バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は原作とは全く違う流れにしようと思っています。原作では明久と高城先輩は激しいバトルを繰り広げます。まぁ原作では男性ですしね、高城先輩は。でも今回はTSしているので原作の展開にはなりません。どんな展開になるのか楽しみにしていてください。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


第116問

 

 

第116問

 

作戦通り新校舎に突入出来たのは成功だった。しかも2つの腕輪の効果で俺達の疲弊は0完全に俺のシナリオ通りだった、あとは工藤とムッツリー二を先頭に学園長室まで向かう予定だったのだが

 

「お待ちしておりました。吉井明久君とその愉快なお友達の皆様」

 

小暮がにこやかに笑いながら俺達の前に立ち、慣れた手つきでポケットから注射器を取り出した

 

「大人しく捕まってくれると嬉しいのですが?少々きつい薬なので反動とかがあると思うのですよ」

 

にこやかに薬の説明をする小暮。やっぱりこいつは魔王の中でも凶悪な属性のようだ

 

「いやー!僕帰る!旧校舎に帰るうううう!」

 

「落ち着いてください!明久君!」

 

「大丈夫よアキ。ウチが助けてあげるから。ね?だから落ち着いて自分の役割に集中しなさい」

 

「人の心を薬で動かそうとするなんて何を考えているの?」

 

錯乱した明久を落ち着けている頼れる魔王衆を見ながら俺は

 

(多分だが俺の手は読まれているな)

 

ここに小暮が居る以上それは間違いない。戦力は少ないが点数の高い生徒が集まっているようだ

 

「ふむ。では吉井明久君はこの場は諦めましょう。人数が多いと流石に苦戦しますので」

 

くすくすと笑う小暮が注射器をポケットにしまう。それを見て漸く落ち着いて明久が

 

「みーちゃんの命令だったりするんですか?」

 

「いえ?雅は薬に関しては不干渉です。これは私の独断ですよ、雅には幸せになってもらいたいですからね」

 

その為の薬物混入凄い思考回路の持ち主のようだが、このまま時間を取るわけにも行かない

 

「ムッツリー二、工藤!この場は任せる!小暮を抑えててくれ」

 

そう叫んで走り出す。明久達は一瞬驚いたような顔をしたがすぐに俺の後をついてくる。小暮は俺達の妨害をせずに通してくれた。

 

「良いの雄二?ムッツリー二と小暮先輩じゃ相性が悪すぎるよ?」

 

エロの権化のムッツリー二と溢れる色香を持つ小暮。確かに相性は最悪だろうだが

 

「問題ない。工藤が一緒だ、もし工藤と一緒にいて小暮に目を取られてみろ。考えるまでもないだろう?」

 

島田達をちらりと見て言うと明久は少し青い顔をして

 

「魔王に粛清される?」

 

「そういうこった。工藤は相当嫉妬深いからな、ムッツリー二の手綱を取るのにこれ以上相応しい奴は居ない」

 

俺がそんな話をしていると後ろのほうから

 

『私は苛めがいのある男の子って好きなんですよ♪敢えて点数を少し残して苛めるのも楽しそうですねえ』

 

『ムッツリー二君。相手にしないで召喚獣に集中して!苛めて欲しいのなら僕が後で苛めてあげるから』

 

『……俺は苛めて欲しいなんて言ってない!?』

 

『『遠慮しなくていいよ(ですわ)後でたくさん苛めてあげるから(ますわ)』』

 

残しておいてなんだが選択肢を間違えたかもしれない。もしかするとムッツリー二が危ない趣味に開眼してしまうかもしれない……

だが今はそんな事を考えている時間はない。この作戦を時間を掛ければ掛けるほど不利になる。ここは進むしかない

 

「よう。突撃とは随分と思い切りの事をするな。吉井、坂本」

 

「あるかもしれねえと思って下がってきてたが……予想とおりだな」

 

俺達の前に立ち塞がったのは常村と夏川のコンビ。今度は正攻法の戦いが出来る2人組みか……保健体育があるってことでムッツリー二の備えて小暮があそこに出てきていたのだろう

 

「島田、秀吉。ここは頼むぞ!」

 

俺がそう叫んで2人の隣の駆け抜け学園長室に向かって走る。残った常村と夏川の2人はふーんと頷き

 

「そういうことなら、相手になってもらおうじゃねえか」

 

「少しばっかり遊んでもらうぜ」

 

そう笑う2人に対して美波と優月は前髪で目を隠して異様な雰囲気を放っている。それに気付いた2人は

 

「あー試召戦争だよな?なんで拳を鳴らしているんだ?」

 

「ま。待て待て召喚獣を呼び出せよ」

 

その2人の言葉に2人は返事を返さず。辺りを見て

 

「教師は居ない。今ウチって凄い苛立ってるのよ」

 

「叩きのめしても良い訳。明久にどんどん悪い虫が増えるし……この苛立ちを何処に向ければいいか、私も美波も判らなくてさ……叩きのめさせて下さい」

 

異様な空気に周りに居た3年生は全員いつの間にか居なくなってしまった……

 

「「お、おいおいおい……すこしま……ぎゃーっ!!!!!」」

 

鬼神と思えるような顔で躊躇いもなく鳩尾に拳を叩き込まれ蹲る。とんでもなく痛いのに気絶すら出来ない。俺達は坂本と吉井が撤退してくるまでの8分間徹底的に殴り蹴られた

 

本日の教訓 魔王に近寄るという事は死亡フラグ直行便である。対応には極めて慎重な判断が必要になる by 常村&夏川

 

俺と明久そして姫路は学園長室のほうへ走りながら

 

「そろそろ追撃班が来る。姫路護衛を頼む」

 

「任せてください!明久君と坂本君が来るまでここは通しません」

 

力強く返事を返す姫路。これなら大丈夫だと思っていると明久が

 

「頑張ってね。瑞希、戦死とかしないでね」

 

その一言で姫路のオーラが増した。断言できるこれならばAクラスが束で来ても姫路を突破できないと断言できる

 

「うしっ行くぞ!明久」

 

学園長室の扉を蹴り破る勢いで開ける。ちっ破壊できなかったか、復習に破壊してやろうと思っていたのに……そして学園長室に入ると

 

「ああ。アキ君に坂本君。待ってましたよ、お茶でも如何です?」

 

高城がティーポットとカップを用意して微笑んでいた。待っているだろうと踏んでいたが、まさか出迎える準備をしていると思わず。俺も明久も絶句してしまうのだった……

 

 

 

 

 

そろそろ来る頃でしょうかね。私は学園長室に用意されていたティーポットを使って紅茶の準備をしていた、そろそろ来るだろうからカップに入れておきましょう。丁度注ぎ終えた所でアキ君と坂本君が学園長室に飛び込んでくる、そんな2人を見ながら私は

 

「ああ。アキ君に坂本君。待ってましたよ、お茶でも如何です?ああ、それと君達が探している召喚システムはここにはないのであしからず」

 

そう声を掛けたのだった……もしかすると破壊するという手を打ってくるかもしれないといって学園長が回収していた。普通はそんな手を思いつくとは思えないが、そこはかつての神童。やはり普通じゃない一手を打ってきたようだ。しぶしぶと言う感じでソファーに座るアキ君と坂本君に

 

「アキ君は砂糖は1つですか?」

 

「いや、普通に紅茶を勧められても困るんだけどみーちゃん」

 

困惑しているアキ君の隣で紅茶を煽った坂本君は

 

「俺と明久がシステムを壊しに来るのは読んでいたってわけか?」

 

「ええ。私が遊びと言った段階で相当頭にきていたようですし。恐らくこの一手を打ってくるだろうと予想していました」

 

そもそもこの試召戦争は私がアキ君を手に入れる為の物で本来の物とは違いますし、3年と2年の条件だと明らかに2年が不利。全てを無にするという方法を打って来るのは予測していました

 

「あ、美味しい。みーちゃん紅茶入れるのが上手だね」

 

「淑女のたしなみです」

 

これでも一応高城グループ次期総裁ですからと言って笑うと坂本君が私を見て

 

「俺がそこがどうしても引っかかる。次期総帥、名家同士の婚約が普通のはずなのに何故明久を婚約者にしようとする?」

 

ふむ。それは普通に思う疑問でしょうね、確かに私は他の名家からお見合いの話も来ていますが

 

「興味がありませんから、私が必要なのはアキ君だけです」

 

「もが?」

 

お菓子を食べているアキ君が不思議そうに首を傾げ、坂本君の手刀を喰らって咽ている。やはりアキ君はアキ君のままだ、懐に入れた人間や親しい人間に対しては敵対心を出せない。アキ君はそう言う優しい人間なのだ

 

「それが何故かと聞いている。それと明久、試召戦争中だぞ?気を緩めすぎだ」

 

ふうっと溜息を吐く坂本君を見ながら私は嘘偽りのない本心を口にした

 

「名家同士と言うのは聞こえは良いですが現実は醜く。そして醜悪です。あの人達が必要としているのは私ではなく、高城の名とそれに伴う莫大な収入。それだけです、私高城雅と言う人間は必要とは考えてないのです」

 

「だから自分を自分と扱ってくれる明久が欲しいと?それは随分と身勝手じゃないのか?留学の話にしてもそうだ、明久は馬鹿だ。恐らく会話出来る様になるまで相当な時間を必要とするだろう」

 

「酷い!雄二酷いよ!少しは英語を覚えたんだよ!?」

 

「話せるのか?」

 

沈黙するアキ君。読めても話せない、それはまた随分と珍しいと思っていると坂本君は

 

「そうなれば、明久はあんたとしか話せないし、あんたを頼るだろう。1年もあれば十分に明久を篭絡できるわけだ」

 

その言葉に私は少しだけカチンと来て

 

「篭絡する気はありませんよ。私はその1年間で島田さん達に劣っている一緒に居れた時間を補うつもりですからね」

 

は?と言う顔をするアキ君と坂本君に私は良いですか?と前置きしてから

 

「私はアキ君が私以外を選ぶというのなら自分が劣っていると言うことだと理解しています。ならばアキ君が私を気に掛けてくれるように自分を磨くだけと決めています、しかし会えなかった時間が余りに長い、その時間は取り戻せないのなら補う手が必要ではないですか?だから留学するんです」

 

「……ちょっと待て。あんたは明久に会えなかった時間を補うためだけにこの馬鹿を留学させると?」

 

「そうですよ?何かおかしいですか?」

 

アキ君と坂本君が呆然としている。はて私はそんなにおかしいことを言ったでしょうか?

 

「明久。訂正する、お前の幼馴染はすげえ、この発想は俺には理解できねえ」

 

そんなに言われる事でしょうかねえと思いながらカップを机の上におき

 

「さてと、では坂本君。貴方には退場願いましょうか。試獣召喚」

 

そう呟きやき召喚獣を呼び出す。座っていた2人もばっと立ち上がり距離を取る。その数秒で私の召喚獣が姿を見せる」

着物姿に刀。女剣士と言う風貌の私の召喚獣を見て

 

「いきなりぶっそうな召喚獣を出してきてくれるな」

 

「みーちゃんだから騎士だと「素っ頓狂なことを言ってるんじゃねえ!馬鹿!」

 

坂本君がアキ君の頭にチョップを落とす。その間に私の召喚獣の点数が表示される

 

『3-A 高城雅 社会 420点(地理)』

 

それを見た2人はじりじりと後退しながら出入り口に向かいながら

 

「俺を倒してFクラスを壊滅。後は残りを殲滅っていうのがお前のプランか?」

 

「その通りですよ、Fクラスの戦力は1部驚異的ですからね。正面きっての戦いは避けたいのですよ」

 

八神君達にその妹さん達。戦力的には私以上と見て間違いない、そんな人間と戦うよりも大将を打ち倒す。それが早いと思うのは当然だろう

 

「あんまり抵抗しないでもらえると嬉し「坂本君!明久君!逃げますよ!」

 

どかんと学園長室の扉が吹き飛ぶ。そこから入ってきたのは姫路瑞希さん、召喚獣も一緒だが

 

『2-F 姫路瑞希(魔王モード) 社会 385点』

 

点数が全く減ってない上にオーラを纏っているのですが何か隠しモードでもあったのでしょうか?そんなくだらない事を考えていると

 

「雄二!明久!撤退だ!撤退!押し込まれるぞ!」

 

開いていた窓から八神君が飛び込んでくる。どうやら話している間に攻め込まれたようですね。点数は400点越え、流石に分が悪いと判断し召喚獣を消して

 

「全く。姫路さん、貴女には優雅さが足りませんね、女性なら女性らしくお淑やかで居るべきではないのですか?」

 

全く扉を破壊するというのなら蹴り破るのではなく掌底でしょう?と言うと

 

「うるさいです。明久君と坂本君は連れて帰ります、それと明久君は留学なんかさせません」

 

ギリッと凄まじい眼光で私を見据える姫路さん。素晴らしい迫力ですがその程度で私はうろたえたりはしませんがね

 

「話してる暇はないぞ!瑞希・雄二。どんどん3年が来てる囲まれる前に撤退するぞ」

 

八神君がそう指示を出して先頭を走り出す。彼を突破できる生徒はそうはいない。このまま旧校舎まで逃げられるのは確実だろう。最後まで学園長室に残ったアキ君は私を見て何かを言おうとして、口を閉じた。何と言えばいいのか判らず悩んでいるというところだろう

 

「アキ君。いずれ私は必ず迎えに行きます。貴方が私を嫌いと言ってもあきらめません、好きになってもらえるように頑張りますから」

 

私がそう言うとアキ君は少しだけ頬を赤らめてから学園長室を出て行った。私は蹴り壊された扉を嵌めなおしながら

 

「ふーこれはかなり頑張らないと難しそうですね」

 

あの目を見れば判る。今のアキ君の目にはきっと私は久しぶりに再会した幼馴染としか映ってないだろう。となると島田さん達の方が有利だし、こんな状況で留学をしてもきっとアキ君は私を見てくれないだろう

 

(どうしたものですかねえ)

 

やはりもう少し早く再会すべきだったと反省しながら私は学園長室を後にして小暮と合流するべく、教室へと引き返して行ったのだった

 

 

 

 

 

龍也と瑞希のおかげで何とか新校舎を脱出し、途中で

 

「……ピクピク」

 

「ちょっと苛めすぎちゃった♪」

 

瀕死のムッツリー二をおんぶしている工藤さんと

 

「あ、アキ。ここに戻ってきたって事は作戦は失敗したの?」

 

「多分待ち伏せされてたんだね、しょうがないよ」

 

なんか妙にすっきりした顔で手をハンカチで拭っている。美波と優月と合流し、なんとかFクラスまで逃げ帰ってきたのだが

 

「ああ、くそ!あの高城ってやつは相当不味い。自分のやってることは全部正しいって思ってるタイプだ。留学もこの戦争も全部明久と接点を増やしたいだけだぞ。絶対!俺達はそんな奴に振り回されてるのか!」

 

悔しそうに頭を掻き毟る雄二。自分達など興味がまるでないみーちゃんにここまでいいように振り回されているのが気に喰わないようだ

 

「おい!明久!あの雅って言うのは何か弱点はないのか?」

 

そう言われて僕はうーんと頭を抱えながら必死に昔のみーちゃんを思い出し

 

「騙されやすい」

 

「……それはどうなんだ?もう18なんだろう?もう克服してるんじゃないのか?」

 

龍也の言葉にうーんと返事を返しながら

 

「変わってないと思うよ?癖とかもそのままだったし」

 

人の本質と言うのは早々変えれないんじゃないかな?と言うと龍也は

 

「一理あるな。そこをついて攻撃するか?」

 

「それが良いな。少し作戦を練り直す。明久達は少し休憩してろ」

 

指揮組みを連れてA教室に向かっていく雄二と龍也。多分Aクラスで待機している霧島さん達と合流しに行ったのだろう、僕は瀕死のムッツリー二をあえて見ないようにし椅子の上に座る

 

(どうしてこうなるのかな)

 

今まで女の子にこんなにモテた事なんてなかった。嫉妬深いのが難点だけど美波も瑞希も優月も物凄く可愛い、正直僕なんかでは吊り合いが取れないのでは?と思うくらいだ。それなのに今度は大会社の次期総帥であるみーちゃんまで来てしまった

 

(僕はどうしたいのかなあ)

 

僕は出来たらまだずっとこうして皆と馬鹿をやりたいと思っている。だけど状況はそれを許してくれないほどに悪化し始めているような気がしていた。真剣に考えているとふと気付く美波達が僕の顔を覗きこんでいることに

 

「どうかした?」

 

「どうかしたじゃないわよ。アキ……どうしたのよ。そんなに真剣な顔して、そんなに高城の事を考えてるの?」

 

そう言われて僕は違うよと返事を返してから

 

「いや、僕は今のままがいいなあって思ってるんだけどさ……なんかそんな事も言ってられなくなってるなあって思ってさ」

 

僕がそう言うと優月が僕の目を覗き込みながら

 

「今のままが良いってどういうこと?」

 

「んー雄二とかムッツリー二と馬鹿をやりながら。皆と一緒に居たいって思うんだよね。まだ僕はさ、誰が好きとかそう言うの全然判らなくてさ、それなのに婚約とか留学とか……考えることが多くなってきてやだなあって思うんだよ」

 

嘘偽りのない気持ちを美波達に告げる。美波達が僕のことを好いていてくれることは判ってる。だけど今の僕にはその言葉に報いるだけの返事が出来ない、僕がどうしたいのか?それすらも判らないのだから

 

「あー駄目だ、少し外の風に当たってくるよ」

 

戦争区域ではないエリアは休憩地点としてちゃんと設けられている。そこで少し外の空気を吸って気分転換しようと思い、僕は美波達にそう告げて旧校舎の裏へと向かって歩き出した

 

「やっぱり誰も居ないか」

 

今この時間も雄二達は勝つための作戦を考え、点数を消費した生徒は補充試験をしている。そんな大事な時にこんな所に来る生徒は居ないだろう……深く溜息を吐きながら僕は校舎の壁に背中を預けて空を見上げるのだった……澄んでいる空がなぜか知らないけど腹正しく思えた。こんな事でさえ苛立つほどに僕は追い詰められているのかと苦笑するのだった

 

 

 

ふらふらと出て行ったアキ、どうも相当悩んでいるようだった。こんなときなんて声を掛けたらいいのか?ウチには判らない

 

(アキもウチと同じ事を考えてたんだ)

 

今のままが良い。それはウチも考えていた、騒がしいし喧嘩もするし嫉妬もする。だけどそんな毎日はどうしてだか心地良いとウチも思っていた

 

「相当悩んでるな明久の奴」

 

「ハッキリしないから口にしない。それは正しい選択も取れますけどね」

 

補充を終えたヴィータとティアナがそんな話をしている。出来るなら相談に乗ってあげたいと思うけど、ウチはどうすれば良いんだろうか。このままだとアキが潰れてしまうような気がしてならない。アキ1人で抱えるには重過ぎる問題だ

 

「なんだ?美波は行ってやらないのか?明久の奴相当悩んでいるみたいだぞ?」

 

ウチをみてそう言うヴィータ。それはウチも気付いているけどなんと声を掛ければいいのか判らないのだ

 

「こういう悩んでいる時はな、普通に話の出来るやつが行くといいんだよ。瑞希とか優月だと共感しすぎて余計に悩ましちまう。発破を掛けるくらいが丁度いいんだよ」

 

そう笑うヴィータ。だからウチが適任ってことなの?瑞希と優月を見ると

 

「美波ちゃん。明久君を励まして来て上げてください、私だと……その落ち込んでいる明久君を見ると暴走してしまいそうな気がしてですね。行かないほうが良いと思うんですよ」

 

落ち込んでいるアキ。想像することしかできないが可愛い顔つきのアキが落ち込んでいるのは相当な破壊力があるような気がしてならない。瑞希だとリミッターをOFFにしかねないというのが判るような気がする

 

「私も止めておいたほうが良いと思うんだよね。傷心してる明久を見るとなんか……そのねえ?色々したくなるというかな?良からぬ事をしたくなるかもしれないし」

 

……どうも瑞希も優月もヴィータ達と同じ考えのようだ。ウチは1回だけ深く深呼吸をしてから

 

「戻ってくる時はアキと一緒に戻ってくるから!少しだけよろしくね!」

 

歩く時間さえもどかしい、廊下を走り休憩エリアのほうに向かって走る。今アキが落ち込んでいる、それを何とかしてあげたいと思った。ウチと話すことで余計に悩ませるかもしれない、それでもウチはアキの傍に行きたかった……

 

廊下を走っていく美波の足音を聞きながら

 

「行かなくて良かったの?」

 

「良いんです。こういう時は美波ちゃんが適任ですからね」

 

ティアナの言葉にそう返事を返した瑞希は

 

「それに明久君がまだ誰が好きとか判ってないのなら、まだ幾らでも挽回できますから」

 

「そうだよね。まだまだ誰もスタート地点についてなかったって事だよね」

 

自分達は明久を好きだと思っていたが、明久はまだその事さえ良く判ってなかった。ならば今しばらくこのままでも良いのではないか?それが瑞希達の出した結論だった。2人は補充試験の準備をしながら

 

「だから今は明久君を惑わせる。高城先輩を叩き潰します」

 

「脅して付き合おうとするその考え方が気に喰わないの。だから徹底的に潰すんだ」

 

異様なやる気と殺意に満ちていた。それをみたヴィータとティアナは

 

「3年壊滅するかもな」

 

「私もそう思いますよ。ヴィータさん」

 

カリカリっと信じられないスピードで問題を解き始める2人を見てそう呟いたのだった……

 

 

第117問に続く

 

 




原作ではここで瑞希が脱落しますが、私の小説では違います。魔王の瑞希がそう簡単に脱落するわけがありませんからね。次回は珍しく甘い話になるかも?基本魔王クオリティですからね、私の書くヒロインは……美波が普通にヒロインをするのを上手く掛けるといいなあと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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