バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回で危ない黒魔術の内容は終わりにしようと思います。後はもう2話くらい私の考えている番外編を書いて完結の予定ですね。この後は「例題」としてリクエストがいただけましたら、その話を書いていこうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


応用問題問20

 

 

応用問題問20

 

瑞希に僕の身体を奪われ、もう襲われる寸前と言うタイミングで体育倉庫の扉が開く。ワラにも縋る気持ちで出入り口を見るそこには……

 

「がっかりだよ!なんでここで被害者増加!?」

 

工藤さんを担いだムッツリー二が居た。恐らく奴も精神を交換されてしまったのだろう

 

「……先客?邪魔かな?」

 

工藤さんが瑞希にそう尋ねる。瑞希は僕をしっかり押さえ込んだまま

 

「いいですよ。向こうをどうぞ」

 

「……ありがとね~♪さぁ逝こうかー♪」

 

「むがーっ!!!」

 

肩に担がれたまま暴れるムッツリー二。だがそれは無駄だと言える。僕も全力で暴れているのに押し返せる気配が微塵もない、女子の身体と言うのはここまで非力なのかと軽くショックを受ける

 

「それじゃあ続きを」

 

再びボタンに手を伸ばそうとする瑞希。いけない!マジでやばい段階だった!!!

 

「瑞希ね?お願いだからやめようよ?」

 

駄目だとおもうが何とか交渉を試みるが、瑞希はニッコリと笑うだけ、その笑顔が捕食者の物で心底恐ろしい。本格的にもう駄目だと思った瞬間再び体育倉庫の扉が開く

 

「おー?なにしてるんや?」

 

そう笑う声。逆行で見えないが、この声は間違いなくはやて様。このタイミングで最も会いたくない魔王様だ

 

「全くなあ。欲望に忠実なのはいいけど鍵くらい掛けたらどうや?」

 

そう笑うハヤテ様。ああ、もう駄目なんだと思った瞬間、妙な違和感を感じる

 

「逃げるんやで!明久!康太!!」

 

その言葉と同時に炸裂する閃光弾。僕は咄嗟に目を瞑る。そして味方だと思っていた瑞希と工藤さんは至近距離で閃光弾をくらい

 

「「目がぁ!目があ!!!」」

 

目を押さえて悶絶している。今のうちに札を奪って身体を取り返そうとしていると

 

「馬鹿か!目を焼かれてるんやで!とっとと逃げるで!!」

 

はやてさん(?)の言葉に頷き、脱がされかけていた制服のボタンをしめなおし廊下に飛び出す

 

「もしかして龍也?」

 

走りながら尋ねるとはやてさん(?)はああっと小さく頷き

 

「油断していた。まさかロッカーから飛び出てくるとはな」

 

流石はやて様普通の人間が考えない方法を思いつかれるわけですね。でも身体を奪われたのに良く逃げて来られたなあ

 

「……どうやって逃げた?」

 

ムッツリー二が走りながら尋ねると龍也は苦笑しながら

 

「コートの重さと長い髪ではやてが自爆した。倒れて痙攣してたよ」

 

……ああ、はやて様の誤算はそこだったんですね。だけどそのおかげで僕もムッツリーにも無事だったわけで、少しだけ感謝していると

 

「……姫路に工藤それにはやてさん……敵か!?」

 

階段から降りてきた霧島さんが身構える。もしかしてあいつも身体を奪われたのか?

 

「雄二か?私だ。龍也だ、こっちは明久と康太」

 

はやて様の中でも口調はいつもの龍也だ。僕とムッツリー二は意識しないと姫路さんとかの口調になっちゃうのに何でだろう?

 

「……はー良かった。やっと安心できる」

 

溜息を吐きながら座り込む霧島さん、いや雄二は心底安心した表情で

 

「……龍也も身体を奪われたのに何でそんなに平気そうな顔をしているんだ?はやてさんは?」

 

その問い掛けに龍也は穏やかに笑う。はやてさんの身体なので若干の違和感を感じる、何故ならこんなに穏やかな笑顔は見たことがないからだ

 

「コートに潰されてるかな?復帰は何時になるだろうね」

 

あははと笑う龍也。僕は少しだけはやてさんが心配になったけど……1階の廊下から聞こえてくる走る足音と凄まじい威圧感

 

「来たな。予想よりリカバリーが早い」

 

そんな冷静に言わなくてもと僕とムッツリー二の批難の視線が龍也に向かうが龍也は平然とした顔をしながら時計を見る

 

「残り52分。ここからは死に物狂いで来るだろうな」

 

冷静に分析している龍也。この冷静さは本当に頼りになるんだけどたまにイラッとする。僕達と違って自力で逃げれるからのこの冷静さだと思うけど、僕達にとっては死活問題なのだから

 

「……逃げたほうが良いんじゃないのか?」

 

ムッツリー二がそう尋ねる。龍也は何を言ってるんだ?と言う顔をしてから

 

「逃げたほうがいいに決まっているだろう?なんでまだここに居るんだ?雄二はとっくに逃げているぞ」

 

龍也の視線の先には長い髪を翻し、走っていく雄二の姿。ただスカートが走りにくいのかかなり苦戦しているように見える。本当に早くもとの身体に戻りたい

 

「行くぞ。もう近くまで瑞希と愛子の気配が近づいている」

 

そう言って走り出す龍也。僕とムッツリー二はさっきの捕食の危機を思い出し、揃って顔を青くさせて

 

「行きましょうか?」

 

「そうだね」

 

意識をしてないせいで瑞希と工藤さんの口調になってしまいながら、龍也の後を追いかけて移動するのだった

 

(うっスースーする)

 

慣れるわけのないスカートととんでもないまでに自己主張する胸部に赤面しながら、頑張って龍也の後を追いかけるのだった……

 

 

 

龍也達が隠れ場所を探している頃、新校舎では

 

「お、重いで……死んでまう……」

 

兄ちゃんの身体を奪うことに成功したのはいいが、重すぎる。コートも、あの長い銀髪もなにもかもが重い。そしてコートを脱ごうにも重いので脱ぐことも出来ず、半ば足を引きずるように移動する

 

(くう、腕力で抑え切れると思ったのに)

 

兄ちゃんはこんな重いものを着ていたのかと正直感心すると同時に何をしているのか?と呆れる

 

(セッテたちも逃げたしなぁ……)

 

正直疲れてきたのでその場に座り込む。そして疲労のせいか、段々頭が冷静になってくる

 

(うん。やっぱりこういうのは良くないよな)

 

仮に組み倒す事ができたとしても、兄ちゃんの経験値なら楽にその状態から脱出するだろうし、こんな事で無理やりと言うのも正直どうだろうと思う自分が居る

 

「破けばよかったんやっけ?」

 

交換した札を破けば精神が元に戻るらしい、若干惜しい気もするが、こんな形でどうこうと言うのも何か違う気がするので思い切って札を両手で持った所で

 

「忘れる所やった」

 

プロテクションを念の為に発動しておく。いきなり兄ちゃんも精神が戻れば驚くだろうし、それに

 

「「「ちっ」」」

 

廊下の影で思いっきり舌打ちしている面子も居るし、特にセッテの不機嫌そうな顔は凄いだけど……いざ交換してみると判る

 

(多分精神を交換したら冷静になるやろうなあ)

 

この重すぎるコートで絶対に我に帰るという確信がある。私は兄ちゃんの安全を確認してから札を破く、景色が歪み視点が変わると

 

「「いやああああ!!!速い!魔王がくるうううう!!!!」」

 

頭を抱えている瑞希(?)と愛子(?)そしてその2人の前を走りながら

 

「立ち止まるな!全てが終わるぞ!!!」

 

そう叫ぶ翔子は恐らく雄二だろう。どうなっているのだろうかと振り返り、直後に走り出した

 

(怖!?なんやあれ!?)

 

どす黒いオーラに爛々と瞳を輝かせている雄二達が追いかけてきている。これは真面目にやばいはずだ

 

「なんやねん!どういことや!?」

 

走りながら瑞希に尋ねる。恐らく中身は明久のはずだ

 

「はやてさんだよね!?魔王の暴走!それしかいえないよ!!!」

 

なんて判りやすい説明。と言うか私も普段はこんな事をしているのかと後悔する。そりゃ駄目や、こんな思いをしていい空気になるわけがない

 

「来た!予想とおりね、いい加減にしなさい!瑞希ッ!!!」

 

「そこまでですよ。あまり調子に乗ると私も怒りますよ」

 

美波と雅がそう怒鳴るが返事はない、それ所かさっきまで居なかったはずの優月までがいる

 

「最後の時間。この時が奇襲のチャンスだと思っていたよ!」

 

素早く明久と自分の額に札を張り。明久の身体を瑞希から奪う優月。ここまで動かず、機会を窺っていたと考えるととんでもない方法だ。突然視点とスピードが変わったことでつんのめる瑞希。その好きに瑞希を追いぬく優月

 

「あかん!これは真面目にあかん!!!」

 

私も身の危険を感じる。止めようとした美波と雅もUターンして走ってきた

 

「はやてよね!これ何とかできないの!?」

 

走りながら尋ねて来る美波。もし手元にデバイスがあれば何とかできるかもしれないが、残念ながら没収されている。となると

 

「お手上げや!絶対あれ脳のリミッター外してる!!」

 

とても普通の人間の脚力に思えない。絶対脳のリミッター外してるに違いない、デバイスがあってもきついかもしれない。となれば今の私に出来るのは1つだけ全力で逃げる事だけだ

 

「札の効力が死ぬまであと47分!気合で逃げるしかねえ!」

 

翔子の身体でそう怒鳴る雄二。だけどそこまで体力が持つかどうかが怪しい、特に

 

「瑞希の身体体力なさすぎ……」

 

「き、きつい」

 

明久と康太は限界が見えてきている。これが本来の身体ならまだしも、瑞希と愛子の身体では限界があるのだろう。それに私自身もあまり終われるという経験がないので限界が近い、もう駄目かもしれないと思った瞬間。空気が重くなる

 

「「「え?」」」

 

呆然とした瑞希達の声が重なる。も、もしかして……若干嫌な予感を感じつつ振り変えるそこには

 

「「「きゅう……」」」

 

目を回しているなのはちゃん達の襟首を掴んでいる兄ちゃんの背中。背中だけで判るがかなり怒っている

 

「世の中にはやって良い事とそうでない事がある。覚悟は出来ているな?」

 

面白いくらい青い顔している。多分本気で怒っている時のあの笑顔を浮かべているに違いない

 

「「「……ダッ!!!」」」

 

返事を返さず逃げていく瑞希達だけど、それよりも早く兄ちゃんが走り出す。一瞬でトップスピードになった兄ちゃんは

 

「反省しろッ!!!」

 

追い抜きざまに連続で拳骨を叩き込んでいく

 

「「「へぶう!?」」」

 

男の身体と言うことで手加減のない兄ちゃんの拳骨が瑞希達を襲う。優月だけはチョップだったが、かなりのダメージを受けているのか頭を押さえて悶絶している

 

「あれ戻ったら俺たちも致命傷じゃないのか?」

 

明らかにぐったりしている自分の身体を見て青い顔をしている雄二。だけど助かったのだからこのくらいは我慢するべきだろう

 

「さてと」

 

兄ちゃんはぐったりしている瑞希達の襟首を掴んで、振り返る。その顔は近年まれに見る「イイエガオ」で

 

「「「ひい!?」」」」

 

雄二達が小さい悲鳴を上げる、私も思わず悲鳴を上げそうになるくらいの怖い顔だった

 

「じゃあちょっと説教してくるから、40分くらい」

 

そう笑って消えていく兄ちゃん。助けてと目で訴えているなのはちゃん達は無視する、君子危うきに近寄らずだ。私達は精神的疲労と肉体的疲労でふらつきながらFクラスへと戻るのだった……

 

 

 

Fクラスで待っていると青い顔で「ごめんなさいごめんなさい」と繰り返し呟いている僕の身体とムッツリー二の身体と雄二の身体を引きずって龍也が戻ってくる。何があったかは聞くべきではないのだろう。だがあの感じを見ると軽く精神崩壊していそうな気がする。特に瑞希

 

「ごめんなさいごめんなさい」

 

ぶるぶると震えながら青い顔をしている。外見は優月の身体の分手加減されているはずだけど……それでも心配になる

 

そしてそんな事を考えていると急に視界が暗くなり、目を開けると元の身体に戻っていたが

 

「痛い!頭が凄く痛い!!!」

 

「ぐおおおおおッ!!!いてえええ」

 

「……じたばた」

 

僕と雄二とムッツリー二は頭を押さえて悶絶していた。信じられないダメージだ、それに痛みが治まると

 

「「「ふぁああああああッ!!!!」」」

 

イイエガオで僕達を見下ろす龍也の姿が脳裏に浮かぶ。しかもこれは僕達だけではないようで

 

「「うわあああん!!ごめんなさいーッ!!!」」

 

優月と瑞希も再び錯乱状態になり、しかも幼児退行している。そこまでに恐ろしい龍也の説教、その記憶はどうやら身体に刻まれていたようでドンドン思い出してくる

 

「嫌だアアアア!!!」

 

「ぶくぶく……」

 

その恐怖から逃れるために柱に頭を打ちつけ意識を失う雄二に、泡を吹いて気絶するムッツリー二。そして僕も段々その恐怖の思い出をはっきりと思い出し

 

「はう……」

 

精神衛生上のため脳のブレイカーが落ちて僕は意識を失うのだった……脳裏に焼きつくのはイイエガオで拳を構えている龍也の姿だった

 

「とんでもない光景ね」

 

札を使って精神交換をしようとしなかった美波がそう呟く。Fクラスはちょっとした騒ぎになっていた、気絶している明久達にトラウマを刻み込まれたのか、頭を抱えてお尻を突き上げた状態になっている瑞希と優月。女子としてはこれは良くないと判断したのか、美波がジャージの上着で隠してあげながら

 

「何をしたの?」

 

「別に?ただの説教」

 

しれっと言う龍也に若干の恐怖を覚えた表情をする美波にはやてが

 

「世の中には知らないほうが良い事ってたくさんあるんやで?」

 

「そ、そうなの?」

 

新校舎の方からも聞こえてくる悲鳴に青い顔をしている美波。そして龍也を怒らせれば命がないと判断し、絶対に怒らせないことを心に誓ったようだ

 

「とりあえずアキは連れて帰らないと」

 

「うああああん!!!来ないで!鬼の顔で来ないでエエエ!!!」

 

錯乱状態になっている明久達を見た美波はもう1度龍也を見て、何かを言いかけて口を閉じて

 

「大丈夫。大丈夫だからね」

 

龍也に文句を言うのではなく。明久に聖母のような微笑を向けて気を宥めるようにしていた、徐々に大人しくなっていく辺りを見るとかなりの効果があるのかもしれない……

 

「さてとでは帰るかな」

 

「ご愁傷様」

 

「やっぱり止めておいて良かったわね」

 

とんでもない事態になっているFクラス。そしてその状態を引き起こした龍也がはやてとヴィータとティアナを連れて、教室を後にしてから30分後。渡ってはいけないボーダーラインギリギリまで追い詰められていた明久達が無事に現世へと帰還して

 

「「「「2度と龍也を怒らせない」」」」

 

何かを悟ったような表情をしてそう呟いていたのだった。なお瑞希と優月は明久と若干距離が開きそうな物だったが

 

「「怖かったね」」

 

同じ恐怖体験をしたということで、若干距離の開きは少なくすんでいたりする、トラウマを与えられることにはなったが、最悪の展開。明久に嫌われるを回避できた瑞希と優月は安堵の溜息を吐き

 

「……ごめんなさい雄二」

 

「あーあー。いいよ、龍也に怒られたんだろ?これ以上はなんもいわねえ」

 

「もうちょいだったのになー」

 

「……冗談だよな?」

 

「どうだろうねー♪」

 

雄二と翔子、康太と愛子もそれなりに仲が良くなったのかもしれない。悲惨なのは言うまでも鳴く

 

「「「ゥうう……ごめんなさい」」」

 

龍也にたっぷりと絞られたうえに、明久や瑞希達と違い、仲良くなる事もなく完全に放置されたなのは達だろう……なお龍也がなのは達と普通に話すようになったのはこの事件から1週間後の事だった。それまではなのはたちは精神的に追い詰められかなり弱っていたりするのだった……

 

 

応用問題問21へ続く

 

 




もう少しでで私の考えている応用問題は終わりです。このアトは予告通り例題をちょくちょくやっていこうと思います次回は日常の話をやって見ようと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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