モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。 作:rairaibou(風)
Q 『何でもできるポケモン』に何を任せるか。
近代ポケモンバトルにおいて、ポケモンの長所を生かしたパーティの厚みという概念は非常に重要なものの一つだ。
優れた攻撃力、または豊富な能力上昇手段により最も重要なオフェンスを任されるポケモン、優れたタフネスにより、相手の主力ポケモンの攻撃を耐え抜くディフェンシブな役割を任されるポケモン。場をかき回す能力に優れ、相手の連携を妨害しながら相手陣にスキを作ることを画策するポケモン。優れた特性により相手を手詰まりに陥らせることを目的としたポケモン。その他奇襲などを含めれば一つのパーティが組み込むことのできる戦略は多岐にわたる。
だが、そのような役割をもたせる戦略は、裏を返せば一匹のポケモンでできる戦略には限りがあるということを表している。
何でもできるポケモンなど存在しない。そのような理屈を中心に、現代ポケモンバトルは成り立っている。
すべてを圧倒する攻撃力、どんな攻撃にも耐える防御力、無類のタフネス、誰もついてくることの出来ない速度、技の選択肢は豊富であり、おおよそすべての妨害能力に長け、その気になればパーティへの献身的な補助も可能。そのような『何でもできるポケモン』は現代バトルにおいてもトレーナーの夢であり理想の一つではないだろうか。
あまりにも陳腐な質問と鼻で笑われることは覚悟の上で、そのようなポケモンにトップトレーナー達がどのような役割を持たせるのかを問いたい。
A 何でもできるということは
(カントー・ジョウトリーグチャンピオン クロセ)
おそらく質問者の想定ではこの『何でもできるポケモン』は高い攻撃力、防御力を持ち、技の選択肢は豊富で、追いつけるポケモンが居ないほどの俊敏性を持っていると言ったところでしょう。
ですが、そのようなポケモンが必ずしも無敵ではないのだと断言できることがポケモンバトルの最も面白いところなのです。
高い攻撃力はそれだけ『カウンター』や『ミラーコート』の威力を高めますし、もしかすれば『メタルバースト』ですら圏内かもしれません。
どれだけ高い耐久力を持っていたとしても『どくどく』や『のろい』のような搦手の前には意味がありませんし『みちづれ』などのプレッシャーから逃れられるわけでもありません。
最も問題なのは高い素早さです。これに関しては『トリックルーム』という明確な答えが存在します。何人もの使い手が存在し、研究が盛んな技でもあります。第一に考えられる対策としては『ちょうはつ』があげられますが、おそらく相手も『どんかん』なポケモンを起動役に選ぶでしょう。そのポケモンがどれだけ『何でもできる』ポケモンであろうが、対策は必ず存在します。
そして、私はパーティの中心にそのポケモンを据えます。相手に一方的に戦略と対策を強要させ、その負担を突くような戦いを考えるでしょうね。
A 悔しさと嬉しさと
(殿堂入りトレーナー ワタル)
順当に考えるのならば、ドラゴンタイプの弱点であるこおりタイプ、フェアリータイプに対して強く出ることのできる存在として潜ませておくだろう。ハガネールが嫉妬するかもしれないな。
しかし感慨深いのは、この『何でもできるポケモン』というカテゴリは、かつて一纏まりに『龍』と表現されていたものだった。故にそれらを扱うことのできる我々『ドラゴンつかい』は、良くも悪くも人里からはかけ離れた存在だった。
このような質問が出てくるということは、すでにドラゴンというものは『何でもできるポケモン』ではないと評価され、我々ドラゴンつかいも只々恐れられるだけの存在ではなくなったということだ。
悔しさとともに、嬉しくもある、
ここから『やはりドラゴンこそが何でもできるポケモンだったのだ』と再び恐れられることこそが、我々の新しい使命であり、ドラゴンという概念に返すべき尊敬なのだろう。
A そのポケモンがシーンに与える影響
(第〇〇代カントー・ジョウトリーグチャンピオン キシ)
この質問の意図はよく分かるし、求められている答えも理解できる。
だが、リーグトレーナーであるという当事者の立場から考えれば考えるほど、そのポケモンに自分が持たせる役割よりも、そのポケモンの出現によるリーグへの影響のほうが浮かんでしまう。
大前提として、そのポケモンが特殊な生態をしていない限り、瞬く間にそのポケモンの個体数は膨れ上がるだろう。トレーナーの夢のようなポケモンだ、誰もが手に入れたがる。
そうなれば、現在のリーグ環境はすぐに崩壊するだろう、すべてのトレーナーがそのポケモンを六体敷き詰めたパーティのみとなってしまう。そうなればパーティ構築論における『役割』は実質的に消滅し、事前準備よりも現場でのトレーナーのアドリブが重要になる環境になるだろう。すべてのパーティが均一化し、頭脳と才能がより重要な環境になるはずだ。そのような危険をそのポケモンははらんでいる。
質問の意図を尊重し、そのポケモンが世界に一匹しか存在せず、自分だけが手持ちに入れることができるのであれば、私ならば受けを任せるだろう。時間を作り、考える時間が欲しい。
A 咄嗟のアイデアを実現できる切り札として
(カントー・ジョウトAリーガー シン)
もし、そのようなポケモンを手持ちに加えることができるのならば、私はパーティのアンカーとしてラストを任せようと思っています。
試合の終盤、お互いに消耗しきり、序盤ほどの集中力を維持できなくなったとき、ふと、その状況を看破することのできるアイデアが浮かぶことがあります。これは理屈ではありません、とにかく浮かぶことがあり、それに頼って勝利することもしばしばです。
そのような突拍子もないアイデアを、そのままに実現できる切り札としてそのようなポケモンがいれば心強いですね。
尤も、私にとってはそれができるパートナーがサーナイトなのですが。
A 是が非でも
(カントー・ジョウトAリーガー モモナリ)
『何でもできるポケモン』が仮に居たとして、それを扱うトレーナーが『何でもできる人間』とは限らないし『何でもできる人間』なんてそれこそ滅多には居ないだろう。
もしかしたらそのような『何でもできるポケモン』は今頃どこかの草むらで短パンを履いた子供と一緒に野生のコラッタを相手にたいあたり合戦をしているかもしれないし、虫取り少年を相手に勝ったり負けたりを繰り返して、大満足しながら家に帰っているかもしれない。それもいい、それもいい関係だと思う。
もし『何でもできるポケモン』が『何でもできる人間』と出会い、一つの群れになっているのだとしたら、是非ともその対面に立ってみたいね。なんでもできるということはどういうことなのか、僕たちが追い求め続けた答えのようなものを見せてくれるのだろう。とてもじゃないが一度だけじゃ堪能しれないだろう、望む限り、何度でも、何度でも戦いたい。
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マシュマロ
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