バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

120 / 158
どうも混沌の魔法使いです。今回でバカテスの話は一応完結になります。この後は番外的な話を色々とやっていこうと思います。
それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



第119問

 

第119問

 

3年生をあらかた戦死にしたところで聞こえてきた

 

『みー、いや高城雅さん!今はごめんなさい!!!僕はまだ皆と馬鹿をやりたいんです!!』

 

振ったわけではない、今は時間をくれと叫ぶ明久。その校内放送で聞こえた明久の言葉を聞いたはやては、対峙していた3年生の召喚獣を床に叩き付けてから

 

「あっははは!!予想通り過ぎ!最高!」

 

あっははははと楽しそうに笑っていた。周りに居た2年と3年も苦笑している、校内放送で振られた雅の事を考えているのかもしれない。とは言えあの曖昧な返事ではどうとでも受け取ることが出来るけどな……

 

「面白い決断ですね。龍也さんならどうしますか?」

 

進軍してくる3年生が居なくなったので、下がってきたティアナにそう尋ねられた私は少し考えてから

 

「保留にする」

 

今はネクロの襲撃がないからこうしてのんびりとしているが、もしネクロの進行が始まると考えれば自分のことなんて考えている時間はないし、それ以前に私には人を好きになるという気持ちが判らない、幾ら告白されてもその想いに応じれる答えが自分には無い

 

「予想通りですね。龍也さんの返答も」

 

ふふふと笑うティアナ。なんか心境を全部見透かされているようで面白くない。おかしい、私の考えは年下に読まれるほど単純なのだろうか?

 

「それよりも龍也様様子を見に行きましょうか?明久がどうなっているのか見物ですよ。さっき美波達が階段を駆け上がって行きましたからね」

 

その言葉に私は絶句した、曖昧な返事を聞いた美波達が何をしでかすか判らない。私は慌てて階段を駆け上がり屋上に向かった。そして

 

「手遅れだったか……」

 

完全に手遅れだった……ぐったりと屋上に横たわる明久。雄二は止めようとしたらしく、腹を押さえて悶絶していた。ボデイブローを喰らったらしい

 

「貴方達が手を離さないからですよ!」

 

「人のせいにするんですか!3年生なのに!」

 

「元は高城先輩が悪いんです!私達は無罪です!」

 

「とにかく貴女のせいですよ!」

 

明久を瀕死にさせた責任を擦り付け合っている美波達を見て。隣にいるはやてに手を差し出す

 

「ほい」

 

渡されたハリセン(何故はやてがハリセンを持っているかと言うのは突っ込んではいけない)を振りかぶり

 

「たわけ!!」

 

スパパパーンッ!!!!

 

私は4人の頭をハリセンで殴ったのだった、責任転嫁している暇があったら手当てしてやれよと言う意味を込めた一撃だった……

 

 

 

 

 

 

美波達を正座させた兄ちゃんは明久と雄二の手当てをしている。どうしてこうなったかを考えるというまでも無く、曖昧な返事をした明久を諦める事の出来なかった雅が何かをしたのだと判る

 

「全く、責任転嫁している暇があれば明久の手当てくらいしろ。雄二ゆっくり深呼吸をしろ、ゆっくりな」

 

兄ちゃんは雄二の背中を支えて身体を起こさせていた。雄二の顔は真っ青だった

 

「ぜーぜー鳩尾にスクリューは死ぬぞ……」

 

荒い呼吸を整えている雄二。スクリューブローで鳩尾を強打されたんか。それは痛いわなぁと思っていると

 

「あーあいたたた。死ぬかと思った」

 

明久が首を触りながら身体を起こす。首が極まっていたわりには回復が早い、明久の回復力も相当高まっているって事やねと思いながら

 

「大丈夫か?」

 

きょときょとと辺りを見て、私と視線の合った明久はほにゃらと笑いながら立ち上がり

 

「はやてさん?それにヴィータさん達も。うん、僕は大丈夫。いつもの事だからね」

 

いつもの事と言って笑える、明久はある意味大物かもしれない。そんな事を考えていると雅はぱんぱんっとスカートの砂を払い

 

「八神龍也君、貴方に言われた言葉はしっかりと胸に刻みます。以後こんな事がないように気をつけます、では試召戦争の後の事後処理があるので私はこれで」

 

そう言って雅は屋上を出て行こうとする、私はその背中に

 

「曖昧な返事はどう思った?」

 

普通ならあんな曖昧な返事は嫌だろうし、腹も立つだろう。そう思って尋ねると、雅は涼しい顔をして

 

「別にどうも。ただ今は駄目なら、もっと自分を磨くだけですよ」

 

そう笑って階段を下りていった。その背中を見ていたヴィータは

 

「なんか凄いな。諦めないって言うのがすぐ判ったぞ」

 

クールな態度の下では、今自分が振られたのは自分の魅力が劣っていると解釈したらしく。自分への怒りを感じた、しかしそれをおくびにも出さない。ああいうタイプは強い。絶対に諦めないからだ

 

「ですね。あの人はそう簡単に諦める人じゃないですね」

 

1回で駄目なら何回だって挑戦するタイプだ。私とかに良く似ている、正直好感の持てるタイプだ。私はそんな事を考えながら、パンパンっと手を叩き

 

「ほれ、はやく校庭に行かな、戦争の結果報告があるやろうから」

 

今回は学年対抗と言うことで結果発表は校庭で学園長から行われる。集合の放送が掛かっているから、何時までもこうしている時間はない

 

「そうだな。説教はまた後にするか」

 

まだ続くの!?と言う顔をしている美波達。甘いな、兄ちゃんの説教はむちゃくちゃ長いんや、そう簡単には終わらないので有名だ。そんな事を考えながら校庭に行くとFクラスの面々が明久に近寄り

 

『今は待っててください?何様のつもりだ!』

 

『美人で大企業のお嬢様を振るなんて何様だ!』

 

「ぎゃーっ!!!」

 

明久はFクラスの面々にボコボコに殴られている。嫉妬全開だ、普段なら美波達が止めてくれるが。曖昧な返事だったからか助ける気がなさそうだ。

 

「いやーあの返答には驚いたね」

 

「……うん。もっとしっかりした返事をすると思ってた」

 

「今はごめんなさいね。これは島田さん達が怒るのも無理はないわよね」

 

「やめて!肉体的にも精神的にも追い詰めないで!」

 

明久の悲鳴が聞こえて思わず噴出してしまう。だけどこのままでは何時まで経っても話が進まない、止めに入ろうとしたしゅんかん

 

「貴様ら!何をやっているか」

 

西村先生の雷が落ちて、福村達は逃げ出した。残ったのはあいたたたと呟いている明久だけだ、あの素早さはある意味尊敬やね

 

「鉄人のおかげで助かり……あいだあ!?」

 

「ははっ!明久。何鉄人に殴らでェ!?」

 

西村先生は明久と雄二に拳骨を落として去っていった。

 

「鉄人の野郎。明久だけならまだしも、俺まで殴っていきやがって」

 

「なんで殴られたのかなあ」

 

頭を摩っている雄二と明久に兄ちゃんが

 

「あのなぁ?フェンスを壊して屋上を走るなんて常識的に考えて危険だろうが?そんな事をしたら普通は停学だぞ?」

 

そう言われて不味いことをしたなあと言う顔をする。明久と雄二後のことを考えないなんて馬鹿その物

 

(馬鹿やったな。そう言えば)

 

馬鹿だから仕方ないかと思っていると学園長がマイクを手に

 

『学年対抗の試召戦争ご苦労様だったね。よく頑張ったと褒めておくよ』

 

いつもと同じ口調の学園長は私達を見て

 

『とりあえず、明日からまた勉強に励むように。あと試召戦争は暫くの間は禁止だよ、システムを組みなおさないといけないからね。それでは解散、寄り道をしないで真っ直ぐ帰るんだよ』

 

そう締めくくり。学年対抗の試召戦争は終わりを告げたのだった

 

「さてと帰ろうぜ」

 

F教室で荷物を纏めて雄二が言う。確かに今日は早く帰る様に言われている、だけど

 

「折角早く帰れるのに遊ばないって言うのは嫌やなぁ。と言うわけで兄ちゃん遊びに行こ♪」

 

「そうだな、少し遊んでから買えるか。雄二たちはどうする?」

 

兄ちゃんがそう尋ねながら振り返る、しかしそこには雄二達の姿は無く窓の外を見ると

 

「……帰ろう。雄二」

 

「っいだだだ!!足を引っ張るなアアアアア!!!げふ!ごがあ!?」

 

雄二は翔子に引きずられ、コンクリートで頭を打ち悶絶して

 

「ダバダバ……」

 

「帰ろうか。ムッツリー二君」

 

康太は愛子に抱きかかえられ。出血多量気味の鼻血を出していた、鼻血がグランドとコンクリートを真紅に染め上げているのがわかる。窓の外を見てた兄ちゃんとヴィータは

 

「うん。無理そうだな。兄貴」

 

「そのようだな」

 

あの状態では逃げることさえ難しいだろうなあと思いつつ、私は懐かしいというのを感じていた。ある意味六課で見る光景に似ているからだ、グリフィス君とかヴァイス君とかスカリエッティさんとかの末路で良く見る光景だ。なぜか懐かしいと思える、残っている明久は当然ながら美波達が声を掛けているが

 

「ゴメン、少し考えたいことがあるから」

 

そう言って出て行ってしまった。珍しいこともあるもんやな、明久は女子にはかなり優しいのにと思いながら

 

「そんなら美波達も家に来たらどうですか?この人数ですし、外で遊ぶより家でお茶などいかがですか?」

 

セッテにそう尋ねられた美波達は少し考える素振りを見せてから、行くと言って頷いた

 

「兄ちゃん。お菓子あったっけ?」

 

「ケーキ類とクッキーとかは用意している。紅茶は昨日茶葉を買ってきたから問題ない」

 

「決まり!んじゃ行こか~」

 

折角だから皆でお茶をしたほうが良い、私はそう思い。皆を連れて家へと帰ったのだった……

 

 

 

 

 

「そうですか。勝負に勝ったんですね」

 

「うん。とりあえずみーちゃんには今はごめんなさいって言った」

 

キッチンで夕食を作っているアキ君の言葉を聞いて、アキ君らしいと思った。アキ君は友達を大事にする、だから告白を受け入れることが出来なかったのだろう

 

「ではアキ君、姉さんが好きと言ったらどうしますか?」

 

「姉弟としての好きなら嬉しいよ。だけど異性的な好きは困るかなぁ」

 

そう笑いながら言うアキ君。やはりアキ君らしいと思い笑みを浮かべる

 

(いつかはアキ君が誰か1人の為に料理をするんですかね)

 

私もアキ君は好きだが、姉弟で恋愛が成立するとは思ってない。アキ君が誰か一人を選ぶまではと思ってこうしているが、いつかは弟離れをしないといけないとちゃんと判っている。だけどそれを出来るだけ伸ばそうとしてアキ君に近づく女性を威圧しているが、それも何時までも続かないだろう

 

「と言っても。それとこれは話が別ですけどね!!!」

 

「ねえさん!?ギブ!ギブううう!折れる!折れるうう!!!」

 

「姉さんは悲しいです、弟の腕をへし折るということが」

 

「やめて!悲しいと思うなら止めてええ!!」

 

ぎっぎっとアキ君の腕を締め上げながら、何時までこうしていられるのかと言うのを考えて

 

(まぁそう簡単には手放さないですけどね)

 

料理もしてくれて、洗濯、掃除もしてくれる。完璧なまでに主夫スキルを装備しているアキ君を手放すは正直惜しいし。この恋心もまだ整理出来ていない、この気持ちの整理がつくまでアキ君を手放すつもりは無い

 

(願わくば。この一時が長く続くように)

 

こうしてじゃれあえる日々が長く続けばいい、私はそう思いながら関節技を外して

 

「それではアキ君。食事にしましょうか?」

 

「うーいたたた。うん、直ぐ用意するよ」

 

そう笑ってまたキッチンに向かって行くアキ君の背中を見ながら、メールを打つ

 

『今回のお見合いは流れたようです。ですがまだ雅のアプローチは続きそうです』

 

これでよしっと。携帯をズボンのポケットに戻しているとアキ君が夕食を運んでくる

 

「今日はロールキャベツにしてみたよ。スープはコンソメね」

 

「ありがとうございます。早速食事にしましょう」

 

今はこうして2人で居れる時間を大切にしよう。いつかアキ君が私の傍を離れるその時までは……どうかこのままで居たいものですね……

 

 

 

 

 

試召戦争が終わった次の日。学校に行こうと家を出ると

 

「明久。迎えに来たよ」

 

「アキ。早く行くわよ」

 

「明久君。いっしょに学校に行きませんか」

 

逆方向のほうに住んでいるはずの優月と美波まで居ることに正直驚いた者の

 

「そうだね。皆で行こうか」

 

話しながら学校に行くのも楽しい。それに昨日の曖昧過ぎるみーちゃんへの対応も僕だから仕方ないで許してくれた、やっぱり美波達は優しいなあと思いながら歩き出そうとした瞬間

 

「アキ君よろしければ私といっしょに学校に行きませんか」

 

さも当然のようにこの場にいて、笑顔でそう言うみーちゃんがいた

 

「みーちゃん、何でここにいるの?」

 

みーちゃんの家はここからかなり離れている。それなのに何故ここにいるのか?そして明らかに不機嫌そうなオーラを纏った美波達に若干恐怖しながら尋ねると

 

「アキ君は今はまだと言いました。ならばその時が来るまでアキ君の傍にいるのがいいと判断したのです。幸い私はお父様の仕事の都合で学校を休みがちでした。出席日数は結構ギリギリなんです、ですから業と留年するのも良いかと思うんです」

 

笑顔でとんでもない子と言うみーちゃんに思わず

 

「駄目!駄目だから!卒業できるのに留年するなんて駄目だよ」

 

と言うかそんな事を僕に言って、僕にどうしろって言うの!?と内心激しく混乱しながら言うと

 

「心配しなくてもいいです。留年してもアキ君の傍に入れるのならそれもまた良しです」

 

駄目だ!みーちゃんの頑固さが悪い方向で出ている。大企業の一人娘が留年、一体何を考えているのだろう。とりあえず考え直させないと思っていると

 

「明久。早く行ったほうがいいよ。遅刻するから」

 

優月に右腕を掴まれる。ギリギリと腕が軋んでいるのが判る

 

「アキ早く行くわよ」

 

美波には左腕を掴まれる。今度は関節が極まっていてものすごく痛い

 

「明久君」

 

肩をガシッと掴まれる。その握力はそのまま僕の肩を握り潰せるほど強力だった。異様な空気が漂うが、起爆するには少し刺激が足りない。今のうちに説得を……

 

「やれやれ、暴力で解決。淑女としての嗜みが足りませんねぇ?」

 

そしてみーちゃんのこの一言でギリギリまで張り詰められた、空気が爆発し一気に朝の空気は消え、まるで戦場のような雰囲気が辺りに満ちる。僕は正座になって審判のときを待つ事にした

 

(これはきっと曖昧な返事をした僕への罰なんだ。ならば甘んじて受けよう)

 

一気に魔王モードに入った優月と美波の一撃を受け、僕の身体は宙に舞ったのだった。どこまでも青い空と太陽がやけに目にしみたのだった……

 

第120問に続く

 

 




これでバカテスの第12巻までの内容は終わりですね。この後は番外編の話をして行こうと思います、色々面白いのがあるじゃないですか、未来とか子供とか、本当に色々ありますよね?そう言うのをメインにしつつ、明久とか雄二が魔王に襲われる話を展開して行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。