第27問
特設ステージに続く通路で
「ねぇ、雄二。僕達は無事に明日を迎えれるかな?」
「信じろ、上手く説得出来ると、そして俺達自身を信じろ」
魔王化してる、美波と姫路さんの目を思い出し、身震いしながら
「そうだね、きっと思いつくよね。それじゃあ、学園長との取引の為に…」
「ああ、この試合、勝つぞ!」
僕達が大会に出た理由を上手く話せれば、助かる!そう信じ僕達はステージに向かった
「それでは、召喚大会1回戦を始めます。3回戦までは一般公開も無いので、リラックスして全力を出してくださいね」
立会人の木内先生の話を聞きながら、対戦相手を見る
「頑張ろうね、律子」
「うん」
対戦相手の女子2人組みは何処かで見た気もするが、まぁ良いだろう。今僕達は命が懸かってる、悪いが勝たせてもらおう
「では、召喚してください」
「「試獣召喚(サモン)ッ!!」」
女子2人が召喚獣を呼び出す、2人とも似たような、西洋風の鎧を身に纏った召喚獣だ
『Bクラス 岩下律子 数学179点』
&
『Bクラス 菊入真由美 数学163点』
点数も中々だ。流石はBクラスだ
「んじゃ、僕達も召喚しようか」
「ああ、俺達の明日の為にな」
生きるために、そして戦いの中で良いアイデアが浮かぶ事を願い
「「試獣召喚(サモン)ッ!!」」
召喚獣を呼び出す、僕の召喚獣は改造学ランと木刀、雄二の召喚獣は
「ちょっ!素手って何さ!?ふざけてるの!?」
白い特攻服に何も持ってない、雄二の召喚獣を指差し怒鳴ると
「馬鹿が、よく見ろ…メリケンサックを装備してるだろう?」
「リーチゼロじゃないか!そんなので剣に勝てるの!?」
他の召喚獣でそんな装備はいなかった。大丈夫なのかと思い尋ねると
「死ぬ気でやれば何とでもなる。お前は魔王の断罪を受ける気か?」
「まさか!僕はまだやりたい事があるんだ。死んで堪るかッ!」
負ける=学園長との取引が出来ない、つまり説得できる要因が無くなる。そうなれば=死だ、死ぬ気でやれば何とかなる!雄二の言うとおりだ!!
「君達2人に何があったんですか?」
やる気満々の僕らにそう話しかけてくる、木内先生に
「複雑な事情がありまして、興味本位なら聞かないで下さい」
「ああ、俺達は負ける=死の制裁が待ってるんだ。こんな所で負ける訳にはいかねぇ」
そんな話をしてると、僕達の点数が表示される
『Fクラス 吉井明久 数学170点』
&
『Fクラス 坂本雄二 数学190点』
「なっ!?Fクラスなのに私達より点が上!?」
「信じられない」
驚いているBクラス2人、博士と龍也に勉強を教えてもらえば、一時的だがこれ位には点は上がる。ただ、僕の頭では数日後には完全に忘れてしまうのが難点だ
「ごめんね、僕達は…まだ生きたいんだ!」
「ああ、まだ死にたくねぇ!とっとと片付けさせて貰うぜッ!!」
「本当に君たちに何があったのか、気になりますね。それでは試合を始めてください」
召喚獣に指示を出す
「でやああッ!!!」
力任せに木刀を振り下ろさせる
「くっ!なんて力!?」
点数の低い、菊入さんの方を僕が倒し、点の高い岩下さんの方を
「俺の明日の為に、死ねエエッ!!!」
「なに!?何なの!?一体何があったのよ!」
「うるせぇ!気になるならとっとと死んでくれッ!!俺の命の為にっ!!」
雄二は半狂乱で襲い掛かる、どう見ても悪役だ。でも僕も…
「本当にごめん!!僕は死にたくないんだ!!早く倒れて!!!」
「だから、何があったのよ!?」
「話したく無いんだッ!!!泣きそうになるからッ!」
「もう泣いてるよ!!!あっ!?」
突っ込みを入れる女子の隙をついて、その首目掛け木刀を振り下ろす、急所に入ったのか一撃で消滅する。雄二の方も
「くたばれぇぇッ!!!!」
「あんたも何で泣いてるのよッ!!」
女子の突っ込みを受けながら、雄二も渾身の一撃を叩き込み、敵の召喚獣を打ち倒す
「勝者、坂本・吉井ペア。2人とも、もし悩みがあるなら相談に乗りますよ?」
木内先生の優しい言葉を聞きながら
「勝った!とりあえず命は続くぞ!明久ッ!」
「ああ!心臓が動いてる事が、こんなに嬉しいと思ったのは初めてだ」
僕と雄二は命がまだ続く事に感謝していた…
「龍也さん、オムライスとサンドイッチ。それとタルトとシュークリームと、ナポリタン下さい」
スバルが先ほどから、怒涛の勢いで料理を注文する
「いや。少し待ってくれないか?厨房班がパンクする」
フルスロットルで調理をしている、厨房班も限界になりそうなので、そう言うと
「えーもっと食べたいですよ~」
「食べすぎだスバル。金は足りるのか?」
チンクに指摘されたスバルは
「大丈夫ですよ、お父さんがお小遣いくれましたから」
「幾ら貰ったんだ?」
どれくらい貰ったか、尋ねるとスバルは笑顔で
「おねだりして、4万!全部食べるのに使おうって思います!」
…ゲンヤさん。あんまりスバルを甘やかせちゃ駄目です。この食欲魔人は資金が無くなるまで食べますよ
「…見た目は抜群に可愛いんじゃが、なんとも恐ろしい食欲じゃな」
お話から復帰した秀吉が恐々と呟く、回りの客も同じ事を考えたのかコクコクと頷いている
「ただいま~勝ったよ」
「ああ、俺と明久の命は、とりあえず繋がった」
うっすらと泣いた後のある、雄二と明久が戻ってくる。
「何で泣いたあとがあるんじゃ?」
秀吉が不思議そうに尋ねると、2人は
「「命があること…」」
「「呼吸ができること…」」
「「そして、魔王の断罪から逃れる事が出来たことへの嬉しさ…」」
「「その全てに感謝したら自然に涙が…」」
俯きながら言う2人を見て、スバルが
「あはは!Fクラスの人って面白いんですね。龍也さん」
「その意見には全面的に賛同しよう。Fクラスの連中は面白い」
スバルと笑っていると、ティアナがスバルの背後に立ち
「良いわね、スバル?龍也さんと楽しそうに話が出来て?」
「はうッ!?テ、ティア!?痛い!痛いよ!!どんな力してるの!?」
メキメキと音を立てるスバルの肩…どうやらティアナも魔王へとジョブチェンジしたようだ
「少し向こうで話しましょうか?スバル?」
「い、いや!暗い所は嫌!!た、助けて!チンクさん!」
助けを求められたチンクは
「私はお前を忘れない」
「何もする前に別れの言葉!?こうなったら、龍也さん!助けて!、龍也さんの言葉ならティアも聞いてくれるから!」
必死に助けを求めるスバルから目を逸らし
「私もお前を忘れない」
「そ、そんあああああッ!!恨みます!恨みますからねッ!!ぜ、絶対お母さんに言ってやるぅぅッ!!!」
そんな捨て台詞を残し、スバルは消えて行った…すまない、私には何も出来ないんだ、何でかって?
「兄ちゃん?スバルを助けようなんて思ったら駄目やよ?」
「ええ、あれは当然の罰なんです。自分だけ良い思いをしようとした、愚か者に相応しいお仕置きなんです」
単色の目のはやてとセッテが怖いからに決まってるだろう?
「あれ?アキ達なにしてるの?」
私達がティアナの瘴気に怯えている間に、戻ってきた美波がそう尋ねると、明久が
「み、美波様ぁッ!?ど、どどどど!!どうでしたか?1回戦は?」
ガタガタ震えながら美波にそう尋ねると、美波は慈愛に満ちた表情で明久の頭を撫でながら
「何そんなに怯えてるのよ。大丈夫よアキ。アンタには何もしないわよ、それと1回戦は勝ったわよ」
「はい、楽勝でしたね。美波ちゃん」
嬉しそうに言う瑞希は明久に
「吉井君はどうだったんです?」
「な、何とか勝てたよ。姫路さん」
怯えのある表情で返事をする。明久に瑞希は
「そうですか、それは良かったですね」
にっこりと微笑んだ、どうやら落ち着きを取り戻したようで目は単色ではない。少し安心した、私が安堵していると後から
「執事さん、席は空いてるかしら?」
「は、はい…空いて…」
空いてると言いながら振り返り、私は絶句した…何故なら、ここには居ないはずの私の天敵が居たからだ
「そう、それは良かったわね。桃子」
緑の髪の子供がとてもいるとは思えない美女と
「そうね、もしかしたら待たないといけないって思ってたから」
にこにこと笑う超凄腕パティシエに
「元気だった?龍也」
先ほど断末魔の悲鳴を上げていた、スバルの呼ぼうとしていた人
「うわああああッ!?!?」
駄目だ!!私の本能が拒否してる、この3人を接客するなと。慌てて扉を閉めそのまま、窓を開ける
「はやて!セッテ!後は任せる!」
「ちょっ!?どうしたんや兄ちゃん!?」
「どうなさったのですか!?」
今は説明してる時間が無い、早く逃げなければ!ただそれだけを考え、窓から飛び降りようとするが、明久達が
「だ、駄目だよ!飛び降りたら死んじゃうよ!?」
「そうだ!何を錯乱してるんだ!?龍也」
「落ち着くんじゃ!何をそんなに慌ててるんじゃ!?」
私の腰を掴み引き止めようとする
「頼む!離してくれ!!私の天敵が来る前にッ!!!」
このままでは良い様におもちゃにされる。そんなのはごめんだ。だから離す様に言うが
「何も殺されるわけじゃないだろう!?落ち着くんだ!」
「殺されるより酷い末路しかないんだよッ!!だから離せッ!!あの3人は悪魔なんだよッ!!!」
私の絶叫に誰が廊下にいるのか気付いたはやてが
「あー、なるほど。あの人達やね?それはちゃんと接客しんと」
悪い笑みを浮かべて扉を開けようとする
「くっ!すまん!!」
ゴンッ!×3
「「「痛てぇぇッ!!!」」」
3馬鹿の頭に拳骨を落とし、拘束を振り解き窓から飛び出そうとするが
シュッ!!!
「へぶっ!?」
「逃がさないわよ、龍也」
クイントさんの投擲した手錠付きのロープが足に巻きつき、ありえない呻き声と共に、畳に叩き付けられた
「もう、顔を見るなり閉めるなんて酷いじゃない。龍也君」
「お客様に絶対してはいけないことよ?」
見なくても判る、イイ笑顔をしてるリンディさんと桃子さんの声がする
「嫌アアアッ!!謝ります!!謝りますから!!引っ張らないで!!」
ズリズリと引き寄せられるのを、何とか耐えながら叫ぶが
「駄目♪ちゃんと接客してもらうわよ♪」
「懐かしいわ。執事服の龍也君」
「そうよね~楽しみだわ」
30過ぎてるのに、女子高生のノリとは恐れ入る…そんな事を考えた瞬間
「引っ張る力が倍以上に増したッ!?」
クイントさんのロープを引っ張る力が更に増す、驚いて3人のほうを見ると
「今、歳の事考えたわね?」
「それはタブーって教えてあげたでしょ?」
「龍也君?考えて良い事と悪い事があるのよ?」
しまった、それは絶対に考えちゃいけないことだった!?突然の捕り物に呆然としてるFクラスと、客の間を引き摺られながら
「ご、ごめんなさい!!ごめんなさい!!もう考えません!!それにちゃんと接客します!!だから引っ張るのを止めて下さいッ!!」
このまま引き摺られて、あの3人の前に連れて行かれたら全てが終る。だからその前にと必死で謝ると
「そう、それなら引っ張るのは止めるわ」
クイントさんがロープを引っ張るのを止めてくれる、服の埃を払いながら立ち上がると。拳骨の痛みから復帰した明久が
「龍也?あの人達は?」
ロープを片付けているクイントさん達を見ながら、尋ねてくる。私は大きく溜め息を吐き
「なのはとフェイトの母親と、さっきティアナに連れて行かれたスバルの母親で…私の天敵だ…」
「いらっしゃいませ♪奥様方、どうぞこちらへ」
はやてがにこやかに接客するのを見ながら
(覚悟を決めるしかない)
もうここまで来たら逃げれない。おもちゃにされるのを覚悟して、私はクイントさん達の元へ向かった…だがそこは私が予想するより遥かに酷い、恥辱が待ち受けていた…
第28問に続く
龍也さん壊れの話でした。天敵3人衆の繰り出す龍也を追い詰める事とは!?召喚大会も同時進行で行くので、次回もどうかよろしくお願いします