異世界での理想の女の子探し   作:重ねず郎

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第一話:TS転生だったんだー

どうやらぼくはミュアル・レフィシード・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという貴族の子供に転生したらしい。

ヴァリエールといえばあれだよねー。

ゼロ魔のルイズの家だよねー。

実際一つ上の姉にルイズいるし。

まあいったいいつ死んだのかよくわからないけど、これは願ってもない好機かもしれない。

あの歳からぼくの理想の女の子を手にするのはぶっちゃけ厳しいと思っていた。

でも、今から頑張ればなんとかなる!

家柄も容姿も最高!

後は能力と性格だけだ!

可愛い嫁さん貰うため頑張るぞー!

 

と思っていた時期がぼくにもありました。

一年経って言葉も分かるようになってきた時点で気付けばよかった。

いや、そうでなくても座ってお風呂に入る様になった時点でも遅くはなかった。

只今二歳。

今日、ぼくは一人で服を着替えられるようになった。

その時ついにぼくは見てしまった。

自分の身体を。

自分の身体の真理を。

聖なる部分を。

みんながぼくが一人で服を着替えて驚いている中、ぼくは必死にお母様の服を掴みながら叫んだ。

 

「お母様! ぼくついてません!」

 

その場に居た人間が数秒固まった後、ぼくに自分の性別を理解させるべく沢山沢山説明された。

何回くり返されたか分からないほど言い続けられた。

 

ぼくはどうやら女の子のようです。

そうか……、ぼくはTS転生をしたのか。

仕方ない、理想の女の子を探すんじゃなくて、理想の女の子になることにしよう。

ってかこの方が難易度低いかも。

幸いぼくの髪の色は光り輝く金髪だ。

いや、マジで輝いてるんだよ。すごく光に反射する。それはもう、キラキラと。

後はこれを膝辺りまで伸ばしてツインテールに、と。

それから問題は性格か。

“ぼく”役の人間はぼく以外だったらいらないしなー。

そっちの気はないし。

まあみんなに優しいミュアルたんということで。

まあミュアルたんもといぼくは誰にも嫁にやらんが。

ぼくはぼくのものだー!

ぼくは俺の嫁!

……とか言うととナルシストっぽいかな?

とりあえず口調は変えるの面倒臭いし、敬語以外はぼくっ娘でいいか。

 

 

 

ここでぼくのお姉様達の話をしよう。

ぼくのお姉様は全部で三人。

今更だけど、何という女系家族なんだ。

子供四人とも女って……。

ルイズは長女のエレオノールのことを“姉さま”と、次女カトレアのことを“ちいねえさま”と呼んでるから、ぼくもそう呼ぶことにした。

ルイズのことは“お姉ちゃん”だけど。

妹キャラといえばやっぱり“お兄ちゃん・お姉ちゃん”だよねー。

“ねーね”も捨て難いが、ちとハズいかと。

そういえば、姉さまは十四歳、ちい姉さまは十一歳、お姉ちゃんは三歳でぼくは二歳なんだけど、ちい姉さまとお姉ちゃんの間が空いてる気がする。

何か…二年続けて生まれたって辺り、何か色々想像してしまう…。

急に燃え出したんだなーみたいな?

まあまあまあまあ。

自分の親のを想像するのはきついからな、色々。

 

とりあえず姉さま達のこととかはこれくらいにして、最近の過ごし方について。

最近字が読めるようになったので、家の書庫の本を片っ端から読み漁ってる。

そしたら魔法書がいっぱいあった。

そうなんだよなー。

この世界って、魔法があるんだよなー。

そういえば、お姉ちゃんも三歳の誕生日から時から杖との契約を始めているようだ。

ぼくは来年なのかな?

それなら、三歳になるまでにたくさん知識蓄えないとな。

フムフムなるほど。

土・水・火・風。それから失われた系統虚無がある、と。

記憶の通りだな。

でも設定うろ覚えだし、ちゃんと勉強しないと。

そういえばお姉ちゃんは虚無だっけ。

伝説の系統いいなー。

まあぼくはそれは無理だから、水と風で雷とか使いたいなー。

 

 

 

ついに三歳になり、待ちに待った杖との契約。

四日で済み、いざ、系統調べだ!

とか思ったけどまあいきなりは無理でした。

当たり前だよね、初めてだもの。

うん、仕方ない仕方ない。

ゆるゆると頑張るさー。

姉さまでさえ目覚めるのに一年かかったとか言ってたし。

気長にねー。

今日から実技は一緒に授業受けることになったお姉ちゃん、心底ほっとしたご様子。

まあ多分ぼくのが早く目覚めるけど。

君が系統に目覚めるのは約十ニ年後だよ。

ぼくはまあ妥当に数年後かなー。

 

とか思ってたら半年で目覚めてしまった。

授業以外にも練習し続けた賜物なんだろうけど。

ちなみに系統は水。

後風が欲しいなー。

雷雷。

雷魔法に憧れる。

にしても魔法が楽しすぎてやばい。

水の量足したり、水の出る圧力変えたりして遊んでばかりいる。

頑張ってウォーターカッターの魔法造るんだ。

前世で見たけど、あの威力はマジぱねえ。

ダイヤモンドだって切れちゃうぜ。

ってことで、最近ぼくは誰とも遊ばず独りで水を細く早く出す練習をしている。

確かあの水の発射速度マッハ3だてはず。

でも、マッハ3てどれくらい?

音速よりかなり速いのは分かるんだけど……。

まあとにかく細く速くだよね!

ぼくは裏庭の家の陰で、淡々と水を地面に向けて発射する。

 

 

 

五歳になり、火の系統も足せるようになった。

風がよかったなーとか思いつつも、まあラインになれたことは嬉しいから喜んだ。

この年でラインとか神道かとか言われた。

美少女の妄想の賜物かな?

でも、ご馳走を食べみんなに祝って貰いながら、火と水ってどんな魔法があるんだよと考えていた。

だって対極じゃない?

火に水被せても消えちゃうしなー。

目覚めてから数日たった今でも、いい組み合わせ方法は見付からない。

気晴らしに散歩でもするか。

トボトボと独りで庭を歩く。

そういえば最近お姉ちゃんとあまり遊んでないな。

いつからだったっけ?

ぼくが魔法に夢中になりだしてからかな?

だとすると…もうかれこれ二年近く離れてたのか。

会話も少なくなって、ぼくとお姉ちゃんの間に距離が生まれてしまった気がする。

ふと池に目を向けると、一隻の小船が浮かんでいる。

よく見ればお姉ちゃんとお姉ちゃんのロリコン婚約者・ワルドが乗っている。

ぼくが風魔法使えたら、何話してるのか聞けたのに。

まあ大体予想はつくけど。

ゼロ魔原作の回想シーンと同じようなことを話してるんだろうな。

まさか直にみることになろうとは。

でもやばいなー。

お姉ちゃーん、そいつは悪いやつですよー。

あれ? でも今はまだいいやつなのかな。

よし!

ぼくがワルドをいい方向へ持ってってやろう!

確か今はちょうどワルドの父親が戦死した直後だったな。

そうと決まれば木陰に隠れて二人が船から降りるのを待って、と。

尾行して二人が別れるのを待つかなー。

二人の乗る船が船着き場に近付いて来る。

そしてワルドが先に降りてーーおお、お姉ちゃんの手を取って降りるのを手助けとは。

そしてそのままおでこにキスを。

レディーファーストやばいなー。

なんでだろう、元日本人だからかな? 寒気が……。

ついでに苛立ちもふつふつとー。

なんだよ、イケメンで女の扱い上手いとかさー。

世の中不公平じゃね?

ああゆうやつが女の子何人も独占すっからこっちに回ってこねえんだよ。

もうやってらんねー。

あんなやつ、悪者になってサイトに倒されちまえばいいんだよ。

ぼくは苛立ちながら踵を返して歩き出す。

 

「ミュアルちゃん……だったかな」

 

急に後ろから声をかけられ、ぼくはびくっと猫のように肩をあげた。

し、心臓が……。

びっくりし過ぎて心臓が煩いくらいに鳴ってる。

しかもこの声ーー

 

「わ、ワルド様。どうかなさいましたか?」

 

極力笑顔で振り向く。

ぼくっ娘の件はーーほら、目上の人にはさ、敬語じゃないとさ、駄目だからさ。

 

「いや、さっき僕等のことみていたみたいだからね」

 

見てたからなんだよ。

 

「別に。散歩中に目に入っただけですわ」

「あ、別に無理に丁寧に話さなくてもいいよ。僕は君の義兄なんだから」

 

そのキラキラオーラやめれ。

にしてもそうか、ワルドは一応ぼくの義兄なのか。

ならばあれだな。

少し恥ずかしいがあれだな。

 

「うん、わかったよ。にーに」

 

蔓延の笑みで言ってやった。

“にーに”いいよな“にーに”。どうせなら呼ぶより呼ばれたかった。

お、ワルドが固まってる。

笑顔のまま固まってる。

よし、追い撃ちをかけてやろうじゃあないか。

ワルドの足に抱き着きながら、

 

「ぼく、前からにーに欲しかったんだー」

 

ぼくは幸せそうに笑う。

 

「それはよかった」

 

ワルドがぎこちなくぼくの頭を撫でる。

ん? こいつは“にーに”より“お兄ちゃん”派か?

それとも“お兄様”か?

いいよなー“お兄様”。呼ばれてー。

まあいいさ。

てめーの呼ばれたいのを選ばせてやる。

 

「あの……」

 

ぼくは不安そうに上目遣いでワルドを見つめる。

 

「にーには嫌?」

 

ワルドは数秒ぼくをガン見してからーーん? ガン見?

 

「そんなことないよ」

 

とぼくを抱き上げた。

 

「僕のことはにーにとしてしたってくれ」

「ほんと!?」

 

 

ぼくは大層嬉しいといった風にワイドの首に抱き着き、ほお擦りをする。

でも内心凄く嫌だ。

何でぼくが男に抱き着かなきゃなんないんだよー。

でもこいつも妹萌えに目覚めた……かな?

 

「ところでにーに」

 

ワルドは「ん?」と優しく目を細めながらぼくを見つめる。

き、きめえ……。

鳥肌がー……。

ってか顔近え。

 

「お姉ちゃんと何話してたの?」

「ん。あー……、いや……」

 

んだよ、ハッキリしねえな。

あ、もしかしてぼく関係してる?

 

「お姉ちゃん、お父様に叱られたの?」

「ん、ああ。まあ……そうなんだ」

 

濁すなー。

やっぱりあれかな。ぼくとお姉ちゃんを比べられたのかな。

ぼくも一応妹なんだから、多少できないふりしなきゃいけないのかな。

でも最終的にはお姉ちゃんは伝説になるわけだしなー。

十年後、一気に抜かされるんだろなー。

なら今くらい、と思うけど……。

でもやっぱり可哀相だよな。

お姉ちゃんがたくさん努力してるのを、ぼくは知ってる。

書庫に行くと魔法関連の本ごっそりお姉ちゃんが借りてたりするし。

おかげでぼくはなかなかその本を読めない。

まあ二歳の時に読んでしまってるからかまわないけど。

 

「君はルイズのこと、どう思ってるんだい?」

 

は? なんだいきなり。

決まってるだろそんなこと。

 

「大好きだよ」

 

可愛いから。

でも如何せん未来での性格がなー。

でもまああれはサイトにだけだと信じてる。

身内には普通にいい子だったはず。

ワルドはなんかいい笑顔で「そうか」と言って頭撫でてきた。

なんかいいやつっぽいなー。

これが将来あんな性根の曲がったプライドだけが高い嫌なやつになるとは…。

人生何が起こるかわからんなー。

なんか繋ぎ止めるようなこと言っとくか。

 

「にーに、何処にも行かないでね。ずっとぼく達の味方でいて」

 

そしてまたワルドの首に抱き着く。

ぼくにはこれが限界だー。

これで無理ならバイバイ、みたいな。

ワルドは少し驚いたのか言葉を失ってから、「もちろんだよ」とぼくを抱きしめた。

気持ち悪いけど、これも未来の安全の為だ。




貴族の子達が魔法の練習始めるのっていつなんでしょうか。ヴァリエール家は優秀みたいなんで、幼稚園くらいからぼちぼち始めるのかなーと思ったんですけど。
杖の契約は数日掛かるってきいたので、とりあえずこの主人公は四日にしてみました。まあ遅過ぎず早すぎず、でも普通よりかは少しだけ早いかなー程度と思ってください。
後、系統魔法って平均どれくらいで目覚めんでしょうか。とりあえず二、三年かなーと思って書いてたんですけど。主人公が目覚めるの、早すぎましたかね? まあ一年間の予習の賜物ってことで。

前一話から四話をひとまとめにしました。

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