問題児たちが異世界から来るそうですよ? ━魔王を名乗る男━   作:針鼠

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この話は『魔王を名乗る男』を連載するので御蔵入りになったもうひとつの問題児シリーズの二次作品です。
なので信長君は出てきません。『次』があるわけではありません。話も一部なので途中からです。そして相当な他作品ごった煮です。

読み飛ばしても今作品の本編とは一ミリも関わらないので問題ありません。

以下は物語前に、せめてもの状況と主人公の設定情報です。



>場面は一巻、ガルド戦。飛鳥、耀、ジンの3人がゲームに参加する。レティシアがガルドに鬼種のギフトを与えているところまでは同じです。

>主人公(オリ主)

名前:シエル。性別:女。その他:とんがり帽子に黒装束というこってこての魔女服。本人も魔女を自称。飛鳥よりも『らしい』お嬢様言葉や仕草をするかと思えば、たまに砕けたりもしてる。


番外編

「あらら、随分とまあ様変わりしてしまいましたのね、ガルドさん」

 

 禍々しい森をひとり進んでいたシエルは開けた場所に出るなり、そこに(うずくま)る1頭の虎を見つける。それこそ、いや()を探していたのだ。

 

 シエルの気配を感じたのか、虎は身を起こして牙を剥いて唸る。目は血走り、毛を逆立てて。

 

 ガルド=ガスパー。シエルは目の前の虎をそう呼んだ。

 

 コミュニティ《フォレス・ガロ》のリーダー。かつては逞しい風体の人化の術を好み、小利口な紳士を気取ってみせた男。

 しかし今、その面影は欠片も残っていない。

 剥き出しの口からはだらしなく涎を垂らし、四つ足で地を踏み、その目に理性は消失していた。

 

 その姿は完全に獣と化していた。

 

 唸り声をあげるガルドを前に、シエルは赤い瞳を細めてクスリと笑った。

 

「そんなに怯えないでくださいな(・・・・・・・・・・)。わたくし傷付いてしまいますわ」

 

「っ!? G、GYAAAAAAAAAA!!」

 

 踏ん張った四肢を伸ばして一足跳びでガルドはシエルに襲いかかる。

 

 ヒラリと、漆黒のローブをひらめかせて、シエルはまるで風か水のようにそれを躱す。

 

 猛進していたガルドは開いた大口を閉じて、勢いを緩めること無くシエルの横を通り過ぎて距離を置いた場所で反転する。

 再び、離れた場所で唸り声をあげて警戒する。

 

 その様を、シエルは感情の読み取れない瞳で見つめてから、不意に視線を明後日に向ける。その方向は、つい先程から濛々と煙が立ち昇っていた。

 

「きっともう、貴方の屋敷は焼け落ちてしまいましたわね」

 

 煙の正体は今も続けられている《フォレス・ガロ》と《ノーネーム》のギフトゲーム、その際に《ノーネーム》のプレイヤー、久遠 飛鳥と春日部 耀が屋敷に篭っていたガルドを追い出すため屋敷に火を放ったもの。

 本来ならばそこで追い詰められて終わっていたはずなのだが、運良くガルドは逃げ延びた。

 しかし、ガルド自身わかっていた。所詮それは、精々数分命永らえただけであることを。

 

 このゲームはすでに終わっている。最初から彼女達とガルドとでは勝負にすらならない。

 とある金髪の吸血鬼から鬼の恩恵を得て、さらにゲームに己の命を組み込む裏ワザでどうにか足掻いてみせたものの、それでも届かない。

 最初から結果はわかりきっていた。

 

 それでもガルドはこの勝負を受けねばならなかった。何故なら、そうしなければ結局ガルドは破滅していたのだから。

 飛鳥のギフトによって悪事を暴かれ、傘下にしていたコミュニティの子供を殺したこともバレた。

 たとえこのゲームを回避していても、いつかここの階層支配者たる白き夜の魔王(・・・・・・)の手によって裁きを受けていただろう。それは死よりも恐ろしいかもしれない。

 

 そう、恐ろしい。

 ガルドは何もかもが恐ろしかった。

 

 だから力を求めた。だから全部自分のモノにしたかった。だから汚い手を使っても勝ちたかった。だから支配者になりたかった。

 だからだからだから!!

 

 ――――しかし、今の自分には何も残っていなかった。

 

 恐怖で縛ったコミュニティも、掻き集めた財産も、ハリボテの屋敷も失った。

 人化の術ももう出来ない。人語も理解出来ない。

 

 残ったのは、この姿だけ。この醜い獣の姿だけ。

 箱庭にやってくる前と、同じ。

 

(そうだ。同じ、はずなのに)

 

 僅かに残ったガルドの自我が、そこに違和感を覚える。

 ガルドはかつてとある森の守護者だった。それからこの箱庭にやってきた。

 

 ガルドはただの虎だった。多少その霊格は他の者達より高かったかもしれない。しかし始めから人になれたりしたわけではない。人の言葉を扱えたわけではない。

 今のこの姿はむしろ戻っただけ。あの頃に戻っただけ。それなのに、

 

(なんでこんなに不安になる……?)

 

 ノイズが走った。

 

 森だ。どこか今いるこの森と似ている。しかし脳裏に浮かぶそこはこの森のように禍々しくは無い。

 

 ノイズが走った。

 

 目の前で小さい虎が倒れている。腹から血を流している。苦しそうだ。

 

 ノイズが走った。

 

 なにかがいる。見た目は人のようだ。しかしそれは人ではない。あれは――――あれは――――、

 

「――――G、がAアアAあAAAAああああああ!!!??」

 

 痛い。頭が割れそうだ。頭蓋骨を直接削られているような。

 違う。魂が、ガルドの霊格そのものがなにか(・・・)にガリガリと削られている。

 

 それを傍から眺めていたシエルはぽん、と両の手を叩いた。

 

「決めたわ。わたくし●●●●●●」

 

 すでに人語がわからないガルドには彼女がなにを言ったのかわからなかった。

 しかし内にあるなにかが言った。

 

 『殺せ』

 

 それは本能などではない。そもこれはガルドの意志とは関係無い。これは今自分の自我を貪るなにか(・・・)の意志だ。

 

 抗えない。痛い。死にそうだ。死にたくない。怖い。痛い。怖い恐い恐いコワい――――

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

 ガルド()がコワれテイく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前で吠えるガルド。その咆哮はすでに声の域を超え衝撃波のように辺りの草木を消し飛ばす。

 けれど、シエルには一切その効果を及ばさなかった。

 

 ニコリと柔和な笑顔を浮かべ、彼女は虚空から一冊の本を取り出す。表紙にも裏表紙にもなんの印字もされていない、ただくたびれた赤いカバーがその年季を示す古本。

 彼女はそれを半ばから開く。

 

「出ておいでなさい――――死を視る不器用な子達」

 

 それは、はたして意味ある言葉だったのだろうか。その言葉に特別な力は感じられず、しかしたしかにそれをきっかけに事象は起きた。

 

 現れたのは女とも男ともつかない、しかし絶世の容姿を持つ人であった。一見でわかる上等な着物に、それを台無しにするように上から赤いブルゾンを羽織っている。ついでに履物はブーツだった。

 

 静かに、それは瞼を開く。

 

「またわけのわからない所に呼びやがって」

 

 開口一番、男口調で彼女は文句を口にした。短い髪をガシガシと掻きながら恨みがましい目をシエルに向けた。

 

「お久しぶりね、式。会いたかったわ」

 

「オレは一生会いたくなかったけどな」

 

 両義 式。それが彼女の名前だった。

 

「クスン。冷たいですわね」

 

 辛辣な式の言葉に顔を覆って泣き真似するシエル。

 式は益々もって冷たい目を向けた。

 

「……本当に苛つく女だ」

 

「あら」

 

 コロリと泣き真似から一転、満点の笑顔を見せる。

 

「わたくし、式のそういう口さがないところ好きよ。ゾクゾクしちゃう」

 

「もういい」

 

 いつ会っても何も変わらないシエルに、最早呆れた式はため息だけ溢して前を向く。相手をするだけ無駄だと察したのだ。

 

「早く終わらせて帰る。――――あれを殺せばいいのか?」

 

 およそ年頃の女の子が口にするべきではないことをさらりと言ってのけ、式の瞳がガルドを映す。

 

「ええ。でも殺すのは中にいるモノだけです(・・・・・・・・・・)

 

 式は怪訝に眉をひそめ、眉間に力が入る。そうして面倒そうに舌をうった。

 

「形のないものは見え難いんだよ」

 

「殺せない?」

 

 その質問に、式ははっ、と嘲るように吐き捨てた。

 いつの間にかその手にはナイフを握られていた。

 

「シエル、あれ(・・)は生きてるんだろ?」

 

 彼女の瞳に映る、彼女の瞳にだけ映る。

 ガルドという名の虎を包み込む黒い瘴気。それは確かにシエルに、式に、害意を示していた。

 ならば、彼女には殺せるのだ。それが生きているなら形があろうがなかろうが。

 

 それ(・・)が視えているならば。

 

「生きているなら、神様だって殺してみせる」

 

 魔眼。あらゆるモノの死を視る魔眼。

 

 直視の魔眼を持つ少女。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガルドは目を覚ました。覚ました(・・・・)と正常に自覚することが出来た。

 

「起きましたか?」

 

 はっと起き上がろうとして、その動きが止まった。

 その理由はその声がやたらと近かったこと。そして、何かが腹の上に乗っていたからだ。

 

「ああー、モフモフですー。思った通り……いや、思った以上の抱き心地ですわー」

 

 トロンとした声で腹に顔を埋めるシエルに、ガルドは体を強張らせて尋ねた。

 

『なにして、やがる』

 

「なにって、勝者にはそれ相応の権利が与えられるべきなのです。それを堪能しています」

 

『そんなこたぁ訊いちゃ……テメエ、俺の言葉がわかるのか?』

 

 言いつつ耳に伸ばそうとする少女の手を振り払い怒鳴ろうとして、ガルドはこの場の疑問に気付いた。

 今、ガルドは人化していない。それはつまり、人語を発する声帯を持っていないということだ。

 何故か戻った理性のおかげで自分が彼女の言葉を理解するのはわかるが、人間の彼女が今の言葉を聞いても『がー』とか『うー』とかにしか聞こえていないはずなのだ。

 

 そんな疑問に、シエルは耳を触ろうとして避けられたことに不満そうに唇を尖らせながら答える。

 

「わたくしに不可能はないですにゃん」

 

『馬鹿にしてんだろ』

 

 ウインクしながら馬鹿馬鹿しい語尾を引っ付けて喋るシエル。悔しいことに、彼女の容姿は整っているのでそんな仕草が可愛らしいのが癪に障る。

 

「はわぁー、幸せ。このまま死んじゃっても未練無しです」

 

『――――本当に死ぬぞ?』

 

 硬質な声でガルドは告げる。

 

 今、シエルの頭部はガルドの目の前だ。無防備に腹に抱きついていたりして、その気になれば頭を噛み砕いてやることも、爪で腸を引きずり出してやることも出来る。

 ましてや今はまだゲーム中だ。彼女は敵で、彼女にとっても自分は敵だ。

 

「にゃんにゃーん。出来るものならやってみにゃさいですにゃ。こんな喉をゴロゴロ鳴らしておいて。カワイイ」

 

『マジで殺すぞ』

 

 キャッキャと体の上で暴れる少女は、先ほどまでとは違い歳相応に見えた。

 

『そういえば、さっきの奴はどうした?』

 

「式ですか? 彼女はやるべきことを終えたらさっさと帰ってしまいました。まったく、折角可愛いのに愛想がないです。幹也さんもよくよく辛抱強いというか……」

 

 ブツブツとなにやらガルドには大半理解出来ないことを言うシエル。

 しかし一点、ガルドにも理解出来ると共に思い出せることがある。

 

『俺は、殺されたんじゃないのか?』

 

 あのとき、意識を失う直前。たしかに式という名の少女の刃はガルドの腹に刺さった。

 あんな短い刃の一撃で、しかし絶対的な結果を突きつけられたのを覚えている。――――死、だ。

 

「彼女が殺したのは貴方の中にいたモノです。貴方ではありません」

 

『俺の中にいたモノ?』

 

「力を得たのでしょう? 六六六外門の魔王とやらから」

 

『っ!!?』

 

 魔王の力を殺した。それは、ガルドにはおよそ信じられない言葉だった。

 

 たしかにガルドは六六六外門の魔王に魂を売った。その魔王は永らく不在で、自分と同じような野望を抱きながら力を持たない多くの者がその名と旗を掲げる。

 だからガルドも実際にその魔王と会ったことは無い。故に直接力を与えられたりしたことはないが、その残滓だけで、ただの獣だった自分が人の身を為し知恵を得ることが出来た。

 三桁に棲まう魔王とは、それだけ出鱈目な存在なのだ。顔も声も知らない相手に絶対服従を誓ってしまうほどに。

 

 それを、殺した。

 

『有り得ねえ』

 

「実際出来たでしょう?」

 

『出来るわけがねえ! ただの人間が……三桁の魔王の力を、たとえ残りっカスのような力だとしても殺すだなんて!』

 

「出来るんですのよ」

 

 クスクスと口元に手をあてて笑う。

 

「だって式は、神様だって殺せてしまう魔眼の持ち主だから」

 

『神を、殺す……?』

 

 それは神霊や星霊、そして龍のような箱庭の最強種ですら殺せるという意味なのか。だとすれば式と呼ばれたあの少女はとんでもない人間だ。いや、そんな力を持った彼女を人間という枠で収めるべき存在ではない。

 

 しかし実際シエルの言うようにすでにこの身に宿る力は消失している。人化の術はおろか純血の鬼種から与えられた力まで綺麗さっぱり。

 それと同様に、六六六外門の魔王の力を得て以来決して消えなかったわだかまる苛立ちや頭の中のもやが今はすっかり消えている。

 

「さてと」

 

 すっかり堪能したのか、溌剌とした顔で立ち上がるシエルをガルドは目で追った。そうして彼女の次の発言に目を丸くするのだった。

 

「用事も済んだことですし、ちゃちゃっとゲームを終わらせるとしましょうか」

 

『出来るわけがねえだろう』

 

 ガルドは即座に言い捨てる。力が消失しても、記憶は残っている。

 

『ゲームはすでに始まってる。これを終わらせる方法はひとつ……俺を殺すことだけだ』

 

 自身の命を賭け金にして作り上げたこのギフトゲーム。ホスト側に降参の敗北は認められていない。

 

 しかし、これは当然の報いであるとガルドは諦めていた。

 今となってはなぜああも非道なことが出来たのかガルド自身わからなかったが、自分はそれだけのことをしでかした。この場の誰もがガルドの敗北を望んでいるといっていい。

 

『だから俺はもういい。最後に正気に戻してくれたことは感謝するが、最後くらい潔く……』

 

「冗談ではありません」

 

 ズズイ、と伸ばされたシエルの人差し指がガルドの鼻を正面から押した。

 シエルは傍目にも不満そうなふくれっ面だった。

 

「記念すべきわたくしの初ゲームが敗北などありえません」

 

『敗北もなにもテメエは――――いや、待て……どういうことだ』

 

 ガルドは意味がわからず彼女に言葉を返そうとするが、そもこの状況が最初からおかしいことに気付いた。

 

(そうだ。なんで)

 

『なんでテメエはここにいる(・・・・・・・・・)!? このゲームの参加者はホスト側の俺を除けばあの2人の小娘とジンだけのはずだ!』

 

 契約書類にはたしかにそう明記したはずだった。あのとき、あの場所で言い争った3人に絞ってゲームを開催した。そこにシエルの名前はなかったはずだ。

 ギフトゲームにおいて契約書類は絶対遵守。審判権限を有する黒ウサギでさえこの状況下で許可無くフィールドに入ってくることは不可能なのだ。

 

 それなのに、今目の前にいる少女は一体どうやってここに入ってきたのか。おまけに参加者でもない彼女は先程から明らかにゲームに手を出している。確実に不正行為である。

 

「なんでもなにも……先ほど言いましたよ?」

 

 クルリと、ローブをはためかせて振り返る少女はその格好に似合う魔女の如き微笑を浮かべて告げた。

 

「わたくし、貴方のコミュニティに入ることに決めました」

 

『な……』

 

「ええ、ええ。だからまずはこのゲームを完全勝利といきましょうか」

 

 シエルの手に出現する赤い古本。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、黒ウサギ。こういうのはありなのか?」

 

 ゲームが行われている森の外で仲間の帰りを待っている十六夜は、厳しい顔で目の前で起こった出来事を尋ねる。

 返答は無い。しかしそんなものがなくとも、隣で唖然とする黒ウサギの顔がこの状況の異常を伝えていた。

 

「こんな……こんなことあり得ないのですよ……」

 

 

 

『ギフトゲーム名《ハンティング》

 

 参加者側プレイヤー一覧、久遠 飛鳥、春日部 耀、ジン=ラッセル。

 ホスト側プレイヤー一覧、ガルド=ガスパー、シエル(・・・)

 

 クリア条件、ガルド=ガスパーの討伐。

 クリア方法、ホスト側指定武具でのみ討伐可能。なお指定武具以外でガルド=ガスパーを傷付けることは不可能。

 指定武具、テリトリー内に配置。

 

 宣誓、上記を尊重し、誇りと御旗の下、《ノーネーム》はゲームに参加します。

 

 《フォレス・ガロ》印。

 

 

 

「契約書類を書き換えるなんて(・・・・・・・・)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛鳥と耀は2人で森を進んでいた。ジンには安全な位置に隠れていてもらい、2人でガルドを倒す気でいた。

 一度は先行していた耀が襲われるという危ない場面はあったものの、持ち前の身のこなしと鋭い勘でかすり傷にとどめた。

 本来は屋敷を燃やして追い詰める手筈だったのだが、偶然抜け道が出来てしまい取り逃がしてしまった。

 けれど耀の嗅覚もある。条件にあった指定武具も手に入れた。

 ゲームはすでに終局を迎えていた。

 

 それが《ノーネーム》の勝利であることを、彼女達は微塵も疑っていなかった。

 

「これはどういうことかしら?」

 

 今、2人の前に立ちはだかる者がいる。

 ガルドを取り逃がしてすぐ、耀がシエルという飛鳥達と同じくして黒ウサギに呼ばれた少女の臭いを嗅ぎ取ったのだが、現れた2人はガルドとシエル――――そのどちらでもなかった。

 

「まったく、わざわざ儂を呼ぶほどだからどんな相手かと思って期待してみれば、こんな小娘達とは。シエルの奴もがっかりさせてくれる。のお、セイバー?」

 

「油断は禁物です夜一。しかしまあ、私も女子供に剣を向けることに些か気が引けるのは同意しますが」

 

 一方は浅黒い肌の華奢な女性。忍び装束のような独特の服を着ており、先の発言のように大欠伸までして油断しきっている。

 それを窘めるのは同じく華奢な体格の金髪の少女。こちらは白銀の鎧を身に纏い、冷たさすら感じる無表情で真っ直ぐ飛鳥達を見つめている。

 

「敵はガルドだけだったはずだわ。まさかこの期に及んで不正を働いたの? だとしたらとんだ外道だわ」

 

「いいえ、そうではありません」

 

 飛鳥の発言に答えたのはセイバーと呼ばれた鎧の少女。

 

「この状況は我等がマスターによるものです。……とはいえ、不正ではないと言っても裏ワザではあるのでしょうが」

 

「そこはあの腹黒眼鏡の仕業じゃ。こういうことをさせたらあやつに敵う者はそうはおらん」

 

 今度はセイバーが億劫そうな顔で、夜一は楽しげに笑った。

 『腹黒眼鏡』なるものが誰なのか、そも一体今これがどういう状況なのか、飛鳥にも耀にもわからなかった。

 ただひとつだけわかることがある。これは直感だ。

 

((強い……))

 

 目の前の異色の2人、その実力を感じ取る。

 

「そっちの短髪の娘。おぬし足に自慢があるそうじゃな。ならばちと付き合え」

 

「!?」

 

 耀は一瞬たりとも目を離さなかった。しかし気付けば夜一はその手に見覚えのある髪留めを弄んでいた。

 それは今まで耀が付けていたはずのものだった。

 

「なーに他愛無い児戯じゃ。――――しかし本気でかかって来い。儂は一度も鬼事で負けたことはない」

 

「くっ!」

 

 真剣な面持ちに変わり夜一を追って駆け出す耀。

 飛鳥はそれを援護しようか一瞬迷ったが、とてつもないプレッシャーに強制的に体が硬直させられた。

 

「貴方の相手は私だ」

 

 言い放つセイバーの両手、そこにある目に見えないなにかが力の渦を巻いていた。

 

 この数分の後、ゲームはプレイヤー側のゲーム続行不可能によって終了する。




閲覧ありがとうございましたー。

>さて、まずはお付き合いくださりありがとうございました。
原作の新刊待ちとなりまた更新がストップしてしまうので、その前にもう一回更新しときたいなぁと思ったのでおまけ気分で一発書きしてみました。

>前書きに書いたように、これは問題児シリーズ二次の御蔵入り作品のひとつです。数ある妄想設定の中から信長君のを書くと決めて、妄想のまま終わってました。
大まかな設定としては、チートレベルで強すぎる女主人公とヒロインガルドさん(読者視点になる)。
ちなみに、こちらは二巻の火龍生誕祭で終わる予定でした。

>二次作品を書くのならばいっそ原作ブレイク&いろんな好きなキャラクター出しまくろうかな、がこの作品のコンセプトになります。
一部ではありましたがこの一話だけで『空の境界』『BLEACH』『Fate』『ログ・ホライズン』ですよ!しかも実はこの後、白夜叉さんまで倒してしまいます!!
これ以上のブレイクがあろうか。いやない(反語)
ぶちゃけ衝動で書きたいだけならここでなくても……と思う方もいましょうが、そこはどうぞ許してやってください。

>と、ゆーわけで!
本編再開は新刊待ちとなりますので、お待ちいただいている皆様申し訳ございません。ここまで原作追っかけてきた以上、ここだけは曲げられませんのでご了承ください。
本編は止まりますが、ときどきやってる1話からの推敲や、またこうしておまけやら番外編をふらっと更新するかもしれんですがそのときはまたどうぞよろしくお願いします。

ではでは、また次話にー

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