バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は第118問目ですね、結構長い事連載してきましたが、漸く終わりが見えました。
フィナーレは当然原作とは違う流れです。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


第118問

 

 

第118問

 

流れが変わったか……さっきまで攻め込んできていた3年の動きが少し緩やかになってきた。

 

(雄二の作戦が始まったか)

 

3-Aの生徒に変装しての奇襲で行くと言っていたが……

 

(向こうも終わらせたいという事か)

 

仮にも大企業の総帥にまでなっている才女が何時までも騙されやすいと言う弱点をそのままにしているとは思えない。それなのに雄二の作戦が成功している、それはつまり

 

(向こうは勝つ気がないということか)

 

襲ってきた3年の召喚獣を両断し間合いを放す

 

『2-F 八神龍也 数学 278点』

 

この乱戦だ。全ての攻撃を回避することは出来ず、点数は減っているがまだまだ大丈夫そうだ。はやて達も私と大体同じと言うところか。とりあえずこのまま進撃するか……私達の役割は3年をひきつけること、現在位置は新校舎の1階。もう少し攻め込んで無効の危機感を煽るかと思っていると

 

『2年の代表の霧島だ!』

 

『大将が出てきたか!討ち取るぞ!』

 

翔子が出てきたか。となると……グランドに向けて耳を澄ますと

 

『おわ!?なんか凄いオーラ』

 

『ぎゃああああ!なんだ!?なんなんだ!?この圧力はアアアア!?』

 

『横溝、藤山戦死!』

 

次々と聞こえる戦死報告。窓の外を見ると美波や瑞希を先頭にして、真っ直ぐに新校舎に走ってきている2年の姿が見える

 

(そろそろこっちも仕掛けようか?)

 

はやてが小さな声でそう尋ねてくる。陽動と進入経路の確保が私達の仕事だが、ここまで状況が動いたのならこれ以上この場で粘る必要はない

 

「こっちも切り込むぞ!続け!」

 

『『『おおっ!!!』』』

 

私達についてきていた、A・Bクラスに声を掛けて切り込む。さて最後の大仕事が待っている明久と雄二はどうやって勝負を決めるつもりなんだろうな。そんな事を考えながら私は一気に階段の前を制圧し2階へと進軍して行ったのだった……

 

 

 

 

 

 

「ふー」

 

大きく深呼吸をして4階へ続く階段を上りながら。皆の激励の事を思い出す

 

「吉井君。頑張ってね♪」

 

「いつもみたいにつまらないミスはしないようにね」

 

僕をここまで無傷で連れてくるために前線で戦ってきてくれた、工藤さんと木下さん。

 

「……吉井。後悔はしないように、私はそうしたほうが良いと思う」

 

「……頑張れ。後は明久の仕事」

 

色々あったが、雄二を捕まえる事に成功した霧島さん。そして僕の背中をばしっと叩いて激励してくれるムッツリー二

 

そして……

 

「アキ。頑張ってね、後悔しないようにね。あと……ウチの望む結果じゃなかったら鯖折りだからね?」

 

「明久がどんな答えを出すかは知らないけど、後悔の内容にね。あと……付き合ったらコロス」

 

「明久君。頑張ってきてくださいね。………」

 

美波は物理的に脅しを掛けて来て、優月は死ぬほど怖い声色で、瑞希は無言で僕を見ていた。どれも三者三様の恐ろしさがあった

 

(だけど僕はどうするかなんてもう決めている)

 

死ぬほど考えた割にはしょうもないけど、今の僕にはこれ以外の答えなんてきっと出せないとだろうから

 

「よう。漸く来たか」

 

屋上に続く扉の前で座りながらそう声を掛けてくる雄二に

 

「知らないの?HEROは遅れて来るんだよ?」

 

「へたれHEROだがな!」

 

そう笑う雄二。多分僕がどうするか?と言うことを考えているのだろう。しかしそれ以外の答えは見つからなかったのだから仕方ない

 

「さーてHEROの明久さんがどうやってこの戦争を収めるのか楽しみだなあ」

 

にやにやと笑う雄二に心底腹が立つ。自分だって相当ヘたれていたくせに、よく人をからかえる物だな!

 

「悪りぃ。悪りぃ。別に俺はお前がどうしようと構わないぜ?ただ夜に後ろから刺されるような真似はしてくれるなよ」

 

「……」

 

考えれる終わり方の1つだと思い絶句していると、雄二は僕が何を考えているのか判ったようで

 

「冗談!冗談だからそう難しい顔をするなよ。なんかヤバイと思ったら、前にやった論功行賞の如月ハイランドでも行って機嫌をとって。交渉のテーブルについてもらえよ」

 

如月ハイランドのフリーチケットを貰えて良かった。僕は心底そう思った

 

「さて、そろそろ行くぞ!気合入れろよ!」

 

「うん。判ってる」

 

頬を叩いて気合を入れていると、階段の下から喧騒が聞こえてくる。

 

『逃がすな!囲い込め!』

 

『押し返すぞ!気合入れてや!』

 

『2年が舐めるなよ!!』

 

龍也達もちゃんとここまで攻め込んできているんだな、でも大丈夫。この勝負は僕が決める

 

「行くぞ。明久」

 

雄二の言葉に頷き、屋上の扉に開き直り、飛び出す準備をする。ここから先はスピード勝負、一瞬たりとも止まっている余裕は無い

 

「なぁ。明久よ」

 

「なに?雄二」

 

雄二はにやりと笑いながら、僕を見て

 

「面白ぇな。俺達の学校」

 

その一言で、この学校に入ってからの事が頭がよぎる

 

おかしな野郎達と会って、最初は仲が悪くて

 

日本語が不自由で、中々打ち解けられない帰国子女がいて

 

実力はあるのに、試験で倒れたせいで最低クラスに押し込まれた女子がいて

 

魔王に色々されているのに、笑顔で対応する大人なクラスメイトがいて

 

馬鹿をやれる友人だと思ったら、実は家の決まりで男装している女子がいて

 

その気になれば、監禁・薬漬けと犯罪行為でも普通に公言する女子がいて

 

そんな女子に感化されて、凶暴化してしまった女子が大勢いて

 

そんな個性的な面々が、同じクラスで同じ目標を掲げ、苦楽を共にして馬鹿をやって、喧嘩できる。そんな関係になれた

 

「そうだね……最高だよ!!!」

 

屋上の鉄扉を開け僕と雄二は屋上へと躍り出た

 

「試獣召喚!」

 

召喚獣を呼び出し、屋上に張り巡らせた落下防止のフェンスに向かって走らせ、その拳をフェンスに叩き付ける。ゆっくりと倒れていくフェンスの上を走り、その奥にある渡り廊下の屋上に飛び乗る。フェンスの無い地上4階の屋上を前だけを見て走り続ける。みーちゃんや美波の事を考えると僕のやろうとしていることは最低かもしれない、だけど僕にはそれ以外の答えがわからなかった。

 

「アキ君!?なんていう所から!?危ないです!はやくこっちへ」

 

屋上を走ってきた僕と雄二を見てみーちゃんが慌てて手招きする。その仕草は妙に子供っぽくて思わず苦笑してしまう、僕と雄二は新校舎に屋上に飛び乗る、雄二は放送席に走り片っ端からスイッチを入れる

 

「明久!」

 

投げ渡されたマイクを握り締める。美波や瑞希が自分達の居ない所でどんな会話をと勘ぐっている可能性がある、だから校内放送にすることにしたのだ

 

「みー、いや高城雅さん!今はごめんなさい!!!僕はまだ皆と馬鹿をやりたいんです!!」

 

キーンとスピーカーがハウリングする。僕にはこの答えしかなかった、婚約者とか結婚とか誰が好きとかなんて判らない。今はこのままがいいのだ、逃げているとかへたれといいたいのなら好きにすれば良い。僕はそれでも構わない

 

「はっ……はははは!まだですか、全くこんな形で振られるとは思いませんよ?」

 

「ふ、振ってないよ!?今は保留にしてくださいって」

 

僕が慌ててそう言うとみーちゃんは判ってますと言ってから、召喚獣を呼び出して

 

「その件については後。今は試召戦争中です、やることは1つだけです」

 

『3ーA 高城雅 社会345点(地理)』

 

『2-F 吉井明久 社会335点(日本史)』

 

僕とみーちゃんの点数が表示される。奇しくも僕とみーちゃんの点差は殆どなかった

 

「それに私も少し安心しています」

 

安心?なんで?僕が首を傾げるとみーちゃんはにこりと笑い

 

「あって直ぐ受け入れられるのも中々嫌なんですよ。いやいや乙女心は複雑怪奇ですね?」

 

「いや。尋ねられても困るんだけど」

 

僕にそんな物が判るのならあんな返事はしてないとおもう。みーちゃんはそれも当然ですねと笑ってから

 

「それに私は1度こうしてアキ君と喧嘩してみたいと思っていました。ですから私が勝ったらアキ君は暫く私のものと言うことで、3年ほど」

 

「それは暫くじゃない!?」

 

「冗談ですよ!!」

 

「わわ!」

 

いきなり突っ込んできたみーちゃんの召喚獣を一撃を回避する。点数よりも遥かに機敏な動きだ、それだけ操作のイメージが出来ているのだろう。僕は大きく深呼吸してからみーちゃんの召喚獣と対峙したのだった

 

 

 

 

 

3年を蹴散らしながら聞こえてきたアキの声に思わず苦笑する

 

(ここまでウチの思ってた通りだと面白いわね)

 

アキの事だから、きっと答えなんて出せないと思っていた。だから高城の事は断ると判っていたが、言うことまでここまで予想通りだとむしろ面白いと感じてしまう

 

「美波ちゃんは明久君何を言ったんですか?」

 

そう尋ねてくる瑞希にウチはにやりと笑いながら

 

「まだ答えは出さなくていいよって言ったのよ!!!」

 

横から飛び出してきた召喚獣を槍で串刺しにして投げ飛ばしながら言うと

 

「ずるい言葉ですね?」

 

「でしょ?ウチも自覚してるわよ」

 

アキの矢指を知るならばこの答えしかでないと判っていた、だけどそれで良いと思うのだ

 

「今の関係ってそれなりに楽しいでしょ?瑞希」

 

そうですねと笑う瑞希も3年の召喚獣で腕輪で焼き尽くしている。これで7人は戦死にさせただろう

 

「でも私はそれじゃ終わらないけどね」

 

ぼそりと呟く優月。その顔は黒く、どう考えても優しいと名前についている人間の顔ではないと思った。だけどそれでもいいと思える、それも個性なのだから

 

「まぁそれはウチも同じだから全体的に賛同ね」

 

「私もです」

 

結局の所アキは1人しかいないのだから、望む関係になれるのは1人だけ。なら他の人間は蹴落とすか、アキがハーレムを築くと決めるしか道は無いと思う。だけどハーレムなんて許される者じゃない。なら道は1つだけ

 

(瑞希や優月よりも好かれるようになるだけ!)

 

(美波ちゃんや優月さんより好かれれば良いんです!)

 

(美波や瑞希よりも明久に好きになってもらえば良い!)

 

だがまずやるべきことは別にある。大企業の次期総帥かつ幼馴染と言う強力なポジションを持った。高城雅

 

(まずは高城をつぶすことを優先よね)

 

(そうですね。出来るだけ卒業まで近づけない方向性で行けばいいんですよ)

 

瑞希とひそひそとそんな話をしていると

 

『『『今の内だ!仕留めろ!!!』』』

 

雄叫びを上げて突っ込んでくる3年生達に

 

「「「邪魔ッ!!!!」」」

 

3人の攻撃が重なり。その3年生の集団を一撃で戦闘不能にしたのだった……ちなみに本体も攻撃されたので召喚獣だけではなく、召喚者も致命的なダメージを受けて痙攣していた……それを見ていた2年生と3年生は全員がこう思った

 

((奴らに逆らうと命が無いと……))

 

そんな事もあり。2年生は3年生を追い詰めて行ったりする、恐ろしいのは魔王の底知れぬ戦闘能力だと再認識した。2年生だった……

 

 

 

 

 

 

曖昧な返事だが、明久らしいか。俺は放送席に腰掛け明久と高城の勝負に視線を向けた

 

「くっ!速い!?」

 

「当然です。武術も修めてますからね!」

 

点数は互角。得物も木刀と刀の違いこそあれど殆ど同じ。そして操作技能も殆ど同じ

 

(これは長期戦になるか?)

 

正直話。もしここで俺と明久が討ち取られても、直ぐ近くまで龍也達が来ているから何の痛手もない……だが出来るなら明久で決めて欲しいという気持ちがある

 

「楽しいですねえ!」

 

「僕はあんまりかな!!」

 

しかしまあ随分と楽しそうだな。高城の奴……長い黒髪を翻し足場を変えながら、召喚獣を操作している高城は実に楽しそうだ

 

(明久が自分だけを見てくれるのがそんなに嬉しいのかね?)

 

この勝負の最中だけは明久は高城に集中するしかない。俺にいたっては明久と高城の眼中にも無い、だからこうしてのんびりを観戦出来ているのだが

 

(そろそろ時間が押してきているか?)

 

校内放送の明久の声がしてから5分。そろそろ援軍が来てもおかしくない

 

「このおっ!」

 

しかし明久の奴何をしてるんだ。なぜ召喚獣が2体になる。白金の腕輪を使わない、苛々とした気分で見ていると

 

「アキ君は腕輪があるのにそれを使わないのですか?」

 

高城も同じことを思ったのか明久にそう尋ねる。明久はきょとんと首を傾げてから

 

「いや。僕達の作戦を知ってもここで待っててくれて、点数を僕に合わせてくれたみたいだし、腕輪までを使うのはどうかなって」

 

は?どういうことだ?俺が首を傾げていると明久は

 

「フェンスの上を走ってきて気付いたよ。危ないことをしたから驚いてたみたいだけど、奇襲については驚いてなかったでしょ?」

 

確信めいた口調の明久に、高城は右手で口元を隠しながら微笑み

 

「まさか。本当に驚き「みーちゃんは驚くと右手を口元に持っていく」

 

はっとした顔で右手を降ろす高城。どうも図星だったようだ

 

「なら普通に勝負しようと思ってさ」

 

召喚獣の体勢を立て直させ、木刀を正眼に構えさせいつでも駆け出せる体制をとらせる。高城は

 

(おいおい……マジか)

 

俺は思わず呆れてしまった。高城は信じられないくらい顔を赤くしてぶつぶつ呟いている……

 

「ど、どうして私の癖をそこまで覚えているのですか?」

 

「え?だって幼馴染だし覚えてる物じゃないの?ねえ雄二」

 

突然俺に話を振る明久。何でだよと思いつつふと思う。俺も翔子の癖とか好きなもんを全部知ってるな……と

 

「そうだな。その意見については賛同しよう」

 

一緒にいたから覚えてしまうことは多数ある。翔子が考え事をしているときの癖とか、悪巧みをしているときとか、そんな事を思い返していると

 

「そ、そうですか。そう言うものなんですね」

 

なんだにやにやと笑って動きが鈍くなったぞ?照れてるのか?口元を押さえているがそれでも隠し切れないほどニヤニヤしている。明久も怪訝そうな顔をしていたが

 

「勝負は勝負!行くよ!」

 

召喚獣と一緒に駆け出した明久。出来るだけ近くにて最後まで操作するつもりなのだろう。なんだかんだで明久もその実大分消耗している。普段の召喚獣の切れがないのは判っている、だからこそ自分も走ることを選んだのだろう。それに対して高城はゆっくりと前に踏み出し

 

カラン

 

「「はっ?」」

 

自らの召喚獣の武器を手放させ明久の召喚獣の木刀をモロに喰らった。これにより高城の召喚獣は戦死で俺達の勝ちなのだが

 

「アキ君は私の事を覚えててくれたんですね、とても嬉しいです」

 

「なんでえー!?」

 

明久は高城に抱き閉められ悶絶。なんでと絶叫しているがそれは俺の台詞だと言いたい、こんな決着は何と言うか面白みが無いので

マイクを手に

 

「島田!姫路!明久が高城に攫われるぞ!」

 

勝ち名乗りを上げる事も考えたが、ルール上高城が討ち取られたことで3年の召喚獣は全て強制消滅。これ以上判りやすい勝利もない、なので面白くするほうがいいと考えそう叫んだ

 

「貴様アアアアア!!!!」

 

明久が俺を見てそう叫ぶが、明久はまだ抱きかかえられたまま。高城にいたっては

 

「大丈夫です!アキ君は私が護りますから!」

 

「むしろそのせいで殺されると「ドドドドドドドッ!!!」ってきたあ!?物凄い勢いで階段を駆け上がってくる音があああ!!!」

 

恐怖で壊れ始めた明久と鉄扉を蹴り開けた島田達を見て俺は

 

(これでこそ文月学園だな)

 

修羅場発生による明久の悲鳴を聞きながら、俺はもう1度マイクを手に取り

 

「この勝負。俺達の勝ちだッ!!!!」

 

『『『『よっしゃあああああ!!!!』』』』

 

あちこちから聞こえてくる雄叫びに、俺は笑いながら放送席の椅子の背中を預け、島田達VS高城の対戦がどうなるかを見始めたのだった……

 

なお明久は島田達に両足を掴まれ引っ張れて、高城にネクタイを掴まれ白目を剥いて瀕死になっていた。傍観者の立場だからいえるが正直よく生きているなと俺は思ったのだった

 

 

 

第119問に続く

 

 




次回で一応予定していた話は終わりです。そのはやろうと思っていた番外編をやっていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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