真・恋姫†演義~舞い降りる賢君~   作:残月

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太公望、屁理屈を捏ねる

 

 

 

陳留を目指す太公望と雛里。

街はもう目に見える距離まで近付いていた。

 

 

「アレが陳留か」

「はい、最近州牧になった曹操様が治める地です」

 

 

馬に揺られながら街を眺める太公望と雛里。

 

 

「街に着いたらまずは飯にするかのぅ。新鮮な桃があれば良いが……アンマンがあると尚良いのぅ」

「師叔……当初の目的からズレてます」

 

 

目的より食い気を優先しようとする太公望に呆れ声の雛里。

 

 

「甘いのぅ雛里。街の市に出ることにより情報収集を行うのだ。更に腹も満たせて、街の繁栄を見ることも出来る」

「うぅ~……」

 

 

自分の意見を屁理屈で返す上に反論をさせないような物言いに雛里は唸る。

 

 

「師叔は屁理屈ばかりです……」

「屁理屈も理屈の内よ。ワシの言葉を返せるくらいになってみせい」

 

 

雛里の言葉に太公望は笑いながら返す。

しかし、太公望に口で勝つのは正直誰にも不可能である。

何しろこの男は自分より実力が上の者には口八丁手八丁で翻弄し、自分のペースに巻き込み勝利を掴んできたのだ。

しかもそれは、なり振り構わぬ姿勢で行われ、勝利のために自身の相棒の四不象ですら人質にしたくらいだ。

雛里が太公望に口で勝てる日は来るのだろうか?

 

 

 

 

 

◆◇???◆◇

 

 

街の入り口に大量の籠を背負う少女が三人居た。

 

一人は銀髪で顔や体に傷を持つ少女『凪』

一人は髪を二つに縛り上げ、関西弁を喋る少女『真桜』

一人は眼鏡を掛け、そばかすの有る少女『沙和』

 

 

「あれが陳留か……」

「やっと着いたー……凪ちゅーん、もう疲れたの」

「いや、沙和……これからが本番なんだが」

 

 

街に着いたらと同時にだらける姿勢を見せる沙和とツッコミを入れた凪。

 

 

「もう竹カゴ売るの、めんどさーい。真桜ちゃんもめんどいよねぇ……」

「そうは言ってもなぁ……全部売れへんかったら、せっかく籠、編んでくれた村の皆に合わせる顔がないやろ?」

 

 

沙和は真桜に同意を求めるが真桜は流石に村の皆に悪いと言う。

少女達は村で作られた籠を、遠出して陳留の街にまで売りにきていた。

最近州牧になった曹操は良政をしいており、陳留は治安も良いため人も多く集まってくるし、きっとカゴも売れるだろうと三人は陳留まで来た。

世間では天の御遣いが現れたとの噂もある。

 

 

「天の御遣いか……尊敬できるような方なのだろうな」

 

 

どんな人物なのだろうと思いを馳せる凪。

 

 

「そんじゃ、決まりや」

「わかったのー」

「ん? 何がだ?」

 

 

考えごとをしている間に、真桜と沙和で何か決めたようだ。

 

 

「凪ちゃん聞いてなかったの、人が多い街なら、皆で手分けして売ろって言ったのー?」

「それで、一番売った奴が勝ちって事で、負けた奴は晩飯、奢りや!」

「おい、大切な路銀を」

 

 

凪は二人の意見に抗議しようとした。

 

「ほな、夕方には門の所に集合や」

「解散なのー!」

「はぁ……まったくこの二人は」

 

 

少女達はそれぞれ分かれて、籠を売るのに良さそうな場所へと向かった。

そこで一人の少女は運命的な出会いを果たす事となる。


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