第13問
「あー疲れたー」
とぼとぼと帰ってくる明久と
「…そうね、疲れたわね」
少し赤面している美波が戻って来たところで雄二が
「さて、BクラスとCクラスが手を組んでいる以上。連戦になるのは間違いない。正直Bクラス戦後にCクラス戦はきつい」
現状を説明する雄二に
「私とはやてとセッテで攻め崩そうか?」
3000点越えの私達で攻め込むか?と尋ねると
「いや、それは不味い。これ以上龍也達が暴れるとAクラス戦を一騎打ちに持ち込みにくくなる。何心配しなくても良い、こっちにはちゃんと作戦があるから」
自信満々な表情の雄二は
「明日の朝に作戦を実行する。目には目を、だ!」
この日はそれで解散となり続きは明日へと持ち越しになった…
翌日、自宅にて…
「兄ちゃん…?私の言うこと聞いて無かったの?」
「私もそう思います」
はやてとなのはに責められながら
「反省はしてる、だが後悔はしてない」
私の目の前には軽く10人前はありそうなサンドイッチが鎮座していた
「ちょっとこれは食べきれないよね」
「食べると確実に太りますね、乙女にはきつい問題です」
明久達にやっても余るのは確実…他にあげれる人居なかったかな?ここ最近であった人物を思い出す
「そうだ、あいつにもやろう」
あげれる人物を思い出し私は使い捨てのパックにサンドイッチを詰め込んだ
「八神君か…」
私は机に座りながら一昨日あった男子生徒の事を思い出していた。銀髪蒼銀という変わった容姿の男子…少し話しただけだが良い人なのは良く判った。高町さんとハラオウンさんが熱を上げるのは充分に理解できる
「何?どうしたの優子、男子の名を呼んで溜め息吐くなんて…恋でもしてるのかな~」
「うるさい愛子」
からかうように言う同級生の工藤愛子に言うと
「おお、怒るって事は図星だな?」
愛子はこういうネタが好きだから、ここら辺で切り上げた方が良さそうね、私がそう思った直後
「木下優子は居るか?」
ビクンッ!
その場で思わず背筋を伸ばしてしまう…ゆっくり声のしたほうを見ると
「居たか、おはよう」
にこやかな八神君が居た…ちなみに周りに居た女子と愛子は停止している…かという私も停止していた
穏やかな朝日が八神君の髪に反射して光輝き
柔和な笑みは自分に向けられたものでないと判っていても心を掴む
圧倒的までな美…ただ存在するだけで全てを掌握する…
2-Aはただ1人の男子に目を奪われていた…それを知ってか知らずか八神君は
「失礼するよ」
ずかずかと教室内に入って来て真っ直ぐに私の方へ来る。そもそも木下優子は居るか?と最初に聞いたのだから用は私にあるはずだ…
「おはよう」
「あ・うん、おはよう」
友人に接するように気軽に声を掛けてくる八神君に、一瞬動揺した物の返事を返すと
「実はな今日は頼みがあってきたのだよ」
頼み?…八神君が?私が首を傾げてると
「今日の昼食を作りすぎてしまってね。良かったら貰ってくれないか?」
「別に良いけど、作りすぎったってどれくらいなの?」
その数が気になり尋ねると八神君は
「いや、他かだが17人前なのだが…」
「作りすぎでしょ!!!」
思わずそう言うと八神君は
「いや言われるまで全然気が付かなかったんだよ。いや駄目だな集中すると周りが見えなくなるから。まぁとりあえず受け取ってくれ」
からからと笑う八神君は持っていた紙袋からプラスチックのパックを取り出し、私の前に置く
「うわ…美味しそう」
私と八神君の会話を黙って聞いていた愛子が思わず呟く…私も同意見だ…こんがりと焼かれたパンとそれに挟まれたトマトとチーズ…更にローストビーフだろうか?程よく赤みが残った肉が挟まれたそのサンドイッチは見た目からして美味しそうだった
「良かったら君もどうだ?」
「ええ!?良いの?」
愛子が嬉しそうに言うと八神君はもう1つパックを取り出し
「ほら」
「うわあっ!ありがとう八神君」
受け取りながら嬉しそうに言う愛子に八神君は不思議そうな顔をして
「君は私を知ってるのかね?」
「勿論、高町さんとハラオウンさんの話題といえば君の事だからね。あ、自己紹介が遅れたね僕は工藤愛子よろしく」」
そう言われた八神君は肩を竦め
「よろしく、愛子。私のことは気軽に龍也とでも呼んでくれ」
握手しながら愛子は少しばかり頬を紅く染め
「えっと…なんで名前呼び?普通苗字じゃない?」
「私はあまり苗字で呼ぶのは慣れてないんだ、だから名前で呼ぶんだが嫌か?」
「えっと…嫌じゃないかな?」
首を傾げながら言う愛子…私と似たりアクションだ。まぁ無理もないが…
「ではな、私はこのまま職員室に行くのでね。失礼するよ」
ひらひらと手を振りながら歩いて行く八神君を見ながら愛子が
「なんか…同い年って感じじゃないよね」
「うん、私もそれは感じたわ」
八神君の持つ雰囲気のせいかどうしても同じ年には思えなかった。なんというか年上のお兄さんと話をしているような気がするのだ
「不思議だよね…同い年のはずなのに」
「ええ、本当に不思議よね」
予鈴がなるまでの間私と愛子はしきりに首を傾げていた…
「さてとただいま」
西村先生に事情を説明し、サンドイッチを受け取ってもらい戻って来ると
「おお、戻ったのか?龍也」
女子の制服に身を包んだ秀吉に声を掛けられる…
「…何か悩みが有るなら相談に乗るぞ?」
「ワシが悩んでるからこんな格好をしとるのではないぞ!?これは作戦なんじゃ」
そうは言うがきっと秀吉には悩みがあるんだろう…今度時間があったらゆっくりと話し合おう
「何か納得は出来んが、まぁとりあえず戦争の準備をしてくれ」
開戦まであと20分を切っていた…
「そうだな、ではこれを片付けるか」
自分達の昼食のサンドイッチを卓袱台に置いて座ると雄二が演説を始める
「さて、皆聞いてくれ。この教室を見て気付いた事はないか?」
昨日と違う点…それはボロボロになった卓袱台だ
「これはBクラスやつらがやったんだ。神が直してくれたこの机を!やつらは壊しやがったんだ!皆は許せるか?」
『『『許せるわけがない!!!』』』
声を揃えるFクラスメンバーに雄二が
「これは正当なる復讐だ!神の御心を踏みにじったBクラスを許すな!!!」
『『『根本を殺せ!根本を殺せ!!』』』
異様に士気が高まっているが、何処か納得できないものがあった…
「よっしゃあ!!行くぞ!!Bクラスを潰せ!!!」
『『『根本を殺せッ!!根本を殺せッ!!!』』』
根本を殺せを合言葉に戦争が始まった…
「左側出入り口、押し戻されています!!」
「古典の戦力が足りない!!援軍を!!」
味方の報告を聞きながら作戦を練る…古典の点が高いのは龍也、はやてさん、セッテさん、姫路さんだ…だが龍也たちは牽制として後方に居る、近くに居るのは今回の作戦の要の姫路さんだ
「姫路さん、左側に援護を!」
姫路さんは出来れば温存したいが仕方ない。僕がそう言うと姫路さんは
「あ、その、その…」
姫路さんは戦線に加わらずオロオロしている。くそ…仕方ない。
「だああッ!!」
気合と共に人ごみに突っ込み、立会いをしている竹中の先生の耳元で
「……ヅラ、ずれていますよ?」
「!!!!」
そう竹中先生はヅラなのだ、これは僕しか知らない秘密だ。それを告げられた竹中先生は
「少々席を外します!!」
頭を押さえ走り去っていく、今だ
「はやてさん、少しだけ左側に入って!消耗した人は補給へ!」
「了解や~」
僕の言葉に頷きはやてさんが戦場に入る。すると
「くそ!八神はやてだ下がれ!!」
慌てて進軍していたBクラスが下がる。はやてさんと戦えば問答無用で補習室行き、この判断は正しい…今の内に
「姫路さん、何処か調子悪いの?」
様子のおかしい姫路さんに声を掛けると
「そ、そのなんでもないです!!」
慌てて首を振るがどう見ても何かあるのが判る
「そうは見えないよ。何かあったなら話してくれないかな?それに合わせて作戦も変わるだろうし」
仕方ないが龍也に姫路さんの代わりをして貰う必要性があるかもしれない。
「ほ、本当に何もないんです!!」
泣きそうな姫路さん…何か弱みでも握られてるのか?Bクラスの方を見て僕は気付いた。にやにやと窓際で笑う卑怯者…その手に握られた一枚の封筒…それは間違いなく3日前の放課後に姫路さんが隠した封筒だった…龍也の家でご馳走になった夕食のせいで忘れていたが…間違いないあの封筒だ…
「なるほど…そういう事か…」
僕は全てを理解した…根本がFクラスを攻撃した目的はあれを手にする為。あれがあれば姫路さんは無力化できる…でも…でも…それは決して行ってはいけない事…
「姫路さん、具合が悪そうだから戦線に加わらないで下がって。試召戦争はこれで終わりじゃないし、はやてさん達も居る、ここは無理しないで下がって良いよ」
「で、でも」
食い下がる姫路さんに
「大丈夫、僕が何とかするから。それじゃあ」
少し強めに言ってその場を離れる…
「どうした明久?怖い顔をしてるぞ?」
僕に気付いた龍也が近寄って来て尋ねる僕は
「龍也、君は言ってたよね?人の嫌がる事をするやつは嫌いだって?」
「ああ、そうだ、何かあったのか?」
僕もそう思う、人の気持ちを踏みにじるあの根本ってやつが心底許せない
「とても面白い事をしてくれた奴が居るんだ。姫路さんの想いを踏みにじる事をした奴が」
「なるほど、それはとても面白いな…」
龍也の目に怒りの色が浮かぶ、人のために怒れる…それが龍也だ
「そいつをブチ殺したいんだ。協力してくれる?」
「当たり前だ。徹底的にお話してやろう」
僕と龍也は2人でFクラスへ戻った…最低野郎を懲らしめる為に
第14問に続く
根本死?へのカウントダウンです。次回もどうかお楽しみに!