バカと魔王と召喚獣【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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今回は必殺料理人の回です。龍也さんもあの料理の餌食になってしまうのでしょうか?それでは今回も宜しくお願いします


第10問

 

 

第10問

 

「良い天気だな~」

 

龍也様が空を見上げながら楽しそうに呟く。日の光を浴びて輝く銀髪はとても美しく私の目を奪う

 

「シートも持ってきてるんですよ」

 

姫路がバッグからビニールシートを取り出し広げる

 

「準備が良いな」

 

「ええ、どうせならと思いまして」

 

龍也様に褒められるとはなんと羨ましい。これが女狐だったら殺してる所だ…私はそんな事を考えながら、靴を脱ぎビニールシートの上に座る…当然龍也様の隣を確保するのは忘れない

 

「あの、昨日の八神君と比べられると困るんですけど…頑張って作ってきました

 

『『おお!!』』

 

木下と吉井が歓声を上げる。中々上手に作ってあるようだ…龍也様と比べるとどうって事はないが…

 

「ん、これセッテとはやての分な」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとう」

 

龍也様からお弁当箱を受け取り、包みを開けようとした瞬間

 

バタン!!ガタガタガタガタッ!!!!!

 

土屋が顔面から倒れこみ激しく痙攣する…この症状は見覚えがある…あのバイオ兵器製造人 シャマルの料理を食べた人間と同じ症状だ

 

「「「………」」」

 

龍也様と吉井と木下が顔を見合わせるのか、姫路が

 

「わわ!土屋君!?」

 

リアクションまで同じ!これはもう間違いない!この重箱の料理は猛毒だ!!龍也様に食べさせる訳には行かない品だ!

 

(兄ちゃんにこれを食べさせるな!)

 

(言われなくとも!)

 

一瞬のアイコンタクトとで龍也様を護ると言う、共通の目的を持ち私は狸と手を組む事にした…

 

龍也様を護るのは私だ!

 

 

 

ムッツリー二が倒れ僕達が困惑していると

 

「……ムクリ」

 

ムッツリー二がゆっくりを起き上がり

 

「……グッ!」

 

親指を立てる、多分凄く美味しいと言いたいのだろう…

 

「お口に合いました?良かったです!」

 

姫路さんが凄く喜んでいるが、それなら何故君の足はガクガクと震えてるんだい?ムッツリー二。僕には君がKO寸前のボクサーにしか見えないよ

 

「良かったらどんどん食べてくださいね」

 

姫路さんが笑顔で勧めてくれるが…僕には体を激しく痙攣させているムッツリー二が忘れられない

 

(…秀吉。あれ、どう思う?)

 

姫路さんに聞こえないように小さな声で話しかける

 

(…どう考えても演技には見えん)

 

演劇のプロが言うのだから間違いない、あれは演技ではないのだろう

 

(だよね、ヤバイよね)

 

(明久、お主、身体は頑丈か?)

 

(正直胃袋に自信はないよ、食事の回数が少なすぎて退化してるから)

 

僕と秀吉がそんな会話をしてる中

 

「八神君!良かったら味見してくれますか?アドバイスを聞きたいんです」

 

!?!?

 

しまった!龍也は料理が凄く上手だ!こうなる流れは予測できたのに…自分の保身で龍也の事を忘れてた!このまま龍也があれを食べたら…死んでしまう!?なんとしても護らないと!!僕達Fクラスの神を!!

 

(ワシが行こう、龍也を死なせるわけには)

 

(秀吉!?駄目だ危険すぎる!)

 

(ワシは存外頑丈な胃袋をしておる。何とかなるじゃろう…龍也だけはあの料理の毒牙にかけさせてはならん!)

 

くっ!僕も同じ気持ちだが…僕のステータスではあれを食する事は出来ない!どうすれば!!

 

「おう、待たせたな!へーこりゃ旨そうじゃないか。どれどれ?」

 

雄二が止める間もなく素手で卵焼きを口に放り込み

 

バタン!!!ガシャガシャン!!!!ガタガタガタガタ!!!!!

 

ジュースの缶をぶちまけて倒れた…なんという破壊力

 

「さ、坂本!?ちょっとどうしたの!?」

 

島田さんが駆け寄る…激しく痙攣している雄二、この症状はムッツリー二同様だ…コイツはモノホンだモノホンの劇薬だ…僕が戦慄していると雄二が口から血を吐きながら目で訴えていた

 

『毒を盛ったな?』

 

『毒じゃないよ、姫路さんの実力だよ』

 

痙攣しているムッツリー二の方を見ながらアイコンタクトをすると…

 

「あ…足が…攣ってな…」

 

ゆっくりと雄二が身を起こす、ここはフォローだ

 

「あはは!ダッシュで階段の昇り降りをしたからじゃないかな」

 

「うむ、そうじゃな!」

 

「そうなの?坂本ってこれ以上ないくらい鍛えられてると思うけど」

 

余計な事を言われる前に退場させた方が良いだろう

 

「島田さん、その手をついてるあたりにさ」

 

島田さんの手を指差しながら

 

「さっきまで虫の死骸があったよ」

 

「ええ!早く言ってよ!もう!手洗ってくるわ」

 

再び席を立つ島田さん…これでリスクは低減された…

 

「島田は中々食事にありつけずにおるのう」

 

「全くだ」

 

弁当を食べている龍也を除く男子3人で笑うが、その後では必死の作戦会議が行われていた

 

(明久、次はお前が逝け!)

 

(無理だよ!!僕だったら死んじゃうよ!)

 

(流石にワシもさっきの姿を見ては決心が鈍るのう…)

 

僕達がそんな話をしていると

 

「八神君、それじゃあ味見をお願いしますね」

 

「ん?ああ判った」

 

龍也の弁当箱の蓋に唐揚げが置かれる、不味い!!

 

(やばいぞ!!神が!!神が!!!)

 

(くっ!!どうすればいいのじゃ!?)

 

(誰か身代わりになるしか!!)

 

龍也を死なせるわけには行かない!何とかしなけば!僕達が慌ててると

 

「シッ!!」

 

鋭い気合と共に何かが飛んでいってムッツリー二の口に飛び込む

 

「!?!?」

 

ガクンガクン!!!

 

更に激しく痙攣をするムッツリー二と

 

「あれ?唐揚げが消えました」

 

驚いてる姫路さん…思わず龍也の方を見ると

 

「あれ?消えた?」

 

龍也も驚いている…という事はあれをやったのは龍也ではない…では誰が?直ぐに誰がやったのか判った…それは

 

「…はよ食べんと時間無くなるで?」

 

「ええ…早く食べなさい」

 

龍也の両サイドの八神さんとセッテさんだった…このままでは姫路さんの料理を食べて昇天か、あの2人に殺されるという選択肢しかない

仕方ない…

 

「姫路さん!アレはなんだ!?」

 

「えっなんですか!?」

 

姫路さんの意識を逸らしそのまま

 

(おらあッ!!!)

 

(もがあッ!?なにを…)

 

雄二の口に弁当を詰め込みながら

 

(神の命と僕の命を護る為だ!!死んでくれ雄二!!!)

 

(き…貴様アア!!!もぐっ!!!)

 

口一杯に詰め込み、そのまま顎と頭を掴み無理やり咀嚼させる

 

「ふう、これでよし」

 

「……お主。存外鬼畜じゃな」

 

仕方ないじゃないか、神と自分の命を護るためなんだから…

 

「くへっ!!!ひひっ!!!あはははははッ!!!」

 

奇声を上げながら痙攣している雄二は無視して良い

 

「ごめん、見間違いだったよ」

 

「そうなんですか、あれ?お弁当がもうないですね」

 

「うん!雄二が美味しい美味しいって凄い勢いでね」

 

フルフルと首を振る雄二に

 

「そうですか、嬉しいです!!」

 

「いやいや、こちらこそありがとう。ねっ雄二」

 

「くひ!!くひひっ!!あ、ありがとうな、姫路」

 

奇声は何とか治まったが目が虚ろだ…ここで話題を逸らそう

 

「美味しいっていえば駅前に新しい喫茶店が…」

 

「がはっ!?!?」

 

バタン…ガクガクガクッ!!!!

 

「えっ!?」

 

「そんな…」

 

「間に合わなかったのか!?」

 

龍也が激しく痙攣する…馬鹿な!!あの毒は雄二が始末したはずなのに!?

 

「だ、大丈夫ですか!?八神君!?」

 

姫路さんが慌てて声を掛けると

 

「…大丈夫、全く問題ない」

 

ほっ!無事なようだ…

 

「あの川を渡れば良いんだろう?」

 

前言撤回!!駄目だ!!!死に掛けてる!!!仕方ない!!!

 

「姫路さん!!アレは何だ!!」

 

「ええ!?何ですか」

 

もう1回視線を逸らす

 

(雄二!)

 

(判ってる!!)

 

龍也の身を起こし、雄二の方を向ける。雄二は

 

(緊急事態だ許してくれ!!!)

 

思いっきり龍也の腹に拳を叩き込む

 

「がふっ!」

 

龍也の口から何かが吐き出される…それは屋上に落ちると

 

ドジュウウウウッ!!!!

 

凄まじい音と煙を上げて消え去った…一体あれはなんだったんだ?本当に料理なんだろうか…僕達が戦慄していると

 

「何もないですよ?」

 

「ごめんまた見間違いだったよ」

 

謝っていると姫路さんが、ポンッ!と手を打った

 

「実はデザートもあるんです!!!」

 

「ああ!!あれは何だ!!!」

 

「明久!次は俺でもきっと死ぬ!」

 

くそ、反応の良いやつめ!!

 

(明久!俺を殺す気か!?)

 

(仕方ないんだ!!こんな任務は雄二にしか出来ない!!!ここは任せたぜ!!)

 

(馬鹿をいうな!!そんな漫画みたいな笑顔で言われても出来んものはできん!!)

 

僕と雄二が小さい声で言い会いをしていると

 

(判った、私が逝こう)

 

復活した龍也が自分が逝くと言い出す、僕と雄二は慌てて

 

(駄目だ!!神を犠牲にするわけには!!)

 

(そうだよ!龍也はFクラスの希望なんだ!!こんな所で死なれたら困る!!!)

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、何でもないんだ」

 

「あっ!もしかして!!」

 

姫路さんが顔を曇らせる…嫌がってるのがバレたか?

 

「ごめんなさい、スプーンを教室に忘れちゃいました!」

 

言われて見れば、目の前に置かれた容器の中身はヨーグルトと果物のミックスだ…箸で食べるのは難しいかもしれない

 

「取ってきますね」

 

立ち上がり階段を下りていく姫路さん…チャンスだ!今のうちに話し合って犠牲者を決めよう

 

「さて、兄ちゃんにこんな劇物を食べさせる訳にはいかん。もちろん私も嫌や」

 

「私もごめんです、まだ何も目的を達してないのに死ぬわけにはいきません」

 

「…判った、私が食べよう。シャマルの料理と思えば…」

 

「ふんっ!!」

 

「ぐはっ!!」

 

龍也が食べようとしたので手刀を首に叩き込み意識を刈り取る

 

「ナイスや、吉井…お前は兄ちゃんを救ったので免除」

 

「ありがとうございます!!」

 

これで自分の命と神の命は大丈夫…後は

 

「さて、坂本か木下…どちらが逝きますか?」

 

絶対零度の笑みのセッテさん…断れば死が待っているだろう…

 

「ワシが行こう、雄二は猛毒を食べた。次はワシの番じゃ」

 

「すまん…恩に着る」

 

「ごめん、ありがとう」

 

俯きながら礼を言うと秀吉は

 

「別に死ぬわけではあるまい、そう気にするでない」

 

フッと笑う秀吉に八神さんが

 

「今度、私と兄ちゃんで勉強を教えたるわ」

 

「おお、それは助かる」

 

今度があれば良いのだが…

 

「では、頂きます」

 

容器を傾け一気にかきこむ秀吉

 

「むぐむぐ…案外普通じゃと…ゴバアアッ!!!」

 

また一輪、花が散った…命という名の儚い花が…

 

「…雄二」

 

「何だ?」

 

「さっきは無理やり食べさせてごめん」

 

「判ってもらえたら良い」

 

秀吉は泡を吹き激しく痙攣していた…もう2度と姫路さんに料理を頼むのは止めようと心に誓う僕達だった…

 

第11問へ続く!

 

 

 




えーと姫路さんの料理の腕はシャマル以上ではないかと思い、こういう話にして見ましたがどうでしょう?面白かったですか?それならば良いのですが…それでは次回の更新も宜しくお願いします

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