バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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今回から「強化合宿」の話です。面白いかどうかは自信が無いですが今回もどうかよろしくお願いします


第36問

 

 

第36問

 

「ユナ・アザレア・リヒト。準備は出来たか?」

 

3人にそう尋ねると。真っ先にリヒトが返事をした

 

「私は出来たよ。にーさま」

 

バッグの蓋を閉めながら笑うリヒトの隣では

 

「ぬいぐるみが入りません」

 

「…も、もも。持って行きすぎでは?」

 

ぬいぐるみを4つバッグに入れようとしてる。ユナに持って行きすぎだというアザレア

 

「ユナ。もうちょっとぬいぐるみを減らしなさい」

 

鞄から顔を出している。ドラゴンとクマを指差しながら言うと

 

「…判りました。お兄ちゃんが言うなら。2つにします」

 

ユナはごそごそと鞄からドラゴン・クマ・ネコ・トリと次々取り出し

 

「ではこれとこれにしましょう」

 

イヌと…

 

「何でそんな物があるんだ?ユナ」

 

「アザレアが作ってくれました」

 

デフォルメされた私のぬいぐるみを抱き抱えながら、言うユナ

 

「アザレアは匠だもんね。にーさまにはやてねーさま。皆のぬいぐるみ作ってるよね」

 

「は、はい…後はシグナムとヴィータ姉さんで。家族の分がそろいます」

 

笑いながら言うアザレアを見て

 

(良い傾向だな。よく笑うようになった)

 

人見知りはまだ直らないが、よく笑うようになった…私はそれがとても嬉しく思えた

 

「準備が出来たら寝る用意をしろよ。明日は早いからな」

 

「「「はーい」」」

 

返事をし部屋を出て行くユナ達を見送り

 

「さてと…私も準備をするか…」

 

自分の分の荷物の用意を始めた…

 

 

 

「…強化合宿か、どんな感じなのかな?」

 

アタシは少し早めに集合場所に向かっていた。4泊5日の学力強化合宿…修学旅行みたいで面白いのか、それとも勉強漬けで大変なのか…どちらになるのか。不安と期待を感じながら歩いていると

 

「でもな…どうせなら龍也君もAクラスだったらな…」

 

清涼祭の時から想い焦がれる男子…の事をついつい考えてしまう、学力・ルックスともに最高で。尚且つ優しい…

 

「惜しいよね…あんなに頭良いのにFクラスなんて」

 

途中退席でFクラスに所属しているが、学力的にはAクラス代表の「霧島さん」を上回る彼が。何の因果か馬鹿ばかりのFクラス…惜しいとしか言いようが無い。

 

「一緒だったらなぁ…面白いのに」

 

一緒のクラスだったらとは思わずにはいられない…そしたらもっと仲良くなれるかもしれない…そこまで考えた所でボッと顔が赤くなる…

今までこんな事は考えた事が無かった…

 

(恋したら考え方が変わるって…本当ね)

 

今まで見ていたBL本には何の興味も無くなり、ファッション雑誌や恋を叶える本を見るようになった…それもこれも龍也君に好かれたいと思うようになったから…

 

(どうしたら…良いのかしらね…)

 

ただライバルが異常に多い。それがアタシを悩ませるが

 

(アタシは負けない。誰にも…)

 

付き合いは短いかもしれない、でも想いなら負けない…アタシがそんな事を考えながら集合場所に行くと

 

「どうも、今回はご迷惑をおかけします。高橋先生」

 

「いえ、学園長と臨時教頭の指示ですから。貴方が気にする事は無いですよ。八神君」

 

龍也君が高橋先生と話をしていた…

 

(うえええ!?!?何で!?何でここに居るのよ!?)

 

龍也君はFクラスで現地集合。アタシ達はAクラスでリムジンバス…同じ場所に居るはずがないのに…アタシが混乱していると

 

「にーさま!にーさま!!見て見て、アザレアのフードだよ」

 

「か…返して。私のフード…」

 

「リヒト!アザレアのフードを返しなさい!!」

 

パタパタと走り回る小さな影が3つ。その内1人は今にも泣きそうな顔をして、先頭の少女の手からフードを取り返そうとしていた

 

「…すいません。妹達が騒がしくて」

 

「良いですよ。子供は元気があるほうが良いですから」

 

どうやら龍也君の妹らしいが…アタシがそんな事を考えていると

 

「この!良い加減にしなさい!リヒト!!」

 

「うおっ!?回し蹴り!?」

 

銀髪の少女の鋭い回し蹴りが、リヒトと呼ばれた少女に直撃する…その衝撃でかフードがこちらに飛んでくる。アタシがそれを拾い上げると

 

「は…はううう…お姉さん…返してください…」

 

黒い髪をツインテールにし、金の瞳を持った少女が泣きそうな顔で近寄ってくる

 

「ちょっと待ってね?」

 

パンパンとフードについた埃を払い

 

「はい、どうぞ」

 

そっと差し出すと、少女はそれを抱き抱えるように受け取り

 

「あ、ありがとう…お姉さん」

 

それだけ言うとパタパタと龍也君の方に走って行ってしまった…遠くから先ほどの少女の声が聞こえてくる

 

「ちょっと…怖そうなお姉さんが。フードを取ってくれました」

 

「怖そう?…誰の事だ?」

 

「あの…お姉さんです」

 

フードの子がアタシを指差す。

 

「ん?ああ。優子か…大丈夫優子は怖くないよ」

 

「そ…そうなんですか?見た目が怖かったので…」

 

見た目が怖い…その言葉にアタシは少しへこんだ…

 

「Aクラスの皆さん。集合してください」

 

高橋先生に呼ばれ、へこんだままアタシはバスの前に移動した

 

「さて、今から強化合宿に出発しますが…このバスには八神君の妹さん達が同乗します。皆さん苛めたりしない様に…ユナさん達でしたね?自己紹介できますか?」

 

そう尋ねられた3人はコクリと頷き

 

「私はね、八神・ターゲス・アンブルッフ・リヒトだよ。長いからリヒトで良いよ。短い間だけでよろしくね。おにーさん・おねーさん?」

長い髪で左目を隠した少女がぺこりと頭を下げる

 

「私は八神・ユナと申します。どうかお見知りおきを」

 

漫画やアニメで見るような、スカートを軽く持ち上げ頭を上げる。銀髪・金目の少女…その背後から

 

「…あ…あうううう…ユナ…助けて」

 

「…自己紹介です。頑張りなさい、アザレア」

 

小柄なユナちゃんの影に隠れる黒いフードの子は

 

「う…うううう…判った…が…頑張る」

 

プルプルと震えながら少女の後から出てきて

 

「や…ややや…八神・アザレアです…知らない人は怖いので…あんまり話しかけ…な…無いで下さい…すいません」

 

それだけ言うとアザレアちゃんはユナちゃんの後にもう一度隠れた

 

「名前は覚えましたね?それではバスに乗ってください…八神君?どちらへ?」

 

バスの入り口と逆の方に歩き出す龍也君に高橋先生が尋ねると、龍也君は

 

「私はFクラスなので、Aクラスのバスには乗れません。ですがご心配なさらず、ちゃんと移動方法は用意してますので」

 

龍也君はそう言うとアザレアちゃん達の方へ行き

 

「なのはとフェイトが居る。困ったら2人に言いなさい。判ったね」

 

「はい、判りました」

 

一番お姉さんなのがユナちゃんなのだろう。真っ先に返事を返したユナちゃんの頭を撫でながら

 

「ではな、後でまた会おう」

 

そう言って歩いて行ってしまった…

 

「木下さん?貴方で最後ですよ、乗り込んでください」

 

「は、はい!」

 

そう呼びかけられ、アタシもバスに乗り込んだ…

 

「…えっと…よろしくね。アザレアちゃん?」

 

席の都合上、アザレアちゃんだけがアタシの隣だった…プルプル震えているアザレアちゃんにそう声を掛けると

 

「は、はい…よろしくです…怖そうだけで優しいお姉ちゃん」

 

「…そんなにアタシ怖いかな?」

 

目を合わさずに言うアザレアちゃん。よほどアタシが怖いらしい…アタシがショックを受けていると

 

「アザレアは少々人見知りが激しいのと、対人恐怖症のけがあるので。そんなにお気になさらず」

 

ユナちゃんのフォローを聞きながら、アタシは自分の座席に座った…それから暫くするとバスはゆっくりと走り出した

 

「アザレアちゃん。何してるの?」

 

座席で何かを作ってるアザレアちゃんが気になり尋ねると

 

「…これ…」

 

アザレアちゃんは手元をあたしに見せてくれた。それは

 

「これ…龍也君のぬいぐるみ?」

 

顔と胴体だけだがそれは間違いなく、龍也君を模したぬいぐるみだった

 

「わ…私は…これくらいしか得意な事…ないから…」

 

ぼそぼそと呟くアザレアちゃんに

 

「凄いわね。アタシこういうの全然だから尊敬するわ」

 

編み物とかは苦手なのでそう言うと

 

「…そ、そうなんですか…えっと…」

 

「優子。木下優子よ」

 

「優子お姉さんですね。覚えました…こ、今度…教えてあげます…フード…拾ってくれたお礼です…」

 

ぼそぼそと言うアザレアちゃんの後ろの席から

 

「あ、にーさまだ」

 

「本当だね、リヒト」

 

高速道路に龍也君?何を言ってるの?アタシが首を傾げながら窓を見ると

 

ブオオオオッ!!

 

エキゾースト音を響かせ、バスの横を走る漆黒の大型バイクに跨る龍也君が居た…移動方法ってあれ!?アタシに気付いた龍也君は

 

グッ!

 

サムズアップしてくる…なんといえば良いのか判らず黙り込んでいると

 

ピピ

 

「あ、お兄ちゃんですね。もしもし?なんですかお兄ちゃん」

 

ユナちゃんの話し声が聞こえる

 

「次の休憩所で、はい…判りました。それでは」

 

携帯をポーチにしまいながらユナちゃんは高町さんに

 

「次の休憩所で待ってるそうです」

 

「あ、そうなんだ…じゃあ先に行くんだね」

 

高町さんがそう言うと、窓の外のバイクが

 

ブオオオオン!!!

 

凄まじい加速音と共にバスの横を通り過ぎていった…

 

「ちょっ!?あのスピードで曲がれるの!?」

 

加速状態のまま曲がりに差し掛かる龍也君のバイク

 

ガッ!!ガガッ!!ギギーッ!!!

 

身体を思いっきり曲がる方向に身を傾け、加速したまま平然とカーブを曲がりきり龍也君の姿はあっと言う間に見えなくなった…

 

「うーん。流石にーさま、バイクの運転上手だね」

 

「そうだね、龍也はバイクの運転上手だよね」

 

へいぜんと言うリヒトちゃんとハラオウンさんに

 

(アタシがおかしいの?)

 

自分の中の常識が崩れ始める音を聞いた…

 

 

 

「ふう…良い気分だ」

 

最近ストレスが溜まる一方だったので、バイクの運転が良い気分転換になった…休憩所で汗を拭い、スポーツドリンクを飲んでいると

 

「お、バスも来たか」

 

Aクラスの面々の乗ったバスが見える。私はそれを見ながらベヒーモスにもたれ。休憩していた

 

「やっほー。龍也君バイクの運転上手だね」

 

愛子がひらひらと手を振りながら声を掛けてくる

 

「慣れてるだけだ…」

 

黒騎士時代・六課時代・最近と移動方法は大概ベヒーモスだ。だから慣れてるだけだというと愛子は

 

「へぇ~そういうもんなんだ」

 

しきりに頷く愛子と暫く話していると

 

「龍也さ~ん!」

 

「龍也ー」

 

なのはとフェイトも降りてくる

 

「ん?どうした、2人とも」

 

駆け寄ってくる2人にそう尋ねると

 

「「後ろに乗せてください!」」

 

…タンデムシートを指差す2人に

 

「別に構わんが…1人しかのれんぞ?サイドカーは見ての通り外してあるし」

 

私がそう言うとなのはとフェイトは

 

「じゃんけん…恨みっこなし」

 

「勝負…」

 

真剣な表情でジャンケンをしようとするなのはとフェイトの後ろから

 

「アタシもやるわ」

 

優子も来て拳を突き出す

 

「木下さん…良いよ。私負けないから」

 

「優子、勝負」

 

真剣な表情で3人は拳を突き出した…それを不思議そうに見ていると愛子が

 

「龍也君って鈍感なんだね?」

 

「2キロ先までなら、落ちた硬貨の音なら感じ取れるが?」

 

「そう言う事を、言ってるんじゃないからね?」

 

呆れた様子の愛子に

 

「ではどういう事を言ってるんだ?」

 

「自分で気付こう。龍也君」

 

どうやら私の疑問には答えてくれないらしい。意地悪な事だ…私が考え込んで居る間にジャンケンの勝者が決まった

 

「ではこれを被れ」

 

「あ…うん。ありがとう」

 

優子にヘルメットを手渡し

 

「では行くか」

 

ベヒーモスにキーを差込みながら言うと

 

「そ、それじゃあ…失礼します」

 

優子は何故か頭を下げてから、ベヒーモスのタンデムシートに乗った。私はそれを確認してからベヒーモスを再度走らせた

 

「うわあ…速い。それに風が気持ちいい」

 

「あんまり喋ると舌を噛むぞ」

 

最初こそ借りてきた、ネコの様に大人しくしていた優子だったが。暫くすると興奮した声を上げるようになっていた。思ってたより順応力が高いようだ…だがそのままでは危ないので優子にそう声を掛けるが

 

「ねぇねぇ。この先で通常道路に下りたら、2ーFの皆が乗ってる電車の線路に出るらしいの。行って見てよ」

 

私の話を聞かず言う優子…どうやらスバルとかと同じタイプか…私は苦笑しながら

 

「到着が遅れるが良いか?」

 

時間通りに着かないが良いか?と尋ねると

 

「全然OK。行ってちょうだい」

 

「了解」

 

私はそう返事を返し、ベヒーモスの進路を変えた…

 

 

 

 

心理テストで盛り上がってる中、ふと思い出した事があり

 

「龍也は別口で合宿先に向かってるんだよね?」

 

真向かいの雄二に尋ねると

 

「ああ、なんでも家に小さい妹達が残る事になるから、特別に連れて来るらしいからな…Aクラスのバスじゃないか?」

 

雄二の言葉に頷いていると、僕の携帯がなる

 

「うん?誰かな?」

 

携帯を開くと画面には「八神龍也」の文字

 

「龍也からだ、なんだろう?」

 

疑問を感じながら通話ボタンを押すと

 

「もしもし。龍也?」

 

【あ、吉井君?アタシよアタシ】

 

声の主は龍也ではなく

 

「あれ?お姉さん?なんで龍也の携帯から掛けてるの?」

 

そう尋ねるとお姉さんは

 

【まぁ色々あってね。それより窓の外を見なさい。良いわね、全員に言ってね】

 

「え、あ、うん判った。雄二、美波、姫路さん、秀吉、なんかお姉さんが窓の外を見ろって」

 

僕がそう言うと皆は首を傾げながらも窓の外を見た…そこには

 

ブオオオオッ!!

 

漆黒の大型バイクが電車の横を走っていた…

 

【やっほー吉井君。見えたわよ】

 

「ええ!?お姉さん?そのバイクに乗ってるの!?」

 

バイクの後ろに乗ってる人が手を振る。間違いないお姉さんだ

 

「運転してるのは誰!?」

 

【龍也君よ。代わる?】

 

平然と言うお姉さんは

 

【はい、龍也君。吉井君が話したいって】

 

「ちょっと待って!?僕は代わって欲しいなんて言ってないからね!?」

 

運転中だから危ないと言おうとするがそれより早く

 

【もしもし?明久。何のようだ?】

 

「平然と尋ねないで!?バイクで携帯なんて危ないよ!!」

 

「おい!明久!あのバイクウィリーしてるぞ!?まさか、あれやってるの龍也か!?」

 

雄二の叫びに慌て窓の外を見る。そこには漆黒のバイクがウィリー走行をしていた

 

「ウィリー!?龍也!危ない普通に運転するんだ!!」

 

【ひゃっほーッ!!私は風になるぞーッ!!!】

 

ハイテンションの龍也に僕の声は届いていない

 

「龍也!風になる前に星になってしまうぞ!?」

 

【はーははッ!!心配性だな明久は、そんなドジを…おおっ!?】

 

【ッキャーッ!?危ない!!】

 

バイクがバランスを崩し転倒しかける

 

「龍也ー!?早くウィリーを止めるんだ!!」

 

「明久!?バイクがスリップしておるぞ!?まさかあれに姉上が乗っておるのか!?」

 

秀吉の慌てた声で窓の外を見ると

 

ギャーッギャギャッ!!

 

ブレーキの凄まじい音と共に龍也の

 

【はーはは!!このままではクラッシュしてしまうな。優子】

 

【前!!前見て!龍也君!!】

 

大変な状況なのに笑っている龍也と必死なお姉さんの声がする

 

「龍也!体勢を立て直すんだ!早くッ!!」

 

僕がそう叫ぶと同時にバイクは体勢を立て直す

 

【危ない危ない。危うく星になるところだった】

 

【し…死ぬかと思った】

 

楽しげな龍也と疲れた様子のお姉さんの声がする

 

「龍也…心臓に悪いよ」

 

【大丈夫さ、ちょっと悪ふざけしただけだから】

 

からからと笑う龍也は

 

【ではな、先に合宿所で待ってるぞ】

 

そう言うと電話を切った、それからすぐにバイクは加速し見えなくなった…僕達は大きく息を吐き

 

「なんか…凄く疲れた」

 

「俺もだ…」

 

知り合いのバイクがクラッシュする瞬間を見るかもしれないと言う、緊張感は中々きつかった…僕と雄二が汗を拭っていると

 

「ほっ…一安心じゃ…「まだ安心するのは早いで?秀吉」…ワシは悪くない。ワシは悪くないんじゃ…悪いのは姉上で…」

 

「言い訳は聞かん。姉の不始末は弟がなんとかせい」

 

龍也がいないことで超不機嫌だった、はやて様に肩を掴まれる秀吉が、僕と雄二を見て

 

【助けて!】

 

助けを求めてくるが僕と雄二は目を逸らす事しか出来なかった…ごめん、秀吉…僕は命が惜しいんだ

 

「ま、待つのじゃ!?弁明を!弁明をおおッ!!!」

 

「さーて。どこの骨へし折ろか♪」

 

「私は右腕以外全部が良いと思うけどな♪」

 

ヴィータ様とはやて様に引き摺られていく。秀吉を僕と雄二は涙ながら見送る事しか出来なかった…僕と雄二が友の犠牲を対価に命を護ったと思っていると

 

「明久君…実はお弁当を作ってきたんですけど。良かったらどうです?」

 

ジーザス…僕の命も尽きる可能性が出てきた

 

「アキ、ウチも作ってきたんだけど…食べてみる?」

 

美波が弁当を差し出してくる。これはチャンスだ!雄二も道ずれに出来る!

 

「ありがとう!!それなら皆で一緒に食べようよ!!」

 

雄二の何て事を言いやがる!という顔が痛快だ

 

「俺は遠慮しておこう、弁当もあるしな」

 

真剣な表情で言う雄二…馬鹿め逃がすものか

 

「雄二、そんな事を言わずに…」

 

「そうか!俺の弁当も食ってみたいか!遠慮せずに食え!!」

 

「もごおッ!?」

 

反論を防ぐように、口の中に何かを詰め込まれる…このままでは何も言えない。早く飲み込まないと。こんなアメリカンクラブハウスサンドなんか…挟んである鳥の照り焼きの味付けが、絶妙な上にジューシーで…

 

「うまい…けど。龍也のほうが美味しい」

 

「あれと比べるな。流石に龍也には勝てん」

 

龍也のサンドイッチの方が美味いと言うと雄二は、面白く無さそうにそう言った…

 

「それじゃあ、ウチのもどうぞ」

 

美波が差し出してくれた弁当箱を見る。唐揚げやシューマイといった、オーソドックスな弁当だった

 

「それじゃあ。シューマイを貰うね」

 

美波に断りを入れてから、シューマイを食べる…冷めているがジューシーで実に

 

「美味しい、美波料理上手なんだね」

 

美味しい…素直に褒めると美波は

 

「そ…そう?そう言ってもらえると嬉しい」

 

頬を赤らめる美波が実に可愛く見えた…なんだろう?最近妙に美波が可愛く見えるときがあるような…

 

「それじゃあ。明久君。私のもどうぞ」

 

差し出された姫路さんのお弁当を見る

 

(見た目は綺麗なんだけど…大丈夫かな?)

 

今まで経験上、食べる=死である…だが食べないわけには行かない

 

(ええい、ままよ!)

 

目を閉じ、唐揚げを口にほり込む

 

「…もぐもぐ…」

 

ゆっくりと咀嚼し、死を覚悟するが…

 

(あれ?不味くない?…むしろ…美味しい?)

 

今までの死の味がしない…僕は口の中の物を飲み込み

 

「美味しい…」

 

「なっ!?明久何言ってるんだ?」

 

驚く雄二に

 

「雄二も食べてみなよ」

 

「お、おう」

 

雄二も唐揚げを食べる…そして

 

「美味い…姫路。これどうやって作ったんだ?」

 

雄二がそう尋ねると姫路さんは

 

「実は美波ちゃんと一緒に作ったんです」

 

なるほど、死の味がしなかったのは美波のおかげか…

 

「美味しいよ、姫路さん・美波2人とも良いお嫁さんになれるね」

 

思わずそういった瞬間

 

「も…もう何言ってるのよ!アキッ!!」

 

「そ、そうですよ!明久君ッ!!」

 

シュッ!!ベキャッ!?

 

「ぐはあッ!?」

 

光速の美波の右フックが僕の頬を捉え。その直後姫路さんの左フックが僕を捉えた…首から聞こえてはいけないありえない音が聞こえたと思った瞬間。僕の意識は闇の中に沈んだ…

 

【明久…ワシはお主に言いたいことが…】

 

混濁する意識の中、秀吉の妙に思いつめた声が聞こえた気がした…

 

第37問に続く

 

 

 

 




瑞希の料理が多少向上しました、同盟の思わぬ効果です。最後のは…一応フラグのつもりです。もう良いんじゃないですかね?秀吉は実は女で、それで話を進めちゃおうかな?と思う混沌の魔法使いです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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