バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです、今回から「強化合宿編」です、混沌でカオスな話が多いと思いますが。どうかよろしくお願いします



第37問

 

第37問

 

「到着、優子降りろ」

 

宿の前でそう言うと優子は

 

「危ない…避けて…そっちは道じゃ…逃げてー!おじいちゃーん!!!」

 

しっかりとしがみ付いたまま、錯乱していた…やはり選択した道が間違っていたのだろうか?私は優子に悪い事をしたと思いながら

 

「正気に戻れ!」

 

「はうっ!?」

 

優子の顔の前で手を叩いた

 

「あ…あれ?ここは?」

 

きょろきょろしてる優子に

 

「合宿所だ。どうやらAクラスはもう来てるようだ。荷物を受け取ってくると良い、私はベヒーモスを停めてくる」

 

デバイスなので待機状態にすれば良いが。それだとおかしいので普通に停車する事にする

 

「あ…うん。判った、それと…龍也君道じゃない所をバイクで走るのも。片輪走行するのも禁止!!危ないから」

 

ヘルメットを差し出しながら言う優子に

 

「覚えておこう」

 

「覚えておこうじゃない!危ないから2度とそんな事しちゃ駄目だからね!それじゃ」

 

優子はそう言うとAクラスのバスのほうに向かって行った…

 

「ふーむ…スバルとノーヴェに同じ事を言われたな」

 

前に後ろに乗せた2人も同じ様な事を言っていたな…私はそんな事を考えながら駐輪場に向かった…

 

「…明久・秀吉!死ぬな!生きるんだ!!」

 

ぐったりとしてる明久と秀吉を肩に担ぎ走ってくる。雄二

 

「雄二…電気ショックの機械を持って来た」

 

旅館から大きなオレンジの箱を持ってくる康太…

 

「よっしゃ!これで何とかなるかもしれないぞ!!早く部屋に連れて行くぞ」

 

雄二と康太は私に気付かずバタバタと走っていった…一体何が起こったのだう?私はそれが非常に気になった。私は首を傾げながら旅館の中に入ったすると…

 

「お兄ちゃん!」

 

「にーさま!」

 

ドスンッ!!

 

ぐふっ…駆け寄ってきたユナとリヒトの頭が鳩尾に直撃する。痛みの余り、片膝を着きそうになるが、そこは兄のプライドで耐える

 

「に…兄さん…?膝が揺れてますよ?」

 

「ふふ…気のせいだ。アザレア」

 

心配そうなアザレアにそう言いながら

 

「さて、靴を脱ぐから離れてくれるかな?」

 

抱きついている2人に言うと

 

「あ、じゃあ、私がスリッパ持ってくる」

 

パタパタと走っていくリヒト

 

「えっと…じゃあ私は鞄を」

 

私の手から鞄を受け取ろうとするユナに

 

「重いぞ?」

 

「大丈夫です…んッ…アザレア…」

 

「あ、…はい」

 

持とうとして無理だったのかアザレアを呼ぶユナ。2人で鞄を持ってよろよろ歩く2人に笑みを零していると

 

「はい、にーさま」

 

「ありがとうリヒト」

 

「へへへ…」

 

スリッパを置いてくれたリヒトの頭を撫でながら、靴を脱ぐと

 

「も…もう…無理…」

 

「えっ?…アザレア…力尽き…うわあッ!?」

 

2人で何とか鞄を持っていたが、アザレアが力尽き手を離す。それによりユナは鞄に引っ張られるように倒れた

 

「大丈夫か?」

 

スリッパに履き替え、倒れてるユナに尋ねると

 

「お手伝いしたかったのに…」

 

鞄を運べなかった事にショックを受けていたようだった…私はしゃがみ込みユナの頭を撫でながら

 

「良いよ、ありがとうユナ。気持ちだけで嬉しいよ」

 

ユナが運べなかった鞄を掴み持ち上げる

 

「さてと、荷物を置きに行くか」

 

荷物を置いて、お風呂の準備をしないと行けないと思いながら言うと

 

「では、私が案内を!」

 

今度こそという表情のユナに

 

「ユナが案内してくれるのか?それじゃあお願いしようか」

 

「はい!」

 

元気よく言うユナに案内され、部屋に向かっていると

 

「「「ツカツカ…」」」

 

怒った様子の女子の一団とすれ違った

 

「なにかあったのか?」

 

私より先に旅館に来ていた、ユナ達に尋ねると

 

「「「??」」」

 

首を傾げるユナ達、どうやら知らないようだ…どうせ大した事ないだろうと判断し。私は部屋へと向かった…

 

 

 

「知らない天井だ…」

 

僕は気が付くと知らない部屋で寝かされていた…

 

「明久良かった…電気ショックが効いた様だな…」

 

安心したという表情の雄二…えっ?美波と姫路さんの高速パンチのせいで僕の命がそんなに一か八か状態になってたの…

 

「所でここは合宿所?」

 

「ああ、そうだ。この旅館、文月学園が買い取って作り変えたらしいぞ?…全くそんな金が有るなら、無料の食堂を作って欲しいよな?」

 

「うん、そうだよね」

 

育ち盛りの男子高校生としてはそっちの方がよほど嬉しい

 

「む…明久…」

 

部屋に入ってきた秀吉がなにか気難しそうな顔をしている

 

「?どうしたの秀吉?」

 

その反応が気になり尋ねると、秀吉は慌てて

 

「いや…何でもないのじゃ…気にせんでくれ…おぬしが無事で本当に良かったと安心しておるだけじゃ」

 

にっこりと微笑む秀吉…どこかおかしい気が…僕が首をかしげているとムッツリーニが戻ってきた

 

「…明久無事でなにより…情報が無駄にならずに済みそうだ」

 

ぼそぼそと言うムッツリーニの言葉に雄二が

 

「情報?…昨日。俺と明久が頼んだやつか…随分早いな」

 

確かに早い…さすがムッツリーニだ…僕と雄二はムッツリーニの近くに行き。ムッツリーニの集めた情報を聞いた…

 

「…結局、犯人は女子でお尻に火傷の痕があると言うことしか判らなかった」

 

「「お前は何を調べたんだ?」」

 

一体何をどう調べれば、その情報を得れるのか尋ねると

 

「…これを聞いて欲しい」

 

ボイスレコーダーを取り出すと、ムッツリーニは再生ボタンを押した

 

ノイズ混じりの声が聞こえてくる…辛うじて男子か女子かくらいしかかわからない

 

「…音が悪いのは我慢して欲しい、それより会話をよく聞いて」

 

幾つかの商談の話が聞こえてくる…その中で気になる会話があった

 

【八神龍也ファンクラブの会員証が欲しいんだけど?】

 

【会員証ね、ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナの4種類あるけど…どれをご希望?】

 

「…八神龍也…ファンクラブ?何時そんなの結成されたんだ?」

 

雄二の言葉にムッツリーニが

 

「…清涼祭の後すぐ」

 

なるほど執事の龍也に心を撃ち抜かれた。女子が結成したのか…僕が納得していると

 

【ブロンズは写真・シルバーは写真とブロマイド・ゴールドは龍也の情報とマル秘写真・プラチナは全部買えるよ】

 

ランクに応じて買える物が違うらしい…

 

【値段は?】

 

【ブロンズが1000円・シルバーが2000円・ゴールドが5000円。んでプラチナが1万】

 

高い!ぼったくりも良い所だ…僕が驚いていると

 

【高いわね?もう少しまけてくれないの?】

 

【こっちは何せ命懸けだよ?それくらいは大目に見て欲しいね】

 

…そりゃそうだ…見つかったら、死亡決定だろう

 

【魔王様公認のクラブでしょ?どうして命懸けなのよ】

 

【…龍也って結構盗撮とかに気づくんだよね…前にシャーペンが飛んで来て、コンクリートの壁に突き刺さってたんだ…もし当たってたらと思うと…】

 

…どうやら魔王様ではなく。龍也のせいで命懸けのようだ…

 

【了解理解したわ。それじゃあこれを買い取ってくれるかしら?】

 

【BL本20冊ね…レートで行くと…6000くらいかな?】

 

「BL本…?まさか…」

 

秀吉が思い当たる人物がいるのか。そんな事を呟いている中…商談は進む

 

【6000…まぁまぁね…それじゃあ、後4000出すわ。プラチナカードを頂戴】

 

【毎度。早速何か買う?今日はね…昼寝してる龍也の写真と走ってる時の龍也の写真があるけど?】

 

【今日は止めとくわ。また今度買わせて貰うから。それじゃ】

 

「…ちなみにムッツリ商会も販売してる。当然こっちも命懸け」

 

ムッツリーニがそう言う…

 

「誰が買うの?」

 

「女子…それと魔王様…」

 

ほッ…良かった…男子が買ってるとかじゃなくて…僕が安心してると。

 

「…これが犯人特定のヒント」

 

【こんな写真を取ってるのがバレたら大変なんじゃ?】

 

【ここだけの話、前に1度母親にばれてね…文字通り尻にお灸を据えられたよ…何時の時代の罰なんだか…それでまだ火傷の跡が残ってるよ、乙女に対して酷いと思わないかい?】

 

なるほど…これがヒントか…僕達が納得していると、秀吉が

 

「何の話をしておるんじゃ?内容がよく判らんのじゃが…」

 

首を傾げる秀吉…確かにこの内容を聞いただけではよく判らないだろう…僕が簡単に事情を説明していると…

 

ドバン!!

 

「全員手を頭の後ろに組んで伏せなさい!!!」

 

凄い勢いで僕らの部屋の扉が開かれた

 

「な、何事じゃ!?」

 

「僕の方こそ何事!?」

 

動揺する秀吉に引き寄せられ混乱していると

 

「木下は今すぐアキを離しなさい。そして馬鹿2人は抵抗を止めなさい!!!」

 

美波が窓から脱出しようとした雄二とムッツリーニの機先を制した…僕も秀吉に手を掴まれていなければ同じ行動をしていただろう

 

「木下君…明久君を離すんです」

 

「…明久に危害が加えられる可能性がある…ワシは明久を離さんぞ」

 

がっちり秀吉に手を掴まれてる中、雄二が

 

「仰々しくぞろぞろと何のようだ」

 

窓を閉めながら言う雄二に、小山さんが

 

「よくそんなシラが切れるものね。貴方達が犯人だって事くらいすぐ判るのに」

 

「犯人?犯人って何の事さ?…それに…秀吉?僕の手の骨がミシミシ言ってるんだけど?」

 

「ちょっと、黙っておれ。明久今大事な話ををしておるんじゃ」

 

「木下…死ぬの?」

 

「やはり敵ですね…木下君は?」

 

…美波と姫路さんとにらみ合ってる秀吉…一体何の話をしているのだろう?…実に気になるが今はそれより、僕の手の骨がミシミシと音を立てている…そっちほうが問題だ…

 

「これのことよ」

 

小山さんが僕達の前に何かを置いた…何か判らず首を傾げていると

 

「…CCDカメラと小型集音マイク」

 

ムッツリーニが教えてくれた…

 

「これが女子の脱衣所にあったわ」

 

「それって盗撮じゃないか!?一体誰がそんな事を!!」

 

僕がそう怒鳴ると

 

「貴方達じゃないの吉井…あの…島田さん…私の手を掴んでどうする気?」

 

僕を指差そうとした小山さんの手を美波が

 

「ウチは言ったわよね?アキはそんな事しない…アキを犯人扱いするなら…腕折るわよ」

 

魔王様光臨!!!目に見えてうろたえている小山さんは

 

「訂正する…坂本と土屋が犯人でしょ」

 

僕を指差すのをやめ雄二達を指差した…

 

「明久!お前てめぇだけ、助かる気か!!!」

 

「裏切り者!!!」

 

雄二とムッツリーニが僕を睨む

 

「まって!今のこの状況を見て!!!いたタタ!!駄目ッ!!!身体が真っ二つに裂けちゃう!!!」

 

「「離しなさい!!!」」

 

「断るのじゃ!!!」

 

右手・秀吉 左手・魔王様化してる美波・姫路さん…このままでは僕の身体が裂けてしまう…って言うか秀吉は何で、僕を救うのにここまで必死なの!?このままでは不味い、本当に身体が裂けてしまう

 

「雄二頼む!!この場を何とか収めて…」

 

雄二に小山さん達と秀吉を止めるように頼もうとしたが…

 

「…いっぺん死んでみる?」

 

「ま、待て!!翔子何だ!?撲殺用にしか見えない棍棒は!?」

 

「…撲殺君…X」

 

「翔子待て!!落ち着…ぎゃああああああッ!?!?」

 

ドゴ!!メシャッ!!メキョッ!!!

 

「…折って♪殴って♪監禁する♪」

 

鈍い音と共に聞こえてくる、2度と聞きたくなかったあの歌…雄二は駄目だ!刑が執行されている!こうなったらムッツリーニに…

 

「…ッ!?!?!?」

 

駄目だ!ムッツリーニも刑が執行されてる!!!丁寧に猿轡を噛まされ石畳の上へ…もうやつも助からない

 

「「離しなさい~ッ!!!」」

 

「いーやーじゃーッ!!!」

 

ミシミシ…僕の手首もそろそろ限界だ…

 

メキョ!ポキョッ!!!!

 

「!?!?!?」

 

声にならない悲鳴を上げ僕は意識を失った…消えていく意識の中

 

「「「あっ…」」」

 

3人のしまったと言う感じのあっ!て声だけが耳の中に残っていた…

 

 

 

 

「悲鳴が収まったな」

 

さっきまで聞こえていた悲鳴が途絶えたのでそう呟くと

 

「死んじゃったのかな?」

 

「まだ生きてるんじゃないです?結構タフそうでしたしあの人達」

 

「…だ、大丈夫かな?」

 

ユナ達の三者三様の話を聞きながら。自分の部屋の戸を開けると

 

「あ、兄ちゃん遅かったな」

 

「兄貴、くつろいでるぞ?」

 

「お邪魔してます」

 

「今、お茶を入れますね」

 

さも当然という表情で、くつろいでいるはやてとヴィータに、ぺこりと頭を下げるティアナとお茶の用意を始めるセッテ…私は大きく息を吸い込み

 

「自分の部屋に戻れええッ!!!」

 

私はそう絶叫した…

 

「行き成り酷く疲れた…」

 

しぶしぶと言う様子で出て行った、はやて達を見送り。私は畳の上に座り込みながらそう呟いた

 

「はー今日はもう寝るかな…いやでも風呂は入りたいよな」

 

温泉らしい、これは是非とも入っておきたい

 

「よし、用意するか…」

 

鞄から浴衣を取り出し、

 

「ユナ達はどうする?私と入るか。はやて達と入るかどっちだ?」

 

そう尋ねるとユナ達は暫く考え込んでから、はやて達と入ると答えた…どうやらバイクで移動した私を気遣ってくれたようだ

 

「ありがとな。じゃあ後でな」

 

私はユナ達にそう声を掛け、温泉ヘ向かった…

 

「ふう…良い湯だった…」

 

タオルで髪を拭きながら歩いていると

 

「えーと…どうするんだっけ?」

 

「自分で考えろ馬鹿」

 

「…眠い」

 

「…ぐー」

 

正座しながら何かを書いてる明久達を見かけたが。近くに西村先生も居たので明久達が何かしたんだろうと判断し、私は自分の部屋に戻った…

 

 

~次の日~

 

「昨日は失敗だったね。雄二」

 

「ああ…そうだな…」

 

昨日覗きをしてないのに、覗き犯に仕立てられた。雄二とムッツリーニはやってもないことで裁かれた事に腹を立て、実際に覗く為に行動を起こした。勿論結果は失敗…鉄人を含む先生達に取り押さえられ。英語の反省文を書かされる羽目になった…

 

「しかし、島田と姫路に見つからなくて良かったな。明久…見つかったら…」

 

そこで言葉を切る雄二

 

「見つかったら…なに!?変なところできらないで!」

 

僕がそう言うと雄二は

 

「ボキボキに折られた上で洗脳されてただろ?」

 

「…否定できない!!僕もそうなりそうな気がするよ!!!」

 

今の2人だとそれくらい平気でやりそうな気がする…僕が頭を抱えると

 

「大丈夫じゃ、ワシが助けてやるからの」

 

秀吉がそんな事をいってくれる…

 

「…ありがとう秀吉…君だけが僕の味方だ」

 

僕が秀吉に感謝していると、雄二とムッツリーニが

 

「なぁ?ムッツリーニ?秀吉の反応がおかしくないか?」

 

「…死線を越えて…何か心境の変化があったのかも…」

 

「それで明久を好きにってか?男同士だぞ?」

 

「…もしかしたら。男として育てられただけなのかも…」

 

そんなひそひそ話をしていた…まぁそんなこんなで朝食の為に移動していると

 

「ご飯♪ご飯♪」

 

楽しそうなリヒトちゃんの声がする。龍也も近くに居るのだろうと思いながら曲がり角を曲がるとそこには

 

「走ったら転ぶぞ?」

 

黒い着物に赤い帯…しかも背中には天の一文字…物凄く派手な格好をした龍也が、

 

「ふみゅ…」

 

「ユナちゃん…起きましょうよ…」

 

まだ寝ぼけているであろう。銀髪の子を抱っこし、空いてる右手でアザレアちゃんと手を繋いでいた…それを見た僕達は

 

((((子煩悩なお父さんだ!!))))

 

何処からどう見て旅行に来たお父さんにしか見えなかった…

 

「ん?明久達かおはよう」

 

僕達に気付いたのかそう声を掛けてくる龍也にムッツリーニが

 

「おはよう…随分と派手な着物だな?」

 

僕が聞きたかった事を尋ねてくれる、さぁ龍也は何と返答するんだ?

 

「派手か?自分でデザインしたんだが…」

 

「「もっとデザインを考えろよッ!!!」」

 

僕と雄二はそう突っ込みを入れた…自分で考えてあれ?もっと他に思いつかなかったのか?僕達が驚いていると

 

「ふみゅう…?…ふああああ…?どうして私は抱っこされてるんですか?」

 

銀髪の子が目を覚ますが…その子もまた

 

((((イヌのきぐるみパジャマ!?どういうセンスなんだ!?))))

 

すっぽりと包まるタイプのパジャマを着ていた…一体どういうセンスをしてるんだ?龍也と龍也の妹は!?

 

「ユナちゃんは…朝弱い…ですからね。は、はいぬいぐるみ」

 

「どうもです、アザレア」

 

アザレアちゃんにぬいぐるみを渡されそれを抱き抱えるユナちゃんだが…

 

((((龍也のぬいぐるみ!?誰が作ったんだ!?))))

 

龍也にそっくりなぬいぐるみを抱き抱える。売ってる筈が無いので手作りな筈…一体誰が?

 

「良いなあ…私も欲しいな」

 

「リヒトちゃんのは…今作ってます…もうちょっと待ってください」

 

アザレアちゃんがそう言うのが聞こえる。あの子?あの子が作ってるの?匠?匠なの?…見た目10歳程度なのに…なんて技術なんだ…僕が驚いていると

 

「…失礼。少し商談をしたいのだが?」

 

ムッツリーニがアザレアちゃんに話しかけていた。恐らくそのぬいぐるみ作りの手腕を借りたいのだろう…だが当の話しかけられたアザレアちゃんは

 

「う…ううう…兄さん…怖いです」

 

ぷるぷると震え、龍也の後ろに隠れてしまった…

 

「うーん。悪いな康太、もう少し慣れてから話しかけてやってくれるか?」

 

「…そうする、焦らずに待つ」

 

ムッツリーニはそう言うと僕達の方に戻ってきた

 

「うむ、話すのは良いがこのままでは朝食の時間に遅れてしまう。早く行くとしよう」

 

秀吉に促され僕達は食堂に向かって歩き出したが…

 

「か…可愛いです…美春の所へ…はぁ…はぁ…」

 

血走った目でアザレアちゃんを掴もうとしたドリルロールの髪の女子…清水美春さんが一歩前に踏み出した瞬間

 

「ひゃっ…ふん!変質者が!!」

 

「はうっ!?」

 

おどおどしていたアザレアちゃんの雰囲気が変わり。その瞬間鋭い回し蹴りが放たれ、危険人物は昏倒した

 

「死ねば良いのに変態が…」

 

蔑むように言うアザレアちゃん(?)にユナちゃんが

 

「あっ。アリウムに代わったんですね。お久しぶりですアリウム」

 

代わった?どういう事?僕が困惑してるなか

 

「うむ。2週間ぶりかな?フードが鬱陶しい」

 

そう言うとアザレアちゃん(?)はフードを取る…良く見るとアザレアちゃんの目が朱銀になっていた。

 

「ふむ…これで落ち着いた…こほん。兄上様、お身体に代わりは無いかな?」

 

「ああ、大丈夫だよ。アリウム、お前も元気そうだな」

 

龍也は穏やかに微笑みながらアザレアちゃん(?)の頭を撫でていた

 

「うむ、私はいつも元気だ、こうして頭を撫でられるのも久しぶりだ」

 

にこにこと笑うアザレアちゃん(?)の雰囲気が気になり。僕は龍也に

 

「あ…あの龍也?アザレアちゃんの雰囲気が違うんだけど?」

 

そう尋ねると龍也は

 

「ああ、今はアリウムだからな。アザレアは二重人格なんだ」

 

二重人格!?それって本当にあるの!?僕が驚いていると

 

「吉井明久に坂本雄二…後は土屋康太と木下秀吉だったな?…私はアリウム…よろしく頼む」

 

にっと笑いながら言うアリウムちゃんに

 

「あ…うん。よろしく」

 

アザレアちゃんのおどおどした雰囲気ではなく。凛とした雰囲気に若干押されながら返事をすると

 

「さて。兄上様、このままでは本当に朝食の時間に遅れる。行くとしよう」

 

「そうだな。少し急ぐとしようか?」

 

龍也はそう言うと3人を連れて歩いて行ってしまった…残された僕達は

 

「ねぇ?普通はもう少し二重人格とかって気にならない?」

 

「なると思うが…龍也だからな…細かい事は気にしないんだろ?」

 

付き合いが長くなってきて判ったが、龍也は案外大雑把で細かい事を気にしない性格だ。だから二重人格だとかどうとかより。自分の妹と言うのが重要なのだろう…

 

「…というかあの3人と龍也は本当に兄妹なのか?…全く似てない」

 

…ムッツリーニのその呟きに思考が一瞬停止する…確かに。ユナちゃんは髪の色こそ龍也に似てるが、顔つきは全く似てないし…後の2人はまったく、共通点が見出せない…いや…それ以前にはやてさんやヴィータさんも龍也とは似ていない…どういうことなんだ?僕とムッツリーニと秀吉が考え込んでいると、雄二が

 

「…止めだ!止めだ!!人の家庭の事を勝手に詮索するなんて真似は止めようぜ。龍也とあの子達は兄妹、それで良いじゃねぇか!」

 

大きな声で手を叩きながら僕達の注意を集める

 

「今は飯を食おう。それで勉強しながら今日の計画を練ろう。ほれ行くぞ!」

 

雄二にそう促され、僕達は食堂に向かった…

 

第38問に続く

 

 

 




今回は少々短めでした。次回はその分少し長い予定です、それと龍也さんは明久達の覗きには当然ながら協力しません。だって…そんなことしたら魔王様に捕食されてしまいますからね。しかしその騒動には関わりますがね?それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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