第4問
「さてと、昼ごはんを兼ねてここでミーティングするか」
雄二に案内されたのは屋上だった。雲1つない空からまぶしい光が降り注ぐ・・私が思わず目を細めた直後、背後から
『死になさい・・』
『・・ぐあっ!!』
ドカッ!!ゴロゴロ・・・
康太の短い悲鳴と転がり落ちていく音・・そして
『ムッツリー二ィィィッ!!』
明久の叫びが聞こえてきて、私は思わず・・
「・・なんだろう・・とても残念な気分だ・・」
折角の快晴だったのに・・何か・・そう口で言い表せないが・・とても残念な気分だった・・
「明久、宣戦布告はしてきたな?」
康太と明久・・それに島田が来た所で雄二がそう尋ねると
「一応、今日の午後に開戦予定と告げてきたけど?」
ふむ、では昼食が先か・・弁当でも出すか・・教室から持って来ていた鞄を取り出したところで、唐突に思い出した
(あーそういや、なのは達がお昼にとか言ってたな・・戦争まえだから無理だって伝えとこう)
念話で一緒に昼食は無理だと謝りを入れていると、雄二が
「明久、今日くらいまともな物食べろよ?」
「そう思うならパンでも奢ってくれないかな?」
・・?・・明久は昼を食べないのか?・・育ち盛りだから腹が減るんじゃ?・・私と同じ事を考えた姫路が
「吉井君ってお昼食べない人なんですか?」
「・・いや・・一応食べてるよ?」
言いにくそうに言う明久に雄二が
「アレは食べてると言えるのか?・・お前の主食って・・水と塩だろ?」
・・・・水と塩?・・私の聞き間違いか?
「失礼な!砂糖だって食べてるよ!!」
「それは食べる言わんわッ!!!」
はやては思わず突っ込みを入れてしまったようだ・・というか・・水と塩と砂糖って・・虐待でもされてるのか?・・私がそんな事を考えてる内に疑問は解決した・・どうやら明久は1人暮らしをしていて、仕送りがあるのだが、それを遊びに使ってしまっているらしい・・つまりは自業自得というわけか・・私が呆れ果てていると姫路が
「・・あの・・良かったら私がお弁当を作って来ましょうか?」
何かを決意したような表情でそう言った・・
「・・あの・・良かったら私がお弁当を作って来ましょうか?」
僕は思わず耳を疑った・・お弁当・・?女の子の?手作りの?
「ほ、本当に良いの?僕、塩と砂糖以外のもの食べるなんて久しぶりだよ!」
嬉しくてそう言うと八神さんが
「あんたはどんな生活してるんやっ!」
鋭い突込みが入れられるが、今はどうでも良い・・お弁当・・しかも・・姫路さんの・・僕のテンションが上がっていると雄二が
「良かったじゃないか明久、手作り弁当だぞ?」
「うんっ!!」
ここは素直に喜ぼう、ただでカロリーが摂取できるんだ。こんな素晴らしい事はない!!
「ふーん・・瑞希って優しいんだね。吉井にだけ作ってくるなんて」
面白くないという感じで呟く島田さん・・すると姫路さんは少し慌てた様子で
「あ、いえ・・その皆さんにも」
雄二達を見ながら言う姫路さん・・すると雄二達が
「俺達にも?・・良いのか?」
「はい、嫌じゃなかったら」
雄二たちにも作ってくれるなんて・・なんていい子なんだ・・僕だけじゃないのが残念だけど・・
「それは楽しみじゃのう」
「・・・(コクコク)」
「・・・お手並み拝見ね」
でもそれでは姫路さんを含めて、9人分・・作るのが大変そうだ・・僕がそんな事を考えてると八神さんが
「私は良いわ、兄ちゃんが弁当作ってくれるで」
「・・私も龍也様の手作りのお弁当があるので」
手を振りながら言う八神さん達、というか龍也が作るの?普通逆じゃ・・
「そ・・それじゃあ、吉井君達の分だけ作りますね」
「ん、そうしてくれる?私の楽しみなんよ・・兄ちゃんのお弁当。ごめんな」
少し気落ちしたような姫路さんに謝る八神さん・・だが・・少し気落ちしたような姫路さんが可哀想だ・・フォローしておこう
「姫路さんって優しいね」
心からそう思う・・持って来るだけでも大変なのに・・嫌そうな顔1つしない・・なんて献身的で魅力的なんだろう・・
「そ・・そんな・・」
顔を赤くする姫路さんに
「今だから言うけど。僕、初めて会う前から君の事好き・・」
思わず告白しそうになっていると、雄二が
「今ここで振られると弁当の話はなくなるぞ?」
瞬間的に方向転換僕は咄嗟に
「にしたいと思ってました!!」
失恋回避成功!素晴らしいぞ僕の判断力
「・・明久・・それでは欲望をカミングアウトした。ただの変態だぞ?」
恨むぞ僕の判断力・・
「明久、たまにお主はワシの想像を超えた人間になる時があるのう」
秀吉の呆れた様な呟きに
「だって・・お弁当が・・」
これも生きる為の行動・・全ては貧乏が悪いんだ!!!
「さて話がかなり逸れたが、試召戦争に戻ろう」
おお、すっかり忘れていた
「雄二、気になっていたんじゃが・・どうしてDクラスなんじゃ?段階を踏んでいくならEクラスじゃろうし・・勝負に出るならAクラスじゃろう?」
秀吉がそう言うと八神さんが
「考えれば判るやろ?EクラスはFクラスより少し強いくらいやから、態々戦うまでもない。そもそも今回の戦争は唯のモチベーションを上げる為の物・・そうやろ?代表?」
にやにやと言う表現がピッタリの笑みを浮かべた八神さんにそういわれた雄二は
「あ・・ああ。その通りだ・・流石だな八神さん」
「おおきに」
にっこりと微笑む八神さんを褒めてから雄二は
「まぁ、俺の考えは八神さんが言ったとおりだ。明久・・この面子を見てみろ」
そう言われて自分の回りに入るメンバーを見る
「美少女が4人と馬鹿が2人にイケメンが1人とムッツリが1人だよね?」
姫路さんと八神さんとセッテさんと秀吉は美少女で、馬鹿は雄二と島田さん、んでイケメンは龍也で、ムッツリはムッツリー二だ
「誰が美少女だと!?」
「ええ!?雄二が反応するの!?」
「・・・ポッ」
「ん?私が馬鹿か?」
「誰の兄ちゃんが馬鹿や・・ああん!?」
「死にますか?」
「ええ!?ムッツリー二まで!?それに龍也が馬鹿に反応しちゃった!?それにヤバイ人が2人も反応しちゃってる!?」
どうしよう!?僕だけじゃ突っ込みきれない!?それ所か命が危ない!?
「まぁまぁ、落ち着くのじゃ、代表に龍也それにムッツリー二。それと龍也は馬鹿ではなかろう、落ち着くのじゃ2人とも」
「「コハアアアッ・・」」
殺戮モードに入りそうな八神さんとセッテさんにまで、落ち着くように言う秀吉・・なんて男らしいんだ!?外見は完全に美少女なのに!?
「そ、そうだな・・とりあえず落ち着こう」
「いや、その前に何で美少女で取り乱したのか聞きたいんだけど?」
「ま。要するに」
軽くスルーされた!?
「姫路に問題がない上に龍也、それに八神さんにセッテさんが居る以上。Eクラスには欠伸しながらでも勝てる。勿論Dクラスにも」
「それじゃあAクラスに挑もうよ」
僕たちの目的はAクラスであって、Dクラスじゃない、戦争自体が目的の雄二とは求める物が違う
「明久よ、今回の戦争は初陣だ、派手にやって今後の景気付けをするべきだ。それにかりに私達が居たとしても、戦いとは個では決まらん。団結こそが1番必要なのだ。つまり今回の戦いはAクラスに勝つために必要なプロセスなのだよ」
判り易く説明してくれる龍也に雄二は驚いた表情をしながら
「まぁそう言うわけだ、俺達の目標はAクラスだ。だがDクラスに勝て無ければAクラスには到底勝てない。だが・・お前達が協力してくれれば必ず勝てる!!なぜなら・・ウチのクラスは最強だからだ」
それは不思議な感覚だった・・根拠もないのに・・何故かその気になってくる・・
「良いわね、面白そうじゃない」
「そうじゃな。Aクラスを引き摺り下ろしてやるかの」
「面白いことになりそうだ」
「合法的に敵を潰せる」
「・・うふふ・・女狐を殺すのです・・」
・・約2名危険人物がいるが・・まぁ良いだろう・・
「そうか、では戦争の前に腹ごしらえをしよう」
「うん、そうだね」
僕はポケットから塩を取り出した・・
本当に塩と水なのか・・あまりに憐れだ・・
「明久・・良かったら、私の弁当を食べないか?」
「ええ!?私の分がなくなるやん」
「馬鹿には水で充分です」
セッテとはやてが文句を言うが、目の前で塩と水で腹を膨らませようとしている。明久が可哀想で仕方なかったのだ・・
「い・・良いの!?ほ・・本当に!?」
嬉しそうな明久に
「ああ、大丈夫だ。少し作りすぎてしまったんだ」
六課に居る時の感覚で作ったせいか。作りすぎてしまった・・だから丁度良いのだ・・私はそんな事を考えながら鞄から弁当を取り出した・・
ドン×2
「「「「「・・・・・・はぁっ!?」」」」」
私が置いたもの・・それは3段重ねの重箱×2だ
「・・・兄ちゃん・・作りすぎや・・」
「・・言い難いですが・・はやての言うとおりです」
仕方ないだろう・・気づいた時はもう完成してたんだから・・
「と、言うわけで良かったら雄二達も食べてくれると助かる。残すのは勿体無いからな」
「あ・・ああ・・ありがたく頂く」
「う・・うむ」
頷いてくれた雄二達を見ながら、私は重箱の蓋を空けた・・
な・・何だ・・この弁当は!?輝いてるぞ!?
俺は目の前の弁当が信じられなかった・・気のせいか光って見えた・・
「こっちがおにぎりで、こっちがサンドイッチ・・それでこっちはおかずな」
説明しながら重箱を開けていく龍也。その度に光が増す・・
「・・う・・ほ・・本当に・・た・・食べて良いの?」
「う・・うむ・・ワシもそれが気掛かりじゃ・・」
「・・・・弁当が光ってる・・」
どうやら光って見えるのは俺だけじゃないようだ・・・
「ああ、どんどん食べてくれ。デザートもあるんだ」
龍也は鞄からもう1つタッパーを取り出す
「手作りだから見てくれは悪いが・・美味いぞ」
龍也が説明しながら置いた物・・それは
「な・・なんて・・美味しそうなシュークリームなの?」
「お・・美味しそうです・・」
島田と姫路が衝撃を受けた表情でタッパーを見る・・俺も驚いた・・
(これは売ってるレベルだ!しかもプロだ!!こんな身近にプロが居る!?)
見てくれが悪い?・・とんでもない・・これは買えば800円はするぞ・・俺が今日が驚愕してる間に
「・・い・・頂きます」
「・・頂くぞい」
「・・パク」
明久達が唐揚げを口に運ぶ・・その瞬間
「「「!?!?!?」」」
目を見開き停止する・・なんだ・・まさか不味かったのか?俺が恐る恐る唐揚げを口に運んだ・・そしてその瞬間謎は全て解けた・・
噛むたびに溢れ出す肉汁・・
衣は弁当に入っていたのが信じられないくらい、パリパリで
味はかなり濃いのにしつこくなく、直ぐにでも次の唐揚げが食べたくなるほどだ
同じ様に島田と姫路も停止している、龍也は心配そうに
「口に合わなかったか?」
と尋ねてくる・・口に合わない・・?これが・・そんな馬鹿はいない・・美味すぎて言葉が出ないのだ・・そしてそんな中明久がフリーズから復帰すると同時に立ち上がり・・フェンスへと走っていき大きく息を吸い込む・・そうだ・・正しいリアクションはあれだ!俺も立ち上がり明久の隣に立つ・・横目で見ると秀吉とムッツリー二も同じ様にしている・・そうだ・・これが正しいんだ・・俺はそう確信しおおきく息を吸い込み大声で叫んだ・・
「「「「うーまーいーぞーッ!!!!!!!!」」」」
そうだ・・これが正しいんだ・・これ以上正しい反応はない・・
「お・・美味しいです・・八神さんはこんな美味しいのをいつも食べてるんですか?」
「んー偶に私が作ったりもするけど・・兄ちゃんのほうが上手なんよね・・レパートリーも多いし、和洋中・・なんでも作れるんやで?」
「そ・・それは凄いわ・・くっ・・女としてのプライドが根こそぎへし折られた」
「そうでしょう、私も初めて食べたとき・・そう思いました」
後ろで女子達がそう話すのが聞こえる・・
「おーい、早く食べないと無くなるぞ?」
龍也にそう声を掛けられ俺達は慌てて座り直し、龍也の弁当に手を伸ばした・・
「てめぇ!!何個から揚げ食う気だ!!俺にも寄越せッ!!!」
「雄二は買って来てた焼きそばパンでも食べてろッ!!!」
「こんなもんくれてやるよ!だからそれを寄越せぇッ!!!」
「断固断る!!!」
俺と明久が唐揚げを取り合い・・
「これは・・本当に美味いのう・・レシピはどうなってるんじゃ?」
「・・気になる・・」
丁寧に作られた鮭のムニエルを食べながら呟く秀吉とムッツリー二
「レシピ?欲しいなら今度コピーしてこようか?」
「あ、それならウチも欲しい」
「わ、私も」
レシピが欲しいと言う面々にコピーを渡すと言う龍也・・
騒がしく賑やかな昼食は瞬く間に過ぎていった・・・・さぁ・・腹も満たされた・・テンションも限界まで上がった・・Dクラスとの試召戦争・・負ける理由は何一つ無い!
第5問に続く
えーかなり長くなりました・・すいません・・でも面白いですよね?多分・・それでは次回もどうか宜しくお願いします