バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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今回は雄二と明久の話です、どうか今回も宜しくお願いします


第19問

 

 

第19問

 

龍也とはやてさんが上手く司会進行してくれたから、出し物も決まった。僕は今のところ特に用も無いので帰る準備をしていると

 

「アキちょっと良い?」

 

美波に呼び止められる

 

「何か用?」

 

そう尋ねると美波は

 

「龍也とはやてさんが上手くやってくれてるけど…やっぱり出し物を成功させるには坂本にも協力して貰ったほうが良いと思うの。何とか坂本を学園祭に引っ張り出せない?」

 

まぁ美波の言うとおりだ。確かに龍也は上手くやってくれてるけど、ウチのクラスは個々の個性があまりに強すぎる。龍也だけでは治めきれない…やはり雄二の力が必要だろう…しかし

 

「でもなあ。雄二は興味の無い事には本当無関心だからなあ」

 

多分雄二はクラスの出し物さえ知らないだろう

 

「アキが頼めば動いてくれるよね?」

 

期待を込めた目で僕を見て言う美波に

 

「いや、僕が頼んでも駄目だと思うよ?」

 

「大丈夫よ、だってあんた達。愛し合ってるんでしょ?」

 

真顔の美波に言われ僕は思わず

 

「だ、誰が雄二なんかと!!僕は秀吉の方が良いよ!!」

 

そう叫ぶと近くに居た秀吉が紅くなりながら

 

「その…おぬしの気持ちは嬉しいんじゃが…そんな事を言われても、ワシらには色々と障害が…ほら、歳の差とか…」

 

「ち、ちがうから!!僕らの間にある障害はそんな物じゃないからね!!正気になって!」

 

不味い秀吉も最近Fクラスに毒され始めてる…だいたい男同士じゃ結婚できないだろうに…

 

「それじゃあ、坂本に協力は頼めない?」

 

「うん、そう言う事になると思うよ。でも龍也でも大丈夫だよきっと成功するよ」

 

龍也のリーダーシップなら何の問題も無い。きっと成功すると言うと

 

「成功するだけじゃ駄目なのよ」

 

成功するだけじゃ駄目?美波は何を言ってるんだろう?成功すれば充分じゃないか。僕が首を傾げていると秀吉が

 

「随分深刻そうじゃが…何の話なんじゃ?」

 

若干顔の紅い秀吉に

 

「深刻って訳じゃないよ。ただ喫茶店の経営と設備について話で…」

 

僕が秀吉の事情を説明していると美波が

 

「ううん、深刻な話なの。本人には言わないで欲しいって言われてるんだけどね…事情が事情だから話すわよ」

 

真剣な表情の美波に頷くと美波は

 

「瑞希なんだけど…転校するかもしれないの…」

 

!?!?どういう事?まだ新学期も始まったばかりなのに…何故?このままではこのクラスは荒涼とした世紀末伝説の世界になってしまう…龍也を神と崇める者とそうで無い者達の血で血を洗う抗争が続く日々に

 

「む。マズい、明久が処理落ちしかけとるぞ」

 

「このバカ!不測の事態に弱いんだから!」

 

ガクガクと僕を揺するのは誰?ああ…秀吉か…

 

「秀吉、君は龍也を神と崇めてくれるかい?」

 

「どういう処理をしたら、そう言う話になるの?」

 

「ある意味稀有な才能かもしれんのう…」

 

呆れている秀吉と美波の声で正気に戻り

 

「美波、姫路さんが転校ってどういう事!?」

 

「そのままの意味。このままだと瑞希は転校しちゃうかもしれないの」

 

どういう事だ?意味が判らない、姫路さんの転校と学園祭に何の関係が?僕が首を傾げていると

 

「瑞希のお父さんがFクラスの環境が良くないって言っててね。それを理由に転校させようとしてるの」

 

Fクラスの環境?…確かにこの環境は体の弱い姫路さんには悪い環境だろう。龍也が修繕してくれたとはいえボロボロで酷い環境なのだから、それにこのクラスはバカばかりだ。龍也達はかなり頭が良いがそれ以外が酷すぎる

 

「瑞希は体が弱いから親が心配してるそうなの」

 

確かに普通の親ならそうするだろう…

 

「なるほどのう。じゃから喫茶店を大成功させて、設備を変えたいんじゃな?」

 

「うん、瑞希は召喚大会で優勝して、両親にFクラスを見直してもらうって考えてるんだけど…それだけじゃ駄目だと思うの」

 

Fクラスがバカばかりと思われてるのが転校を進められてる理由だ。優勝すればその見解も変わるだろうが…それだけでは足りない

 

「なるほどね。設備を向上させないと優勝しても意味が無いと」

 

学力が良くても親が心配してるのは姫路さんの体調の事だ。これは設備を何とかしないとどうしようもない

 

「…アキは…瑞希が転校したら嫌だよね?」

 

探る様な言い方の美波に

 

「勿論嫌に決まってる!姫路さんだけじゃなくて美波や秀吉であっても絶対に嫌だ!」

 

家庭の事情ならまだしもこんな理由で仲間が離れるのは絶対に嫌だ

 

「そっか、うん、アンタはそうだよね」

 

嬉しそうに言う美波に

 

「そう言うことならなんとしてでも雄二を焚き付けてやるさ!」

 

雄二の桁違いな頭脳が必要だ…僕はポケットから携帯を取り出し雄二にかける

 

「もしもし?」

 

「雄二、ちょっと話があるんだけど?」

 

僕がそう言うと雄二は

 

「明久か…丁度良い、悪いんだが後で俺の鞄を…しまった!見つかった!?」

 

電話越しに何かを引っ繰り返す音が繰り返し聞こえてくる

 

「雄二?一体何してるんだ!?」

 

尋常じゃないその音と慌てようにそう尋ねると雄二は

 

「翔子に追われてるんだ!とにかく鞄を頼んだぞ!」

 

雄二はそれだけ言うと電話を切ってしまった

 

「坂本は何て?」

 

「どうやら霧島さんに追われてるらしくて、話できなかったよ」

 

あんなに美人なのに…どうして逃げるんだろう?僕なら追いかけたいけどなあ…ん?まてよ

 

「チャンスだ!」

 

雄二に協力させるのにこの状況を生かそう

 

「えっ?どういうこと?」

 

意味が判らないと言う表情の美波に

 

「この状況を活かせば、雄二を学園祭に引っ張り出せる!2人とも協力してくれる?」

 

僕は2人の作戦を説明し教室を飛び出した、雄二の考える事なんてお見通しだ

 

 

 

くそ…如何してこんな目に…俺は大きな体を小さくさせながら隠れていた、すると急に背中を引っ張られる。まさか見つかったのか!?慌てて振り返るとそこには

 

「やぁ、雄二奇遇だね」

 

「どういう偶然があれば女子更衣室で鉢合わせできるのか教えてくれ」

 

能天気に笑う明久にそう尋ねる。翔子なら男子トイレだろうが男子更衣室だろが突っ込んでくる。だから裏をかいてここに隠れたのに…どうしてここに明久がいるんだ!?明久は明久で

 

「やだなぁ、偶然に決まってるじゃないか」

 

あくまで偶然にしたいらしいがそんな偶然はありはしない。何か企んでやがるに違いない…何だ何を考えて…

 

ガチャリ

 

「えーと…あれ?Fクラスの問題児コンビ?ここ女子更衣室だよね?」

 

Aクラスの木下優子に発見されてしまう。ここは何とか誤魔化さないと

 

「秀吉の姉さんか。奇遇だな」

 

何とか誤魔化せないか思いそう言うが、木下の返事は

 

「先生!覗きです!!変態です!!!」

 

俺達を危機に貶める言葉だった、俺は即座に

 

「逃げるぞ!」

 

「了解!」

 

明久と共に更衣室の小さな窓から外に飛び出すがすぐに

 

「吉井と坂本だと!?またあいつらか!」

 

鉄人の怒声が聞こえてくる

 

「明久、不味い鉄人だ!」

 

「とにかく逃げよう!!」

 

2人で全力で走るがすぐに背後から

 

「見つけたぞ!2人とも逃がすか!!」

 

鉄人の野太い声が聞こえてくるこのままでは不味い。ふと頭を上げると新校舎2階の窓が開いてるのが見えた

 

「明久!」

 

「オーケー」

 

俺の言いたい事を一瞬で理解した明久は上着を脱ぐ、俺はその間に腕を組み土台になる

 

「行け!明久!!」

 

「あいよ!」

 

明久が手の上に乗った瞬間跳ね上げ窓の方に飛ばす

 

「雄二」

 

明久が垂らした上着を掴みそのまま自分も窓から廊下に入る。グランドからは

 

『吉井!坂本!明日は逃がさんぞ!!!』

 

流石に鉄人も1人ではここまでこれないようで、悔しそうに叫んでいた…

 

「はぁ…またいらない悪評が増えてくよ」

 

溜め息を吐きながら言う明久に

 

「俺のほうこそ良い迷惑だ。お前さえ来なければこんなことにはならなかったのに」

 

明久さえ来なければあのまま翔子をやり過ごして帰れた物を…

 

「ところでさ、如何してそんなに必死に霧島さんから逃げてるの?」

 

不思議そうな顔をして尋ねて来る明久に

 

「…ちょっと、家に呼ばれていてな」

 

「僕から見れば羨ましいけど?どうしてそんなに嫌がるの?」

 

俺もただ家に呼ばれてるくらいなら行くが…

 

「…家族に紹介したいと言われてるんだ」

 

「…まだ付き合ってるん訳じゃないんだよね?」

 

翔子は俗に言うヤンデレと言うやつで少々性質が悪い。監禁くらいなら楽にやってのける…きっと龍也なら俺の気持ちを理解してくれるだろう

 

「さて、雄二。君に朗報があるんだ」

 

楽しそうに言う明久に

 

「そうか、嫌な知らせだったら。憂さ晴らしに貴様を殺す」

 

拳を鳴らしながら言うと明久は

 

「こ、この携帯をどうぞ」

 

差し出された携帯を受け取り

 

「全く何の真似だ?」

 

それを耳に当てると

 

「もしもし、坂本?」

 

通話先は島田だった、これが翔子だったらこいつを殺してた所だ

 

「何の真似だ?」

 

「ちょっと待って今替るから」

 

携帯が誰かに渡された気配がする…まさか…俺が嫌な予感を感じてると

 

「…雄二。今何処?」

 

「人違いです」

 

やはり翔子だ、俺は即座に電話を切り

 

「コロス」

 

明久に拳を向けた。明久は慌てて

 

「まぁ、まぁちょっと落ち着いてよ。お願いを聞いてくれたら悪いようにはしないから」

 

お願いねぇ…今こいつが頼むであろう事は…

 

「学園祭の喫茶店の事か?やれやれ、こんな回りくどいことしなくても、お前が「大好きな姫路さんの為に頑張りたいんだ!協力してください!」とでも言えばすぐにでも協力してやるのに」

 

明久をからかうためにそう言うと、案の定明久は慌てながら

 

「な!?べ、別に、そんなことは一言も!」

 

「あーはいはい、話は判った。仕方ないから協力してやるよ」

 

まぁ龍也だけに押し付けるのも悪いから協力するとしよう。

 

「まぁ、とにかく引き受けてくれてありがとう」

 

笑いながら言う明久に、さっきから疑問に感じていた事を尋ねる

 

「気にするな、それより、島田と翔子は親しかったのか?」

 

あいつは人見知りするほうだから、そう簡単に友達は出来ない筈なのに…俺がそう尋ねると明久は

 

「うーん、聞いても怒らない?」

 

俺の顔色を見ながら言う明久…何か裏があるな…

 

「バーカ、どうせ引き受けたんだ、今更怒ってどうするんだよ」

 

安心させる為にそう言うと明久は

 

「実は電話の向こうに居たのは霧島さんの真似をした秀吉で」

 

「目をつぶって歯を食いしばれ」

 

俺がそう言うと同時に明久の得意げな顔に拳を叩き込んだ…

 

 

 

「そうか、姫路の転校か…そうなると喫茶店の成功だけじゃ不十分だな」

 

事情を説明すると雄二は腕を組みながらそう呟いた

 

「不十分?どうして?」

 

僕がそう尋ねると雄二は指を3本立てて見せた

 

「姫路の父親が転校を進めた理由は恐らく3つ、まずは畳と卓袱台という環境だが、これは喫茶店の利益で何とかなるだろう」

 

雄二が指を1本引っ込める

 

「2つ目は老朽化した教室、これか健康に害のある学習環境という面だ」

 

「1つ目は道具で2つ目は教室自体ってこと?」

 

僕がそう尋ねると雄二は頷きながら

 

「ああ、龍也がある程度修繕してくれたが。まだ足りない、これ以上の修繕となると業者が必要になる…そうなると学園の側の協力が必要になる」

 

確かに机や椅子なら何とかなるが、教室全体の改修となると業者に頼むしかなくなる。そしてそれは僕達に出来ることではない

 

「そして最後の3つ目。レベルの低いクラスメイト…つまりは姫路の成長を促す学習環境という面だ」

 

確かに競争相手の居ないこの環境はお世辞にも良いとは言えないか…うん?待てよ

 

「龍也とはやてさんは?あの2人なら充分すぎると思うけど?」

 

姫路さん以上のスコアを簡単にたたき出す脅威の兄妹の事を言うと

 

「確かにその通りだが…それはクラス内での話。あの2人が表に出ない以上姫路の両親は競争相手が居ないと考えるだろう」

 

もし、龍也とはやてさんが召喚大会に出れば、クリアされる課題だが、本人達にその気が無いので駄目だ。そうなると姫路さんと美波のペアが召喚大会で優勝すれば良い。そうすればFクラスにも学年トップと渡り合える生徒が居ると言う証明になる

 

「翔子が参加すれば優勝は厳しいが、あいつはこういうイベントには無関心だから。姫路と島田の優勝も充分ありえる」

 

「そうだな、2人なら何とかなるよ」

 

霧島さんが参加しないなら勝機はある、霧島さんが召喚大会に無関心で良かった

 

「姫路と島田が優勝したら、喫茶店の宣伝にもなるじゃろうし、一石二鳥じゃな」

 

うんうんと秀吉が頷く、Fクラスは旧校舎にあるから宣伝効果は決して小さくないはずだ

 

「で、坂本。教室の問題はどうするの?」

 

美波がそう尋ねると雄二は

 

「どうするも何も、学園長に直訴すれば良い」

 

さも当然の様に言う雄二に

 

「それだけ?僕らが学園長に言うだけで何とかなるの?」

 

「あのな、ここは一応教育機関だぞ?幾ら教育方針だからと言って、生徒の健康に害を及ぼすような状態で有るなら。改善要求は当然の権利だ」

 

もし雄二の言うとおりなら、3つの問題が全て解決することになる

 

「それなら。早速学園長に会いに行こうよ」

 

思い立ったが吉日、早速会いに行こうと言うと

 

「そうだな、秀吉と島田は学園祭の準備計画でも考えてくれ。龍也に任せきりって言うのも気分が悪いからな。それともし鉄人が来たら俺達は帰ったことにしておいてくれ」

 

立ち上がりながら言う雄二、自然にこういうことができるのはきっと一種の才能だろう

 

「うむ、了解じゃ。ついでに霧島翔子も見かけたらそう伝えておこう」

 

微笑む秀吉に対して雄二は沈黙した。やはり霧島さんが苦手らしい

 

「アキ、しっかりやってきなさいよ」

 

「オッケー任せてよ」

 

美波の声援を受け、僕と雄二は学園長室に向かった…

 

第20問に続く

 


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