第106問
学年対抗の召喚戦争の開始が決定し。みーちゃんとの再会もした日の週の土曜日。ついにお見合いの日が来たのだった
「ではアキ君これに着替えてください」
姉さんに差し出されたスーツだった。学校のブレザーで慣れてるけどこういうスーツは初めてだと思いながら受け取る
「8時30分に指定された場所に向かいます。1時間はありますけど交通状態とかもあるのでてきぱきと着替えてくださいね」
姉さんの言葉に頷きパジャマを脱いでYシャツに着替え濃紺の上下に着替え、赤いネクタイを締める。リビングに行くと姉さんも仕事に行くときのスーツに着替えて化粧をしていた
「姉さんも化粧をするの?」
「当たり前ですよアキ君。母さんと代理ですからね、ちゃんとしておかないといけません。それよりもアキ君もぼさぼさ頭ではなくセットして下さい」
渡されたヘアクリームを受け取り。洗面台で髪を整えながらみーちゃんの事を考える。ずっと会ってなかった幼馴染、泣き虫だった女の子だった。だけど今のみーちゃんはかっこいい女の人になっていた。そんな人からのいきなりの婚約者になってくれと言われ。更にはお見合い。お見合いなんか僕には縁の無い話だと思っていた。ずっと会ってなかったというのに僕が好きだというみーちゃんの真意をこのお見合いで聞きたいと思う。そんなことを考えながら髪をオールバック風に整えてリビングに戻る
「行こうか。姉さん」
「そうですね。私としてはアキ君のお見合いなど粉みじんにしてやりたいと、むしろ雅を殴り倒したいと思っていますが母さんの指示です。我慢してアキ君をお見合い会場まで連れて行きますよ。嫌ですけどね」
うん。姉さんが平常運転で一安心だよ。いつもはこんな姉さんはイヤだって思うのにこれで安心するって事は僕は結構追い詰められているのかもしれない。僕はそんなことを考えながら姉さんと一緒に家を出て、姉さんの車に乗って指定されたホテルに向かったのだった。
「本当に追いかけるのかい?龍也?」
「仕方なかろう?美波達があれなんだから、それにはやて達が煽ってるんだ止めれると思うか?」
「「「ゴゴゴッ」」」
「浮気は死刑くらいの心構えを持ちましょう」
「不安になんて思わんで良いで。美波達は雅って言う3年生に何一つ劣ってないで」
「そうそう自信を持てって」
擬音が発生してもおかしくない負のオーラを発生させている美波達にそう声を掛けるはやて達を見て龍也とジェイルは溜息を吐き
「むぐー!!」
「……一緒にお出かけ。嬉しい」
猿轡を嚙ませれた雄二を抱きしめて微笑んでいる翔子に
「ムッツリー二君。僕の隣においでよ」
「……おいでと言っておいて俺の腕をへし折りかねない力で掴むのをやめろ」
お見合いの邪魔をするつもりはないが、監視はしたいという美波達を乗せたマイクロバスはゆっくりと走り出したのだった
お見合いのきほんは10分前。だけど私は気持ちが高ぶりすぎて20分前にホテルの一室で待っていた。このホテルはお見合いの会場を提供してくれるホテルで当然高城グループのホテルだ。そわそわと待っていると15分前にアキ君と玲が並んでホテルに入ってくるのが見えた。
「もう雅ったらそわそわしすぎよ」
お母様に言われはっとなり数回深呼吸をしてから
「大丈夫です、もう落ち着きました」
こういう切り替えは私の得意分野だ。イヤイヤ参加した社交界とかでは必要な技能だからだ。そんなことを考えているとフロントマンに案内されたアキ君が私の待つ部屋に来た
「えーと吉井明久です!よろしくお願いします?」
なぜか最後が疑問系のアキ君に思わず噴出してしまった。お見合いなんて初めてだから必死に覚えたのだろうが何処かずれている
「ふふふ。知ってるわよ、明久君」
「あっどうもお久しぶりです」
お母様に挨拶したアキ君は濃紺のスーツに赤いネクタイ。髪もしっかり整えていた
「アキ君挨拶の順番が違います。まずは相手に挨拶ですよ」
「え、あ。うん。えーとおはようございます」
「何でおはようなんですか。アキ君」
玲が頭を抱えているのが見えるがアキ君らしくてむしろ良いと思う
「おはようございます。吉井明久さん。今日はよろしくお願いしますね」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」
ガチガチに緊張しているアキ君に笑いながら
「そんなに緊張しなくて良いですよ。お見合いって言うのは形だけで今日はただゆっくりと話をしたかっただけですから」
まずは会えなかった年数を埋める。それが一番大事なはずだ私がそう笑うとアキ君はほっとした表情になり
「それじゃあその改めてよろしくお願いします」
深く頭を下げてから椅子に座るアキ君を見ていたお母様がこっそりと私に耳打ちしてきた
(明久君は昔のままで可愛いわね)
アキ君は可愛いそこが良いのだ。それでもいざって言うときは信じられないくらいかっこよくなる。そこが好きなのだ
今日はきっと楽しい一日になる。私はそんなことを考えながら最初は何を話そうかと考え始めたのだった
「アキ君は私がいないと寂しかったですか?」
何かに期待した表情で尋ねてくるみーちゃんになんと返事をしようと考えていると
「すいません。今の質問は意地悪でしたね。私にあえて嬉しいですか?」
それは考えるまでも無いだろう
「うん。嬉しいよ、ずっと一緒に遊んでて引っ越しちゃったでしょ?だから遊べなくて寂しかったから。また会えて嬉しいよ」
あえて嬉しい。それは嘘偽りの無い本心だ。だけど如何しても聞かないといけないことがる
「母さんがこのお見合いが崩れると私の会社が潰れるって言ってました。それは僕がこのお見合いを断ると母の会社を潰すということですか」
もしそうなら僕はきっとみーちゃんを許すことは出来ないと思う。いくら幼馴染でもそこは超えてはいけないラインだ
「ち、違いますよ!アキ君!?それは違います。信じてください、私は……私の両親もそんなことをしようなんて考えていません」
「そうよ。私も私の夫もそんなことは考えてないわ。だから安心して明久君」
真剣な顔で言うみーちゃんとおばさんを見ながら姉さんがジーと2人の顔を見つめて
「嘘はついてないようですね。アキ君信じても良いと思いますよ」
姉さんも色々と大人と話をしているし契約を取るための話会いをしている。人を見る目はあるはずだ、僕は
「すいません。変な事を聞いてしまって、どうしてもそれが気になってて」
僕の誤解だったようだ。変な事を聞いてすいませんと謝ると
「おば様も人が悪いですね。まさかそんなことをアキ君に言ってるなんて」
「明久君のお母さんらしいですね。自分で会社を興しているだけあっていろいろ考えているようですね」
人のいい笑みを浮かべるみーちゃんとおばさんを見て思わず笑ってしまう。これで少し胸に引っかかって物がなくなった。ほーっと溜息を吐いているとその様子を見たみーちゃんがくすっと笑い小首をかしげて
「それでそんなに緊張していたのですか?」
「そりゃねえ?母さんの会社が潰れるかもしれないって聞いて普通でいれるほど僕は豪胆じゃないから」
正直潰す気かと聞いて潰すと言われたら僕はみーちゃんを嫌いになっていたかもしれない、みーちゃんがずっと好きでいてくれたというのは嬉しいけど。自分の思いを通すために人を悲しませる人とは僕は嫌いだから
「安心してくださいましたか?ではアキ君。私と少しお買い物などいかがですか?」
みーちゃんのその問い掛けにどうしようかと考えていると姉さんが
「行って来ても良いですよアキ君。ちゃんと雅をエスコート……と言うよりも話をしてくるといいですよ」
10年ぶりにあった幼馴染だ。今までの事とかを話した方が良い。だけど姉さんとおばさんがいては若干話しにくいかもしれない
「では行きましょう。そうしましょう」
「え?あ。まって!?って言うかみーちゃん力強い!?」
僕を引っ張っているのにもかかわらず女性らしい優しい力加減をしている。一体どういう事と説明するのは難しいが。美波に力づくで引っ張られているのに腕に来る感じは機嫌のいい時の優月のように柔らかいのだ。一体どういう力加減をしているのだろう、僕はそんなことを考えながらみーちゃんに半ば引きずられてホテルを後にしたのだった。
残された玲と雅は母は表面上は笑いながら
「雅はずいぶんと明久君を気に入っているようね」
「そういうおば様もでは?」
「ええ、今時の子にしては珍しいほど純粋な子ですもの、ぜひ婿養子に来て欲しいわね」
「それは母と父を交えて話し合ってください。私がここに来た理由はひとつ貴方にいうことがあったからです」
玲はそう言うと立ち上がり、雅の母を睨み
「貴方達が何を考えていようと関係ない。だがアキ君を悲しませるようなことをしたら私は貴女達を許さない」
「肝に銘じておきますね玲ちゃん?」
明久と雅がいないことで互いに黒い笑みを浮かべて腹の探りあいをしていたりするのだった
ホテルから少しはなれた所の駐車上のバスを止めて様子を窺っていたのだが、暫くすると明久と雅が一緒に出てきたのだが、明久の手を引いて歩く高城雅を見た美波達は一気に
「少しは落ち着いたらどうだ?」
「「「……コロス」」」
魔王化モードに入り黒いオーラをまとって片言で喋っている美波達に肩を竦めて雄二のほうを見ると
「……ぐったり……」
「雄二♪」
翔子に首を決められてぐったりしていた。その隣では康太が
「ムッツリー二君。僕と少し遊ぼうよ?」
「……いや「えい」ごぶうっ!」
愛子にボデイにアッパーを喰らい昏倒した康太。そんな康太を大事そうに抱えた愛子は
「少し買い物をしてくるね♪帰える頃には連絡頂戴ね」
そう笑ってバスを出て行く愛子。それを見ていた翔子も
「……私も少し出てくる」
「そうか。雄二をどこかで起こせよ」
足首を掴んで引きずりながらバスを出て行く翔子にそう声を掛けたが
「ご!がっ!ぐああああ!!!」
容赦のないがんがんと言う鈍い音。どうもコンクリートとかでガンガン頭をぶつけているようだ、翔子はもう少しそう言うのを気をつければ良い子なのになあ。そんなことを考えながら負のオーラ全開の美波達が出て行くのだけは防ごうと思い、コートの中の本に手を伸ばそうとしたところで
「兄ちゃん。雅って何で明久にあそこまで執着するんやろうね?」
オープンテラスのカフェテリアで明久に楽しそうな顔をして話しかけている雅を見て不思議そうな顔をするはやて。恋をしているというのは判るだけど雅はどちらかと言うと執着しているという表現があう。はやてとかに似ているといえば似ているのだが何かが違うから理解できないのだろう
「判らん。そう言うのは私の管轄外だ」
大体そう言うのが判るならはやて達がここまでブラコンニなる前に対処できていると思う
「しかしあの雅の目は純真です。本心から明久を欲している。そう言う面は評価できます」
「私もかな。そう思うけど……なんか黒いんだよな。あの雅っていう奴」
ヴィータの評価は正しいだろう。明久の前では清らかで純粋な乙女と言う感じをしているが見え隠れしている黒い気配。それは黒いと言うには綺麗過ぎて悪意ではないが
(純粋ゆえの悪意。これは厄介だぞ)
悪意と一言で言うのは簡単だが、その悪意にも種類がある。まずは怒りや恨みから来る悪意。もう1つは純粋さゆえの悪意、それは対応が難しい悪意だ
(随分と厄介な奴ばかり集めるな明久)
私も人の事を言えた義理ではないがまたこのお見合いで一騒動ありそうな気がした。その原因の1つは
「「「……ギリッ」」」
もう物質的威力にまで昇華している。美波達が原因だという確信が私にはあった。そして美波達が魔王化したのは紛れも無くはやて達のせいで。それを考えると私のせいってことになるんだよなあ……これからどうしたものかと私は密かに頭を抱えたのだった
「アキ君。今日はとても楽しかったですよ。では今度は召喚戦争の時に」
「うん。僕も負けないから、じゃあね。みーちゃん。また今度」
喫茶店でお茶をしてただ何気ない昔話や近況の話をしただけだったが、私にはこれ以上無い幸福な時間だった。だけど
(話の大半が島田さんや姫路さんと言うのは非常に腹正しかったですがね)
しかもアキ君は楽しそうに話していたが、殴られたりされていると聞いて私は非常に怒りを覚えた。こんな優しいアキ君を攻撃するなんてその人達の気が知れない。やはりあの人たちはアキ君には相応しくない
(なんとしても召喚戦争で勝たせてもらいます)
まずは召喚戦争に勝ってアキ君をあの3人から引き離す、まずはそれが一番大事なことだ。アキ君に背を向けてお母様のほうに向かいながら。私は今度の召喚戦争をどうやって制するかを考えていた。3年生は確かに学力は高い、だけど2年生は特化型の生徒が多い。そういった面々を以下に抑えるかが今度の召喚戦争のポイントになるはずだ
(今度は必ず迎えに行きますからね。アキ君)
今日のお見合いで理解したと言うより再認識した。私にはアキ君が必要なのだと……そしてあの3人はアキ君に害を及ぼすということも理解した。私は結んでいた髪を解きながらお母様の車に乗り込み。今度の召喚戦争をどう動くのかを考えたのだった。子供の時。世間知らずでずれたことを言って苛められていた私に手を伸ばしてくれたアキ君
ずっとその手を私に伸ばしてくれていた。私にとって家族以外で初めて私のためだけに伸ばされた手だった……その手はとても暖かくて安心できた。そして少し離れることになったがまたこうして再会出来た、それは何よりも喜ばしいことのは
ずだったのに、なぜこうも私の胸を逆撫でるのだろう?いやそんな理由はわかっている。あの3人のせいだ
(貴女達はアキ君は相応しくない。覚悟して置いてください島田美波・姫路瑞希・木下優月)
貴女達は私の敵と認識しました。何をしても排除しますからね
「美波?瑞希?優月?何で無言で僕の……い、いややめて!その骨はそっちにはまが……ああああああああッ!!!!!」
アキ君の悲鳴が聞こえてきてより激しい怒りを感じ、助けに行きたいとも思ったが反対車線なのでいくことは叶わず、アキ君を心配そうに見つめることしか出来なかったのだった……
第107問に続く
今回はちょっと中身が薄かったかもしれませんね。各々の反応(1部の人だけ)をメインにして見ました。次回は戦争開始ではなくお見合いの跡で処刑された明久や面白くないと思っている美波とかの話をしようと思っています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします