第25問
清涼祭前日に学園長に呼び出され、私がやろうとした事を全て暴かれ。自主的に辞めるなら警察には言わないといわれ。私は体調不良を理由に退職届を出し、次の日もう自分の部屋ではない、教頭室を片付けていると
「ちょっ、教頭!退職ってどういう事だよ!俺達の推薦状は!?」
駆け込んでくる3年2人に
「無理に決まってるでしょう。私はもう教師としての権限は何もないんですから。今だから言いますけど、貴方達に推薦状を書くつもりなんて無かったんですよ」
この際言っておきますか…もうどうでも良い事ですし
「はぁッ!?どういうことだよ!」
驚く3年を見下ろし
「どういうことも無いですよ、貴方達のような屑に推薦状なんて書くつもりは無かったんです。そうそう、学園長も貴方達の事を知ってますからね。内申は酷い事になってると思いますよ」
恐らくこの2人はもう希望していた大学には行けないだろう
「「なぁッ!?」」
絶句する2人に
「まぁ、精々頑張ってください。屑コンビ君」
私はそう言うと同時に2人の前から歩き去った…因果応報。やはり悪い事はするべきではないな…目先の事ばかり考え、結果自分の将来を台無しにしてしまった事を悔いながら。私は文月学園を後にした…
教頭室で項垂れていると、常村が
「どうする?夏川」
「どうもこうもねぇよ、俺達が悪かったんだ…推薦状の為に、教頭の話に乗った俺達が全部悪いんだ」
「だよな…はぁ、これで大学にはいけないか」
3年間の勉強が全て台無しになってしまった…大学には行けず、良い就職先にも就けないだろう。俺達はもう終わりだ
「そうやって反省できるなら。まだ挽回できるんじゃないかな?」
白衣の男がやってきて、教頭の椅子に腰掛ける
「あんたは?」
「新教頭さ。そして前の教頭の悪事を暴いた者でもあるよ」
そうか…その功績で教頭になったのか、呆然と聞いていると
「私はまだ君達の事を学園長には言ってない」
「ほ、本当か!?」
慌てて立ち上がり尋ねると
「本当さ、君達はまだ子供だ。楽な方に行きたいと思うのは仕方ない、だが今回の事で判ったろう?楽をしても良い事は無いって」
その言葉に頷くと、白衣の男は満足気に頷き
「それが判るならまだ救いはあるさ。推薦状は書いて上げれないけど、頑張りなさい、君達の成績なら普通に行きたい大学にいけるさ」
励ましてくれる教頭に
「あの…先生の名前は?」
「ジェイル、ジェイル・スカリエッティさ。さっ今日は清涼祭初日だ、もう自分達の教室に戻りなさい」
「「はい!!」」
俺と夏川はそう返事をし、教頭室を後にした…さっきは今までの頑張りが全て無駄になったと思った。でもまだ挽回できるなら、ここから頑張ろう。真面目に堅実にしっかりと勉強して、自分の実力で行きたい大学に行ってみせる!そう決意し俺達は自分達の教室に戻った
本日の名言 人は誰でも1度は道を間違える、しかしその間違いに気付いたのなら。まだ引き返す事は出来る byジェイル・スカリエッティ
執事喫茶開店前、準備の為に着替えた僕が戻ってくると
「あはは!アキ似合ってるわよ」
「はい!とても格好良いです!」
美波と姫路さんに褒められ
「そ、そうかな?似合うかな」
白のYシャツに黒のスーツ、仕上げに、マイクを埋め込んだ蝶ネクタイ(これにつけたマイクで注文された、メニューを厨房班に伝えるのだ)を身に付けた僕は、自分の格好を見ながらそう呟いた。我ながら完璧な執事スタイルだ
「装飾も完璧やし、上手く行くやろ」
はやてさんが満足気に言いながら、教室を見ていると
『キャアアアアっ!!格好良い~』
『絶対!行きます!』
窓の外から女子の黄色い歓声が響く、外を見ると
「2-Fは執事喫茶をやっております。お嬢様方のご帰宅を執事一同お待ちしております」
「お待ちしております!」
執事長と言う設定の、白い執事服の龍也と須川君や近藤君がPRしてる。これなら間違いなく上手く行くだろう
「殺したい…兄ちゃんに色目使いおってからに」
「賛同します、狸」
「…許せない、許さない…」
ゴゴゴゴッ!!負の瘴気を撒き散らしている、はやて様達には話しかけないようにしよう。とばっちりを受ける可能性がある
「…メニューも完璧」
背後からムッツリーニの声が聞こえ、驚きながら振り返る
「もう!ムッツリーニ、普段はそんな事しなくて良いよ」
「これは癖だから、どうしようもない」
盗撮が特技のムッツリーニはもう、存在感を消すのが癖になってるらしい。それなら仕方ないか、僕はそんな事を考えながら
「厨房はOK?」
龍也の持ち込んだ、デミグラスソース、トマト、焼きたてのパンに、馬鹿でも理解できるレシピで武装している。厨房の具合を尋ねると
「…味見用に作ってみた」
ムッツリーニがトレーを差し出す、そこにはイチゴのタルトが置かれていた
「わぁ…美味しそうですね」
「これ、ウチらが食べちゃって良いの」
頷くムッツリーニの横で
「その中に1つ僕が作ったのもあるんだ。2人は判る?」
厨房班は交代制なので、僕が1個試しに作ったのがある。それが判る?と尋ねると
「判るはず、ウチには判るはず…愛があれば…」
「私にも、判るはずです、判るはずなんです…」
ぶつぶつと呟く、美波と姫路さんを尻目に
「何をしておるんじゃか、ワシから頂こうかの…」
ひょいっとタルトを掴み、口に入れる秀吉に
「あっ、それ僕の作ったやつだ」
少し失敗してタルト生地が、崩れてしまったやつなので一目で判った。僕がそう呟くと
「ふごおっ!?それを先に言ってく…「「少しお話しませんか?木下、木下君?」い、嫌じゃ!ワシはまだ死にとうない~」
僕の方からは見えないが、恐らく、単色の瞳をしてる美波と姫路さんから逃亡していく秀吉。それを追おうとする2人に
「まだ明久の作ったのはある」
ムッツリーニが小皿に乗った、タルトを差し出すが
「だ、駄目だよ!それは焦げちゃってるし」
最初に作って焦がしてしまったタルト、とても食べさせれる物じゃ…
「気にしないわ。これくらいなら食べれるもの」
「はい、これくらいなら。気にしません」
2人は焦げてる部分を避け、タルトを口に運ぶ
「少し焦げ臭い気もするけど、悪くないわよ」
「はい、全然美味しいですよ」
「そ、そうかな?」
失敗品なのでそこまで言われると恥かしい、ってあれ!?おかしい普通こんな状況になってたら、FFF団の襲撃があるはずなのに!?辺りを見回すがFFF団の姿は無い、ムッツリーニが居るからか?FFF団特別顧問のムッツリーニを見ると、青褪めた表情でガタガタ震えながら
「嫉妬の為に魔王に挑む勇者は居ない」
と告げた、確かに勉強会後。美波と姫路さんは「魔王」にジョブチェンジしてる。今の2人はかなり危険だ。ちなみにはやてさん達のジョブは「大魔王」だ
「あはは、そ、そうなんだ。それじゃあ僕も」
味見用のタルトを1つ取り、1口大に切り口に運ぶ
「うんうん、表面は固くて、中はドロドロ。甘すぎず、舌が痺れるような酸味がとっても、んごパッ!!」
僕の口からあり得ない音が出た、まるで何かが口の中で爆発したような。そして目に映るのは16年間の思い出(一部妄想アリ)…ってこれは走馬灯じゃないかっ!?しかもなに!?ウェディングドレスの美波と姫路さんの持つ、鎖に繋がれてる僕の姿は!?これが僕の未来だというのか!?
「あっ、それは私が作ったやつですね」
やっぱりか!こんな危険な味は姫路さんにしか作れない!
「…ちゃんと食べてあげなよ」
「ムッツリーニ!どうしてそんな怯えた表情をするのさ!?無理だよ!食べれないよ!!」
1口食べただけで、走馬灯と未来を見るこのタルトは危険すぎる!一般人は決して食べちゃいけない!
僕とムッツリーニがタルトの押し合いをしてると
「うーす、戻ってきたぞー」
召喚大会の科目指定のついでに、執事喫茶のPRもしてくると言って、執事姿で学園を回っていた、雄二が戻ってくる
「おっ、雄二お疲れさん」
病みモードから復帰した、はやてさんがそう声を掛けると
「しっかし、疲れたぜ。なんせ途中で龍也に声を掛けようとする。女子に囲まれて動けなくなってよ…ってはやて達は?」
「行っちゃったよ。血走った目で殺戮者になる為に」
雄二の話を途中まで聞いていたが、囲まれての件で。3人とも走っていってしまった…龍也を囲んだ女子が無事だと良いが
「不味いこと言ったかもな。おっ!美味そうじゃないか。貰うぞ」
僕の食べかけのタルトを半分ほど食べる雄二
「…冥福を祈る」
「雄二、僕は君を忘れない」
1口であの様なのに、あれだけの量を食べた雄二は恐らく助からない。僕とムッツリーニが敬礼すると
「お前らは何を言ってるんだ?…ふむふむ。表面は固くて、中はドロドロ。甘すぎず、舌が痺れるような酸味がとっても、んごパッ!!」
僕と同じリアクションをし、崩れ落ちる雄二。大丈夫か、まだ息はあるか?
「雄二。とっても、美味しかったよね?」
近くにしゃがみ込みながら、確認する、何とか息はしてるようだが…
「ああ、何の問題も無い」
倒れたまま返事をする雄二、どうやら一命は…
「あの川を渡れば良いんだろう?」
駄目だ!死に掛けてる!?やはりあれは危険だ。命をあっさり刈り取るバイオ兵器だ
「ゆ、雄二!?駄目だ!その川を渡ったら全てが終るぞッ!!!」
このままでは不味い、雄二が姫路さんの料理で死んだとなれば、大魔王にジョブチェンジしてる、霧島さんと。魔王と化した姫路さんの壮絶な争いが!?なんとしても蘇生しないと!!くそ!どうして僕は神父じゃないんだ!こんな時こそ神の力が必要なのに!!必死で神の力を借りないザオラルを使い始める
「坂本君はどうしたんですか?」
僕のタルトを緩んだ頬を食べていた、姫路さんが雄二に気付く。それに続いて
「あ、本当だ。坂本、どうしたの?」
僕のタルトなんかであそこまで夢見心地になってくれたなら、売り上げへの期待は大だ。龍也の作ったタルトの値段を上げないと、僕程度であれなら、龍也のタルトを食べれば天国を見れるだろう。少し値上げをしないと
「大丈夫だよ。ちょっと疲れたんだよ。おーい、ゆーじー。起きろーこんなとこで寝たら、駄目だぞー」
それより雄二の蘇生だ、口調こそおどけているが、手は必死に心臓マッサージを続ける
「六万だと?バカを言うのは良い加減にしろ。渡し賃は六文と相場が…はっ!?」
雄二が死線より復活した、ギリギリで神の力を借りない、ザオラルは成功したようだ。だが雄二は虚空を見つめ
「嫌だぁッ!!鎖に繋がれるなんてごめんだアアアッ!?!?」
しまった!?あのタルトの追加効果のメダパニに掛かってる!?
「俺はぁッ!あんな未来しかないなら自ら死を選ぶッ!!はぐっ!?」
残りのタルトを口に詰め込む雄二、
「雄二!駄目だッ!!」
「…自殺かっこわるい!」
ムッツリーニと協力しタルトを吐き出させようとするが
「ゴクンッ!!…俺は…あんな、未来…ごめんだ…ガクっ!」
雄二はそう言い残すと意識を失った…心臓に耳を当てる
「動いて…ない」
心臓の音がしない…しかも呼吸も停止してる
「…ま、まだ間に合う!?全力でザオラルをするんだ!!」
ムッツリーニの珍しい大声に頷き、2人で必死にザオラルを使い続けた…結果論から言えばザオラルは成功した、しかし錯乱する雄二を止めるのにザキ(喉への地獄突き)を使う羽目となった事をここに記す
第26問に続く
どうでしたか?常夏改心イベントと壮絶な後編は?面白かったでしょうか?もしそうなら感想を頂けると嬉しいのですが…それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします