例題2
龍也がいない。既にはやて様達と帰宅しているその理由は先ほど正門前に来ていた、チビッ子ーズ&葉月ちゃん&犬(見た事ない雑種)が迎えに来たので早々に帰ってしまった。そし手残された僕と雄二とムッツリー二は
「これは最大のチャンスだと思うんだ」
「ああ。俺もそう思う」
「……同意せざるを得ない」
今Fクラスには誰も居ない、僕達だけだ……こんな機会はめったにない
「しかし姫路の机をあさるのは危険だな」
「でも仕方ないじゃないか」
僕たちが今やろうとしているのは姫路さんの机の中から、文化祭の時の女装写真の消滅……こんな物は存在してはいけないと思う。
今の内にと瑞希の机に手を伸ばした瞬間
「「「ふぎゃあ!?」」」
周囲の机が光ったと思った瞬間、僕達の意識は闇に沈んでいた……薄れ逝く意識の中
「もう、駄目ですよ?明久君?女の子の机の中を見ようなんて」
瑞希の酷く冷たい声に、僕は全て魔王様の手の中の出来事だったのだと絶望するのだった……
「さてどうしましょうか」
瑞希は手の中の明久達の女装写真を手に首を傾げていた、瑞希は愛子と翔子に渡すために持って来ていたのだが、呼びに行く間に奪おうとするとは思ってなかったのだ
「どうします?工藤さん、翔子ちゃん」
正直自分では手に余ると判断したのか、一緒に来ている2人に尋ねる瑞希
「……お仕置きは大事」
「僕もそう思うよ」
お仕置きをするという事で決定し、瑞希と愛子は携帯を取り出して
「あ、もしもし?美波ちゃん?面白い事を考えたんだけど」
「もしもし?日向ちゃん?ムッツリー二君で面白い事を考えたんだ、時間ある?」
魔王仲間を呼び寄せるのだった……そして黒いオーラを纏いながら気絶している明久たちを運び出す瑞希達だった……
俺達は気がついたら初めて見るような建物の中に居た、なんて言うか……世界の豪邸?
「全く、急に訪ねてくるとか迷惑とか思わなかったのですか?まぁアキ君が居るのでいいですけど」
リアル世界の豪邸だった。高城グループの家となれば、それは間違いなく世界の豪邸の1つに数えてもいいだろう……若干痛む頭を押さえながら身体を起こし
「……ひ、日向!?なぜここに!?」
何故かさも当然と言う感じで紅茶を飲んでいる日向。それに姫路とかの法を見ると正座をしている明久と雄二の姿
(いかん!逃げなければ)
これは間違いなく姫路の机の中を漁ろうとしたお仕置きだ。逃げなければと思った瞬間。肩に手を置かれ耳元で
「逃げれると思ってるのかな?ムッツリー二君?」
愛子のぞっとするような声に俺は完全に詰んでいるだと理解して、涙するのだった……
「まぁアキ君。女性の机の中を調べようとしたのは駄目です」
「はい……ごめんなさい」
高城に説教をされている明久。島田たちはそれを見てうんうんと頷いている、臨死体験よりも説教の方が精神的にきついと思う
「しーん」
「……」
ぴくりとも動いていない雄二が心配だが、耐久力は高いからほっておけば再生すると判断する。俺も他の事を考えてないと駄目だ
「お兄ちゃんはね、そう言うことをしたら駄目なんだよ」
「……アア。ソウダナ」
俺の膝の上にさも当然のように座っている日向。そして背後には愛子……これはどう考えても詰んでいる。逃げれる手段が俺には思い浮かばない
「と言うわけでそう言う許せないことをした明久君とかにはお仕置きをしたいとおもうのです」
姫路の笑顔が死ぬほど怖い、魔王ではないのにそれに準ずる威圧感を感じる。そして姫路が机の上に置いたのは大きな箱
「なにそれ?」
「……聞いてない」
どうも箱自体は姫路の独断のようで島田達が首を傾げる中
「なんか前に小暮先輩に頂いた物です。中に何か色々な指示が書いてあるそうなので、それを明久君達にやってもらいましょう」
最悪だ!!!あの狂人の考えた物なんて碌な物ではない筈だ
「あー姫路さん?それは止めませんか?小暮の考えてる事は常人には理解できません、きっと皆不幸になるだけだと……」
高城が説得に入る。頑張ってくれと心の中で祈る、だが姫路はそれを無視して箱の中に手を入れて紙を取り出して
「明久君に猫耳装着で」
となりの箱から猫耳のヘッドバンドを取り出す姫路。実にいい顔をしているのが恐ろしい
「なんでさ!?」
そして何処かの世界で正義の味方を目指していそうな少年の言葉を叫ぶ明久。それだけ動揺していると言う事だろう、だが俺も動揺している
「お兄ちゃんに猫耳を♪」
「それはそれで可愛いかもしれないね」
嬉々とした顔をしている日向と愛子。頼むから変な指示の紙がでてくれるなと心の底から祈った。恐らく雄二も同じだろう
「断るなら女装してくれますか?」
笑顔の姫路に明久は号泣しながら猫耳バンドを受け取り、装着した……俺から見たらシュールな光景だが、姫路敵には気に入ったのかご満悦と言う顔をしていた
「しくしく」
号泣しながら猫耳を装着する明久。満足げに笑っている姫路、そして期待の色を目に浮かべる愛子と日向。そして次は自分だと言う感じで箱の前に立つ霧島。逃げようとする雄二に振り返る事無くシャーペンを投げる、まさにはやて様の技能だった……
(どうしてこんな事に)
人生の汚点を消そうとして新しい人生の汚点を増やすという訳の判らない事態に涙するのだった……
瑞希が持ち出した小暮プレゼント。それを聞くと不安に感じたんだけど……
「しくしく……」
猫耳やら尻尾やら肉球手袋やらを装着させられて泣いているアキを見ると
((たまにはいい仕事をするのね(ですね))
基本的にトラブルメイカーなのだが、今回はいい仕事をしてくれたと心の底から思う。ちなみに尻尾を引いたのはウチだった、とりあえずその時はアキの頭を撫でたのだが、泣いていたのが妙に可愛く見えた。これは女子としてどうなのか?と一瞬思ったがすんなり受け入れてしまった。可愛いは正義……これでいい、間違っている物など何もない
「……うん。これはこれでいい。一週間のうち2回はお願いしてもいい」
「畜生、なんで俺は手先が器用なんだ」
坂本は翔子の引いた「三つ編み」「髪を梳く」を翔子にしている。翔子はとても満足げだ……土屋は
「……」
遠い目をしたまま愛子と日向のおもちゃにされていた。髪を結ばれたり、犬耳を装着させられたり、膝枕をさせてと言われて、むねを押し付けられて気絶したり。
(ウチも今度頼んでみようかな?)
良くはやてとが龍也に頼んで髪を梳いてもらっているのを見ているのでウチも今度アキにやってもらおうか?と考えていると
「メイド服だって明久」
優月が引いたカードはメイド服。猫耳メイド!?なんて組み合わせなんだろうか?そして小暮は何を考えてそれを書いたのか?それを聞きたいが、みてみたいと思う。アキはかっこいいんじゃなくて可愛い系であるとウチは思っているからだ
「じょ、女装は嫌ああ!!!」
だがアキは凄まじい勢いで開いていた窓から外に飛び出していく
「アキ君!そのまま外に出たら余計勘違いされますよ!?」
それ違うから。高城は高城で本当にどこかずれている、だけど今はそんな事を考えている場合ではない。
「捕まえないと!」
「ここまで来たんだからなんとしても完全体を!!!」
ダッシュで追いかけていく優月と瑞希。前のお札のことは一切反省してないように見える。欲望に忠実すぎる
「……髪を洗う(ポッ)」
「ふっざけんなあああ!!!」
雄叫びと共にアキが飛び出した窓から逃げ出す坂本、流石にこれは逃げると思うけど、即座に追いかけに行った翔子から逃げ切れるだろうか?
「あ。お兄ちゃんに抱きつきだって」
「僕もだね。じゃあ正面からで」
「ごぱあ!?」
奇声を発してとうとう土屋が意識を失った。それを見てにやりと笑う愛子と日向を見て
「暴走しないように探しに行きましょう」
「ですね。急ぎましょう」
瑞希と優月だけにすると何をしでかすか判らない。前の二の舞になる可能性を考え、ウチと高城は部屋を後にした。残された土屋は……まぁ自分で何とかするだろうと思って……
「いややああああ!!来ないでー!!」
「「ジリジリ」」
庭の隅で巨大な木の間と壁を背にして回りこまれないようにして、両手の肉球手袋を振り回すアキ。そしてアキを追い詰める事を考えているのかジリジリと間合いを詰めている瑞希と優月。
「どうして学習しないのかな?」
「さぁ?」
前の龍也の説教であれだけ怖い思いをしたはずなのに……同性としてあそこまで自分の欲望に忠実なのは正直どうかと思う
「待て翔子。逃げた事は俺が悪かった、この通りだ謝る。交渉のテーブルに付こう、お互いに妥協点を探すんだ」
「……えー」
翔子がえーっなんて言ったのは始めて聞いたかもしれない。かなりレアな光景だが、坂本を追い詰めている姿を見ると肉食獣にしか見えずかなり恐ろしかった……そして自分はアアはなるまいと心に誓う
「これ以上近寄るなら僕は龍也に電話する!襲われるのは嫌だから」
「「!!」」
携帯を取り出すアキと数歩下がる瑞希と優月。龍也の名前に少し冷静になったのかもしれない、その隙にとこっそり後ろに回り
「はい、おとなしくしましょーねー」
「はうっ!?」
瑞希の後ろに回りこんでチョークスリーパーを極める。高城のほうは音もなく優月の背後に回りこみ
「失礼」
「うっ」
優月の首筋に手刀を叩き込んで意識を刈り取っている。ウチもああいうのが出来たら早いんだけど……20秒ほどでぐったりとした瑞希をゆっくりと地面に寝かせると
「うわああん!!!怖かったー!!!」
大泣きしながら抱きついてくるアキ。ああ……もうなんでこんなに可愛いのか判らない。ウチと高城はよしよしと泣いているアキの頭を撫でながらどうしてこんなにアキが可愛いのかを考えているのだった……その後は高城と一緒に瑞希を部屋に運んで説教をすることにしたのだった……
色々あってとりあえず帰路に着くことが出来たんだけど
「取れないよお……」
どうも接着剤がついていたらしく猫耳が取れないことに涙していると、雄二が
「いいじゃねえか、猫耳くらいよお……俺は自分の貞操を守るために翔子が望んだ時に髪を梳いて、話し相手をする約束をしたんだぞ?いつでも押しかけてくるじゃねえか……」
げんなりとしている雄二。だけどまぁ襲われることを考えればその程度で済んでよかったと思うべきだと思う。魔王はね、怖いんだよ、手段を選ばない場合もあるからね。何せ経験済みだから……雄二が呻いているのを見ながら、猫耳から手を放し放心状態のムッツリー二を見る
「…………」
顔に生気が無く、目が死んでいる。もしかしては見てはいけない世界を見ているのかもしれない
「大丈夫?ムッツリー二」
「……俺はぁ……「はいはい。お兄ちゃん家に帰ろうね。じゃあ失礼します」
ぺこりと頭を下げてムッツリー二を連れて行く日向ちゃん。僕と雄二は心の中でムッツリー二の無事を祈った、家に帰っても安心できない奴の環境はとんでもなく不憫と言えるだろう
「そう言えばよ、明日だったか、明後日だったが、新学校生が学校見学に来るよな」
割り切ることにしたのか、若干落ち込んでいる気配がある物の雄二がそう言う。確か連絡で聞いたけどあんまり覚えてないなあ
「確か明日だったかな?」
僕には弟も妹も居ないのでそんなに気にしてなかった。妹とが居る生徒はかなり熱心に話を聞いていたみたいだけど、見学の順で部活の時間を調整したりして、家族にいい所を見せようと言う所だろう。多分だけどそんな感じだと思いながら
「なんでそんなに気にするの?」
態々そんな事を気にするような奴じゃないのにと思いながら尋ねると雄二は
「確か久保の弟が中学3年だ」
「……」
その言葉に冷や汗が噴出した。ゲイの弟……いや、まさか兄弟でそんな異常性癖を持っているわけが……
「ないと言い切れるか。あの突き抜けたのを見て」
脳裏に浮かぶのはどこの妖怪だと言いたくなる様な奇妙な動きをしていた。KUBOの姿
「言えない、言えないよぉ!!!」
否定したい。否定したいけど、否定できる理由がない。頭の猫耳が動いているのが何故か無性に腹正しい
「まぁ最悪島田とかに匿ってもらえ」
「う、うん。それしかないね」
安全性を考慮するならそれしかない、もしくは恥も外聞も捨ててみーちゃんに助けを求めるしかない
「すっごく憂鬱」
「耐えろ。そして久保の弟が正常である事を祈れ」
祈る事しかできないこの状況。なんて最悪な状態なんだろう……僕は心の中でそう泣くのだった。そして頭の猫耳は取れる事無く動き続けていた……
「ほほう?これを使った、そして吉井君へ猫耳が……なるほどなるほど」
「何を納得しているのですか?」
全員が帰ったのと入れ替わりで遊びに来た小暮と話をしていた雅。小暮はにやあっと邪悪そうな笑み浮かべて
「はい、これをどうぞ」
自分のノートPCを操作して雅の前に置く、一瞬で雅の顔がトマトのようになりあわあわしだす、そしてそれを見て満足げな顔をしている小暮。ノートPCに何が映っていたのか?それは小暮と雅だけの秘密となるのだった……
例題3へ続く
今回はなんかギャグの切れが今一だったような気がする。どうしてだろうか?テーマが難しかったのかもしれない、もっと勉強しないといけないかもしれない。面白いといってもらえれば幸いなのですが……それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします