モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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週刊ポケモン生活創刊30周年特別企画『モモナリマナブのおてんき質問室』③

 質問コーナー開設以来とても多くの質問を頂いているらしい、非常にありがたい。

 特に僕の昔のことを問うような質問が非常に多く、皆さんよく僕のことを調べてくれてるんだなあと感心するばかりだ。

 たしかに昔の僕は他地方を飛び回っていたし、いろいろなトレーナーと交流を持った。その経験で読者の皆さんが楽しんでくれるのなら嬉しいが、同時に昔の僕は相当いろいろな人に迷惑をかけていたらしいので、反省する部分もあるなと思っている。

 今回の質問はその多くをメール投稿から選ばせていただいた。楽しんでいただければ幸いだ。

 

 

 

 

Q モモナリ選手はリーグトレーナーデビューした頃から現在まで、様々な地方で様々なトレーナーと縁を持ってきた方かと思います。そんなモモナリ選手が思う『これは他の人は知らないんじゃないかな?』という各トレーナーの逸話があれば教えていただけませんか?(40代男性)

 

A キクコさんは僕以上に無茶な人だよ。

 

 この手の話ってどこまでが言って良い話でどこからが言っちゃいけない話なのかわからないから難しいんだけど、怒られそうにないエピソードを話そうと思う。

 この前ガラルリーグチャンピオン、ダンデ(当時)とのエキシビションのためにガラルに飛んだんだけど、その時キクコさんに呼ばれてね、また何か怒られるのかと思ったんだけど、どうも向こうのジムリーダーに伝言があるということだった。その相手はポプラさん、ガラルのアラベスクジムリーダー(当時)で、その内容は「どうしてあの時誘いに乗ってくれなかったんだ」というものだった。それを聞いたときの僕の衝撃といったらなかったね。

 ずっと昔、当時カントーリーグチャンピオンであったキクコさんがリーグのレベルの底上げのためにいろいろなトレーナーをリーグに引き込んだことはもう超有名な話だと思うけど、まさかその構想の中にはるか遠くガラル地方のジムリーダーも組み込まれていただなんて想像もできない。海の向こうから、ロトムフォンがなければ意思の疎通すらできない人間を呼ぼうだなんて、暴れるしか能がなかった過去の僕に比べてとてもインテリな意味で無茶な人だよね。

 あと聞いた話では当時ジョウトリーグにいたカリンさん、カロスリーグのガンピさんにも声をかけていたらしくて、その慧眼には本当に恐れ入るよね。

 どういうことかと言うと、ポプラさんはフェアリータイプ、カリンさんはあくタイプ、ガンピさんははがねタイプのエキスパートであって、これらのタイプはカントーリーグが他地方に比べて少し研究が遅れていたタイプで、実際に他地方との交流試合なんかではそこをつかれたりもしている。意図的か感覚的かは知らないけれど、キクコさんはこの辺の弱点をしっかりと理解してその対策を練ろうとしてたんだよね。

 当時のカントーリーグってかなり保守的な思想が強かっただろうと思うし、そもそも自分がチャンピオンであるリーグに新しい戦力を取り込むって凡人じゃできないよ。キクコさんやキクコ一門のモットーは『終わりのある強さは弱い』ということだとキリューがよく言っているけど、それを象徴するエピソードだね。

 キクコさんのこの様な思想のおかげで僕みたいなものでもカントー・ジョウトリーグの末席にいることができるわけだし、感謝しか無いね本当に。

 本当はワタルさんやカンナさんやシバさん、キョウさんとのエピソードもあると思うし実際にあるんだろうけど、それは何度聞いても「良い思い出だから」と教えてくれないんだよね、聞きたいんだけど無理っぽいなあ。

 あー、あとハナダジムリーダーのカスミがボーイフレンド募集中です。

 

 

 

Q 捕獲に一番苦労したポケモンはなんですか?(10代男性)

 

A 捕獲はあまりしないけど、やっぱり手持ちが揃うまでは大変だよね。

 

 僕は基本的にあまり捕獲しないタイプで、その手のプロに比べると技術的にはあまり大したこと無いんだろうけど。その中で今パッと思い浮かんだのはやっぱり古参であるジバコイル、アーボック、ピクシーかなあ。

 まずジバコイルなんだけど、一番苦労したのは彼との戦いだね。当時はコイルだったけど。

 ハナダの少年たちが周りと一歩差をつけようとして無人発電所に行くのは散々言ってきたことだけど、当然皆水ポケモンしか持ってないわけだから大抵ボコボコにされて終わるんだよね。

 それで僕も前例に違わずコダックを連れて無人発電所に行ったわけだけど、まあ大変だった。

 当然コダックは無人発電所のポケモンたちにボコボコにされちゃうし、途中でなんかでかいエレブー出てきちゃうし、最後の方ほとんど素手だったからね、ゴム手袋はめて。

 痛いやらしびれるやらで心の底から泣いたけど、その結果コイルと友達になれたし、いい思い出かな。

 その次はアーボックだね、彼女との思い出は苦労したと言うよりも怖かった、恐ろしかった。生まれてはじめて死を意識したもんね。

 当時の僕はコイルを手持ちにしたことで完全に周りに一歩二歩差をつけた状態だった。もうハナダのジムトレーナーともいい勝負してたんじゃないかな? 無人発電所でやたら強い鳥ポケモンと戦いまくったりしてコダックはゴルダックに、コイルはレアコイルになっていた。

 その頃にハナダとお月見山をつなぐ四番道路で、めちゃくちゃ強いアーボックが現れたと騒ぎになった。誰か被害者が出て(幸いにも軽症だったと思う)一時的に封鎖されたんだよね、僕も家族から「絶対に行くな!」と強く釘を差されたのを覚えている。覚えているだけで守らなかったんだけどね。

 ハナダにはジョウトのシロガネやまに並ぶ超危険な生態系を持つ山があるんだけど、稀にそこからポケモンが迷い込むことがあるから、そういう事自体はハナダの住民はある意味慣れっこではある。

 で、大抵そうなるとポケモンレンジャーかジムリーダーのカスミが出てきて、その超強いポケモンを追い払って終わりなんだけど、当時の僕はなんかもったいないなと思ったんだよね、子供だから。

 それで人目を盗んで四番道路に行ってアーボックと戦ったわけだけど、いやー彼女は強かった。

 毒タイプだからゴルダックのサイコパワーでなんとかなるかなと思ってたんだけど、そんなに簡単な話じゃなかったね。レアコイルがいてくれたからなんとか『まひ』させることができたけど、彼がいなかったら、もし状況が三対一じゃなかったら僕やられてただろね。怖かったよ、本当に。

 それでまあなんとか勝ったんだけど、その後アーボックがものすごく僕に懐いて手持ちに入ることになった。

 いやしかしあれは怒られたね、初めてお母さんに殴られたもの。

 最後はピクシーかな、彼女はまずめちゃくちゃ強かったし、あまり人間を信頼してなかったんだよね。お月見山っていう世界的に珍しいピッピの群生地にいたから、あまり良くない性根の人間ばかりを見てきたんだろうと思う。

 かなり足繁くお月見山に通って、戦って、たまに協力しながら親交を深めていって、なんとか認めてもらえたって感じかな、最後はお月見山の奥深くにあるピッピ達の神聖な場所に招待されてね、一緒にピッピの進化の儀式を見たんだ。これは自慢だけど、その場所に入れるのは僕とタケシさん、後は数人だけなんだよ、最近はオグラくんも招待されたと言っていたっけ。

 思い出話は楽しいし長くなるね。

 

 

 

Q かつて諸地方のチャンピオンクラスに手当たり次第喧嘩を売ったと噂のモモナリ氏ですが、実際戦ってみて一番驚いた/面白かった(強かった、ではなく)のは誰でしたか?(20代女性)

 

A 情熱には驚いたね。

 

 最近よく言われるんだけど、僕世間や他のトレーナーが言うほど喧嘩売ってないからね。

 トレーナーと戦って驚くこととか面白かったことはいっぱいあるんだけど、大抵そういうトレーナーって強いものだからあんまりこの質問に当てはまるトレーナーっていなかったなあ。

 ただ、ひとり思い当たるのはジャクソン君のお父さんかな。

 イッシュリーグを相手に行ったエキシビションマッチで、僕がイッシュリーグトップトレーナーであったジャクソンくんに勝利したことは割と有名だと思う。あの後かなりイッシュで仕事が増えて良い思いしたんだよね。

 あの試合は世間が思ってるほど僕の完勝ってわけじゃない、ジャクソンくんがちょっとづつ意地を張ったところがあって、結果としてはこちらにあまりダメージがなかったけど、割と危ない橋は渡ってた。

 それはジャクソンくんもわかってたと思うんだけど、どうも腑に落ちないところがあったらしくて、2年くらい前にカントーにリベンジしにきたんだよね。その時に彼のお父さんとも手を合わせたんだ。

 実はジャクソンくんのお父さんはイッシュリーグのリーグトレーナーだったんだけど、僕はそのお父さんが現役のときに戦ったことがあるんだよね、色々あって。

 その時は普通に強いトレーナーだったんだけど、二年前に僕の前に現れた時はもうリーグも引退していたし、やっぱりお歳を召していた。

 ところが手を合わせてみると、彼は最新の戦術を引っさげて僕と真っ向勝負してきたんだよね。あれには驚いたよ。僕よりも随分と年上で、息子さんはイッシュリーグのトップトレーナーになっていたのに、まだバトルに対する情熱がここまであるのかってね。新しい戦術を覚えることも使いこなすことも大変なんだよ。果たして僕が彼と同じ年齢になったときに、同じくらい情熱を持ってこの世界にいることができるかどうかってわからないから、本当に尊敬できることだと思う。

 勝負そのものは僕が勝った。やっぱり相手は歳をとっていて、特に目が悪そうだった。僕の『すなあらし』戦術は、ガブリアスが加入してから特に目が重要になってきているから、だいぶ辛かったと思う。多分あの試合で、彼の理想の動きの三割も出せていなかったんじゃないかな。

 でも逆に言うと、もし僕の手持ちにガブリアスがいなければわからない勝負だったんじゃないかなと思ってる。そのときに彼が見せた戦術は、彼の直接の弟子であるニーベさんが受け継いで今Bで調子がいいらしい。僕って多分後世に何かを残すことができないだろうから、ああいうのって本当に憧れるんだよね。

 彼だけじゃなくて、僕はベテランの人と手を合わせるの好きなんだよね。僕よりもだいぶ年齢が上なのに情熱を持ってこの世界にいる人が好きだし、尊敬しているよ。

 

 

 

Q ジバコイルをどうやってピカピカに磨いているの? 私もエアームドちゃんを磨いてあげたいです(8歳女性)

 

A 化粧品の相性は人それぞれ、動画見てね!

 

 可愛らしい質問だね、きっとエアームドちゃんも喜ぶと思うよ。

 僕はジバコイルを定期的に磨くようにしてるんだよね、昔は暇さえあれば磨いていたんだけど、最近は月一回、リーグ戦の翌日に磨くのがルーティンになっている。はがねタイプのポケモンの表皮の代謝を考えるとそのくらいが良いらしいと聞いているんだけど、せがむようならもっとやってやればいいと思うし、嫌がるようならやらなくても良いんじゃないかと思う。実際僕も『すなあらし』をやりすぎて傷が目立つようになったらルーティンを崩してやってるし、野生のはがねポケモン達は誰にも磨かれてないのに何の問題もないわけだしね。

 最近は鏡面仕上げに凝ってて、特に背面は念入りにやるね、ジバコイルを繰り出したときに僕自身が見えるくらいピカピカに磨いていれば、僕の背後に何かが現れても対応できるでしょ?

 逆に正面は傷を取る程度にして何も映らないようにしている。彼と向き合う相手のポケモンに情報を与えたくないからね。だから今のジバコイルの現状は正面からグラデーションを使いながら背面の鏡面仕上げにするって感じだね。最近のトレンドはわからないけど、ジバコイルも喜んでいるよ。

 使っているのは工業用の研磨剤だね、子供の頃から色々試して落ち着いたブランドがあってかなり長く使ってる。ただ、はがねポケモンの体表は人間の皮膚と同じで生活環境とか性格とか普段どんなことをしてくるかで変わってくるから、それぞれにあったものを探すのが大事だね。

 最近はポケモン用の研磨剤がメーカーから発売されていて、割と広く使えて良いなと思うし何より生き物に使う気遣いがされていると思うのではじめの内はそれを使えば良いんじゃないかな。慣れてくれば自分のポケモンがどういう光り方を求めているかというのがわかるようになると思うよ、光るのが嫌なタイプの鋼タイプもいるしね。

 僕は十種類くらいの研磨剤を段階的に使っていって艶を出すんだけど、これもはじめの内は五種類くらいでいいとおもう。全ては慣れてからだね。

 あと絶対なのは長袖長ズボンで手には革の手袋をして行うことだね、大好きなポケモンに傷つけられたくないしポケモンも君を傷つけたいなんて思ってないから、僕みたいにならないようにね。

 後は細かい技法なんかの話になってくるんだけど、ここらへんは文字では説明しにくいので、この雑誌が発売される日に合わせて『週刊ポケモン生活』のpoketubeアカウントに動画を投稿するのでぜひとも見てね、ジバコイル版とエアームド版をアップするようにしました。でも僕は別にプロじゃないのであんまり期待しないでね。

 

 

 

Q 才能に関する言及をする機会の多いモモナリ氏ですが、才能による感覚を完璧に言語化し、学術として落とし込んだ場合、才の劣るトレーナーであっても、学べば天才の感覚に並べると思いますか?(トレーナーとしてではなく研究者として質問します)(30代男性)

 

A 才能と努力は平行線、近づくけど交わらない、競う以上、どこかに差は出る。

 

 無理ですね、二重三重に無理です。

 例えばタイプ相性であったり技の使い方であったりというものは、今から数十年前の、キクコさんやオーキド博士が現役であった頃に比べたら今は大分解明されて、頑張ればバトルに全然興味がない人でも学べるよね、そういう点では、質問のように『強い人間が持っていた感覚』を才能がない人も持てるようになってる。

 たしかにそのおかげである程度の底上げはあった、全然才能がないようなトレーナーでも努力である程度のレベルにはなれるようになったと思う。最近思うのは、バッジを六つ持ってる子とポケモンに対するクイズ大会をやったら僕負けると思うんだよね。そのくらいかつての『感覚』は『理論』になってる。僕がよく言う『情報化』ってやつだね。

 その結果何が起きたか? 今度は別の部分で『才能』が必要になって、やっぱり凡才は勝てて無いのが現状だ。

 この手の議論になったときに大きく勘違いされることの一つとしては『天才=努力しない』『凡才=努力する』という構図にくくられることなんだけど、はっきり言って天才も努力するからね。キシくんとかクロセくんとかワタルさんとかメッチャしてるからね。

 だからはっきり言ってどれだけ感覚が言語化されようと、才能によって差は出ます。だって言語化されるってことはその情報を誰でも手に入れることができるってことだから、それはトレーナーが持つべき必須の情報が増えるだけで才能を埋めるものにはならないと思うよ。

 ちょっと余談になるけど僕はあんまりこの風潮が好きじゃなくて、人より情報を詰め込もうとか、周りより強いポケモンを使おうとか、そういう手段で結果を出そうとするアマチュアの人が増える事をどうしても受け入れられないんだよね、努力は尊いものだと思うけど、才能から目をそらしすぎるのもなあ。

 あとちょっと思ったのは、そもそも才能による感覚を完璧に言語化するという前提があり得るのかな? ってことだね。

 タイプ相性であったり技の使い方であったりポケモンの強さであったりというものを学術に落とし込むことは可能だと思う、というよりそれらは学術に落とし込まれ続けている。

 ただ、それ以外の要素を学術に落とし込めるかどうかがわからない。

 例えば相手のポケモンを確認してから自分の手持ちのポケモンの状況を思い出して技の指示を出したりポケモンを繰り出したりする。これらの作業って時間をかければ誰でもできるかもしれないけど、実際のバトルでは素早く行わなければならないよね。これには学術は関係ないんじゃないかな。

 実際に僕の『すなあらし』戦術はそういう要素を徹底的に攻めるようにできてる。濃くて視界の悪い状況で戦局を複雑にしたり、取捨選択を高速で迫ったりして相手の本質的な部分を引きずり出すのが僕のコマンドの一つだ。当然僕も同じ様な状況になるんだけど、僕は慣れてるしそういう状況で負ける気がしないしね。

 それ以外にも一瞬の判断で自分の判断を尊重できるかとか、逆に自分の判断を疑えるかとか、考えてから行動するんじゃなくて行動してから考えるという不合理を受け入れられるかとか、そういう部分はもし仮に学術に落とし込めたとしても、そのトレーナーの人間性の部分が大きすぎるんじゃないかなと思う。

 それに、もし百歩譲ってすべての才能の感覚を学術に落とし込めたとしても、今度はそれを全部覚えることができる頭の良さが新しい才能の概念になるだけなんじゃないの? そうなったら僕は廃業だね。




 多くの質問本当にありがとうございます!全てに答えられるわけではありませんができる限り答えようと思います!

 エッセイ形式とセキエイに続く日常、そしてこの質問形式の3つのストーリーの中には「モモナリだけが知っていること」「モモナリと読者(皆さん)だけが知っていること」「この世界の読者が思っているモモナリのことやイメージ」「モモナリがこの世界の読者は知らないだろうと思っていること」などの情報が混在しています。それらを考えながら読んでいただけると、もう一匙くらい面白くなるんじゃないかと思っています。

感想、評価、批評、お気軽にどうぞ、質問等も出来る限り答えようと思っています。
誤字脱字メッセージいつもありがとうございます。
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また、もしあればモモナリへの質問などもよろしくおねがいします(全てに答えることができるわけではないと思います

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