それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
応用問題問7
優月と待ち合わせした駅前について僕は苦笑した。周囲に人の姿は疎らで出勤するらしいスーツ姿のサラリーマンの姿しかない
「早く来すぎたかなあ」
こういう時は早く来るものと聞いていたので、少し早めに来たが。20分は流石に早すぎたらしい、手にしているお弁当が入ったバスケットをベンチの上に置いて。自身もその隣に腰掛ける
(多分喜んでくれるよね)
色々とお弁当の本を見て選んでみた。こういう時は絶対普通のお弁当よりもパンの方が良いらしいので、少し早起きして24時間営業のスーパーへと走り。パンとか足りない材料を買ってきた、少し眠い気もするけどこれくらいなら全然大丈夫。
(徹夜でゲームをやってた事と比べればなんとも無いよね)
姉さんが来るまでは徹夜でゲームとかしていたけど、今はちゃんと規則正しい生活をしている。この眠気は精々平日のお弁当作りと一緒くらいなものだ。よくここまで料理とか、規則正しい生活をするようになったなあと苦笑しながら空を見上げる
「んー良い天気だねえ」
雲は少し見えるけど、十分に良い天気だ。季節は秋に向かっているから暑くも無く、出かけるには丁度いい時期だ……そんな事を考えながらのんびりと優月を待っていると
「明久。お待たせ」
後ろのほうから声がして振り返る。そこには白いワンピースのような服に帽子姿の優月がいた。あまり見たことが無い服だけど、柔らかい表情を浮かべている優月にはとてもよく似合っている。そして気付く、優月の姿に魅了されている自分に……いやだってほら?白いワンピース姿なんか殆ど見たことなかったし、それに余りにそれが似合っていたから見惚れてしまっても無理はないはず
「どうかした?」
僕が何も言わないことを不思議に思ったのか。顔を覗き込むように尋ねてくる優月に
「あ、ううん!なんでもないよ!」
ばっと飛びのき距離を取ると優月はくすくすと笑いながら……もしかすると僕が何を考えていたのか気付かれたのかもしれないと思っていると
「変な明久」
その笑い方なんとなく気恥ずかしくなり、その空気を誤魔化すようにバスケットを抱えてから
「そろそろ電車が来るから行こうか!乗る場所はあっちだよね!!」
気恥ずかしさで少しだけ大きな声になってしまった。優月はまたくすくすと笑いながら僕を見て
「うん。そうだね、あっちのほうだよ」
とりあえず、あの気恥ずかしい感じはなくなったことに安堵し、僕は優月と一緒に駅の中にと向かったのだった……駅に向かう明久と優月を見つめる視線。当然といえば当然なのだが美波達だ
「じゃあ追いかけますか」
そしてその2人を先導するのは雅だ。柔らかい表情こそ浮かべている物のその目付きはとても鋭い光を放っている
「高城先輩は良い考えがあると言っていましたが、何をするつもりなのですか?」
「簡単ですよ。如月ハイランドは高城グループ傘下。多少の無理は通りますとも」
ふふふと黒い顔で笑う雅に美波と瑞希は小さい声で「頼る人間間違えた?」と呟いていたが、当然ながら時既に遅しである。そんな感じで若干後悔し始めている美波と瑞希を後ろに雅は
「ふふふ……逢引など許しませんとも、絶対に妨害させていただきます」
黒いオーラを撒き散らしている雅を見て、もうどうとでもなれと諦めの境地になった。美波と瑞希は雅の後ろをついて、3人も電車へと乗り込んだのだった……
如月ハイランドは弁当の持込が可能な数少ない遊園地だ。普通なら持込を禁止して遊園地内で買って貰って利益にするのだが、ここは持ち込みOKだ。明久は
「じゃあこれお願いします」
係員に弁当の入ったバスケットを渡し変わりに預かり番号札を受け取っている。こういうサービスが多いのも如月ハイランドは人気の理由だと私は思う
「最初はどこに行こうか?」
「そうだね……色々あるから迷うよね」
遊園地だけあっていろいろと施設がある。最初はどれに行こうか?と考えながら明久と並んで辺りを見る。近くにあるのはコーヒーカップとゴーカート
(うーん……なんか違う)
コーヒーカップは2人乗りでしかも顔を向かい合って座る。気恥ずかしいので無し。ゴーカートは何か違う気がするので当然無し
「明久は何か行きたいのは無いの?」
私では考えがまとまらず、後ろのほうで私と一緒にアトラクションMAPを見ている明久にそう尋ねるが
「んー優月が行きたいので良いよ?」
にこりと笑う明久。どうも自分の意見を出す機はなさそうだ、これは間違いなく私を気遣ってくれるのだろう。案内板を前にどうするかと考える。もしもお化け屋敷とかに行くならそれは後半が良いし、最初からジェットコースターと言うのもおかしい
(あ、これなんて良いかも?)
私の目に止まったのは文月アイランドの名物とも言える。3Dアトラクション、文月学園と提携しているから召喚獣のプログラムを流用しているため、他の遊園地とは比べらない完成度を誇ると言われているあれだ
「明久。これなんてどうかな?」
「3Dアトラクションの射撃ゲーム?良いね。行って見ようか」
明久の賛同も得れたのでのんびりと話をしながら、アトラクションへと向かう
「明久は卒業後の進路はもう考えたの?」
「まだ1年もあるからね、そう言うのは考えてないかなあ?進級できるかも不安なのに」
そう笑う明久だが、私は大丈夫だと思っている。最近の明久はテストの赤店も少なくなり平均点までは言わないが、点数はいい感じになっている。この感じなら問題なく進級出来る筈だ
「そう言う優月は?何か考えてるの?」
そう尋ねられた私は少し考えてから
「私は勿論演劇の道に進むよ。好きな事だしね」
「そっか。ちゃんと自分の進路を考えてるんだね、僕も何か考えないといけないのかなあ?」
「焦って考えてもろくな事は無いと思うよ?ゆっくりと考えれば良いんじゃないかな?」
明久と進路の話をしながら歩いていると文月ハイランドの従業員の制服を来た女性がチラシを配りながら
「新アトラクション。「ホラーライド」本日より運転開始です。コースターに乗り射撃でお化けを打ち倒せ!皆様どうぞ体験してみてください。ささ、貴方達もどうぞ」
そう笑って差し出されたチラシを受け取り。書いてあるイラストを見る、デフォルメされたお化けとかのイラストが「僕たちが待ってるよ♪」の噴出しの下で踊っている
「へー面白そうだね。行って見ようか?」
どの道そっちのほうに行く予定だったし、このホラーライドとやらで遊んでみようと思い。2人で歩き出したのだが
(今の声何処かで聞いた気が?)
あの従業員の声がどうしても何処かで聞いた気がして、私は首をかしげたのだった。どこかと言うより最近とても近くで聞いた気がするんだけど、あれ誰の声だったかなあ?
「どうかした?」
私のその様子が気になったのか、そう尋ねてくる明久になんでもないよと返事を返し、アトラクションのほうへと歩き出したのだった
「ふふふふ……少しだけひやりとしましたね」
帽子を脱いで髪を振りながら笑うのは小暮だ。雅のためと言うことでこうして変装をしてまで文月ハイランドに来ていたのだ。
「やれやれ。もっと早く行動すれば良いものを」
投薬とか早いのにと呟いた小暮は大きく伸びをしながら
「さてと後は雅達次第。スタッフルームに引っ込むとしますか」
自分の仕事はこれで終わりと呟いた小暮はそのままスタッフルームのほうへと歩き出したのだった
3Dアトラクションの新作「ホラーライド」の所に行くと、見覚えのあるポニーテール。柔らかな桃色の髪。そして艶やかなな黒髪を見つけて
「ねぇ?あれって美波達じゃないかな?」
後姿からでも判るが、あれは間違いなく美波達だと思い。優月に尋ねると優月は舌打ちをしながら
「やられた。あの従業員の声を思い出したよ。小暮だ」
ぼそぼそと何かを呟いているが、小さい声なので良く聞こえない。変わりに判るのは黒いオーラの様な物が見えるということだけだ
(魔王オーラが良く見えるようになったね。最近)
龍也いわく魔王になると自然発生するオーラらしい。色々とおかしいだろ?と思うが、このオーラがでていると素早くなったり、力強くなったりする。これはもしかすると未知のエネルギーなのかもしれない。僕含め、雄二やムッツリー二もそんな事を言っているから間違いない筈だ
「おや。アキ君。奇遇ですね」
奇遇と言って良い物なのだろうか?もしかすると優月と出掛けることがばれて追いかけてきたのでは?と思うが、それを口にすると不味い気がして
「そうだね。みーちゃん、それに美波と瑞希と一緒なんて珍しいね」
その事を指摘せずに世間話に切り替えた。そんな僕をへたれと言うのなら言うが良い。誰だって命は惜しい、どう考えたって危険と判っているのなら、それを回避するのが当然と言うものだろう
「ええ。偶然会いましてね?私もこのアトラクションのテストを頼まれていたのですが、私1人よりかは良いとおもいまして。こうして美波さんと瑞希さんをお誘いしたわけです」
「……白々しい……」
「なにか仰りましたか?優月さん?」
「別に!」
うん。間違いないね。この先の僕の言葉は慎重に考えないと大変なことになる。この馬鹿な頭で名案が思いつくとは思えないけれども、必死に考えて最善の選択をしないと本当に殺されかねない。
「年間のフリーパスを貰ったんだって?アキ」
「うん。雄二にね?今度美波とかも誘おうと思ってたよ?」
こういう時は動揺しない、嘘をつかないことが何よりも自身の生存率を上げる。正直にそう言うと瑞希が
「本当ですか?嘘じゃないですよね?」
「あはは。そんなことで嘘はつかないよ。折角の年間パスだから使わないと勿体無いじゃないか」
年間パスなのだから何回でも来れる。そんなのを数回しか使わないのは勿体無いと言うものだろう?今日みたいに僕と優月だけではなく、皆を誘ってくるという選択肢も在るんだしと思いながら言うと
「じゃあ今度の休みはウチと」
「その次は私です」
何と言うことでしょう。来週と再来週の予定がもう決まってしまった……とは言え断ることも出来ないので
「うん。判った。約束するよ」
イエーイとハイタッチをする美波と瑞希。だけど僕は頭の中で来週からの予定を必死で考えていた
(えーと、じゃあ日用品の買出しを学校の帰りに行って、土曜日をあけておかないと)
日曜は家に姉さんが居るので、出掛けることは出来ないと美波達には言ってある。だから予定は大体土曜日に入る。だけどもうこうして来週と再来週の予定が入ってしまったから
(んーと、スーパーの特売日に合わせて買い物を済ませて……勉強は夜にやって……何とかなるかな)
それに僕と出かける約束なんかであんなに喜んでくれている。美波と瑞希を見ると頑張ろうと思えるから不思議だ。さてといつまでもアトラクションの前で話してないで中に入ろうと思い振り返り。振り返るんじゃなかったと後悔するのだった
「私を出し抜こうなんて100年早いですよ」
「小暮を召喚してるなんて思わなかったですよ」
「はは。彼女は私の大親友ですからね、頼めば直ぐ来てくれますよ」
「そのせいで明久が投薬とかされかけてるのはどう思っているんですか?自分の事しか考えないのはどうかと思いますよ?」
「しかたありません。小暮は独特の考え方をしているので」
「それで明久が洗脳されるとか、薬漬けにされるとか。良いと思っているんですか?最悪ですね。自己中は」
「言ってくれますね、そこまで言うのなら覚悟は出来ているのですか?」
「覚悟なら当に出来ている。明久を手に入れると決めたその時から」
なんだろう……あの一触即発って空気。あのままだと本当に喧嘩になりそうで凄く怖い、思わず空を見上げて気付く回りでひそひそ話をされているのを……僕は何とかしてみーちゃんと優月を止めたいと思うのだが、目視で確認できるほどの空気が歪んでいる。恐ろしくてとてもじゃないが近づくことが出来ない
「もうあれほっておいて良いじゃない?アキ。ウチと瑞希と「「抜け駆け禁止ッ!!!」」あいた……ふふふふ。上等じゃないの!覚悟しなさい!」
みーちゃんと優月が投げたペットボトルが美波の命中し、美波もオーラを纏いながらみーちゃんと優月のところへ向かう。
「えと、えと……どうしよう。どうすればいい?どうすればいいの!?」
どうやってこの状況を収めればいいのかわからず混乱していると、1人だけ戦いに参加しなかった瑞希が
「終わるまで待ってましょうか?近くにベンチにもありますし」
僕の服の裾を引いて近くのベンチを指差す。ここで離れるのも危険だけど、この近くに居て巻き込まれる可能性もある。ここは瑞希の言う通りはなれるほうが良いのかもしれないが……
「そ。そうするしかないのかなあ?」
「このままだと危ないですよ。離れましょうよ」
うーん。離れてたら離れたらで、また喧嘩の火種になるかもしれないけど、確かに瑞希の言う通りかもしれない。あの状態に入ると、下手に止めに入れば飛び火するし……それに簡単にあの争いは止まらない。僕は溜息を吐きながら瑞希と一緒に少し離れたベンチに腰掛けて、美波達の争いが終わるのを待つのだった……
「……計算通り」
「?何か言った?」
「い、いいえ!なんでもないですよ!明久君」
一瞬物凄く黒い顔をしていたような気がするんだけど、振り返ればいつも通りの笑顔を浮かべている瑞希。僕は気のせいかなあと呟き。ダークマターを発生させている美波達のほうを見て深く溜息を吐くのだった……今日は楽しく過ごせるかなぁ?って思ってたんだけどやっぱりこれか……こうなるなら最初から美波達にも声をかけておけばよかったなあ……僕はそんな事を考えながら戦いが終わるのを待つのだった
応用問題問8に続く
えー瑞希1人がち?ッぽい感じですね。瑞希は黒いヒロインだと思うので、違うとかのイロンは認めないのであしからず
次の話で遊園地編は終わりですね。次回もカオスになる予定ですので、どうかお楽しみに!それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします