モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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月刊誌スタジアム『ボス達の見解』⑦

Q リーグトレーナーが引退を考えるべきなのはいつか。

 

 地方を問わず、リーグトレーナー廃業を決意するトレーナーは数多い。毎年のように新たなリーグトレーナーが生まれるにも関わらず、各地方のリーグが財施破綻を起こさないのは、そのような厳しい現状があるからだろう。

『ギリギリ食えない』と称されるCリーグにおいて、いつ引退すべきかというのは大きな問題だ。幸いにもバッジをコンプリートしているという資格は、ポケモンに関わる業種すべてが欲するものでもある。『バトルで食う』という夢に目をつむることができれば、若ければ若いほど新たな人生は明るいだろう。

 引退問題はCリーグの若手トレーナーだけの問題ではない。Aリーグ、Bリーグにリーグのトレーナーにとっても、無視はできない人生の選択のはずである。

 それを問うことが大きな不敬であることは理解しつつ、我々の礼儀をわきまえぬ質問に、OB、現役それぞれのトレーナーから答えを頂いた。

 

 

 

 

A 精神が先か、身体が先か。

(元リーグトレーナー クロサワ)

 

 どの面下げてこんな質問をするのかとも思うが、踏み込む姿勢自体は嫌いでは無い。

 まず、三年以上Cリーグで停滞してる若手、今すぐ引退しろ。お前たちに未来など無い。後に一角のトレーナーとなった人物で、三年もの間結果が出なかった者など見たことがない。

 確かに、昔と比べて今のリーグは厳しい、それは認めよう。だが、それでも傑出することが出来ないのは才能が欠落しているからとしか言いようがない、私の言葉を言い訳に引退しろ。

 そして、才能があったばかりにAリーグBリーグに上がってしまった奴ら、引退すべきタイミングは体か精神が悲鳴を上げてしまったときだ。そのどちらかに変調を見れば、悪いことは言わない、引退しろ。私はそれで十数年を無駄にした。

 

 

 

 

A 納得した時

(元リーグトレーナー トミノ)

 

 私はこのような機会を初めて与えられたのですが。クロサワさんなどは『三年以内に結果が出なければ辞めろ』とでも言うんでしょうね。

 そのような考え方があることも悪くはないと思いますが、そのような声に首を振って、自分が納得できるまでリーグにしがみつくのも悪くはないのではないでしょうか。もちろんそれは、自分で身の振り方を考えることが大前提ではありますが。

 引退のキッカケとなったのは〇〇期シルフトーナメントでのシバさんとの対戦でしょうか。あの試合で、私はトレーナー人生の集大成を感じました。あれ以上のことは出来ない。そう思って引退しました。

 私もずいぶん長くCリーグにしがみつきましたが、その期間があったからこそあの試合ができたのではないかと思っています。自分の人生の価値を決めるのは他人ではありません。私は最も幸せな引退をしたトレーナーの一人でしょう。

 

 

 

 

A 負けてぐっすり眠ることが出来た翌日

(第〇〇代カントー・ジョウトリーグチャンピオン カリン)

 

 私が引退を考えるとするならば、負けたその日に、何事もなくシャワーを浴び、体が冷えるよりも先に眠ることが出来た翌日でしょうね。

 意外に思われるかも知れないけれど、今でも負けた日にはうまく眠ることが出来ない。それこそ『負けた日の眠り方』なんて本を書くことができるくらいには。

 考えて、考えて、後悔して、明日に希望など持てず。疲れに引きずり込まれるように気を失って、翌日、陽の光が登っていることに安堵しながら目を開ける。そういうことを、今でもしている。

 それを日常の一部だと本能が思ってしまったのならば、もうバトルでは興奮できないだろうから。

 

 

 

 

A 肉体の衰えを感じたら

(第〇〇代カントー・ジョウトリーグチャンピオン キシ)

 

 僕は精神論を振りかざすつもりはないし、今の自分が引退に値する実力だと謙遜するつもりもない。生涯を通して情報を貪る覚悟もあるし、それを結果にしてきた自負もある。

 その上で僕が引退を考えるとするのならば、それは僕自身の衰え以外にはありえないだろう。

 頭か、耳か、喉か、それとも目か。

 それらのどれか一つでも欠けてしまえば、僕は僕というトレーナーではなくなるだろう。そうなってしまった時、僕は僕というトレーナーをもう一度構築し直す自信はない。故に、そのようなリスクある行動は排除して生きていこうと考えている。

 そして、偽善のように聞こえてしまうかも知れないが、僕は他のトレーナー達がそのような理由で引退する姿を見たいわけでもない。リーグにはトレーナーの健康状態に配慮したルールの整備をお願いしたい。

 例えば『すなあらし』状況下ではトレーナーに防塵ゴーグルの着用を強制するようにルール改正をしてほしいものだ。

 

 

 

 

A 情熱が無くなった時

(カントー・ジョウトAリーガー モモナリ)

 

 僕は色んなトレーナーと戦ってきた。

 その中には目の見えないトレーナーもいたし、耳が聞こえないトレーナーもいた、車椅子のトレーナーだっていた、足でボールを蹴ってポケモンを繰り出すトレーナーもいた。

 年老いたトレーナーもいた、パートナーであるポケモンを事故で失ったトレーナーもいた。

 みんな、強かった。彼等からはポケモンと共に生きるという事への果てしない情熱を感じること出来た。どのような立場になるにしても、僕も情熱が続く限りは現役を続けようと思う。

 だけど、それを人に押し付けるつもりは今のところ無い。

 勝てなくなったから、心が疲れてしまったから、体が衰えたから。

 それはあくまでその人にとっての情熱を失うきっかけに過ぎない。情熱が無くなれば一旦距離をおいてもいい。またふつふつと情熱が湧いてくればまた始めればいい。リーグはともかく、バトルとはそんなものだと思う。




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