「んぉ。あれ、どしたんだろ」
「? なにがです?」
ロザリーの指差す方向を見てみると、人だかりができていた。
どうもスリザリンの生徒のようだが、どうしたんだろうか。
「おい『穢れた血』! 新学期には退学しとけっつったろ!? なんで来てるわけ!?」
「うーわ、さっすがwwwひでぇwww」
「なーんだ、イジメかぁ。つまんないのー。行こ? あれ? ラーニャ?」
「先輩がた、なにをしてらっしゃるんですか?」
「ん? おー、新入生か。コイツ、穢れた血なんだよ。知ってる?」
「存じております。グリフィンドールの方ですね? 立てますか?」
「え? ……あ」
手を伸ばすと、グリフィンドールの先輩は恥ずかしそうに眼をそむけてしまった。
まあ、確かに仕方ないか。
私は年下で、しかも女で、この方は男だ。
「ラーニャ、行こうよぉー」
長い裾をずるずると引きずりながら、ロザリーが歩いてくる。
「そんなんほっとけばぁー? イジメなんて、するやつもされるやつもくだんねーもんだぜー」
「……なんだと? 新入生」
「あ、怒ったぁ? すんませぇん、そんなつもりじゃなかったんですけどぉ」
挑発的にロザリーがわらったところで、
「なにをやっているんだ貴様らは!」
と、姉さまの怒号が聞こえた。
「グリフィンドールの生徒と問題を起こすなと、何度言えばわかる!? 貴様ら、いい加減にしろ!! 呪いと拳、どちらがいいか選べ!!」
「うっへ……。相変わらずだな、姉御は」
「黙れ! ―――君、大丈夫か? 立て。よし、怪我はないな。うちのものがすまなかった」
「あ、いえ……」
姉さまの剣幕に、皆がぽかんとなる。
「貴様ら、こい! 本っ当に、いつもいつも!」
「痛っっって!!!!」
「うるさい、グリフィンドールの青年はお前らよりも痛かったはずだ! お前が成績いいのに監督生になれないのは素行が悪いからだぞ!」
かくして、姉さまは嵐のように去っていった。
「……あはは。あれ、君の姉さんのライラ・ギルティクでしょ?」
「え、えぇ……」
「楽しそうじゃん」
にんまりと、ロザリーは笑った。
「うぉっ、やべえ! 時間がねえ!」
「え? きゃあ、大変!」