真・恋姫†演義~舞い降りる賢君~   作:残月

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その頃、仙人界は②

 

 

 

仙人界蓬莱島。

 

 

会議室に複数の人間が集まっていた。教主である楊戩の指示の元、集められた仙人や天然道士が居た。

 

 

「では、会議を始めます。議題は……太公望師叔の事です。有る筋からの情報で彼の居場所が判明しました」

 

 

楊戩の言葉に集まった者達はざわつく。

 

 

「そして……彼の行き先ですが……太乙様、お願いします」

「うむ、任せなさい」

 

 

楊戩の指示で前に出た太乙真人はモニターに映像を灯す。

 

 

「では先ず太公望の行き先だが……女禍が作り出した『外史』と呼ばれる世界に行ったようだ」

 

 

モニターには『外史』の文字が映る。

 

 

「なんなの?外史って?」

「正しい歴史から逸れた歴史……それを外史と呼ぶんだが、これは女禍が作っていた予備の世界みたいでね。どんな世界か解らないんだ」

 

 

外史に付いて首を傾げたのは三つ編み状の髪を上に伸ばしている女仙人の蝉玉。

 

 

「そして、その世界には女禍の残した物がある……かもしれない」

「かもしれない……って解らないの?」

 

 

太乙の説明に手を上げて質問を返したのは天化の弟の天祥だ。

 

 

「情報提供者からの情報しかないから憶測でしか無いんだよ。でも元始天尊様や燃燈も可能性は有るって言うからね」

 

 

情報提供者は兎も角、元々女禍の動向を探っていた元始天尊や燃燈も合意したことから可能性は高いと判断された。

 

 

「だったら師叔を助けに行った方が良くないさ?」

「そうだぜ!太公望だけに任せられるかよ!」

 

 

太公望の手助けに行くべきだと天化や雷震子が意見を出す。

 

 

「実はそっちにも問題があってね……ポチッとな」

 

 

太乙が困った様に頭を掻き、リモコンを操作するとモニターの表示が変わる。

モニターに映し出されたのは崑崙の最高幹部が乗る宝貝『黄巾力士』

ロボットの様な姿をしていて頭の部分にコクピットが有る。更に最高級宝貝合金で作られておりかなりの強度を持つ持つ宝貝だ。ちなみに使用者の名前が腹部に表記されていてモニターには太乙の名前が入っていた。

 

 

「これは私の黄巾力士を改造して作った黄巾力士でね。コレに乗れば太公望が行った外史に行ける筈だ」

「いつの間にこんな物を……」

 

 

科学&宝貝マニアの太乙は既に外史に行く為の術を用意していた様だ。その事に白鶴童子はタラリと汗を流す。

 

 

「でもまだ調整が必要だし……コレには五人までしか乗れないんだ」

 

 

太乙の追加説明にその場に居た全員がピタリと止まる。

 

 

「五人までしか行けないのかよ!」

「あ、正確には四人だね。この黄巾力士は扱いが難しいから私が乗らなきゃ駄目だからね」

 

 

土行孫のツッコミに太乙はククッと悪い笑みを浮かべていた。

 

 

「行く人数が決まってるなら僕が行くッス!」

「僕もお師匠様の所に行きます!」

 

 

真っ先に立候補したのは四不象と武吉。

 

 

「俺が行く……強い奴が居るなら破壊するまでだ」

「太公望殿に世話になりっぱなしだったからな!今度は俺が役に立つ番だな!」

 

 

哪吒や黄飛虎も次いで立候補していく。そして俺も私もと次々に立候補が出ていた。

 

 

「フフッ……」

「どうされました竜吉公主?」

 

 

その光景を見て笑みを溢した竜吉公主に楊戩は尋ねる。

 

 

「いやなに……皆も太公望が居ないことに寂しさを感じていたのだな……っと思ってな」

「確かに……その様ですね」

 

 

竜吉公主の言葉に楊戩は苦笑いをしながらも同意していた。

 

 

「時に……竜吉公主は立候補しないのですか?」

「四不象と武吉は決まりじゃろうな。太乙は操縦者として乗るから……後は一人じゃな。誰が乗るのかな」

 

 

 

楊戩は竜吉公主が既に外史に行くつもりなのだと気づいていた。しかも、この様子なら力尽くでも候補者に出るつもりなのだろう。

 

 

「やっぱり……アナタはトラブルの元ですね師叔」

 

 

これから起きるであろう騒動に楊戩は少し胃が痛くなるのであった。


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