出張先に向かう道中の話です。
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気が付くと、私は海の上に立っていた。空は青く澄んでおり、太陽が煌々と水面を照らしている。
周囲を見渡すと、私以外にも多くの者がその場にいた。多くは●●●●の者であるが、中には世に名を馳せた者もいた。●の●●●●なんかがそう言えるだろう。
私は、この場に同じ出身である●●とよくわからないまま連れてこられたので、これから何をするのか、見当を全くつけられない。ただ、老いた者も多くいるため、何かの実験に巻き込まれるのではないかと感じている。
少しして、私は●●●●●●●●●の向かいに連れてこられた。完全な円形ではないものの、様々な所に各人が配置された。●●も結構近くにいるので、私は少し安心していた。
時間がたって周囲を見渡すと、多くの者が空を見上げている。●●も周囲を見て顔を上げていた。私もそれに倣って、同じく空を見上げる。
すると、空から何か降ってくるのが見えた。最初は小さな黒い点にしか見えなかったが、高度を下げるたびその大きさはどんどん膨らんでいく。それを見て、私は本能的に危機を感じていた。これは通常のものとは明らかに違う、かなり危険かもしれない、と。
しかし、よく見るとそれが私から離れた方角に動いているのがわかった。私から見て北西の方角に。そう、その方角は
『●●のいる方角』であった。
全身に悪寒が走る。急いで●●の方を向き、叫ぶ。しかし、それは既に遅かった。
『っ!●●ぁ!』
次の瞬間、辺りはとてつもなく強い光に被われ……
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「……かん!司令官!」
「っは!?痛ったあ!」
「みぎゃ!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
私は、目覚めかけに聞こえた電の声に驚いて跳ね起きる。すると、どうやら電は顔を前に持ってきて起こしていたようで、頭と頭が正面衝突してしまった。頭が腫れる位痛い。電はもしかしたら石頭なんじゃないだろうか。
私は、いや、私達は今、呉鎮守府へと向かう軍用列車に乗っていた。軍用列車なので、車内に乗っているのはそれぞれ基地の司令官や軍関係の職員、そして軍属の鉄道関係者である。いわば公の場であるにも関わらず、素っ頓狂な大声を出してしまった。お陰でさっきからちょっと視界に入っていたどこかの司令官に、怪訝な顔をされてしまった。心外だ。
だが、電と頭をぶつけたお陰で若干残っていた眠気は完全に晴れた。暫くはあの夢を見ないでいられるだろう。
「ごめんね、電。ぶつかっちゃって。」
「い、電は大丈夫なのれふ!」
「ダメじゃない……。無理しないで。」
呂律が上手く回っていない電に対して座席に座り直すように促し、電も結構ダメージを受けていたのかすぐに戻る。そんな完全に空元気になっている電をよそに、後ろの席にいた羽黒が席を立っていつのまにか近くに来ていた。
「大丈夫……ですか?さっきちょっと顔を見たんですけど、顔色が悪くてうなされていたので……。」
「え、そんなにひどかった?」
「はい、かなり……。」
普段は見せない顔をしている羽黒を見るに、どうやら私は寝ているときにかなりひどい状態になっていたみたいだ。そりゃ、あの悪夢を見れば当然だろう。
あの夢は小さい頃から何年たっても、一部途切れ途切れになっても決して色褪せることのない、私が見てきた悪夢の内の一つ。見るたびに全身に汗をかいてしまうほどの、トラウマを持った夢。強い光を浴びた後は、本当に考えたくないほどおぞましい。それほどまでに、強い精神的ストレスがかかってしまう夢なのだ。
小さい頃から無意識状態でフラッシュバックされるため、見たくもないのに見せられて、一時期は本当にノイローゼになってしまったくらいだ。今のところこの事は、先生と吹雪さん、そして同輩の朧しか知らないが。
「何か悪い夢でもみたんですか?」
「ちょっとね。まあ、大丈夫よ。」
「……そうですか。何かあったら言ってくださいね。」
「わかったわ。ありがとね、電、羽黒。」
「「はい!」なのです!」
心配そうな顔をして来る二人に、笑顔で返す。今はまだ、この夢の話をするわけにはいかない。
その時が来たら、正直に伝えよう。そう、心の中に刻んだ。
その後何故か迷うことのない列車内で電が迷子になるハプニングがあったものの、無事私たちの乗った軍用列車は呉に最も近い駅へと到着した。
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「まあ、呉に着いた訳なんだけど……。」
私たち三人は列車を降りて、呉鎮守府へとたどり着いた。今はその入り口の大きな門の前に居るのだが、何故か電のテンションが爆上げしていた。
「大きいのです!廿日市よりかなり大きいのです!」
「そりゃあ、日本に4つある本営の内の1つだしねぇ。」
「ほわぁ~……。すごいのです……。」
艦娘でもちゃんと子どもらしい部分はあるんだなぁ、と思いながら電を見つめ……あれ、羽黒も似たような顔してる。やっぱり電可愛いって思ってるのかな?
ただ、電はちょっと浮かれてしまっている感じがするので上手く抑えないとな、と思う。
「ほら、これから中に入るんだから少し落ち着いて。あまり浮かれていると、このだだっ広い呉鎮守府内で迷子になっちゃうわよ?」
「そうです。下手をすると二度と会えなくなっちゃうかもしれないですね。」
「き、気を付けるのです!」
どうやら羽黒の付け加えのお陰で、電の気を引き締め直すことが出来たようだ。と、ちょうどいいタイミングで連絡がくる。通信機を見ると、どうやら先生からのもののようだった。
「あ、ごめん。ちょっと電話きたから待ってて。」
「はい、わかりました。」
「あ、羽黒、ちょっと電のフォロー頼むわ。」
「あ、はい。了解です。」
羽黒に言伝てして、二人から少し離れた、雑音の入りにくい場所へ移動する。それから端末を操作し電話に出る。表示されていた番号が先生の端末番号だから本人が出ると思って待っていると、
『あ、幽ちゃん?』
吹雪さんが出てきた。さすがにちょっと驚いた。
「はい、そうです。先生はどうしたんですか?」
『それがね、呉の上位将官級の緊急会議に召集されちゃって、今門まで迎えに行けなくなっちゃったんだ。何か、門番には事情を説明してあるからそのまま入って、暫く一緒に来た艦娘達に鎮守府内を見せて上げてって。』
上位将官級、しかも緊急会議か……。そんなことは滅多にないからちょっと引っ掛かるけど、最重要案件だろうから来れないのも仕方ないか。
「緊急会議なら仕方ないですね。わかりました、先生が戻り次第連絡を貰えますか?」
『うん。御簓司令官が戻り次第、連絡するね。じゃあ、よろしくねー。』
「はい、失礼します……。うーん、じゃあ、入りますか……。」
私は駆け足で、急いで2人のもとへと戻る。羽黒が上手くフォローしていたお陰か、電のテンションもいつも通りに戻っていた。
「お待たせ。先生が、何か緊急会議が入って迎えに来れなくなっちゃったらしいから、先に中に入ってましょう。」
「わかりました。でも、緊急会議って何でしょうか?」
「確かに気になるのです。」
「わからないわ。多分海軍最高幹部級の機密情報だとは思うけど……。」
「最高幹部級の機密……。ちょっと気になりますね。」
「なるけど、私はまだ下級将官だから情報が降りてくるまで待つしかないわ。」
「そうですね……。」
「まあ、それは置いておいて中に入りましょう。いつまでも門の前に居るわけにはいかないし。」
「はい。行きましょう。」
「ちょっと楽しみなのです!」
皆で呉鎮守府の方に向き直る。空間を隔てている門が、目の前に聳えている。その中へと入るため、私達は守衛のいるであろう門へと向かった。
艦娘紹介
05 雪風
艦種 駆逐艦
役職 第1艦隊(、第2艦隊)
所属 廿日市基地
簡易紹介
3回目の建造で廿日市基地に配属。吹雪、神通と同期。
かなり明るい性格であるが、一つの考えに固執して回りが見えなくなってしまったり、精神的に色々引きずってしまったり等、ネガティブな面も併せ持っている。
第16駆としてかつて神通の下につきその姿を見てきたからか、神通に憧れと畏怖を持っている。
直観が秀でており、感覚的に動くのが得意。しかし、計画性を必要とする場面では、かなり動きを制限されてしまう。
運が高く、最近近くの商店街の福引で1等のお米を当てた。
羽黒さんの話し方って、書いてると難しいな……。上手く掴みにくい……。