バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです、今回は雄二の悲劇です。前回で明久を犠牲に勝利を得た雄二に、紫色の鎖が巻かれます。それでは今回もどうかよろしくお願いします



第32問

 

第32問

 

「アキ?大丈夫?」

 

「吉井君、大丈夫ですか?」

 

僕が目を覚ました時、真っ先に飛び込んできたのは美波と姫路さんの心配そうな顔だった…

 

「あ、あれ?…僕はえっと…何してたんだっけ?」

 

4回戦の会場で何かあったのは覚えてる。それが何かまでは覚えてないが…2人に尋ねると

 

「えーと。ほら!アキは、頭打ってるからまだ休んでた方が良いわよ?」

 

「そ、そうです!準決勝の時間になったら起こして上げますから!」

 

そう言って出て行く美波と姫路さんの姿を見ながら

 

「何があったんだっけ?…なにか…そう…僕の今後を決める大切な何かがあったような?」

 

僕は必死に首をかしげ、何があったのを思い出そうとしたが、結局思い出すことは出来なかった

 

「明久、そろそろ準決勝だけど行けるか?」

 

「雄二?あ、うん。大丈夫行けるよ」

 

寝かされていた、休憩室の椅子から身を起こしながら言うと

 

「何か覚えてないか?」

 

「何かあったけ?覚えてないや」

 

よほど強烈な何かがあったのか、殆ど何も覚えてない。覚えているのはディスプレイに表記されたアキちゃんの名と、凄まじいまで恐怖だけだ…

 

「そうか、それならいいんだ」

 

雄二と話をしてると、何かこうぐつぐつと煮えたぎるような怒りを感じるんだけど…何でだろう?僕が首を傾げてると

 

「明久君、次の相手は木下君のお姉さんと霧島さんです。大変ですけど頑張ってくださいね」

 

手を握りながら言ってくれる姫路さんに

 

「うん、頑張ってくるよ…メイド服じゃなかったら、もっと気合が入ったんだけどね」

 

まだ脱げないメイド服を忌々しく思いながら言うと

 

「仕方ない、明日には脱げるんだ。それより行くぞ」

 

「うん、次と次も勝って。僕達の優勝だ」

 

僕は雄二にそう声を掛け、会場に向かって行った

 

「で、雄二。作戦はあるの?」

 

「今回は俺達だけじゃなく、秀吉とムッツリーニにも協力してもらう」

 

会場に向かいながら作戦を尋ねると、雄二が説明してくれた

 

「あの2人は弱点はないが、付け入る隙はある。そこを突くぞ」

 

付け入る隙ね?…まぁ霧島さんなら僕も上手くやる自信はあるけど…

 

「狙いは秀吉の姉、木下優子だ。奴を利用して一気に決める」

 

「ふーん、弱点でも知ってるの?」

 

僕がそう尋ねると雄二は

 

「まぁな。それより気合を入れろよ。この戦いに負ければ魔王様が待ってるぞ。忘れたのか?」

 

雄二のその言葉に唐突に記憶が戻る。雄二のせいで姫路さんと美波に追い掛け回された事を

 

「…!…そうだね、思い出したよ。雄二」

 

「それなら良いが…行くぞ」

 

僕はそれに頷きながら、復讐の方法を考えていた…

 

 

 

 

忘れてるようで助かった。さっきの事を覚えられていたら、絶対俺はここで逆襲されていたからな…俺は安堵の溜め息を吐きながら。呼ばれるのを待った

 

「お待たせいたしました!これより準決勝を開始したいと思います!」

 

審判の先生のアナウンスを聞きながら、握り拳を作る…明久が寝てる間に、翔子が俺に掛けた催眠術は解けた、これであいつの思い通りには行かない。しかし龍也が解除方法を知ってて助かった、あのままでは催眠術を掛けられ婚姻届にサインをする羽目になってからな

 

「それでは出場選手の入場です!」

 

俺と明久はそのアナウンスを聞きながら、ステージに立った…反対側からは翔子と木下が来るのが見える

 

「…雄二、勝たせてもらう。降参して」

 

パチンッ!!

 

翔子が指を鳴らす、これが催眠術のトリガーになるのだが…

 

「…!効かない?何で?」

 

困惑してる翔子に

 

「悪いな、龍也にその催眠術に掛からない方法は教わったんだよ」

 

「くっ、もっと早く仕掛けるべきだった」

 

悔しそうに言う翔子に

 

「俺にはまだまだやりたい事がある!俺のことは諦めろッ!」

 

「…雄二はそんなに私と行くのが嫌?」

 

うっ…上目目線の翔子から少しばかり目を逸らし

 

「ああ。嫌だ」

 

本当はそんなに嫌じゃない。翔子は美人だし素直だし…そんなに嫌いではない。だが翔子の思いは勘違いだ、それを正してやらないといけない。間違った想いを抱いたままだから、俺みたいなロクデナシに付き纏っているのだから

 

「…やっぱり、一緒に暮らして判り合う必要がある」

 

くっ、ここまで拒絶しても諦めないか。

 

「そんな寝言は俺達に勝ってから言う事だッ!!」

 

「…判った。そうする」

 

真剣な表情になる翔子の隣の木下…いや…

 

「頼むぞッ!秀吉ッ!」

 

俺の考えた作戦は、秀吉と木下を入れ替える事。双子だからできる作戦なのだが…秀吉は反応しない、どういう事だ?俺が首を傾げてると

 

「…雄二の考える事はお見通し、ここにいるのは本物の優子。秀吉はあそこ」

 

翔子が指差す方を見るとそこには

 

「すまん。失敗じゃ」

 

白いお嬢様風の服の秀吉が頭を下げていた…馬鹿な、なんで?

 

「あのさ、アタシがあんな服着ると思うの?」

 

…しまったぁ!?あの服じゃ、それはバレるわ!何で気付かなかったんだ!?俺が頭を抱えていると

 

(雄二、僕に考えがある。指示通りの台詞を言って欲しい)

 

流石は明久だ、俺を助けてくれるんだな!俺は自分の背で明久を隠しながら。その指示を聞き喋り始めた

 

「翔子、俺の話を聞いてくれ。お前の気持ちは嬉しいが、俺には俺の考えがあるんだ」

 

「…雄二の考え?」

 

首を傾げる翔子、良いぞ明久。上手く気勢を削いだ。この後はどうするんだ、明久の指示を聞き逃さないように集中する

 

「俺は自分の力でペアチケットを手に入れたい、そして胸を張ってお前と幸せに…っておいっ!」

 

明久の方を見ようとするが、後から固定させる。そして呪言めいた呟きが聞こえてくる

 

(貴様のせいで、貴様のせいで…僕は…僕は…明日からどんな顔して、美波と姫路さんに接すれば良いか判らなくなったじゃないか)

 

(貴様、記憶をッ!?)

 

(ああ、取り戻したよ。お前のせいであんな目にあったってなッ!!さぁ次はこう言うんだ!ここは俺に譲ってくれ。そして、優勝したら結婚しようと)

 

(だ、誰がそんな事を言うかボケェッ!!!)

 

俺がそう返答すると明久は

 

(そう。じゃあ…死になよ。後は秀吉に任せるから)

 

背後から俺の頚動脈を押さえた

 

(くぺっ!?)

 

 

 

 

ふっ…抵抗するからだ馬鹿雄二め。ぐったりしてる雄二を後から支えていると

 

「…雄二?」

 

うっとりとした表情の霧島さんこちらを見てる、このままでは不味い!バレる前にと背後の秀吉に目配せをする

 

(秀吉、後よろしく)

 

(OKじゃ、任せておくがいい)

 

秀吉の物真似なら誤魔化せる。そして雄二の台詞は秀吉に任せた…さぁどんな事を言ってくれるんだ?秀吉

 

「だからここは俺に譲って欲しい。そして優勝したら結婚を…いや…俺達はまだ結婚出来る歳じゃない。だから俺の婚約者になって欲しい。愛してるんだ翔子」

 

完璧だ、秀吉!これで雄二は終わりだ!

 

「…嬉しい雄二、私も愛してる」

 

霧島さんが本当に嬉しそうな表情をする中、雄二が力を振り絞り

 

「ま、待て…俺は…愛して…な…ど…(くたばれ、雄二ッ!!)こぺっ!?」

 

否定の言葉を言う前に首を捻る、ぐったりとした雄二を

 

「霧島さん、雄二がそばに来いって」

 

「…うん♪」

 

霧島さんに、ぐったりとしてる雄二を手渡し

 

「ふふふはははははッ!!!これで最強の敵は封じ込めた!!後は君だけだ!!木下優子さんッ!!!」

 

高笑いしながらお姉さんを指差すと

 

「ひ、卑怯な…でもアタシ1人でも吉井君には負けないはず!行くよ試獣召喚(サモン)ッ!]

 

お姉さん、もう君は詰んでるんだ。この勝負は僕の勝ちだ!後のムッツリーニに目配せをしてから

 

「行くよ。サーモンッ!!」

 

「試獣召喚(サモン)…」

 

僕の大声の影でぼそりとムッツリーニが呟く、現れるのは僕の召喚獣ではなくムッツリーニの召喚獣だ。これこそ奥義代理召喚「ばれない反則は高等技術」だッ!

 

「え、それ、土屋君の…」

 

「加速…」

 

木下さんが言い切る前に木下さんの召喚獣を倒す。

 

「これで、僕と雄二の勝ちだッ!!」

 

「…ただいまの勝負ですが…」

 

やばい物言いが入る、仕方ない

 

「霧島さん、僕らの勝ちで良いよね?」

 

「それは…」

 

言いよどむ霧島さんを見ながら、秀吉に目配せをする

 

「翔子、愛してる」

 

「…私達の負け」

 

霧島さんが敗北を認めてくれたので、自他共に認める勝利だ

 

「…わかりました。坂本・吉井ペアの勝利です」

 

勝ち名乗りを受け、罵声を受ける前に教室へ続く通路に引き返す

 

「明久、中々の機転じゃったの?」

 

「…作戦勝ち」

 

近寄ってくる2人に

 

「ありがとう。秀吉とムッツリーニの協力があってこそさ」

 

素直に感謝の言葉を継げていると、秀吉が

 

「ところで…雄二はあのままにしておいて良いのか?霧島が一服盛うとしておるんじゃが」

 

「き、霧島さん!雄二には決勝もあるから。薬は許してッ!!!」

 

今正に何かの粉を飲ませようとしてる。霧島さんを止め雄二を回収した…その際

 

「…残念。もう少しで雄二は私の物になったのに…」

 

その呟きが死ぬほど恐ろしかった事をここに記す…

 

 

 

準決勝後、2-F教室にて…

 

「明久、今日という今日は貴様を殺す」

 

「はっ!やってみなよ!返り討ちにしてやるっ!!」

 

バキィッ!!!×2

 

「「ぐはあッ!?」」

 

ドスンッ!!×2

 

クロスカウンターでお互い戦闘不能になった馬鹿2名が居たが、何とか1日目は終了した

 

「これ、どうすんの?」

 

はやてが馬鹿2名を指差しながら尋ねて来るので

 

「ほっとけ、その内起きるだろ?さてと…覚悟を決めるか」

 

ガシッ!

 

電流が流れるチョーカーを握り締め、大きく息を吸い込む

 

「に…兄ちゃんまさか…?」

 

「危ないですよ!?」

 

「大人しくそのまま帰れば」

 

慌てて止めに入る3人を無視し

 

「ふぎゃああああああッ!!!」

 

バリバリと感電しながら強引にそのチョーカーを破壊する

 

「はあー…はぁー…これで着替えれる」

 

忌々しいゴスロリ服から着替えようと、制服を手に持ちながら

 

「お前達も外してやろうか?」

 

「…止めておくのじゃ。感電するのはごめんじゃからの」

 

「…俺も止めとく…カメラが壊れると困るから」

 

断るという2人にそうかと返事を返し、

 

「はやて、アザレアとリヒトを先につれて帰ってくれ。夕食の材料を買って帰えるから」

 

「んー了解。お任せ♪」

 

その返事を聞いてから、男子更衣室へと向かった…

 

「やれやれ、これで落ち着いた」

 

男子の制服に着替え、2-Fに戻っていると…

 

「ん?あれは…優子か?」

 

ステージの裏を歩いている、優子を見かける。暫くそのまま見ていたのだが

 

グラッ!!

 

ステージの上の荷物が揺れてるのに気付いた

 

「不味いッ!!」

 

このままでは崩れて優子の上に倒れる、私はそう判断し廊下の窓を開け、グランドへと飛び出した

 

 

 

 

「あれは、本当卑怯。納得いかないわ」

 

準決勝の敗北が納得できず、怒りながら歩いていると

 

ガシッ!!

 

「きゃっ…もう何なのよッ!!今日はッ!!!」

 

ステージの裏の配線に引っ掛かり転んでしまう。もう今日は何て日だ。面白くない事ばかりだ、八つ当たりに配線を引っ張った瞬間

 

グラッ!!

 

「えっ?」

 

ゆっくりと倒れこんでくる、機材や大量の荷物が倒れてくるのが見えた…

 

(嘘…アタシ死ぬの?)

 

あれだけの機材や荷物が倒れてくれば、アタシなんか簡単に死ぬ…思わずギュッと目を瞑った瞬間

 

ガラガラッ!!ドガシャーンッ!!

 

凄まじいまでの音が響いた…だがその音に反して痛みは感じなかった

 

(あれ?死ぬのって痛くないの?)

 

恐る恐る目を開くと、誰かの影の中にいるのが判る。それと同時に目の前に垂れて来る赤い雫…

 

(これ…血ッ!?。一体誰がッ!?)

 

慌てて上を見ると

 

「よう、無事そうで何よりだ。優子」

 

頭から血を流している龍也君が機材を受け止めていた

 

「た、龍也君?だ、大丈夫なのッ!?」

 

凄まじい出血の龍也君に慌てて尋ねると

 

「大丈夫と言いたいだが…動けないんだな、これが」

 

にやりと笑うが、その顔からは凄まじい勢いで血が流れ落ちていた…

 

「今、先生をッ!」

 

「動くなッ!」

 

動こうとすると龍也君の一喝で止められる

 

「今、危ういバランスでこれを押えてるんだ。動かれたら2人とも死ぬぞ?私が心配なら動かないでくれ」

 

何事もないように言う龍也君に

 

「で、でも!?アタシのせいで…龍也君が怪我を…」

 

「なに、気にするな。友達を助けるのは当然の事だ」

 

にっと笑う龍也君の笑みを見て、アタシは胸が高鳴るのを感じた…こんな状況なのに、いやこんな状況だからか…龍也君を異性と感じてしまった

 

「誰かッ!!誰かいるのかっ!!」

 

切羽詰った西村先生の声が聞こえてくる、アタシはその声の方に向かって

 

「に、西村先生ッ!!ここですっ!!早くッ!龍也君がッ!!龍也君が怪我をしてるんですっ!!!」

 

「今助けるッ!!少し待ってろッ!!」

 

その力強い声と共に、アタシ達の上の機材がゆっくりと退かされ始めた

 

「龍也!?大丈夫か?」

 

「ええ、全然大丈夫ですよ。慣れてますから…あーあ、上着が台無しだ」

 

事も無げに龍也君が呟く、その上着は破け素肌が見えていた…だがその肌は傷だらけだった

 

「お前…まさか、虐待を!?」

 

西村先生がその傷を見て尋ねると龍也君は

 

「昔の話ですよ、昔のね…申し訳ないんですけどね、上着の代えいただけます?」

 

「あ、ああ。こっちだ。木下には明日事情をきく。今日は帰れ」

 

西村先生に帰れと言われたが

 

「で、でも、龍也君の怪我が心配だし…」

 

「気にしなくて良いよ、優子。私が好きでやった事だ、気に病む必要はない。気をつけて帰れ」

 

「そうだ、派手に血は出てるが、傷はそんなに深くない。心配する必要はない

 

龍也君と西村先生に言われ。自宅へと戻ったが、あの時の龍也君の笑みが忘れる事が出来ず、赤面しながら帰る事になった

 

「ん?姉上?どうしてそんなに顔が赤いのじゃ?」

 

何故かお嬢様風の女物の服姿の秀吉に

 

「…人を好きになったからかしら…少し部屋で休むわ。入ってこないで頂戴」

 

「ちょっ、好きにって…まさか男をかッ!?」

 

慌てる秀吉の声を無視し、自分の部屋のベッドに倒れこみながら

 

「龍也君…か…」

 

下手をすれば自分が死ぬかもしれない。それなのにアタシを助けてくれた…あの美しい笑みを忘れる事が出来ない…赤面しながら枕に顔を埋め

 

「知りたい…龍也君の事を…」

 

知りたい、もっと知りたい…あの人の事を…

 

「これが…恋なの?」

 

もしそうなら、なんと心地良い気持ちだろう…アタシは高鳴る胸を押さえながら。彼の事ばかり考えていた…

 

 

一方その頃龍也は

 

「きゃーッ!!兄ちゃん何やッ!その頭の包帯はッ!?」

 

「いやね、優子が機材に潰されそうだったから助けた時にな」

 

「…優子?…もしかして木下さんですか?」

 

「うん、そうだけど?」

 

「…龍也。優子何処かおかしくなかった?」

 

「うーん…あっ!顔が異常に赤かった」

 

「「「「落としてるッ!また女の子を落としてるッ!!!」」」」

 

「落す?…意味が判らないんだが?」

 

絶望してるはやて達を見ながら、小首を傾げる龍也であった…

 

 

第33問に続く

 

 




優子さんが落ちました。当初の予定通りです、私は優子さんが好きなのでヒロイン化したかったんですね。魔王様に彼女は立ち向かう事が出来るのか!?それを楽しみにしてくれると嬉しいです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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