機動戦士ガンダム~UC(宇宙世紀)変革史~   作:光帝

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第二十五話 基地強襲

 

拠点攻撃はいかに敵に気づかれないことが重要だ。

また、同じくらい重要となるのがいかに効率よく要所を無力化するかである。

初期攻撃でいかに敵の防衛力を無力化できるかで二次攻撃時の味方被害を大幅に減らせるといっても過言ではないのだ。その意味で俺たちの奇襲は一応の成功を見た。

連邦軍艦艇が存在する付近までデブリに紛れて接近。同時にミノフスキー粒子を散布し、ミサイルを湾港に向けて発射した。

ミサイルは周辺の仮設砲台を破壊し、守備戦力を無力化していく。

着弾確認と同時に戦艦三隻が敵拠点に急速接近しつつ、メガ粒子砲を放った。

その内のいくつかが敵のコロンブス級輸送艦の一隻に直撃し、横倒しになるように湾港をふさいでいくのが見えた。

 

「よし。これで敵戦艦の内、2隻は港に封殺できた。後は外で待機していた1隻を処理してMS部隊総がかりで港内の敵艦船とMSを撃破。拠点占拠に移る。いくぞ!」

「今までの鬱憤を晴らしてやります。」

「隊長の邪魔にならないよう、露払いをさせていただきます。」

 

各隊のMS部隊が残った敵防衛施設や封殺された戦艦に殺到する。

その中で、俺たちが最初に担当したのは唯一外に残っていたサラミス級である。

本来なら動きを封殺できているとはいえ、湾港内にいる敵に全MS部隊を傾けるべきなのだが、いささか引っ掛かる船だったために念には念を入れたのだ。

このサラミス級はいささか異質だ。塗装が黒と青紫のツートン。対空砲台が多い。搭載されている主砲もムサイに搭載されているものと酷似している。

 

(おそらく、メガ粒子砲搭載の改修型か。だが、正規軍のエンブレムや識別ではない。)

 

エンブレムは黒い星形十字の両端に蛇がそれぞれ一匹頭をもたげているものだ。

塗装もそうだが、デザインセンスが気色悪い。

そう思ったところに敵艦からMSが出撃してくる。

機体はやはりザニーが4機。だが、塗装と装備が正規タイプと大幅に違っていた。

本来570mm無反動砲装備で白と赤を基調としている機体なのだが、この機体は黒とオレンジを基調とし主武装も携帯用のビームライフルとシールドをそれぞれ持っている。

 

(携帯用のビームライフル。それに肩にはビームサーベルと思われる装備を携行しているな。正規軍にしてはやたらと高品質な武装。嫌な予感的中か。)

 

「各機、敵はザニーだが武装は貧弱にあらず。油断していると逆に食われるぞ。連携を忘れずにそれぞれ敵にあたるぞ。かかれ!」

 

そう檄を飛ばしてそれぞれが戦闘に突入する。

こちらは俺を含めれば、全4機。数では同等だが、全体的な性能は敵も負けていない。

ザク改修型に乗ったうちの隊員がマシンガンを連射し、戦闘開始を告げる。

敵はそれを躱しながらビームライフルと60mmバルカンを打ってきた。

それを見て、俺は敵に下方から接近しすれ違いざまに敵の背面をヒートサーベルで切り裂く。それを受けて敵機には無残な切り傷が刻まれた。だが、俺は手を緩めない。

即座に機体を反転させ、持っていた120mmマシンガンのトリガーを引く。

砲身から何十発という弾丸が敵に放たれ、コックピット周辺を無残に穴だらけにしながら火球へと変えた。

 

(まず一機!)

 

だが、それを意識した瞬間。悪寒のようなものが背を伝う。

咄嗟に簡易装甲部分を盾のようにしたところに敵のバルカンが命中したのがわかった。

盾替わりにした左腕装甲部の一部が凹むがそれにかまっている暇はない。

こちらも、120mmマシンガンを敵に放つが敵はシールドで防御して機体直撃を防いだ。

だが、その直後に防御できていない右側からミサイルを受けて敵機が爆散する。

例の三連装ミサイルをもろに食らったようだ。どうやら俺の不安は杞憂だったらしい。

 

(機体性能は上場みたいだな。あの性能なら今少し前線で使用できるだろう。)

 

これで数は互角以上になった。だが、その内の一機から感じる威圧は先ほどまでの敵とは違う。そう、強いて言うなら猛者。まるで例のニュータイプなる相手と対峙しているときと似ている。だが、その時ほど化け物じみた寒気まではない。

 

「あの機体は私が相手をする。他は敵艦と残ったMSを無力化、あるいは撃沈せよ。」

「了解。」

 

そう言い残して部下たちが敵サラミスと残る1機への攻撃を開始する。

そんな中、俺は敵と向き合っている。機体そのものは先ほどの2機と一緒だ。だが。

 

(すごい威圧感だ。ぞくぞくしてくる。)

 

敵はこちらの意図をどうとったのかビームライフルをかまわず打ってきた。

こちらも120mmマシンガンで応戦し、敵とともに戦艦とは逆方向のデブリに向かっていく。

敵のライフルが盛んに岩を破砕していくが、こちらはそれを紙一重で躱していく。

こちらはデブリに入ってからマシンガンの使用をあえて押さえている。同時に試してみたいことを実行することにした。

 

 

リーガンと戦っているのは連邦軍で新編成された組織『リターンズ』所属の部隊であった。

その中でも、彼『フェルナンド・モンシア』中尉はエース級であった。

先の『ルウム戦役』で生き残った上に敵機を撃墜していることからその実力を証明していたが、軍内では不遇をかこっていた一人である。

酒場では堂々と『宇宙人どもを倒したのに何で同じ地球人からさげすまれなきゃならんのだ。』と酒の酔いに任せて叫んでいた一人である。そこで経歴を知っていたサミトフ・ハイマンに拾われ、遊撃隊に配属されたのである。

 

『地球を本当に愛する者の一人として私に協力してくれないかね。モンシア君。ともに宇宙人なき新秩序を築こうではないか。』

 

サミトフのこの一言でモンシアは救われた気がした。

戦場で死ぬ思いをしたのに評価されず、あまつさえ卑下される毎日。その灰色の毎日から彼を救い出してくれた。だから彼は、『リターンズ』への所属を快諾したのだ。

 

「この宇宙人共が。また汚い策を弄しやがって!」

 

モンシアは敵に向けて再びライフルを向ける。先ほどから巧みにデブリを盾にして避け続けているが今度は速度を計算に入れている。デブリから出たところを一気に撃ち落とせるという確信をもって、ライフルの引き金を引いた。

だが、そこに敵はいない。いや、来ない。

そして、いるはずのない場所に敵がいた。自分の機体の真下にだ。

 

「なんだと!どうしてそこにいる。ワープでもしたってのかよ?!」

 

モンシアは混乱しながらも機体を真下に向ける。だが、その時には既に手遅れだった。

驚いたことに方向転換した時には敵が正面に迫っていたのだ。

 

(なんだそりゃ?!俺は悪い夢でも見てやがるのかよ!!)

 

モンシアがそう心の中で叫んだ時にはコックピットが敵機体の左腕に押しつぶされる瞬間だった。なぜ、このようなことになったのか?どうして自分が死ぬことになったのか?

それを理解することはついになかった。

 

 

敵機のコックピットをナックルシールドで押しつぶし、無力化した段でようやく俺は機体の状態を正しく把握した。機体脚部の関節から鈍い音が聞こえている。

無理をした結果であった。俺が行ったことは先の遭遇時に見た友軍機の再現だった。

つまり、点在するデブリを足場にして急激に機体進路を変換しつつ速度を上げるというものだ。前世ではシャア・アズナブルやフル・フロンタルが行った戦い方であり、これが『通常機の三倍の速度。』と評価された所以である。

 

「確かにすごいが、俺にはきつい戦い方だ。」

 

正直、今の俺ではまだ無理だ。

確かにできなくはない。ただ正直、機体が持つかが不安だ。

一度の戦闘で機体各所、時に脚部関節が摩耗したのが解る。

これを当たり前のように行っていたシャアやこの前の実験部隊兵士のことを考えると相当の手練れだと思う。だが、おかげで今回得るものが大きかった。敵機の拿捕だ。

MSを無力化する以上パイロットは殺さなくてはならなかったが機体と武器は手に入った。

俺はひとまず、機体を旗艦に向けて翻した。

コックピットをつぶした敵機を運ぶのは本当に気が重くなったがこれも戦争ゆえである。

 


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