バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話は「雄二&翔子」の日常「愛子&陽向で康太」の悲劇で行きたいと思います。少々短めですが今回の更新もどうかよろしくお願いします


応用問題問5

 

 

応用問題問5

 

雄二&翔子

 

AM5時45分 自宅にて

 

「殺気!?」

 

爆睡していた筈なのに俺は一瞬で覚醒し両腕で顔を隠して布団から飛び出した。すると

 

バフッ!

 

布団の上に落ちる何か、いやあれは何かじゃない、寝ぼけていても見間違えることはない。美しくそして長い黒髪

 

「お前何してる?翔子」

 

布団から身体を起こした翔子は馴れた手つきで髪を整え、俺を見て少しだけ頬を赤らめて

 

「……夜襲が良いとはやてが言っていたので襲撃しに来た」

 

おい。龍也お前もう少し自分の妹をしっかり見ておけ、とんでもないことを翔子に教えてくれるな。どんどん翔子の行動がエスカレートするだろうが、とは言え今ここに龍也達がいないので文句など言えないのだが……

 

「……ので襲撃に来た」

 

大事なことなので2回言ったと言いたげにドヤ顔をしている翔子に

 

「来るな!」

 

と言うかこいつはどこから来たんだ?ふと風を感じて視線を逸らすと

 

(これかあ!?)

 

窓に円形の穴が開いていた。それはドラマとかで見る泥棒に入られた家の窓と全く同じだった

 

「……夜襲は失敗。なら実力行使」

 

翔子が手の骨を鳴らして気合を入れているを見て、俺は寝巻きのまま腕をクロスして

 

「トラン○ムッ!!!」

 

パリーンッ!!!

 

窓ガラスを粉砕して家の屋根の上へと飛び出し、常備してある予備のスニーカーを履き屋根の上を全力で走り出したのだった

 

「……ニガサナイ。永遠に」

 

風の乗って聞こえてくる翔子の抑揚のない声が死ぬほど恐ろしかった……

 

 

AM 6時15分 公園にて

 

(くそ、翔子の奴はどこから来る)

 

公園の植え込みの中に隠れながら翔子の姿を探すのだがどこにも姿はない。諦めるわけが無いので何処かで俺が油断するのを待っているはずだ。それまでは息を殺して逃げるタイミングを考えろ。それだけを考えて周囲を見てまた正面を見ると

 

「えい」

 

いきなり目潰しされた。余りの激痛に思わず植え込みから飛び出し

 

「ふぐおおおおッ!!!」

 

両手で目を押さえてごろごろ転がってしまう。誰だ!?こんなことをしたのは

 

「あはははは!!おにいさん面白い♪」

 

この声はリヒトか!?悪戯ってレベルじゃないぞこのダメージは

 

「何でいきなり目潰しをした」

 

「面白そうだったから」

 

龍也。お前は本当に妹に対する教育を考えたほうがいいぞ、面白そうだから目潰しって言う思考は危険すぎる

 

「だけど目潰ししたらおねーさんがお菓子くれるって言うから探してた」

 

おねーさん?……俺に目潰ししたらお菓子?ここまで考えた所で理解した。リヒトに目潰しをするように言ったのは翔子だ

 

(駄目だ!視力がまだ回復してねえ!)

 

どこだ、どこからくる!周囲が見えないのでどこから来るか判らない。俺が慌てているとリヒトが

 

「本日の天気予報~♪」

 

何でこのタイミングでそんな事を言い出すんだ!?何を考えているか判らず思わず立ち止まると

 

「所により、上空より魔王がふるでしょー♪」

 

上空から魔王?若干回復してきた視力で上を見ると

 

「ぬおっ!?」

 

ずしっと背中に重みが来る。それと同時に首に白魚のような指が回され、ぐっと力が込められる

 

「……リヒト。ありがとう、あとでお菓子を買ってあげる」

 

「わーい♪」

 

嬉しそうに笑うリヒトの声を聞きながら、俺は翔子に締め落とされ意識を失ったのだった……

 

 

 

AM 7時15分 キッチンにて

 

翔子の奴段々攻撃的になってきてるな。元々攻撃的だったが、ここ最近は更に攻撃的になっている。それは言うまでもなく龍也の妹達のせいだろう。俺は締め落とされ自宅へと強制連行されたあと、キッチンの机に座らせている。翔子はと言うと

 

「……もうちょっとで出来る」

 

「おう」

 

楽しそうに料理をしている、どうも翔子の目的では夜襲はおまけで俺に朝食が作ることが目的だったらしい。なら最初から攻撃をするなといいたい

 

「……出来た」

 

机の上に置かれたのは野菜たっぷりの豚汁と鯵の開き。それと炊き立ての白米と漬物。完璧な和食だ

 

「……上手くできた」

 

にこっと笑う翔子を見ながら両手を合わせ

 

「「頂きます」」

 

箸を取り味噌汁を啜る。むっ、上手い……これはちゃんと出汁から取っているな。良い味をしている

 

「で?なんで朝から来た」

 

「……お義母が出かけるからって」

 

呼び方が違うことは突っ込まないぞ。言うと泥沼になるからな

 

「それで今日はどうする気だ。これで帰る気はないんだろう?」

 

俺がそう尋ねると翔子は嬉しそうに笑い

 

「……雄二がいいなら。買い物に行きたい。こことここ」

 

雑誌を机の上に乗せて指差す翔子。俺は鯵の身を解しご飯の上に乗せながら

 

「どうせ今日は暇だし付き合ってやる」

 

顔を見て言うのが恥ずかしいとか、そんな理由で夜襲をされるのなら最初から翔子のわがままの1つくらい聞いてやったほうが良い

 

「飯食ったら行くぞ」

 

「……うん!」

 

嬉しそうに笑う翔子を見ながら俺は朝食を進めたのだった。しかしこいついつの間に俺の好みをここまで再現できるようになったんだ?味噌汁の具に卵が入っているのが俺の好みだし、魚の干物は鯖よりも鯵だ。自分でも知らないうちに翔子が俺の好みを把握していることに少しだけ恐ろしいとおもうのだった……

 

 

 

 

AM 11時15分

 

翔子と一緒に買い物に来たのはいいのだが……俺は溜息を吐きながら隣を見て

 

「何でお前もいる?」

 

俺と同じようにレディース服コーナーの前で座っている明久にそう尋ねると

 

「え?荷物持ちだよ?何かおかしい?」

 

さも当然と言う感じで大量の紙袋を抱えている明久がそう言う、だけどその周りにある紙袋がとんでもないことになっている

 

「お前誰の荷物を持っているんだ?」

 

もしかして玲さんか?外国暮らしをしてたから服がないのか?と思っていると明久は

 

「えーとこっちが瑞希で、こっちが美波だよ」

 

2人分かよ……こいつ本当に何してるんだよ。俺は翔子の荷物を持ってるけど結構しんどいぞ

 

「暇だったからね。それに2人が喜んでくれてるからいいかなって」

 

こいつ本当に魔王に尽くしているな。考え方が大分変わってきてるな。いや、本人が幸せそうだから俺は別にいいんだが。さすがに俺はそこまでの境地には行きたくないぞ

 

「明久君。お待たせしました」

 

「良いのがあって迷ちゃって」

 

紙袋を持って店から出てきた島田と姫路は俺を見て

 

「坂本も荷物持ち?」

 

「そんなところだ」

 

一緒に買い物に来ているのに翔子に荷物を持たせるのも気が引けるしな

 

「持とうか?」

 

「もういいわよ、それより荷物を持ってくれてありがとう。アキ」

 

にこりと笑う島田に良いよと笑う明久は大量の荷物を持って、島田と姫路と一緒に歩いていった。なんか最近良く見るよな、明久と島田とか秀吉とか、あと高城先輩とか。明久の人生初かもしれないモテ期は魔王が随分と関係しているようだと苦笑していると

 

「……待っててありがとう。買い物終わった」

 

翔子が2つの紙袋を持って店から出てくる。あの二人と比べると少し少ない

 

(まぁ翔子はお嬢様だしな)

 

両親や親戚が買ってくれる服が沢山あるだろうから、そんなに買う必要が無いんだろうと納得し

 

「ほれ、持ってやる」

 

「……ありがとう」

 

おずおずと差し出された紙袋受け取り。時間もそろそろ丁度良い

 

「飯食いに行くか?何が良い?」

 

「……何でも良い」

 

何でもって言っても高校生だから食えるものは限られてくるんだけどな。近くだとハンバーガーかファミレスか

 

「ハンバーガーで良いか?」

 

「……雄二がそれでいいなら」

 

じゃあ決まりだな。俺は翔子の荷物を持って近くのバーガーショップへと足を向けたのだった

 

 

 

 

PM 17時15分 自室にて

 

「あー疲れたぁ」

 

翔子の買い物に付き合い、ぶらぶらとウィンドウショッピングをしてから帰って来たのだが

 

「窓どうするかなあ」

 

粉砕してしまった窓ガラス。少々寒い

 

「別の部屋で寝るか」

 

空き部屋はあるし、そっちで寝てもいいなあ、そんな事を考えながら粉砕したガラスを片付け

 

(まぁ翔子に振り回されるのも悪くないか)

 

今まで遠ざけていた分一緒に居る時間はそれなりに楽しいと思える

 

「もう少し御淑やかならいいんだけどな」

 

容姿は良いし、料理も裁縫も上手だ。あの嫉妬深い性格さえ何とかしてくれれば

 

「おいおい、落ち着け俺。毒されてるぞ」

 

明久の考え方に毒されているぞ俺。いやでも翔子は確かに可愛いし

 

「だーっ!違うだろーッ!!!!」

 

あの3年との試召喚戦争のときから妙に翔子を意識してしまっている

 

「ぬああああ……」

 

1回自覚してしまうと駄目だ。俺は頭を抱えて何とか翔子に対する考えを改めようと思い必死に頭を振るのだった

 

「ふふふ、雄二の奴意識しちゃって」

 

「……お義母さん、煮物できた」

 

「あら。翔子ちゃんもうできたの?味見して良い?」

 

「……うん」

 

雄二が葛藤しているのを楽しんでいる雄二の母は翔子と一緒に夕食の準備をしていた、

 

「……それでお義母さん。お父さんとお母さんと何の話をしていたの?」

 

今日雄二の母がいなかったのは、実は翔子の両親と話しをするためだったのだ

 

「ふふふ。心配ないわよ、ちゃんと話をつけてきたから。雄二は真面目に勉強すれば物凄く賢いから、大丈夫よ」

 

「……じゃあ高校を卒業したら結婚できる?」

 

「んー大学出てからならOKだって」

 

「……判った。大学を頑張って雄二と一緒に行く」

 

「頑張ってね。翔子ちゃん」

 

坂本雄二。知らない所では両親同士の話が進み、高校3年へ進学と同時に翔子と婚約を結ぶことになる。雄二の包囲網は既に完成していたりするのだった

 

 

 

 

土屋康太の惨劇

 

最近の俺の悩みは1つだけだった。勉強はする気も無いので成績は気にしないし、友人関係も良好だ。俺の悩みは1つだけ学校でも家でも

 

(自由がない)

 

陽向だけでも相当俺の動きを拘束していた。だが何とかその目を掻い潜り。趣味と実益を兼ねていたムッツリ商会だが

 

「やほー?ムッツリー二君。一緒に帰ろうか」

 

陽向と何かの話し合いをしたのか、工藤愛子が絶妙なタイミングで妨害に入る。だから最近は写真も増えることがない。雄二や明久の写真を買う人間がいるから何とか資金は増えているが、男子の客は減る一方だ

 

「……判った」

 

一緒に帰ろうという愛子にうなずくと愛子は不思議そうな顔をしながら

 

「あれれ?今日は逃げないの?」

 

逃げても捕まるだけと判っているのでおとなしく投降した方が安全だ。それに

 

「……一緒に帰るんだろう?なら買い物を手伝え。どうせまた今日も夕食を食べていくんだろう?」

 

ここ数日愛子は俺の家で夕食を食べている。颯兄や陽兄にも既に愛子は陽向によって紹介されている

 

(自分と同じ目的のために一緒にいると)

 

その時の颯兄と陽兄の哀れみの視線を俺は多分一生忘れないと思う。愛子は呆然としていたが

 

「OK♪夕食のお買い物だね!手伝うよ」

 

嬉しそうに笑う愛子の隣を歩きながら

 

「……何が食べたい?」

 

「んーそうだなー。ムッツリー二君の得意な料理は?」

 

そう言われると困る。両親が共働きなので俺は昔から料理をしていた、陽向があれを食べたい。これを食べたいというのでその都度料理のバリエーションは増えた。その中で俺が得意なもの

 

「……中華か」

 

「チャイナドレス目的じゃないの」

 

即座にそう言う愛子に首を何度も振る。俺が中華が得なのはただ単純に

 

「……陽向が好きなんだ」

 

身体を動かすのが好きな陽向はそう言うのが好きだ。野菜と肉をバランスよく食べれるから

 

「ふーん。じゃあ僕も中華を食べてみたいな」

 

今日の特売はピーマンと牛肉だった。となると作るメニューはおのずと決まってくる

 

「……回鍋肉と青椒肉絲でいいか?」

 

どちらも素早く作れて量が出来る。これなら颯兄や陽兄も満足してくれることだろう

 

「いいよ♪じゃあ早速買って帰ろうか?お礼に勉強を教えてあげるよ」

 

そう笑う愛子に俺は首を振る。家に帰った後はゲームとかTVをして過ごしたいから勉強なんてしたくない

 

「……勉強は嫌いだからいい」

 

手を振りながら言うと愛子は駄目だよと呟き、俺の鼻を少し押して

 

「そんな子供みたいなことを言わないの!ほら行くよ!」

 

俺の手を引いて歩き出す愛子。夕日でキラキラと輝く髪は悔しいことにとても美しく見えた

 

(……なんだかんだで俺は今の状況が気に入っているのかもしれない)

 

色々と怖い目も合うし、鼻血のせいで死に掛けることもあるが、陽向に振り回され、愛子におもちゃにされるのも

 

(そんなに悪くないのかもしれない)

 

明久が4人も魔王がいて、それなのにニコニコと笑って過ごせるのはきっと楽しいからだ。そして俺もこんな毎日を楽しいと思っている。こんな毎日が続けばいいと心の何処かで思っている。知らずの内に俺はぼそりと

 

「……悪くない」

 

「え?何か言った?」

 

俺の腕を引いている愛子が立ち止まりそう尋ねてくる。俺は別にと返事を返し

 

「……急ごう。そろそろ陽向達が帰ってくる時間になってしまう」

 

作る量を考えると早めに材料をそろえて皆が帰ってくる前に下拵えくらいは終わらせておきたい

 

「大丈夫だよ♪僕も手伝うからさ」

 

愛子がどれくらい料理が出来るかは判らないが、少しは力になるかもしれない

 

「……それは頼もしい。もしかするとデザートまで作れるかもな」

 

普段は俺の1人で料理をするからデザートまで手が回らないが、愛子が手伝ってくれるならデザートまで作れるかもしれないと思いそう呟くと

 

「デザート!いいね!急ごうよ!!」

 

嬉しそうに笑う更に走るスピードを上げる愛子に引きずられるように俺はスーパーまで走った

 

「ムッツリー二君。このお皿使っても良い?」

 

俺のスペアのエプロンを着て、完成した回鍋肉を更に分けている愛子に

 

「……構わない。零さないようにしてくれ」

 

愛子と並んで料理をしながら、やはりこんな毎日は悪くないと心の中で再度呟いたのだった……

 

なお、康太は知らないが。これすらも愛子と陽向の策略であり、日常の中に愛子が割り込み、そうあるのが当然と思わせる洗脳術であり。それを教えたのはセッテ。その教えを完璧に遂行し、少しずつ康太の日常をコントトールし始めていたのだった。リビングからその2人の様子を見ていた陽向は

 

「ふふふふ、全部私の計画通り。お兄ちゃんは絶対に逃がさないんだから」

 

全て計算通りと言う感じのあくどい笑みを浮かべており。康太の2人の兄は

 

「康太のやつ随分と癖のある女子に好かれたな。陽向含めて」

 

「父さんの遺伝じゃない?しかたねーじゃない?」

 

自分達が何を言っても無駄だと理解している2人は両手を合わせて、小さく康太に向かって「南無」と呟いたのだった……

 

 

応用問題問6へ続く

 

 




そろそろ応用問題のネタが尽きてきましたね。次回は本編中に機嫌を損ねた優月の機嫌を直すために明久が誘った遊園地の話にしようと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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