モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。   作:rairaibou(風)

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10-キシ君と二人、北の大地を踏む

 先週に引き続き、キシ君との二人旅の話。

 海の下を通って居ると言うながーいトンネルを通って僕達は無事シンオウに上陸した。

 さて、遊ぶのは仕事が終わってからだよとキシ君を諭し、まっすぐとナギサシティへと向かう。

 

 ナギサシティでは本当に驚いた。なんと道路の一部がソーラーパネルになっており、電力を供給しているというのだ。さすがは電気のエキスパートジムリーダーのお膝元! と感心していると、ポケモン協会シンオウ支部の職員さんが「デンジがジムを改造するときによく停電が起きるので…これで…」と申し訳無さそうに言った。なんというか、電気タイプのエキスパートのジムリーダーは、ジムと町を改造しないといけない法律でもあるのだろうか? カントーのマチスも相当な物好きだが、ここまでぶっ飛んでは居ない。さすがは自由と想像の地方である。

 

 ナギサジムで行われた指導対戦はとても楽しかった。やはりジムリーダーが仕切っている町は基本がしっかりしている。

 ジムリーダーのデンジ君は、なんとも整った美青年だった。身に纏う雰囲気も格が違う。気だるそうなオーラを出しているけど、本心は暑く燃えたぎっているのがよく分かった。そもそも、そういう気持ちが無ければ、チャンピオンとのエキシビションなんて受けないだろう。キシ君とデンジ君、後は超新星のチマリちゃんに挟まれて、いやはや僕はすっかりだ。

 

 さて、キシ君のエキシビションも大一番だが、僕とチマリちゃんの試合も大一番である。僕はこの試合で人生が変わることはないだろうが、チマリちゃんはそうではない。

 チマリちゃんを一目見て、ほほうなるほど、トレーナーとしての資質は素晴らしい、と思った。しかし、相手はまだ九九も言えない子供である、手持ちのポケモンがピカチュウ四体と言うのもバランスが悪く、対策が立てやすいし、僕は困ってしまった。

 僕はカバルドンと言うポケモンを主力の一体としている、シンオウ生まれカントー育ちのうい奴なのだが、恐らくこのポケモンがチマリちゃんに対してぶっ刺さっている。ただぶっ刺さっているだけならいいのだが、笑えないくらいにぶっ刺さってる。

 デンジ君のようにオクタンやエテボースで電気タイプのウィークポイントを補填しているならともかく、ピカチュウ四体となると少なくとも僕のレベルではカバルドンに勝つのは無理である。ポケモン協会はそこの所分っててブッキングしているのだろうか?

 わざわざ遠方からこのエキシビションを見に来ている(目的はキシ君とデンジ君だとしても)人達にそんなのものを見せる訳にはいかないと思うし、あまりにも大人気ないと思う。しかもこれを協会職員やデンジ君に相談するわけにも行かないし(手加減してくれるなと言われるに決まっている)本気で困った僕はこっそりとキシ君に相談した。

 

「最短で潰せばいいじゃないですか」

 何の躊躇も無く言った。

 さすがはワタルさんを倒してチャンピオンになっただけのことはある。

「いや、それはさすがに…」

「大差になってしまうのはジム側も協会もわかってるでしょう、そもそもジムトレーナーとモモナリさんとを戦わせること自体がもうおかしいんですよ。しっかり叩いてわからせないと駄目ですよ」

「いや、だけどね、チマリちゃんはそこのところと関係ないわけだし」

「チマリちゃんだってトレーナーなんですから。ピカチュウばっかり持ってるのも本人の責任ですし、それで潰れたらそれまでですよ。むしろしっかりここで叩いとかないと、十年後また戦うときに舐められますよ」

 さすがに相談する相手を間違えた。返事を濁して一人になって考える。

 そこでパッと妙案が浮かんだ。実は僕は新しい戦術を試そうとしていたのだ。ノーてんき砂嵐戦術を独自改良し、ドラゴンタイプへの牽制を重視したノーてんき霰戦術である。もうユキノオーも育てているし、実戦投入のタイミングとしては十分だ。

 これなら手加減をせずにカバルドンを使わずに済むし、何よりカントーのトレーナーがシンオウで霰を降らせるとは、なんとも風情があっていいではないか。

 僕は大満足して当日を迎えた。

 

 確かに対戦と言われていた。対戦と言われていた。

 しかし、まさかその対戦とやらが『ナギサシティをコースにした合同ミニポケスロン』とは思わないじゃないか。

 どうも知らなかった、と言うより知らされてなかったのは僕だけだったらしい。キシ君もきっちり知ってたらしい。こう言うのどうかと思う。

 しかし、賞品がサイコソーダ一年分とあってはさすがに本気を出さざるをえない。僕はゴルダックと二人で、ナギサのソーラーパネルを走った。

 本誌の巻頭に写真付きで特集を組まれているので、勝敗はそこで確認して欲しい。特にアメ探しのあたりは激戦である。

 

 しかし、美味しそうにサイコソーダを飲むチマリちゃんに「一口ちょうだい」と言ったら「ダメ、私の」と言われたのには参った。

 まったく、彼女のほうがトレーナーとして非情である。




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