スリザリン生の優雅な生活   作:モンコ

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ラーニャの基本信念:イジメをするやつこそが弱いやつなので、ぶっちゃけそいつは死んでもいい
ロザリーの基本信念:イジメなんてしてるやつもされるやつも下らないので勝手に野垂れ死んでくれ


イジメⅠ

「おーう、次の時間はへんしんがーく。めんどくさーい行きたくなーい」

「はいはい、文句言わない」

 

ロザリーをぐいぐいと押しやりながら、ドアから出て廊下を歩む。

 

「……………………ぁ゛っ」

 

「―――?」

「? なに、どしたの?」

「今、なにか言った?」

「え……いや、別に」

 

言ってないよ、とロザリーは首を振る。

 

「昨日勉強してたから、寝不足なんじゃない? 大丈夫?」

「うん……たぶん、平気」

 

おかしいな、と首をかしげつつ、ラーニャは変身術の教室へと足を早めた。

 

「では皆さん、今日は『動物もどき』について説明いたしましょう」

 

マクゴナガル先生の声が教室に響く。

カリカリとノートを取りながら、ラーニャはまだあの声のことが気になっていた。

 

―――なんだったんだろう、あれは。

喘ぎのような、呻きのような?

苦しそうな、それでいて――――――

 

「ラーニャ、授業終わったよっ。次は―――うっへぇ、魔法薬学……」

 

時間割を見て、やだねぇと言いながら、ロザリーが駆け寄ってくる。

 

「………どしたの? ねぇ、ラーニャ、本当に元気ないね? さっきの声のこと?」

「うん……。気のせいだとは、思うんだけど」

「分かんないよ? ラーニャに聞こえたんだから、ひょっとしたらあるかも知れないよ?」

 

こてん、と首をかしげるのと同時に、ロザリーのツインテールがにゅるんと動いた。

 

「あたしが調べといてあげようか。ラーニャのためなら、あたし、本気出しちゃうぜ?」

「――――え」

「呪文、本当は使っちゃいけないけど。ま、いっか、これは呪文じゃないし」

「ろ、ロザリー、何する気?」

「調べる、んだよ。あのあたりに、使い魔を放つ」

 

というと同時に、ロザリーの長いローブの下から大量の真っ黒なハムスターが出てきた。

目と口の中が血のように赤く、一目で普通でないと分かる。

 

「……………っ」

「行っておいで、みんな。なるべく早く調べてよね」

 

呆気にとられていると、ロザリーがこちらを振り向いてにやりと笑った。

 

「安心して。ミセス・ノリスは調教済みだから。いやぁ、実にちょろくて可愛いコだった」

「………ロザリー、貴女、ひょっとしてわりとデキる人?」

「今気づいたの? ショックだなぁ。ふふん、スネイプのクソつまんない授業が終わるころには声の正体わかってるよ」

 

ローブの袖をぶらぶらと揺らし、

 

「勘違いしないでよね。これは、ラーニャのためなんだからね。前回のお礼とかじゃなくて、ただの単なる善意なんだから。お礼はまた今度、三倍にして返すんだからね」

 

と言う。

私が笑うのを見て、ロザリーも楽しげだった。

 

 

 

 

 

 

「へーいっ。情報が洗えたよーん」

 

魔法薬学の授業を終え、ロザリーが自慢げに壁にもたれかかり、ツインテールを撫でつけた。

 

「声の正体は、レイブンクロー所属のマーガレット・ビジィアちゃんの悲鳴だね。倉庫に押し込まれてレイプされ、暴行を働かれていた時の声かと思われるよー」

「…………は?」

「マーガレット・ビジィア、三年生。金髪に灰色の目、すらっとした体型など、ロシア系?

名家の出身、成績は上の中、無口で無表情、あのスネイプ先生でさえ薄気味悪がって嫌味を言わないという凄い人。あと備考としてデカいね、175㎝」

「そ、それどこから調べてきたの……?」

「ひ・み・つ☆」

 

そんなにかわいい声を出す君を初めて見たよロザリー?

そういう声をたとえ演技でもいいから先生の前で出そうよ?

 

 

――――じゃなくて!

 

「それ、ダメじゃない! れ……れい……ぷ……だなんて!!! れっきとしたイジメでしょ!?」

「え、まさか助けるとか言う気? マジで?」

 

心底驚いた、というふうにロザリーが目を見張る。

 

「もーいいじゃん、声の正体が分かってスッキリサッパリ全部解決一件落着! ね?」

「ダメ! 確かレイブンクローに、えっと、誰がいたっけ……あ! ペネロピ―さんって人、結構賢かったから、」

「言いにいくってぇの? 『あなたの寮でマーガレットさんがいじめられてますよ』って? 悪名高きスリザリン生が?」

「うぅ」

 

唸ってみた。

 

「…………まぁ、いいよ、手伝ってあげる。これはこの間のお返し。イジメなんか、なくすのにいつまでかかるか―――」

「大丈夫だよ、たぶん、味方が一人か二人いるだけで十分心強いと思うから―――」

 

これは、私が寝込んでいた間の経験談。

ライラ姉さまの存在が、私を励ましてくれた。

 

「それに、私、新たに呪文作ったし!」

「――――――作ったぁ?」

「うん。スネイプ先生にこの前見てもらったらね、『危ないから誰にも言わないほうがいい』って言われたんだけど―――。何回か練習したし、いけると思うんだ」

「へぇ………」

 

猜疑心あふれる目線でこちらをみてくるロザリー。

 

「ちなみに、どんな呪文よ?」

「えっとね………」

 

「ユール・クティールって言って、相手の精神を崩壊させる呪文だよっ」

 

 

 

 

 

「…………それ、誰に使うのさ?」

「当然、イジメてる人たちにですが?」

「いやいやいや、やばいっしょ。退学んなっちゃうって」

「あっ、そうか」

「そうかじゃねぇよ! 気付け!!」

「ごめんごめん、じゃあちょっと怖い思いをしてもらえばどうかな? コンファンダスとか良くない? 錯乱せよってやつ」

「それだいぶ後に習う呪文だぜ」

「スネイプ先生に教わったよ」

 

ロザリーが黙って首を振った。

認めてくれたらしい。

 

次の時間は休講なので、ちょっと助けに行こうと思う。

 




次回に続きます。

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