントに行こうぜ」

 

向こうのほうで合流できるだろうと楽観的に考え迷路を進む

 

「しかしこのまま行けば俺らの勝ちでバイキングは貰いだな」

 

「そうだね、どこのバイキングなんだろうね?」

 

優勝賞品のバイキングの事を考える。そこまでランクの高い店では無いだろうが男子高校生にとってバイキングと言うのは魅力的だ

 

「でもさ。何にも仕掛けが無いってどういうことだろうね?」

 

「さぁな? 3年が何を考えているかなんて判らねえよ」

 

お化けも仕掛けも無いことに不信感を感じながら通路を歩きもうじきチェックポイントと言うところで

 

「っとと」

 

足元に急に張られたロープに足を取られ明久と揃って壁に手をおいた直後

 

「「「せーのっ!!」」」

 

通路の影からそんな声がした瞬間

 

「なっ!?」

 

「嘘!?」

 

壁が一斉に倒れ俺達のほうに倒れてくる。不味い、このタイミングじゃ避けれない

 

「ちっ!! こっち来い坂本・吉井ッ!!!」

 

倒れてくる壁の隙間から伸ばされる手を掴む

 

「うらあっ!!」

 

強い力で引き寄せられる

 

「た、助かった~」

 

「すまん。助かった」

 

手の先を見ると常夏コンビが居た

 

「先生見ましたか? こいつら迷路壊しましたよ?」

 

「ああ、折角作ったのに酷いと思いませんか?」

 

「そうですね、これは酷いルール違反ですね。坂本君と吉井君がこんな事をするとは思ってみませんでした。よってルール違反として2年生全員を失格とします」

 

「「なっ!?」」

 

思わずそう叫び木村先生に詰め寄り

 

「おかしいっすよ! 俺たちはロープに足を取られて」

 

「どこにロープが?」

 

振り返るとロープは無い、そしてチェックポイントの3年生がニヤニヤと笑っている。こいつら最初からこれが狙いで!? 俺達の後ろの常夏コンビを見ると凄い形相で先生と3年を睨みながら

 

「それで良いのかよ? ああっ!」

 

「2年の事屑だのどうだの言ってそれかよ。幻滅したぜ」

 

睨みながらそう言う常夏コンビは壊れた壁を拾って

 

「木村先生、これを、壁に切込みがあって業と壊れるようにしてあります。坂本と吉井のせいじゃありません」

 

「何言ってやがる? 同じ3年の癖に」

 

「一緒にすんな、卑怯者ども。ったく俺達が引っ張らなきゃこいつら大怪我してるぞ」

 

俺と明久の前にたってそう言う常夏コンビは

 

「だから2年生の失格を取り消してください」

 

「ですが、証拠が無いですし、それに私も壁が壊れるところを見ているので」

 

あくまで俺達を失格だと言う木村先生の前に翔子と姫路が歩いて来て

 

「待ってください、通路の影に6人3年生が居てロープを持っていました。これが業と言う証拠になりませんか?」

 

「……雄二と吉井は悪くない」

 

フルボッコにした3年生を縛り上げながら言う翔子にチェックポイントに居た3年2人が

 

「てめえら! なにやってやがる!! これはルール違反ですよね!?」

 

「こんな事をしてまで勝ちたいと思う2年生はどう思いますか?」

 

しかしこれは逆効果だ、あまりにボコボコに痛めつけているのでどう見ても3年生が被害者にしか見えない

 

「霧島さん、姫路さんもそんなに卑怯な事をして勝ちたいとは……それに常村君と夏川君もグルとは嘆かわしいですね。これはどう見ても酷いルール違反です。よって2年生を失格にします。後片付けと体育祭の準備を2年生全員で」

 

なんてこった。こんなのあまりに酷すぎる

 

「待ってください! モニターに映って無いんですか!? 僕達が失格だなんて納得できません!!」

 

「吉井君、自分が悪い事をしたのなら素直に認めなさい、みっともないですよ」

 

完全に俺達が悪者だ。それにここはモニターが無い箇所。俺たちの無罪を証明する証拠が無い。

 

「待ちなさい。木村先生、雄二君と明久君が言ってる事が正しいです」

 

「「博士!?」」

 

チェックポイント側から博士と鉄人が姿を見せて、3年生を睨みながら

 

「こういう事をするのではと思っててね、ちゃんと君達が知らない所にカメラを仕込んである。これが証拠ですよ」

 

ハンドカメラを再生する博士

 

『おっ、来たぞ? タイミングを合わせろよせーので壁を蹴って奴らを押しつぶすぞ』

 

『骨折位するかもな』

 

『けけ、そりゃいい』

 

『おっ来たぞ。ロープ引け!!』

 

『うっし!!いまだ、せーのっ!!!』

 

壁をいっせいに蹴る6人の3年生の姿がしっかりと映っていた

 

「故意的な設備の破壊に加え、下級生の怪我を狙ってやるとは貴様ら上級生の誇りは無いのか?」

 

拳を握り締める鉄人はチェックポイントの3年生2人に拳骨を振り下ろす、涙目で蹲る2人を睨んで

 

「こい!! たっぷり説教と指導してやる!!!」

 

「「「そ、そんなぁ~」」」

 

ずりずりと引き摺られていく3年生達を見ながら博士が

 

「木村先生も先生です。ちゃんと見ておかないといけないでしょう!」

 

「す、すいません」

 

博士にぺこぺこ頭を下げる木村先生に

 

「後で教頭室で話があるので来てください、良いですね?」

 

「は、はい」

 

しょんぼりとしながら出て行く木村先生を一睨みした後博士は俺と明久の前にしゃがみ込み

 

「怪我は?」

 

「あ、大丈夫です。助けてもらったんで」

 

常夏コンビをみながら言う明久。常夏コンビは顔を逸らし

 

「助けたわけじゃないし。んじゃな」

 

礼を言われなれて無いのか背を向けて歩き出す2人を見ながら博士が

 

「あの2人がねよからぬ事を考えている3年生がいると教えてくれたんだよ」

 

なんだ助けくれたんじゃないか。俺がそんな事を考えながら立ち上がると

 

「いろいろ合ったが。これで肝試しは終了だ、1年生には悪いが諦めてもらおう、設備を見直さないといけないしな」

 

そう笑う博士は思い出したように振り返り

 

「3年生は失格、1年生は肝試しが出来なくなったんで2年生が優勝扱いになるから。今度賞品のバイキングのチケットを渡すから楽しみにしていれくれたまえ。では教室に戻ってHR後に帰宅したまえ」

 

そう言って出て行く博士を見ていると翔子が

 

「……怪我無い? 大丈夫雄二」

 

心配そうに俺を見る翔子、隣では明久が

 

「ああ、ここ擦りむいてますね、絆創膏を」

 

「ありがとう」

 

姫路に手当てをされていた、俺はそれを見ながら

 

「あんがとよ」

 

「……うん」

 

心配してくれている翔子に礼を言ってAクラスを後にした

 

 

 

 

 

 

HR後の帰り道、ひめ……ううん。瑞希さんと歩きながら

 

「博士に聞いたけど、通路の影の3年生相手に喧嘩したんだってね?」

 

「そ、それはなんと言いますか……こう頭に血が上っていたせいでして……大半は翔子ちゃんがやったんですよ?」

 

慌てた様子で言う瑞希さんに

 

「でも瑞希さんは僕を助けてくれようとしたわけでしょ? ありがとう。今度お礼をするね?」

 

助けられるとは思っても見なかったことなので、苦笑しながら言うと瑞希さんは

 

「……さんは無しに出来ないんですか?」

 

「え、えーとちょっと難しいかな?」

 

瑞希さんと言うのでもがんばっているのにこれ以上ハードルをあげないで欲しい

 

「じゃあ、お礼は良いのでさん無しで呼んでください」

 

物凄いハードルをあげてくるな

 

「もうちょっと時間が欲しいんだけど?」

 

今の瑞希さんでも大変なのにと思いながら言うと

 

「木下さんや美波ちゃんを呼び捨てで呼べるんですから私もお願いします」

 

僕の顔を見て期待の色を目に浮かべる瑞希さん、暫く見つめあい最終的に僕が根負けし

 

「うーうう。じゃあ瑞希」

 

真っ赤になりながら言うと

 

「はい♪ それで良いですよ明久君。 さて明日からはやっと夏休みですね」

 

「そうだね、やーと遊べるよ」

 

「じゃあ、デートでもしますか?」

 

「そうだね……ホワイ?」

 

空返事をしてしまい驚いてそう尋ねると携帯を持って笑う瑞希

 

「ちゃんと言質取りましたからね? 約束ですよ」

 

「ええ!? ちょっと待ってよ!?」

 

「待ちません~」

 

走っていく瑞希の後ろ背を見ながら

 

「なーんか。最近魔王に振り回されてばっかり……でもこんな毎日も悪くないかもね」

 

僕はそう苦笑しながら空を見上げた、澄み切った青空を見ながらゆっくりと家に向かって歩き出した

 

 

 

第65問に続く

 

 

 

 




常夏が善人ルートを進んでいるので少々展開が難しかったですね。今回はあんまり面白くなかったかもしれませんね、ですが夏休み編で一気に挽回したいと思います!!
自分でハードルを上げるのはこれ位にしておきますか。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします

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